52.各々?
開発部門で、俺こと、藤堂正臣が迫られている頃
とある王城一室
「サイフリート宰相!調査終わりましたので、ご報告します。」
「申してみろ!」
「はい!昨晩起こった、拷問部屋での爆発ですが、魔術による物では無い様です。」
「はっ!あれだけの爆発が有ったのにか?いったいどうやって……。」
「分かりません……。ですが、魔術師達は、痕跡が無いと言っております。」
「まあいい、爆発の件は引き続き調査する様に……。それで、遺体の方は……。」
そう、爆発により拷問部屋に肉片が散乱して、身元がはっきりしないでいる。
昨日の昼に、クリシュナ王女が拷問官を連れ、地下に向かったとの報告を受けていたが……。
まさか、こんな事になるなんて……。
「王女と似た髪の遺体と、拷問官と思わしき遺体の2体でしたが、肉片を集めた結果、二体とも男性と判明しました。」
「それは本当なのか?」
「はい、拷問官と思わしき遺体は、左上半身だけの破損の為、直ぐに分かりましたが、王女と似た髪の遺体は破損が酷く上半身の殆どを再現できませんでしたが、下半身の方に王女に付いていてはいけない物が、付いていました……。」
「それで……。」
「以上です……。」
「それで王女で無いと確信した、と言いたいのだな?」
「はい……。」
「お前は、王女の下半身を見た事があると……。」
「いえ……。」
「それでは、何故!王女じゃないと言い切れる!早く確認して来い!」
「すいません、直ちに使用人に確認してきます!失礼します!」
報告に来た騎士を部屋から追い出し、宰相は嘆息する。
「はぁ~……。」
どう王に報告するか、頭を悩ませる。
勇者達の消失に続き、王女が行方不明になっている。
辛うじて、勇者長谷川が帰ってきたものの、意思の疎通すらできない。
この後、ダラスダンジョンの崩壊の報告を受ける事になる。
そして、まだ気付いていないが、現状を打開するために、数十名の魔術師を犠牲に行う勇者召喚で、更なる悲劇に見舞われる。
しばらく宰相サイフリートの苦悩の日々が続くのであった……。
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一方、クリシュナを嫁に貰った近藤丈志は……。
会議堂一室で、使用人服に身を包んだクリシュナと話していた。
「クリシュナ王女、正式に配属されるまで、研修の方頑張ってくれ……。それまでに、家の方と建てるから……。」
「ありがとうございます、近藤様。ですが、私は奴隷となった身、呼び方も王女で無くてよろしくてよ……。」
「そうだな……、身バレも怖いから、愛称か……。クリシュナ、クリシュナ……、クリス……?うーん……、リーシュ!っ、そうだリーシュにしよう。どうだろう。」
「可愛らしい名前を付けていただき、ありがとうございます。これから私はリーシュと名乗る事にします。」
「そこで、家の事なんだが、どんな家が良い、リーシュが掃除する事になるし、あまり大きいのも考え物だろ?」
「お任せしますわ。近藤様のお好きな様にして下さい。私に発言など、許されるものではありません。」
クリシュナ改め、リーシュはさっきまでの、恐慌状態と違い、時間がったって落ち着いて来ており、王族としての矜恃があるのだろう……話し方が、奴隷と王族を行ったり来たりと、揺れ動いているように見受けられる……。
「リーシュ!慣れない事は止めて普通に話してくれ、ただ、王女には戻れないって認識だけでいい。だがそう悲観しなくても良い、俺が守ってやる。」
「近藤様……。」
潤んだ目で見つめて来るが……。
「アワワワ!俺は仕事に行って来る。後でメイド長が来るから、言う事を聞く様に……。夕食の時にまた会えるから……、心配するな。」
慣れない事はお互い様だった。
「はい、行ってらっしゃいませ……。」
そして、近藤が部屋を出て行き、取り残される事になった、リーシュ……。
「はぁ~……。私は今後どうなってしまうのでしょう……。きっと、近藤様に凌辱の限りを尽くさんとばかりに、前も後も初めてを奪われるのです。そしてこれから、肉便器としての教育を施され、近藤様の排泄物を来る日も来る日もこの身に受け、ごみ溜めに捨てられるのです………………。ウフフフフ…………。」
一人妄想に耽っている、リーシュがいる。
先程、近藤に見せていた表情とは違い、身体全体に火照りを感じたのか顔を紅潮させ呼吸も荒く、口角が上がり歪んだ笑みを見せていた。
トン!トン!ガチャ!
不意にドアを叩かれ、返事を待つ事無く扉が開けられた……。
「はっ、はい!」
そこには、見知った顔の女性がいた……。
「お久しぶりですね、クリシュナ王女……。いえ、犯罪奴隷クリシュナと言うべきですかね。」
「あっ、あなたは、私の親衛隊にいた……。」
リーシュの顔には、先程まで浮かんでいた、歪んだ笑みも無くなり、困惑した表情へと変貌していた……。
「元!親衛隊のエイダです。」
「それでは、私を救出に。」
「何か、勘違いなされているようですが……。あなたご本人が、親衛隊を解散させたんでしょう……。それに私は、今の御主人様に、心酔しています。」
「近藤様にですか?」
「それも勘違いです。この領地は既に、王国とは別の国です。その国主となられてる、藤堂様にです!そして、あなたが左遷した親衛隊隊長クレア様、副隊長、レイラ様、エスト様は、藤堂様の御寵愛を受けられる身、私以下3名の左遷組も使用人として、屋敷の方で仕事を頂いております。」
「国と言うのは?どうしてあなたがここに?」
「無駄話をしてもしょうがないですが、ここに異世界人主催の国を建てます。そして、私の現在の役職がメイド長、あなたの教育係です。1週間で全て覚えて頂きますので、睡眠と食事以外は自由が無いと思って下さい。あなたのスペックは大体把握してますし、これ位では死なないでしょう。覚悟は宜しいですね……。」
エイダの微笑と共に、ブラックな花嫁修業の開始が宣言された……。
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吉田くん御一行はと言うと……。
会議室にて、明日の段取りの確認中……。
会議室は白熱していた……。
「琴音さん、鈴音さん、明日はくれぐれも大人しくお願いします。」
「「だが断る!」」
「制圧した方、早い!」
「領主すげ替えですむ!」
「奴隷貴族!」
「明日から領民代表!」
二人が、ドリエル侯爵長男サミュル、ホーミル子爵長男ジャーク、エネランド子爵次男デリスを指差し、言い放つ。
「「「………………。」」」
「外交と考えすぎ!」
「これは搾取!」
「グレインガルドのルール!」
「弱肉強食!」
「庇護下に入れてやる!」
「これ一択!」
心の中で、藤堂さん助けて!と叫びながら、吉田くんは口にする。
「ですけども、なるべく穏便にと…………。」
「それは相手次第。」
「多分、喧嘩売られる。」
「こっちの最大戦力、私達!」
「蔑まれるのは必然!」
「私達!」
「かわいい!」
「私達は、にぃの物!」
「つまり、藤堂家と戦争勃発!」
「明日行く、領主達はそんな事無いですよね………。サミュルさん、ジャークさん、デリスさん?」
「「「………………。」」」
3人が無言で目をそらす……。
「あるのかよ……!」
「ヨッシ―、心配ない!」
「ヨッシ―、任せて!」
「一番の不安材料ですよ~……。」
「そんな事無い!」
「会話の内容確定してる。」
「「つまり、安定!」」
「………………、そうか!お二人と料理を使って、会話を引き出せばいいと言うわけですね……。」
「「正解!」」
「そして、喧嘩買う。」
「そこで、奴隷貴族。」
「領主、引退させる。」
「領地の発展の確約。」
「領民の死亡率の低減。」
「「等、交渉!」」
「今まで考えていた事が、無駄な事に思えて来た……。」
「ヨッシ―、無駄に考えすぎ。」
「シンプル、イズ、ベスト!」
「強者が弱者を、養う!」
「自然の摂理!」
「「国内の安定は、急務。」」
「そうですね……、建国後からが本番ですからね……。こんな事でグズグズしてたら、マリルさんに告白も出来ません……。」
「マリルは任せて!」
「私達の僕だから……。」
「是非ともよろしくお願いします……。」
こうして、次の日の昼には、南西領の統一が果たされ、国の基盤が作られた……。
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そしてまた、彩香さん達、教育部門。
「彩香様、その文字は画期的ですね。指と同じ数で左側に書くなんて、小さい子でも分かり易い。」
執事長が、絶賛してくる……。
この世界の文字は、どんだけ幼稚なんだと思いながら、説明する。
「まずは、この文字を教えて貰います。その前にあなた方に、覚えて貰う必要があります。そんなに難しくも無いですから、直ぐに覚えられるでしょう。」
「それで、書き取りと言うわけですね。これを覚えれば、商人でもやれそうです。」
ここには、執事長を始め、読み書き出来る使用人、奴隷たちの中から選抜された、元王侯貴族や元商人が、30人集まっている。
この面子は、講師になる予定の為、基礎教育をしっかり教える必要がある……。
「彩香先生~。今まで~、この人達~どうやってたんですかね~。」
「聞かない方が良いわよ……、忍ちゃん。多分、数字一つ一つに、当てはまる文字が永遠と存在するわよ……。そして、0(ゼロ)って概念が存在しない。」
「そうなんですか~。気が遠いですね~。」
「だから、識字率が低いのよ……。面倒過ぎる……。貴族と商人ぐらいしか、文字が分からないってのも、そんな理由ね。」
「四則演算まで~、どれ位掛かるかな~。」
「0(ゼロ)を、理解できれば、直ぐに教えれるわよ……。」
「九九も~、出来る~?」
「その辺は怪しいけど、頑張って覚えて貰う他、無いかな……。忍ちゃんは九九で苦労した?」
「う~、放課後まで~残された~、記憶がある~。」
「でも覚えてしまえば、楽になるでしょ……。」
「そうだね~。苦労して貰う~……。」
執事長以下、教育を担う若手が、画期的な数字を目に、楽しそうに書き取りをしていく……。
のちに、商業と学問の町と呼ばれる事になるのだが、まだ先の話……。
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ジストの町、一画、治療院……。
「おね~ちゃ~ん!MP、大丈夫!少し休んで……。」
「大丈夫よ、雫……。正臣さんに液体魔素、貰ってるから……。」
「でも、もう30人目だよ……。」
「そうね……。でも大丈夫よ……。それより、御厨さんの方、手伝って来て……。あっちはあっちで、事務処理、大変みたいだから……。」
「分かったけど……。おね~ちゃん、無理しないでね。」
「ええ、看護師見習いの人達にも、手伝って貰ってるから、無理はしないわ。あと、マリルさん来たら、こっちに寄越して。」
「うん分かった。」
そう言って、雫は受付に向かっていった。
「ふ~、MPは大丈夫だけど……。さすがに連続で来られると、疲れるわね……。でも、もうひと踏ん張り!」
気合を入れ直し、双葉は患者を呼ぶ……。
「次の方、どうぞ~!」
そして聖女職を公開していないにも拘らず、ジストの聖女と呼ばれるようになる……。
そして受付に向かった雫なのだが……。
そこは、もはや戦場と化していた……。
住民登録した方は、教会の10分の1以下で、治療院が利用できると触れ込んだせいで、住民が殺到している。
「御厨さん、応援来ました。」
「ああ、雫ちゃん助かった……。私、分析の魔道具で住民票の処理するから、認識票の交付、頼めるかな?」
「了解です。血を一滴、認識票に垂らすと良かったんですよね?」
「ええ、そうよ……。」
「それにしても、混雑してますね……。」
「元奴隷の人達も頑張って貰ってるけど、まだ案内ぐらいしか出来ないし、アイシャさんの所からも警備の応援貰っているわ……。」
話しながらも、御厨さんの手は止まらない。
「警備?」
「ああ、選別で弾かれた人の対処です……。入り口で、武装解除しなかった方や犯罪者ですね。特に冒険者達が、落とされてますね……。」
「弾かれた人はどうなるんですか……。面談か尋問で、犯罪奴隷と外国人に分けられますね……。あっ!教国関係者は、例外なく外国人ですよ。」
「来たんですね……。教会の人……。」
「ええ、威力偵察みたいな事、冒険者護衛、連れてきましたね……。」
「冒険者は現在、軟禁状態したよね……?そんな事をすれば犯罪者確定じゃないですか……。」
「はい、そうですね……。ここで既に16人拘束しています……。」
「昼から、そんなに……。冒険者は馬鹿なんですか?」
「馬鹿ですね……。藤堂さんが言ってた通りです……。とりあえず、罪状は威力業務妨害、慰謝料請求と犯罪奴隷確定ですね。」
「冒険者が来るたび、私達の資金が潤いますね……。教会はどうしたんですか?」
「慰謝料請求の書類、作成中です。それと、映像を添えて請求してやります……。交渉は、藤堂さんに任せますけど、踏み込んで捕まえて尋問で終わりでしょう……。」
「御厨さんも、容赦ないんですね……。」
「も……?」
「正臣さん達ですよ……。」
「ああ、それとは違うわね……。私は事務処理しているだけだからね。」
「何か違いますか?」
「う~ん……。基準かな……。知らない人だしね、慈悲なんか与えたら、他も同じようにしないと駄目でしょうし……。悪い事した人だけ、特別に温情を与えるのって、普通の人はどう思うかな……。」
「犯罪は犯罪って事ですか……。」
「理由なんてどうでもいいのよ……。どんな理由が有れ、彼らは犯罪者だからね。」
うわ~……!御厨さん、正臣さん達より怖いかも……。
と思いながら、住民登録をしていく、雫であった……。
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そしてお隣、若草寮……。
御厨さんから、渡された資料によると……。
住民登録に来た子供達は、もれなく教会の偵察で来ているとの報告が入っている。
その為、若草寮には、子供達が居ない……。
と言うより、外国籍扱いになる為、受け入れ拒否。
「はあ~、何でだろう……。」
私こと、沼津愛美は嘆息する……。
子供達に必要なのは、陰謀や策謀、暗殺技術でなく、教育なのに……。
それを、サポートする為の若草寮であるべきと思い、急いで立ち上げて見れば……。
「子供達を使う、大人が悪いんだろうな……。」
まあ、藤堂さんも言ってたし……。
気長に、待つとしよう……。
何かあった時、受け入れ先が無かったら、それこそどうしようもない……。
私達が帰れない理由と同じように……。
今、会議堂にいる、欠損少女達は、欠損が回復したら……、全員ここに入る予定……。
皆が、笑顔になってくれたらいいな……。
藤堂さんから付けられたメイドさんと一緒に、現在は元奴隷改め若草班の皆を教育中。
メイドさんは、何でも第2王女付きの親衛隊委員だったらしい……。
藤堂さんの奥さんクレアさん達の、元部下に当たる……。
「はあ~、この前の女子会の話、進んでくれたら……。」
ここにも、胸に思いを秘めた女性がいる……。
のちに、聖母と呼ばれる事になるが……。
現在進行形で、その女子会の話が進んでいる事を知るのは、その日の夕方、定時報告の時となる……。
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