55.お花畑?
本格的に、国造りに従事し1週間……。
さらに嫁が増えた……、女子会にて、決定したと言う……。
増員メンバーは、沼津愛美、御厨来夢、来栖翠、氷室沙希、大山弥生の5名。
異世界人をコンプリートしてしまった……。
まあその話とは別に、俺はジストの町を、これでもかと言うくらい走り回っていたと思う。
現在、農林部では田んぼに水が張られ、本日から田植えの真っ最中である……。
ハウス内の育苗床は近藤の頑張りもあり、青々と苗が生い茂っている……。
近藤には、魔道田植え機を渡しており、日本で見た事のある、田植え機を模して作成した。
近藤からは、回転式の爪を説明されたが、いまいちピンと来ず、試行錯誤を繰り返し……、ようやく、出来上がった力作である。
今から、収穫が楽しみだ……。
そして、軍部なのだが……。
新市街の区画整備が終了、新市街を囲むように高さ10mの外壁を造っている。
旧市街との境にも、住民を選別する関係上、壁を設置している。
この壁も結界魔道具を使って、住民登録者以外の出入りを規制している。
もう少し、出来上がって来たら、住民登録促進の為、新市街内覧会を開こうと思っている。
住宅の方も、元奴隷達の住居から徐々に建てられ、今は旧市街からの移住者用の建物に着手している。
次に、教育部はと言うと……。
教師予定現地人《執事長、他数名》の教育が、加・減まで進み、これから乗・除なのだと言う。
こちらも、直ぐに結果が出る訳ではないので、順調なのだろう。
総務、財務部では……。
独自通貨の草案が出来上がり、新市街での運用から開始する予定となっている。
法律も簡単な物から、整備していくようで、会議の議題によく上がる様になった。
で、治療院……。
ここが一番忙しい……。
受付での住民登録はもちろんだが……。
病人の余りの多さに、双葉の方も、毎日大変そうだった。
双葉には、裏技として生命の原液を、さりげなく患者に投与するように言ってある……。
生命の原液は1滴あれば、全快する優れものだ……。
投与後に、双葉のヒールで落ち着かせるだけで今の所は、対処できている。
マリルも活躍している様で、最近では症状に合わせて、調合も始めており、調合師職が出たそうだ……。
余談だが、吉田くんと付き合い始めたようで、順調に関係を築いているらしい……。
で、問題がある。
現在、治療院の隔離施設は、牢屋代わりになっており、元冒険者が150人ほど入っている……。
はっきり言って、どうでも良い。
犯罪奴隷として、住民に貸し出そうかとも思っている。
教会に依頼されて襲撃に来たようで、丁度良いのでジスト教会も冒険者ギルド同様、締め上げ、子供達を解放することが出来た……。
孤児院の子供たちは何も分かっていなかったようで、司祭に憧れていた少女も驚愕して、泣き縋って来たが……。
一緒に犯罪者になるかと聞いてみた所、さすがに犯罪者には成りたくなかったようで、引き下がってくれた。
その少女も含め、司祭に性的玩具にされていた子もおり、俺達の道徳に抵触した為、司祭を容赦なく拘束した。
教会地下には、拷問設備などもあり、教会の裏の顔が見えた……。
司祭はじめ、教会関係者は、会議堂地下牢に拘束されている。
後で、こいつ等も公開処刑予定でいる。
内政干渉、領地転覆、殺人、強姦、拉致監禁等の罪で良いだろう……。
沼津さんは、これで若草寮の運営を始められると喜んでおり、昨日から運営が開始された。
そして今日からは、会議堂で保護している部位欠損の少女達も、追加される予定でいる。
追加と言うのも、本日、欠損部位の移植が行われるからである……。
会議堂……。
2階1室では簡易手術室を作って、移植の準備が進められており、ホムンクルス技術で、各々の細胞から作られた部位が持ち込まれている。
再生治療を行なうのは、俺、琴音、鈴音、彩香さん、母さんの4人と1体だ……。
回復魔術の使えない彩香さんがいるのは、解剖学に詳しいからで、不測の事態に対してのアドバイスを貰う為だ。
「それじゃ、始めようか……。」
「一人づつ、入ってきて……。」
彩香さんが、部位破損少女を部屋の中に入れる。
最初の娘は、両腕……。
「怖いと思うけど……。直ぐに済むから……。安心して。」
彩香さんが、少女に声を掛けると安心したのか、表情が和らぐ。
全身に麻痺を掛け、欠損部の皮膚をそぎ落とす、すかさず再生部位を付け、骨、神経、血管等を、回復魔術で繋げて行く……。
琴音は殺菌洗浄、鈴音は肉体活性の魔術を行使……。
彩香さんが、助手……。
母さんが、再生部位の管理……。
まずは1本……。
「思ったより、簡単に繋がったが、何か不備は無かったか?」
「私が見た限りでは、大丈夫そうだったけど……。私も、初めてだから……。」
「「にぃ、大丈夫!」」
「そうね、正くん。問題なかったわよ……。」
「そうか……。それなら、よかった。この娘の体力はどうだ……。」
「活性、掛けてるから問題ない。」
「それじゃ、次に取り掛かるか……。」
確認後、もう一方の腕に取り掛かる。
先程の要領で、もう一方を繋ぎ、一人目の少女の手術を終了する。
最後に、麻痺を解き、生命の原液を繋ぎ目に塗布する。
覚醒した少女は、横になったまま目を開け、俺達を見上げる。
「痛い所ある?」
彩香さんが少女に声を掛ける。
少女は首を振る。
「もう終わったわよ……。」
彩香さんがそう言い、少女の背中に手を添え、起き上がらせる……。
そして、少女の手を握り、声を掛ける。
「どう?私の手の感覚、分かるかな?」
「あっ……!」
どうやら感覚があるらしい……。
「握れる?」
少女は彩香さん呼応する様に、手を握ろうとするが……、苦悶の表情を見せる。
「まだ、感覚が追い付いて無い様ね……。」
「リハビリが必要そうだな……。今日中の若草寮、入寮は延期だな……。」
心配そうな目をしてる少女に、彩香さんが語り掛ける。
「大丈夫よ……。ゆっくり直していけばいいから……ね。」
そう言って、頭を撫でる。
少女は、頷き自分の両腕を擦る。
肘までの感覚があるようだから、そう遠くないうち握れるようになるだろう。
そうして、1人目の少女が部屋から出ると、心配そうに、沼津さん、双葉、雫が他の部位欠損少女達と共に待っていた……。
「部位再生は成功したが、感覚が追い付いて無いみたいだ。もう少しリハビリが必要だと思う。」
結果内容を待っていたであろう皆に、報告する……。
「そうですか……。」
沼津さんは落ち込んだようだ……が。
「良かった、動く様になるんですね?」
双葉は素直に、欠損箇所の回復を喜ぶ。
「多少時間が掛かるが問題ないだろう。後は、筋肉と神経を鍛えればいい。」
「ほらっ、沼津さんも喜んでくださいよ……。皆、見てますよ。」
雫が励ます……。
「そっ、そうよね。もう両腕は有るんだし、喜ばなきゃね……。でもリハビリは何処でするんですか?」
「そうだな……。まだ、一人で出来ない事も多いだろうし、会議堂で良いんじゃないか?ここだと使用人も、多数いるから苦にならないだろう。」
「それでしたら、治療院から看護師見習いとして、何人か交代で派遣したいのですが……。」
「あっ、そうか……。若草寮からも、保育士見習いで派遣します……。」
俺は、欠損少女達を見て、語り掛ける。
「あっははは~!良かったな、手術終わったら、お姫様みたいに至れり尽くせりになるぞ……。さあ、さっさと手術済ませて、お姫様生活だ!」
沼津さんが反応する。
「なっ、リハビリがメインですから、そこまでしませんよ~、もう!藤堂さん!」
「「マナミンは、皆のお母さん。」」
「二人も何言ってるんですか、お姉さんにして下さい……!」
そんなやり取りを見て、欠損少女達も緊張が取れて来たみたいだ。
「その続きは、手術後にしようか……。」
そして、順に手術を再開する……。
中でも、目、舌の再生治療が面倒だったが、それも彩香さんのアドバイスにより、簡単に終わらす事ができ、2時間ほどで全員の手術を終えた。
今の所、全員が部位移植の拒絶反応も出ず、改めて自己細胞のホムンクルス技術で作られた、部位の凄さを認識した……。
「さすが母さん凄いね……。拒絶反応すら出てない……。」
「当たり前でしょ、本人の身体なんだから……。正くんだって、あの短時間で、全員の手術終えるんだから、相当な物よ……。」
「「にぃも凄い。」」
「はっ?お前達だって、的確に処置してただろ。彩香さんのアドバイスも助かったし。」
「そうよね……。私なんて口しか出してないわよ。それに比べて3人とも手術中、凄かったわよ。まるで、三位一体……。」
「ジェットストリームアタックね……!」
彩香さんの、話を母さんが横取りした……。
「母さん、台無しだよ……。」
「そう、彩ねぇは、ゲッターと言いたかった。」
「FEのデルタアタックも有り!」
「「にぃが、ルミナス役でも可!」」
「マックスハートかよ!」
俺達はいつもの感じになってしまっていた所……。
「あの~。藤堂さん?」
沼津さんに呼ばれる。
「あっ、ごめん……。はしゃいじゃって。」
「いえ、良いんですけど……。全員、手術成功って事で、裏の石碑に、報告行きませんか?」
「ああ、それは良いな……。みんなで行こう。」
そして、皆で石碑に向かう……。
そこは、石碑の下に眠る少女達が、手術の成功を祝ってくれてるかのように、満開の桜が咲いており、そこへ向かう道端にも、春の花が咲き乱れていた。
情緒ある風景に、感情が刺激される……。
そして改めて、生き残った少女達の、これからの幸せな生活を誓う。
王侯貴族達の、犠牲者……。
教会の犠牲者……。
冒険者達の肉盾……。
奴隷の末路を考えると、胸糞悪くなって来る……。
どうして、この世界は、子供達に優しく出来ていないのか……。
どうして、誰も何も言わないのか……。
どうして、こんな事になっている……。
巡り巡る、思いを胸に……。
そして、少女達を使用人達にお願いし、仕事へ向かう。
次なる仕事、会議室でのお花畑の吊し上げだ……。
・
・
・