03.婚約?
異世界2日目にして、正臣達は感動?の再会を果たしていた。
「お前達の疑問に、ズバッと答えよう。」
「どうして親父達が、ここにいる。親父達は、5年前の飛行機事故で死んだはずだ。ニュースにもなっていた。」
「もう5年になるのかぁ。そりゃ、琴音も鈴音も美人さんに成るわけだ。お前は……変わらないか……。」
その残念そうな顔は止めてほしい。
「その通り!。俺とコハク、2人とも死んでいる………はず?」
「それじゃ、目の前にいるお前たちは何者だ。」
「だから、お前の親、大賢者ラクトと大錬金術師コハクだと言ってるだろ。相変わらず、物覚えの悪い奴だな。」
「俺達の親は、大賢者や大錬金術師等の大それた職業じゃない、怪しい考古学者に人気アクセサリー職人だったぞ。」
「怪しいとは何だ、怪しいとは。お前が俺に対しどう思ってるか分かった。誤解しないで聞けよ……。異世界転移すると、職業に対し幾らか適応補正がかかるのは、知っているだろ。向こうでは大賢者、大錬金術師と言った職業がなかったから、それに準ずる職業になっただけだ。基本、中身は変わらんよ。そもそも、ステータスなんてこっちの世界でしか使えんしな。」
「何か、元々はこっちの世界の住人だった様に聞こえるんだが。」
「えっ!言ってなかったっけ。俺はこっちの世界の大賢者で、コハクは勇者召喚で呼ばれた、元勇者だぞ。わっはっはっは。」
「「「はぁ~っ!」」」
俺、琴音、鈴音が驚きの声を上げた。
「それじゃ、俺達が異世界人ハーフに聞こえるんだが。」
「異世界人ハーフとはうまい事よく言ったものだ。だがそれだと、いささか語弊がある。異世界人ハーフと呼べるのは正臣、お前だけだけだ。琴音と鈴音も異世界人ハーフで違いないんだが、実は琴音と鈴音は私達の本当の子供では無く、純粋な人族でもない。私達の大切な友人から預かり、養子として本当の子供以上に愛情を注いで来た。」
「「「はぁ~っ!」」」
俺、琴音、鈴音がまたしても驚きの声を上げた。先程と違うのは、隣にいる二人の目が赤くなって来ている。
今の話は、二人に取って重要な案件である、もちろん、俺に取ってでもある。さすがに、俺達と血の繋がりが無ったと聞けばショックであろう。
「なぁ、琴音、鈴音、俺と家族にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
そこで、言葉が途切れる事となる。
琴音の拳が俺のみぞおちに突き刺さっている。
「げほっ、げほっっ、ちょっ、おまっ、。」
拳を抜くと、二人が目の前に立っている。
「「そのプロポーズ、受けさせて頂きます。」」
ねっ。狙っていやがった……。あの赤い目は、涙目になっていたんじゃなくて、血の繋がりが無い事に対し、結婚できると知って興奮して血走っていたんだ。あそこで言葉が途切れると、プロポーズに聞こえなくもない。
「相変わらず過激ねぇ、あなた達。………正くん。」
今まで沈黙を、守っていた母に呼ばれる。
「良かったはね、こっちの世界に来てて、こっちでは、重婚が認められているからね。一夫多妻なんて、ざらにいるわよ。」
「許さん!、このくそ餓鬼が!俺の可愛い、琴音、鈴音が嫁に行くなんて許さん!。」
「あなたっ!ちょっとだ黙って貰えるかしら。」
母が親父を一睨みする。
「………ごっ、ごめんなさい。黙ります。」
懐かしいなぁ、この風景、よく見てたなぁ。まぁ、それどころじゃないんだが……。
「ねぇ、正くん、二人を守ってあげて、母さんからのお願い。………二人にもしもの事があったら………。分かるわよね………。」
今までもこれからも、二人の幸せを最優先で考えている。両親が死んだり、異世界に転移したり、もしもの事が起こっているんだが………。
「ああ、分かってる。」
「それじゃ、婚約成立ね。こっちの世界では、12歳から結婚が出来るけど、他にも勇者いるみたいだし、二人のために結婚は16歳になるまで保留にして置きましょう。琴音、鈴音も了解して。正くんも色々と我慢してね。私が召喚されたのも15歳の時でね。しつこいくらい、追っかけまわしてくるストーカーもどきの、30過ぎのおっさんが居たのを思い出すわ。ねぇ、あなたっ。」
「………………。」
母の一存で全てが決まっていく。こんなにも、乗っている母を止めるすべを誰も持っていない。ましてや、琴音と鈴音も乗り気の様だ。
「一応、婚約の証と言ってもすぐには、作れないかぁ。………そうだ、その形見の指輪、左の薬指にはめ直してくれる。あっ、その前にその指輪私の前に持ってきて。」
母が鼻歌まじりにその小さくなってる身体で、指輪に触っている絵は何とも微笑ましが、その身にまとっている魔力が極悪ともいえる量に見える。その小さい手で指輪に細工を施していく。ほんの数分で出来上がったようだ。さすが大錬金術師と言ったところか。
「テッテレ~テテテ、テッテレ~テテテ、テレテレテレテレテレテテテ・・・チャララン・たくさん上手に出来ました。デッデ・・・・・」
「モン○ンだ…。」
「モ○ハン……。」
「肉焼き気分で調整し終わるってどうなの。あれ幻の合金だよなぁ。」
「さすがわ、俺の嫁。すごいわ~。」
出来た指輪を、3つとも俺に渡してくる。
「さあ早く、二人に指輪をはめて上げて。ついでに、婚約の制約魔法かけとく?ほらっ、あなたっ。」
そして、二人の左手薬指にはめて上げた。二人は指輪をうっとり顔で眺めている。
「今、制約魔法無効の制御方法を代えたから、ON/OFF出来る様なってる。制約受け入れるときはOFFすれば受けることが出来るから、通常はONにすることを忘れないでね。外部からの制約魔法は弾くことが出来ても、一度受けた制約魔法は、その指輪では解除する事が出来ないからね。いつの間にか奴隷になってた何て事もあり得る世界だから、充分注意してね。」
「母さん………。もしかして、勇者召喚の事を言ってるのか?」
「まあ、その通りなんだけど、解除するの手間なのよね。」
「やはり、そうか、何かあるとは思っていたんだけど、奴隷契約かぁ~。」
嫌な予感は、当たっていた様だ。緩い制約だとは思うが橘先輩達が心配だ、俺達の騒ぎがあったにもかかわらず、まだ、王城にいるのも納得いく奴隷契約によって、支配されてるのだろう。
うなだれている、俺に対し母が話を戻す。せっかくのお祝いごとに対し水を差したくないのであろう。
「その話は後でするとして、まずは、婚約おめでとう、琴音、鈴音、それと正くん。今日は盛大にお祝いしましょう。あなた達、いくらお金持ってる。それと、今ここはどこの国なの、こう見えても勇者時代は、「美食勇者」「食の探究者」とも呼ばれ各地の美味しいものを網羅してたのよ。」
母はこの世界で食い道楽をしていたらしい。勇者特権でさぞかし美味しい物を食べたのだろう。さっきの食事では、俺にも思う所はある。
「この国は、ロストニア王国と呼ぶらしい。そもそも、その体で食事とかできるのか。」
今の両親の体は、薄緑色に発光しており、目を凝らすと向こうの壁が透けて見えるのである。
「ロッ、ロストニアなの……。この国は、調味料が壊滅的に発達して無いの、国交も質素で有名な宗教国家<聖レイニール教国>しか無いはずよ。プライドばかり高くて戦争ばかりしてるし、そのため、よく勇者召喚もしてる………。」
いったん話を区切り、ジト目で親父を見る。
「それとあなたっ!、どうして食事が出来ない身体で魔石に封印してるのよ。」
「その事は納得したはずだろ。地球の魔素があまりにも少なすぎる。遺跡周って、やっとの思いで意識の転写まで漕ぎ着けたんだ。こっちの世界に来てるんだから、大量の魔素を使ってホムンクルスの体を作って意識の転写を行えば済むだろ。」
「えっ~~~。それだと時間掛かるでしょ。せっかくの婚約パーティ―よ、今しないでいつするの。」
「今でしょ。」
「「「「………………。」」」」
みんなの視線が親父に突き刺さる。その一言が言いたかっただけのようだ。親父を無視し、母が話し出す。
「あなた達は、いつこっちの世界に召喚されたの?宿屋にい居るってことは、そこそこ冒険して来たのでしょ。そもそも「美食勇者」「食の探究者」と呼ばれた私の息子がロストニアに居ること事態、異常なことなのよ。」
俺の母はこんなにも、食いしん坊キャラだったのだと納得の行くような、行かないような説明とともに、俺達の状況について、質問される。校門前での出来事から今に至るまでの事を話す。
「勇者召喚にあったのは昨日の昼過ぎくらい、母さん達の墓参りに行こうと、琴音、鈴音を学校まで迎えに行った時、校門前に現れた白い霧に、橘先輩が飲み込まれるのが見えたんだ。
それを助けようと、俺達3人が向かった所、一緒に巻き込まれたって感じかな。
勇者召喚で連れてこられたのは俺達を含め、23人、先生が2人と18人の生徒達。連れて来られてから、覚醒の魔石と呼ばれていた物に触らせられ、その時に制約魔法を弾いたんだと思う。
おかげで、助かったよ母さん、ありがとう。」
母は、はにかんで目をそらす。
「いいのよ。あなた達は私達の子供なんだから、大いに頼りなさい。」
「ああ、それでも、ありがとう。………話の方戻すね、その後は謁見の間で王にクレームを付け慰謝料請求したら、王国と一悶着あって追い出されてここにいる、隣の食堂で指輪の事に気付き、検証してたら母さん達が出てきたんだ。概要としてはこんな所かな。」
「昨日の今日かぁ~。それじゃ、こっちの世界の事はまだ何も知らないのね。慰謝料は貰ったのよね?」
「金貨3枚貰った、今は使ったから残り、金貨2枚、銀貨1枚、大銅貨4枚、銅貨5枚ある。」
「随分、王国はあなた達の事を舐めてる様ね、金貨3枚って。」
母の目が据っている。俺達の為に、怒っているのは嬉しいんだが、非常に怖い………。
「こうなったら王国相手に戦争を仕掛けましょう。あなたっ!、いつまでそんなに拗ねてるのよ。さっきのは、一方的にあなたが悪いんだから。拗ねるほどの価値すらないわ。
挽回したかったら、さっさと王国に対しての宣戦布告してきなさい。こんな勇者召喚に頼ってばかりの弱小国なんて無い方がこの世界のためよ。
機は熟した蹂躙を開始する、婚約祝いに特大の花火を上げるわよ。」
王城に向けて指さす姿が様になっている。母は本気で城を落とすつもりのようだ、今ここに新たなる魔王が復活した様だ。
意を決っし、目の前の魔王に対して口を開く。
「かっ、母さん。ちょっ、ちょっと待ってくれ、王城には俺達の知り合い、勇者が捕まっているんだ。派手な事は控えてくれ。」
声が震える、どんだけプレッシャーを放っているんだ。
「あら、偉くなったものね。私に対して意見するなんて、余程大切な人が居るのね。」
「ああ、5年前に母さん達が居なくなって落ち込んでいる俺達を、親身になって世話してくれた恩人なんだ。琴音、鈴音も姉のように慕っている。」
「そうねぇ、派手な事して、巻き込んじゃっても悪いわね、………分かったわ。その恩人の名前はなんていうの?」
「母さん、分かってくれたんだ。その人は橘彩香。俺達の恩人だ。」
「橘彩香さんって、隣の地区にあった神社の、娘さんの名前と同じじゃない?」
「知っているの?」
「ええ、魔素集めに最初に行った所ね。境内を案内してくれたわ。なかなかしっかりした娘で、当時、8歳か9歳位だったかしら、正くんのお嫁さんに欲しいと思ったわね。」
「ちょ、ちょっと母さん、何言ってるんだ。」
突拍子もない事を言い始めている母に対し、今では俺の婚約者になった琴音、鈴音も2人で顔を見合わせ、少し鼻息を荒くしながら、頷きあってるのいるのが見える。
この2人も、母の王都蹂躙作戦に乗ってしまっている。
「それじゃ、その恩人をこちらの陣営に引き込む事にしましょう。まずは、彩香ちゃんの拉致………。もとい、救出を行い、救出後、この辺り一帯を1週間程、火の海に替えるって事で問題ないわよね。」
あぁ~思い出した。この人はこういう性格だった。乗りで動こうとする問題児だった。
「問題ありすぎだろっ!。なんだその火の七日間的発想はっ!」
「えぇ~~~。やって見たいじゃない。こう「薙ぎ払えっ!」ってな感じに。」
「「見ろ!、人がまるでゴミのようだ。」」
「二人もやらんでいいっ!救出作戦はいいとして、そもそも、昨日こっちに来たばかりで情報整理も出来てないんだ。橘先輩には、王城での情報取集を頼んでいる。連絡もつくようには、してもらっているはずだ。当面は金策と情報収集するつもりで、ここにいる。」
3人の暴走を止める様に、話を最初まで戻すことにして、母達に一番聞きたかった事を訪ねる。
「向こうの世界に、戻れるのか?」