49.緑の部屋?
近藤にスピードスターの称号が、授けられ、皆が戻ってきたことで、裁判を再開する……。
「それでは、再開します。被告人の刑罰についてからですね……。」
「裁判長!宜しいでしょうか!」
やっと、近藤が動いた……。
「被告人、ロストニア王国第2王女クリシュナの、身柄を私に預けてもらえないだろうか……。」
王女が、縋るような目で近藤を見ている。
彩香さんと魔導通信で会話しながら進行する。
『彩香さん、良い感じだ!』
『そうね……。惚れてないにしろ、救世主みたいに見えるでしょうね。』
彩香さんが、近藤に問いかける。
「被告人は、多大な犯罪を犯しています。解放する訳には行きませんよ……。その事を分かっていての発言と思いますが、理由を聞いても宜しいですか。」
「はい、まず一つは、被告人本人が、勇者召喚のリスクを分かっていなかった事、そして、私は教育者として、若い世代を正しく導かなければならないと言う事です。それに、私は王女を『馬鹿、はやっ!』「言いたい事は分かりました」。」
近藤の言葉に、かぶせるように彩香さんが言葉を遮る……。
『ナイス彩香さん!』
『ああ、30童貞なのが分かるわ~。』
「それは、今後、被告人が犯罪を犯さない様に、近藤先生の方で教育を行うと言う事ですか……。」
「はい!」
「しかし、被告人はリスクを知らなかったとは言え、自ら率先して実行した、凶悪犯罪者ですよ。教育の最中に犯罪を犯す確率が高いと思われますが……。対処法は考えているのですか……?」
「それについては、制約により結『馬鹿か!』「分かりました。」。」
「強力な制約!奴隷契約で縛ると言う事ですね……。」
『彩香さん、グッジョブ!』
『なんなのよ、こいつ!』
『彩香さんこっちに回して……。』
「ですが、検察側が納得いかないでしょう。その辺りはどうですか?」
「そうですね。ただの犯罪奴隷であれば、それこそ、貴族に落とし物を届けただけで、犯罪奴隷にされますよ!良い事をして、犯罪奴隷にされた奴隷と同等に扱うのはどうかと思いますが……。」
「そっ、それは……。しかし、被告人は幼少期より、王国の特権教育を受け、間違った知識を植え付けられた、被害者でもあります。その所を猶予していただきたい。」
『あっ!近藤にしては良い所付いて来たな!』
『そうね!ついでに教国の事も暴露したら……。』
「裁判長!被告人に質問しても……。」
「それは、弁護人の発言に関係がありますか?」
「はい!もちろんです。」
「許可します。」
「被告人、クリシュナは、何処で誰から、どの様な教育を受けられましたか……。」
「はい……。ロストニア王国王城で、物心ついた時より家庭教師数名から、礼儀作法、魔術、信仰、歴史、算術、読み書き、杖術、社交等を学びました。」
「分かりました。それでは、魔術、信仰、歴史についてですが、この教師は、どのような方でしょう?」
「はい……。魔術は現宮廷魔術師、ロイド・レイ・ディーハルト様より教えていただきました。それと、信仰は王都レイシス教会在住の司教オマール様より、歴史についてはオマール様、ロイド様の他、様々です。」
「では、教国の教育も受けていると言う事ですか?」
「司教オマール様は、教国の首都にいる司教マルセロ様の実弟になりますし、元は教国の人間ですので、そう言う事になるかと思います。」
「質問は以上です。」
『何か分かった?』
『教国がクソって事がな……。』
「裁判長!今の質問で分かった事があります。」
「どうぞ、お話しください。」
「私の調査では、教国の司教マルセロが奴隷を量産しています。その弟、オマールにも繋がりがあると思われます。現に孤児院の子供達を暗殺者として
絶賛生産中です……。そして、被告人もその教育を受けているとなると、洗脳されている恐れがあり、自分の意思以外で、判断をしている可能性が捨てきれません。それに普通に考えれば、信仰教育とは道徳教育です!暗殺者が道徳を教えれるはずがありません。故に、被告人は物の良し悪しが判断できないとも取れます。ただし、既に犯罪を犯している事には変わりなく、加害者側の立場も、留意してほしいと思います。」
『マルセロって、大地さん達をあんな風にして、アサギを狙ったやつだ!』
『そうなの……。敵ね!』
『そして、オマールだが、暗殺者ギルドのトップだな。王国幹部との繋がりも濃厚だ!』
『敵だらけね……。』
「被告人が、自分で判断が出来なかった事は分かりました。」
「裁判長!それでは、私に再教育の機会を頂けますか?」
「教育の機会は与える事が出来るでしょう。ですが、自分で判断が出来ないものほど、怖い物は有りません……。それに、それだけでは刑罰にはなりませんから……。」
「それでしたら、私に案があります。」
「その案、聞かせて下さい。」
「隷属魔術による拘束は外せません。それと凶悪犯罪者と言うのも変わりません。しかし、洗脳されていた事実もあり、再教育を施さねばならないでしょう。そして、凶悪犯罪者と言えば、鉱山送りなんですが残念な事に、鉱山がありません。ですので、地球でも過酷な労働で知られる農奴として生涯従事させると言うのはどうでしょう。」
「なかなか良い案ね!」
「幸い、弁護人近藤は、農林部門の責任者でもあり、私の主人権限を委譲したいと思います。契約内容としては、主人の生活全般の世話、料理から下の世話、夜の営み、秘書業務、農作業の従事等を、期間は死ぬまででいかがですか?」
「それでは、その案で、協議したいと思います。弁護人はそれで良いですか?」
「はい、私としてはそこまで譲歩が引き出せた事が不思議に思っています。」
「それでは、被告人、何か言いたい事はありますか?」
「近藤さん、ありがとう……。」
おっ!クリシュナ落ちたのか?
『にぃ、甘い!』
『まだ、一時の気の迷い。』
『そうなのか!このままいけそうに見えるが。』
『先生、次第!』
『気持ちが、揺れている。』
『まあ、現状、近藤に憧れを抱いているだろうし、時間のも問題か……。』
俺達は、やっと一息つくことが、出来そうだ……。
『『にぃ、フラグ!』』
『えっ!』
『『『正臣さん!正臣さん!』』』
急に、クレア、レイラ、エストから連絡が来た!
何か、焦っている様子がうかがえる!
『どうした!』
『馬鹿が!そっちに向かった!』
『ノータリンが……。』
『お花畑が……。』
3人が3人とも別の表現をするが……。
『勇者王が見つかったのか?』
『キリフトスダンジョンで迷子になってたわよ……。』
『王女の裁判って言ったら、走ってそっちに向かっていったわ!』
『多分、面倒なこと始めようとすると思うの。』
『ああ、9割裁判終わったから、任せて置け……。お前達も、久々に王女と会ったらどうだ?』
『『『遠慮して置く!』』』
『殴りそうだし……ね。』
『『そう!そう!』』
『そうか……。それじゃ、屋敷にでも戻っていてくれ。後で顔出すから。』
『『『了解。』』』
「ふ~……。」
「どうしました。藤堂さん?」
「いや勇者王が、ここに来るって。」
「今さらですか?」
「今さら……。」
「………………。逃亡奴隷として吊し上げますか?」
サラッと、吉田くんが怖い事を言うが……………。
「よしっ!乗った!」
それじゃまず裁判長に報告と……。
『彩香さん!今から勇者王が、ここに来るから。一旦、王女の裁判は保留して、勇者王を奴隷の逃亡罪で吊し上げてくれ……。』
『了解したわ……。でも、入って来たら拘束はお願いね。』
『了解!』
「皆さん!これから、ここに突入してくるであろう、とある人物を吊し上げますので、協力してください。」
ドドドドドドドドッ!
ああ、足音が聞こえる……。
皆がドアの前から離れる……。
ドガッ!
観音開きの扉を蹴飛ばして、扉が開かれた……。
扉は盛大に破壊されてる……。
「お前ら何している!王女を放せ!」
イタイ!イタイ!イタイ!勇者王の頭がイタイ!
「確保!」
彩香さんの号令で、俺は勇者王の奴隷罰則を発動させる。
ビタンッ!
豪快に顔面から前のめりに崩れ落ちた。
麻痺しただけなんだが、勢いが付いていたからだろう。
動けなくなった勇者王を、被告人席に座らせる。
今回の検察側は吉田くんだ。
俺が弁護側に位置する。
彩香さんが開廷を宣言する。
「これより、お花畑勇者王事、借金奴隷、大場要の逃亡罪について裁判を行う。」
勇者王は?マークが頭の上についている。
「検察側、報告を……。」
「はい、昨日、昼に外交関係の護衛任務を終えてから、姿が見えなくなり、奴隷としての義務、定時報告を怠り、今の今まで逃げ回っていたと報告があります。借金の額が額なので、逃げてしまい踏み倒そうとしたのでは無いかと予想されます。」
「意義あり!裁判長!宜しいですか。」
「弁護人どうぞ……。」
「はい、お花畑勇者王は3歩も歩けば、何をするか忘れてしまう鳥頭です。多分、今現在も、自分の立場が分かっていないと思われます。そんな人間に私達と同じ裁判が当てはまるのでしょうか?」
「はい裁判長!宜しいですか!」
「検察官どうぞ!」
「弁護人の言ってる事は否定できません。ですので、分かるまで罰を与える事で知覚させるのはどうでしょう。」
「弁護側、何かありますか?」
「はい、検察官の意見では、お花畑は考える力が無いと聞こえますが?動物の真似事すらで出来ると思うのですか?」
「意義あり!」
「はい!検察官!」
「これは、考えてどうと言う事ではありません!美味しそうな物を前にぶら下げたら涎が出たとか、そう言う無意識化での訓練をさせるのです。取りあえずの目標として、お手、伏せ、待て、ハウスを覚えさせては如何かと……。」
「意義あり!」
「はい!弁護人!」
「彼は人間です!精神的に追い詰めてからで無いと、その効果が発揮されません!差し当たって、武装解除後、全ての職業、スキル、適性、加護を奪い、1月は光の当たらない所へ隔離する必要があると思います!」
「意義あり!」
「はい!監察官!」
「それでは時間が掛かり過ぎですし、出て来た時に使えるか甚だ疑問です!それでしたら、緑の部屋で、勝手に自殺して貰った方が誰の手も汚さずに済みます……。」
「裁判長!私の方でもう弁護する事はございません!その案で、譲歩したいと思います!」
「それでは、お花畑の裁判はこれで終了します。最後にお花畑!何か言い残す事はありますか?正臣くん、拘束解いて!」
顔の拘束を解くと、お花畑が喋り出す……。
「えっ!えっ!どう言う事?ドッキリ………………だよね……。」
「お花畑!奴隷の逃亡は、死刑に決まってるだろ……。もう裁判終了したし、刑の履行だけだな……。」
「大場くん、撲も残念だよ……。だけど、あれだけ皆に迷惑かけて反省しない君が悪いんだし、僕もここまでの譲歩しか出来なかった……。」
「それでは、お花畑の最後の言葉を聞いたので、しばらく牢に放り込んで下さい!」
俺は再び、お花畑を拘束し、使用人にお花畑を預ける……。
まあ、あいつの最後の言葉が、ドッキリだよね。でいいのだろうか?
1週間位、牢生活で反省して貰おう……。
邪魔ものも居なくなったし、王女の裁判を再開させる。
「それでは、裁判結果を読み上げます。ロストニア王国元第2王女、クリシュナは身分を農奴とし、主人近藤を、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
『それって、結婚の誓いじゃない?』
『そうよ!正臣くん、これに魔力の強力なの乗せて!』
『了解!有耶無耶の内に、結婚させてしまおうって事な……。』
すると、クリシュナが近藤に跪き、誓いを宣言する。
「私、クリシュナは、主人近藤丈志と、生涯を共にすることを誓います……。」
「それでは誓いのキスを……。」
「「はい?何で……。」」
近藤とクリシュナが、俺の方を見る……。
二人とも、顔を真っ赤にさせて、目を見開いている……。
「すまん!俺の隷属魔術はキスで、主従の絆を強固にするタイプなんだ……。」
と出任せを言う……。
『『あっ、それ!キ~ス!キ~ス!キ~ス!』』
琴音と鈴音が、俺の頭の中に魔力で通話してくる……、ちょっとうるさい!
「それじゃ、仕方ないね……。」
近藤が覚悟を決めたようだ……。
「うん……。」
クリシュナも答える……。
『『あっ、それ!ベロッチュ!ベロッチュ!ベロッチュ!』』
琴音と鈴音が、卑猥度を上げた……、うるさい!
なんか、とても初々しく2人が振れるだけのキスをする……。
俺の脳内では……。
『『あっ、それ!まな板ショー!まな板ショー!まな板ショー!』』
こいつらは、もう手遅れだ……。
俺は二人の双子妻を見て、嘆息する……。
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