53.各々2?
会議堂、執務室。
財務担当、堀田一斗、来栖翠、総務、藤堂安奈が話していた。
「ねえ、堀田くんどう思う?」
「はっきり言って、どうしようもないな……。」
「来栖さんは?」
「同じくです……。」
「はあ~、やっぱりか……。」
「どこから出て来たんです、その隠し資産って……。」
「屋敷の隠し部屋……。」
「と言うと、旧キリフトス家の資産と言う事になりますが……。ラウルさんにお返しした方が、よろしいのでは……。」
「そうなんだけど……。ラウルさんの資産は、正臣さんの物なのよね……。」
「それじゃ、そのまま藤堂さんに、使って貰って良いと思いますけど。」
「ぶっちゃけるけど……。現在の藤堂家の総資産は、この世界でも有数です。それに、正臣さん欲しい物とか作っちゃうから、特にお金を必要としないのよね。」
「そこで、私達に、これを使えと言う事ですか?」
「太っ腹ですね。」
「いいえ、大したことないわ……。どうせ新貨幣に変えるんだし……。後で、回収する事になるしね。」
「でこれをどう使えと……。」
「兵士たちの給料の補填で良いでしょう。」
「分かりました……。けど、白金貨500枚って使いづらいですね。」
「それで、商人ギルドで両替してほしいのよ。どうも、白金貨と言っても、プラチナじゃ無いみたいなのよね……。」
「それじゃ、ホワイトゴールドって事ですか?」
「近いとは思うけど、どうやって作ってるんだか……。多分、銀を混ぜてるとは思うんだけど……。それが、金より高いってのが問題だと思わない?」
「思いますね。合金なら、それはそれで良いんですけど、価値の基準が……。」
「そこで、両替ね!」
「そう、金貨の方が純度高いって、正臣さん言ってたから、大量購入って事ね……。新貨幣は、金との合金で作ろうって、ミスリルとかオリハルコンを混ぜて、魔力の通り方で偽造対策、自販機の製造も考えてるかも知れないわ……。」
「貨幣の判別魔道具も、用意するんですね……。」
「小銭はどうするんです……?それも、合金ですか?」
「そんな事言ってたわ、ミスリルと何かって、まだ何かは、決めかねてるみたいね……。でも、ダンジョンで生成できるゴーレムのどれかみたいね。」
「そうですか……、と言うか、藤堂さんがいれば、私達、必要ないですよね……。湯水のようにお金があふれてきます。」
「え~っと、これから必要になって来るのよ。公共事業や外交が始まったらね……。」
「確かに財務管理が必要そうです……。」
「給料計算とか、会社みたいね……。」
「基本変わらないわよ、日本の企業って、社会主義構造だから、皆で稼いで、平均して分配って感じだしね。」
「そうですね……。国としてそれをしようって訳ですからね。」
「そうすると、競争力低下しませんか?」
「良い所に目を付けたわね。そこで、民間は自由経済にしようって考えもあるのよ……。ただし、国外との商売に関税を設けて調整して貰うわ。」
「なかなかいいと思います。私達の仕事が増えそうですけど……。」
「これは、人も雇わないといけませんね……。」
「正臣さんにも言ってるけど、この国の教育水準が低すぎて、付いて来れそうにないのよ。私の所でも、雑務が精一杯って感じだし……。財務ってなると、信用できる人って条件も追加でしょ。」
そうすると、学校を卒業した人しか務まらない……。
「「「う~ん……。」」」
どうしようもない……、レベルの低さに頭を悩ませる3人だった……。
・
・
・
その一方で、東条翔太達、軍務関係は……。
「親方!ここの地盤固すぎですぜ!」
「親方と呼ぶな!どれ見せてみろ。」
そう言うと、東条翔太は、土魔術を駆使し岩盤を取り除く……。
「さすが!東条の旦那は魔術に長けてらっしゃる。野郎ども!奴隷から解放してくれた旦那達の為にも、早急に町を作るぞ!」
「「「「「「「お~!」」」」」」」
東条翔太は、早朝の鍛錬に参加してから、自分の適性である魔術の腕がメキメキと上がっている。
他の異世界組にも言える事だが、何らかの補正が掛かっている様だ……。
「それじゃ、昨日話した通り、下水管から埋め込んで行く……。」
鳴子蓮二が声を上げる。
「工作班は引き続き、掘削してくれ!」
絹川瞬が続ける。
「機甲班は、ゴーレムで下水管の設置お願いします……。」
高橋広司、本庄蒼真も声を掛ける。
「魔導班は、埋め立ててくれ!」
「それじゃ、機動班が整地な!魔導車のアタッチメント、ローラーに換装しとけよ!」
そして5人は、地図を広げ作業の確認をしている。
他の部門では、現地人の使い方の苦労していたが、ここ軍部では思いの外、上手く回っている……。
軍部も兵科が作られ、陣地構築を行なう工作部隊、ゴーレムを扱う魔術師見習の機甲部隊、そして魔術を行使する魔導部隊、魔導車の機動性を生かし、高速戦闘、偵察、輸送等を行う機動部隊、最後に歩兵部隊、ゆくゆくは特殊部隊にする構想を、東条翔太は想定している。
この世界では、未だ歩兵の密集隊形での戦闘が主流となっている。
町が出来上がった頃には、火薬の製造も行なえるようになり、銃火器を主力武器とした戦闘を東条は考えていた。
兵達もまた、異世界知識に裏付けされた、様々な知識に戸惑いながらも、従順に訓練と仕事をこなし、魔術師としての技術を上達させていく。
そして……、この土木工事の経験が、後のロストニア王国戦を皮切りに、この世界の戦争を一新させる事となる……。
・
・
・
会議堂、地下牢……。
アサギ、メリエルは、捕まった冒険者の確認をしていた
「メリエル……、これで全員ね……。」
「でも、どう言う繋がりなんだ……?」
「ライトの教育をしてた、王都支部のベテラン冒険者ね……。A級もいるわよ……。王都支部、売っちゃおうか……?」
「何だろう……。アサギって、そんな性格だっけ?」
「旦那の意向を汲むのが、良妻の条件よ……。」
「うっ、う~、あの食事が……。うっ、売る……。でも、半分はジスト支部の連中だぞ……。」
「そうなのよね……。藤堂家の下部組織に取り込む?」
「はっ?そんな事、ギルド本部の連中が納得しないだろ!」
「分かってるわよ……。冒険者ギルドって、支部毎に独立してるじゃない……。」
「そうだな……。」
「内緒にすれば、ばれないんじゃないかしら……。それに、ジストだと必要のない組織だしね!」
「自分の職場を必要ないって……。」
「多分だけど正臣さん、薬草採取とか、魔獣討伐、軍ですると思うわよ。魔獣の養殖とかも考えてるかも知れないし……。」
「でも、住民の依頼とかは?」
「それも国で請け負うわね。街道の整備もするから、魔獣や盗賊なんかも大幅に少なくなるわよ。」
「ギルドカードの発行は?身分証明になるだろ?」
「メリエル、治療院出来たの知ってる?」
「ええ、昨日から開院してるな。」
「あれ、正臣さん達でしてるんだけど……。そのついでに、新設国への優先登録もしてるわよ。登録してないと、冒険者のギルドカード持ってても、排斥されるわね。」
「はい?初耳だぞ……。」
「それについては言って無いしね。だけども、一番の問題として冒険者の信用が、一般人以下って事で、幹部が統一の見解を示してるわよ。」
「何だそれ!」
「だってそうでしょ、そこにいるの見れば分かるじゃない。犯罪者予備軍よ!新設国は犯罪者に容赦しないわよ。」
「う~、そうなんだ……。」
「何にも問題ないでしょ?犯罪者じゃないんだから……。でも、町に冒険者達、軟禁状態だから、何人か捕まってるかもね……。」
「本当に、冒険者ギルド要らなくなりそうだな……。」
「でしょ!だから、さっさと仕事終しちゃいましょ!」
「落としどころは、どうするんだ?」
「そうね……。キリフトス家で多数の冒険者が、領主の暗殺を試みた。これに失敗!身柄の拘束、王都ギルド在籍の冒険者も、多数参加しており王都とジストのギルド支部に、冒険者を指導してキリフトス家の転覆を目論んだ疑いがかけられている……。ギルド長、以下幹部は早急にキリフトス領まで来て、説明されたし……。ギルドの立場もある故、王都キリフトス屋敷には説明しない方が無難……。王国への敵対も疑われる可能性がある。……って感じかな?これは、正臣さん達の言い分ね……。」
「トウド―さん達?」
「そう、そしてギルド職員としての報告は、何を思ったか馬鹿な冒険者が領主ラウルを襲った……。返り討ちに会って、冒険者及びギルドが敵対した事になっている。現在、ギルド職員はキリフトス家だ軟禁、冒険者はジストを出る事を禁止され町に軟禁状態、キリフトス家で調査するらしく、下手したらジスト支部が潰される……。助けて……。って感じかな。」
「でっ、その心は?」
「王国と喧嘩するから、静観してろ!」
「ぶふっっっ!マジか!」
「あっ、でも建国したら、冒険者達、多分入国禁止ですよ……。入国できるとしても、かなり厳しい入国審査受けないと駄目でしょうね……。」
「本当……、嫌われてるんだな……。」
「自業自得です。それよりも、ゲシュタルに出発の報告に行きましょう。」
「ゲシュタルって、私達の上司を呼び捨てか……。」
「統制も取れない、上司って要らないよね。」
「そうだよな……、強襲後に調査報告書出してれば、こんな事にならなかっただろうし、ギルド全体の怠慢だな……。」
そうして、会議堂客室で軟禁されてる、ゲシュタルの所へ向かった……。
・
・
・
冒険者ギルド、ジスト支部。
クレア達は、閑散としたギルド内いる。
クエストボードと呼ばれた横幅5m位の掲示板には、いつもはびっしりと羊皮紙が張られていたが……。
「さすが、アイシャ達早いな……。」
アイシャ達、魔闘部隊によって、クエスト依頼がすべて持ち去られていた。
そして、物色したであろう、受付と買取カウンター、奥の事務机の上の物もすっかり無くなっている。
多分、ギルド長室、資料室、会議室の書類も、全て会議堂に持ち込んだのだろう。
そのアイシャはと言うと、ジスト支部の隣の建物を借り上げ、臨時のクエスト受注所にし、受付嬢をしている。
私達は、アイシャ達の元へ向かった。
「アイシャ、どうだ?受付嬢になった気分は……。」
「なかなか楽しいですね。領地の問題点が色々分かってきます。」
「例えばどんな?」
「薬草採取を受ける冒険者が少ない様ですし、主に怪我、病気への対処が滞っている事とか、護衛任務が多い事から荷物の輸送時、何かに襲われるんでしょうね……。他にも魔獣の討伐依頼とかありますけど、そっちの方は分担して対処したんですが、10件位は既に処理が済んでますね……。後は町の掃除依頼ですかね。確かに、屋敷と比べると汚すぎますし……。って言うか、異世界人って潔癖症ですかね?」
「う~ん、確かに綺麗なのは良い事でしょうけど……。毎日風呂に入るのはね~……。」
「ですよね~。クレアさん達も分かるでしょ、騎士団の生活!」
「そうだね、前は毎日タライに汲んだお湯で拭くだけだったし、週に1回の水浴びを楽しみにしてたくらいだ……。今となっては……。」
「魔闘部隊になってから、元騎士団の人達も、毎日お風呂入ってますよ。贅沢の様な気がするんですけどね……。もう辞められませんよ……。」
「でしょうね。私もだからな~……。正臣さんが言ってたけど、新市街に銭湯なるものを作ると。」
「私も聞いてましたよ。おっきなお風呂ですよね。何でも、住民に開放するらしいですよ、病気の予防にもつながるからと……。」
「正臣さん……。凄いよね……。」
「ええ、私が妻で良いのか……。ふ~……。」
アイシャがため息をつく……。
「良いも悪いも、正臣さんが選んでくれたんでしょ、自信を持って!それに、私達から見ても良くやっている。正臣さんから頼りにされてるのが見て取れるわよ。」
「でも、私、騎士団の料理担当だったんですよ……。」
「あははは~!今や魔闘部隊の隊長になってるんだし……。さらに強さも一回り違うのよ、元親衛隊長の私でも敵わない位、腕を上げて置いて……ね~。あれも知ってるわよ、元騎士団長ボコったのも、彼も王国では10指の入る騎士だったんだけどね……。それに、現地人最初の弟子なんでしょ、正臣さんから教えて貰って、魔闘術師職もすぐ出たって聞いてるわよ。前途有望な人材なんだから……、正臣さんが気に入る訳よ。」
「あっ、ありがとうございます、クレアさん!」
「いいのよ。藤堂家の一員なんだから、お礼なんて。」
「私、頑張ります。」
「そうね。私も頑張るわ、アイシャから置いて行かれるのも寂しいからね。」
「一緒に頑張りましょ、クレアさん!」
そんな感じで話してると、アサギ達がやって来たので、王都へ向かう事にした……。
装甲馬車……。
護衛なんて必要ない気もするが……。
・
・
・