51.開発部門?
会議堂3階、会議室
「家が欲しい!」
近藤の声が響く。
分かっている、新婚初夜を迎えたいのは……。
だが、了承できない!
俺は見てみたい……、魔法使いを……!
「ちょっと、時間をくれないか?」
「何でだ?」
「いや、本当はサプライズを考えていてな……って、言ってしまったが……。正直、家が欲しいって、言われると思わなくてな……。今は側に付けているが、建国に当たり、クリシュナの洗脳も解かないとダメだし……。しばらくクリシュナとは会えないぞ……。」
「はっ!聞いてないぞ……。」
「ああ、言って無いからな……。さっきの裁判で有耶無耶にして結婚させたが、名目上は奴隷と言う事になっている。それに、クリシュナからの謝罪も無いし、分かり易い罰も受けてもらわないと困る。まあ、労役と言う名の花嫁修行になるだろうが……、炊事、洗濯、掃除、ご奉仕の仕方等だな……。元王女だから、そう言った事出来ないだろ?近藤と二人暮らしするとなれば、全部、お前がしなければならなくなるぞ……。」
「たっ、確かに……。」
「サプライズで無くなったが、そう言った一般常識と判断力の教育に花嫁修業、と言った研修後に、家と一緒にクリシュナをお前に預ける予定だったんだが……。どうせなら、家の設計、自分でしたらどうだ……。その間、研修させるって事で?それくらい我慢できるだろ……。」
「設計なんて、やった事無いぞ……?」
「大丈夫だ!極端な設計でなければ、魔術で強度は何とでもなる。時間が空いていれば、俺達も相談に乗る。クリシュナと相談しても良いだろうが……。クリシュナへの相談は余り進めないな……。多分、合理性とか機能面とか、完全に無視した設計になる。」
「そうか……、助かる……。でも、何でそんなに良くしてくれるんだ?」
「近藤には、彩香さんを助けられたからな……。」
「いやあれは、問題を先送りしただけだったろ……。助けたのは藤堂だろ?」
「その先送りが無ければ、助けれなかったんだよ……。感謝してるんだから、素直に受けろよ。」
その気持ちは、本心ではあるが……、魔法使いと言う希少職についての知識欲が勝っている……。
「藤堂!お前がそんなに義理堅いとはな……。分かった!甘んじて受けよう!その代わり、農業を充実させる事に尽力する……!」
「そう言って貰えると、俺も肩の荷が下りる……。だが、農業の発展は俺達も望むものだから、一人でやろうと思わず、気楽にしてくれ……!」
『正臣くん、良い感じにまとめているけど、希少職見たいだけでしょ!』
『いや、そうなんだけど……。近藤が頑張ってくれるみたいだし……、折角の気分を台無しにしたくないだろ……。』
『私も魔法使い職が、見たいから否定しないけど……。近藤先生がピエロに見えちゃうのよね……。』
道化を演じてくれるのには心苦しいが、近藤にとっても悪い話じゃないだろう……。
「クリシュナの処遇は、こんな感じで良いとして、次の議題だが……。安奈!」
「はい!各部署より多数の、器材の開発、素材の提供依頼が来てます。現在の開発部門では手に追えません。それに、開発部門は今何をしていいか、分からないようです。」
「それについては、しばらく俺が入るつもりで居るから、後で資料にしてくれ。」
「こちらからは、それだけですね。」
「軍部から宜しいですか?」
「東条くんどうぞ!」
「ダンジョンでの戦闘訓練を行なう事になってますが……。これは?」
「ああ、家の母さんがダンジョンマスターになって、現在ダンジョン作成中だ……。1階層はゴーレム部隊の作成、保管場所、2、3、4、5階層で軍隊のレベル上げと訓練ゴーレムを配置する予定でいる。何か、ダンジョンに人が入っていると、ダンジョンポイント(魔素)も溜まるらしい……。そこで、下手に冒険者に開放するよりは、皆の戦闘訓練に使った方が、有意義に使えると思ってな……。それにだ、王国、教国と事を構えるんだ、向こうと比べれば人数が少ない分、ゴーレム兵の増強と皆の戦闘力の向上をしないとな……。」
「それは良い案ですね……。少数精鋭の部隊が出来そうです。」
「ああ、それと魔術師への覚醒の方はどうだ?有能そうなのは居そうか?」
「まだ、全然と言った所ですね……。藤堂さんの訓練様式で、我々異世界組と魔闘部隊は魔力の使い方が分かって来てるんですが、兵士の方は人数がいますんで、把握しきれていないのが現状です……。」
「そうか……。まあ、適度に訓練に励んでくれ……。」
「了解しました。あっ!武装の方も欲しいです!いつまでも、木の棒って言うのも、格好が付きませんし……。」
「あっははは!そうだな、了解した。」
「藤堂さん、外交って言うか、領地巡りの事なんですけど……。」
「吉田くん、どうだった?」
「いや、まだ行って無いですよ。予定しか立ててないです。それで、護衛なんですが……。」
「ああ、そうかお花畑は反省部屋か……。」
「それで、琴音さんと鈴音さんを、お借りしたいんですが……。」
「過剰戦力だぞ……。良いのか?」
「「にい、私達は乙女……!」」
「そうだな、戦乙女《魔王》だな……。」
「戦力も助かるんですが……。二人の料理で篭絡してきた方が、早そうだとも思いまして……。」
「その手が有ったな……。だけど、貴族相手だぞ無理な事言って来たら、二人に何かあったら即武力行使するぞ……。転移もあるし……。」
「もちろん、こっちの戦力を見せつけてからですよ……。」
「それなら安心か……。」
「どう言う意味かな?」
「今、ここで見せる?」
俺と吉田くんに、絶賛、魔王の威圧スキル発動中だ……!
辛うじて耐える俺、吉田くんはガクブルしている。
「まて、二人とも!お前達に何かあったら、俺が世界を崩壊してしまう……!二人の戦力を見せつけるだけで、穏便に済むから安心だと言っただけだ。」
「世界を敵に回しても!」
「私達を守る……!」
二人が惚けてる……。
今がチャンス!
「だから、お前達二人は、吉田くんのサポートしてくれ!」
「「了解!」」
吉田くんが膝をついている、腰でも抜けたのだろう。
話が再発する前に次の議題に移る……。
「それじゃ、俺から最後にいいか……。貨幣についてだ!建国にあたり独自通貨を発行したい……。」
「それは僕も考えていたけど……。」
「今、直ぐにと言う事ではないですよね……?」
食い付いて来たのは、堀田くんと来栖さんだ。
「そうなんだけど……。王国と同じ価値の物を売買するつもりもないし、新しい町が出来て、住民登録した者から、両替と思ってたんだが……。」
「町の中だけで使えると言う事ですか……?」
「最初はな……。いずれは、国内って事だが、まだ国境線も引いていないからな……。」
「しばらく掛かりそうですね……。」
「予定として聞いててくれればいいよ……。」
「まあ、重要項目に当たりますから、慎重に進めて行きましょう。」
「そうですね……。商業ギルドとかの根回しも必要かもしれませんね。」
「いずれにしろ、町を作ってから、発行する。それまでに、色々と案も出るだろう……。皆も考えていてくれ!」
「今日はこの位ですか……。」
安奈が聞いてくる……。
「以上だな。」
「それでは、今日の会議は終わりです。何かありましたら、私まで報告お願いします……。」
安奈が、会議を締める。
さて、しばらくは領地開発に専念するとしよう……。
開発部門担当、氷室さん、大山さんの所に行く……。
「藤堂さん、来てくれたんですね……。」
「何していいか、分からなかったんですけど、藤堂さん!」
「すまんな……。開発なんて、大きな枠過ぎた……。自分の好きな創作活動も先延ばしだろうから……。代わりと言ってはなんだが、紙と鉛筆、それと魔導映写機をやるよ……。」
「うぉ~!これが有れば自主映画とれますよ!」
「私も、マンガ書けます……!」
「それなら二人で、やったらどうだ……。大山さんが、マンガ書いて……。氷室さんが実写化とか?」
「「藤堂さん、ナイスです!」」
「あっ!でも、建国してからにして貰えると助かるな……。」
「その辺は弁えてます。」
「建国物語……。良いですね……。ラブストーリー要素もありましたし……。ただ、腐の部分が少ないですかね……。否!!諦めたらそこで終わりです!」
「そこは諦めようね!大山さん……。良いフレーズが台無しだし……。」
「え~ダメですか!藤堂さん……。折角、橘先生を男装させようと思ってたのに……。あのクールな感じ!絶対似合いますって、もちろん藤堂さんが受けですけど……!」
「何それ、弥生っち!それ面白そ~!」
「いや氷室さんも、食い付かなくていいから……。俺と彩香さんの絡みだと、AVにしかならん……却下だ!」
俺の妄想では、そうなる。
その上、この世界では倫理規定が存在していない……。
つまり、無修正……。
「え、えーぶいですか……。」
「興味あります……。」
「だから、却下だって!それよりも仕事溜まってるだろ、片付けないと何も出来ないんだぞ!」
「「了解であります……。」」
俺は仕事を催促し、話を変える……。
「ところで、どうして滞っていたんだ?」
「魔術の使い方がいまいちです……。」
「私の適性は、光、闇、風で、弥生っちが、土、水なんです……。」
「それで、スキル何ですが、私は錬成持ってますけど、何かを作ると言うより精度を上げるって感じで、沙姫ちゃんは、複写って特殊スキルを持ってるけど、使用条件とか制限されている劣化コピーなんですよね……。」
「う~ん……。個人としては、ちょっと弱いな……。強奪と違って、劣化するのか……。使用条件は?」
「近くにいる人の、半分くらいの能力って感じ……。」
「それじゃ、しばらく俺の近くで錬金使うと良いかもな。自分に錬金が出るまで修行って感じか……。」
「それって、告白?」
「違う!」
「あはっ!冗談ですよ……。そんな強く否定されると私もショックです……。でも、それでも良いかな~って思ってますよ。」
「うほっ!沙姫ちゃん、大胆発言!」
「……何だろ?デジャブ?琴音、鈴音と話してるみたいだ……。」
「それは、あれですね……、お兄さん情報の量が多いからですね。」
「学校で、琴っち、鈴っちが、お兄さんの事よく話してたからね。」
「あっ!家に良く遊びに来てた、妹の友達って君達か!」
「今、気付いたんですか……。」
「何気に、鈍感系主人公気質ですか……。」
「何回か、会ってますよ……。」
「会うたびに、死んだ魚の目になってましたけど……。」
「当時は、忙しくて……。覚えて無かった……。すまん!」
「良いんです……、分かってますから。」
「二人が、ずっと言ってましたからね……。」
「帰りが遅いとか、食事の支度の事とか、一緒にお風呂とか、夜の営みが少ないとか、浮気の疑いがどうのとか……。」
「そう、そう、まるっきり、妻の愚痴でしたね……。」
「どこまで話してるんだあいつ等……、と言うか最後の2つはなんだ?」
「帰って来なかった日とかあったんでしょ?」
「会社の飲み会とかで……。」
「ぐっ……。」
どこまで知ってるんだ、この二人は……。
って、何で!妻の親友に責められる俺って構図になってる!修羅場か!修羅場に発展するのか……!
「と、ここまでは、聞いています。」
「ですから、私達も藤堂ハーレムに、誘って貰えますか?」
「ぐはっ!何でそうなる!」
「私達だけ、除け者みたいじゃないですか……。」
「沼津さん、御厨さん、来栖さんも狙ってますよ……。」
「はい?」
「ああ、知りませんでしたか……。異世界組の女子会が在るの……。」
「その中で、やっぱり男子の話が出るんですけど、お兄さん、近藤先生、吉田さん、堀田さん、東条さん、高橋広司、本庄蒼真、鳴子蓮二、絹川瞬がいるでしょ……。」
「勇者王が入って無いぞ……。」
「あっ!ゴミが入る筈無いですよ……。」
「そうです。面倒事ばかり起こすじゃないですか……。」
「女子からは、敵認定されてますよ。」
「そんなのはどうでも良いですが……。精神的な頼りなさで1年の4人はパス!似たような感じで、変態の近藤先生と吉田さんもパスになるでしょ。」
「で、残った。お兄さん、堀田さん、東条さんなんですが。来栖さんの発言で堀田さんの極度の潔癖症が発覚しまして、パス!東条さんも格好良いんですけど、お兄さんの経済力と強さ、そして包容力と優しさ、何よりダークヒーローっぷりに魅かれたって事ですかね……。」
「消去法みたいですけど……、違いますからね。他の人が持っていない物を持ってるって事ですから……。」
「ダークヒーローってのはどうなの……。」
「何も考えずに、正義の為に戦うのがヒーローですよね。」
「お兄さん、正義の為に何でもするでしょ。」
「いやしないよ……。正義って概念が無いからな……。教国、王国から見れば、俺達は悪の秘密結社に見えるだろうし、ここの住民からは、救世主に見える事になるだろうな……。強いて言うなら、保身の為……。」
「ゼロだ!」
「お兄さん!ナイトメア作りましょう!」
やはり、デジャブする!
「いやいや!話跳び過ぎでしょ!」
「それじゃ戻しますね、私達を「ハーレム要員にして下さい……。」」
二人が頭を下げ、お願いしてくる……。
この話は、まだまだ続きそうだ……。
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