35.地図?
早朝、鍛錬を早めに切り上げ、航空写真、撮影に取り掛かる。
屋敷傍に発着場を作り、昨晩、作成した飛空艇と写真機を取り出した。
「何か本格的ね、魔力推進器に、油圧式調整器とか付いてるし振動抑え乗り心地まで考えてる。水平器とかメーターとかって、一晩で作れるものなのね……。浮力取るのはヘリウムか……。へぇ~、船底のバラストで上昇下降する仕組みね……。って、これチタンか何か?」
「彩香さん、これはガンダ〇ウム合金を目指した結果……、チタン、アルミ、その他金属の合金の筈なんだけど、その他金属ってなにか分からないから、オリハルコンとミスリル使ってみた……。お蔭で魔力の通りが良くて、全体に光学迷彩を展開できる……。」
「正臣くん……、やっちゃったね……。」
「すいません、昨日母さんと二人で作っていたら、止める人居なかったので、やり過ぎてしまいました。後、これが8艇、地下に眠ってます……。」
「いつの間にか、航空戦力が充実してるとは……。」
そう、浮力部全長10m、搭乗部は立て3.5m幅2m高さ2mの小型飛空船の形をしている。左右に魔力推進器を装備、船体に光学迷彩、各種結界も発動可能で空気抵抗を減らした上で、進むことを可能としている。
「にぃ、これで無双出来る。」
「転移魔法陣も付ける。」
「あっ、そうか!これに、転移魔法陣、付ければ、各拠点作成が楽に出来るな……。」
「正臣くん!まずは、この町の写真と周辺の調査、出来れば、国を作るであろう土地の地図作成、お願い。」
「何か、仕事増えてないか?」
「そりゃそうでしょ、こんな物作ったんだから、活用しないとね!それに、写真機も言っていた物とは別物になってるわね……。」
「正臣さん、お願いします。地図があれば、土地開発も効率的です。」
彩香さんと安奈が、こぞって頼んでくる。
「にぃ、今日はダンジョン攻略休む。」
「製図機とも連動させる。」
「それは良い案だな。とりあえず、町の開発の為の写真を取ってこよう。その後で、皆で戦奴の選定、その間、俺が母さんと連動装置作ってくるか?」
「正臣くん、出来れば上下水道完備した町にしたいわ。昨日、町の中歩いたけど、衛生状態、酷い所結構あったわよ……。」
「了解した。俺も気になってた。昨日、会議も大雑把、過ぎたからな。後で、みんな集めて置いてくれ。企画会議する。」
「分かったわ。」
そう言い、俺、琴音、鈴音で飛空艇に乗り込んだ。
バラストに使っている水を、分解し重量を軽くすると、飛空艇が上昇していった……。下降する時は空気中からまた水分を集めれば重量が増し下降するって事だ。魔力推進器は、風魔術で風を発生させ移動するようにいる。
一応、騒ぎになると悪いので光学迷彩を発動し、ジストの町、上空に向かう。
大体、町を16分割して写真に収める。そして、また上昇し、1枚の写真に収め、周りを適当に区分けしながら、撮影して行く。
1時間くらい、そんな作業をしていただろうか、周辺の地図は大体、完成した。
「よしっ!一旦、戻ろう。」
「う~!単純作業!」
「冒険っぽく無い!」
「ラピュタは何処!」
「新大陸は!」
「今の俺達は、測量技師と同じ!冒険は後でな!」
そう言い聞かせ、屋敷に戻り朝食を終えると、会議堂へ向かった。
会議室には皆、集まっているようで、先程の写真を中央に置く。
「では、皆、会議を行なう!って言っても、写真を取って来たから、活用してくれって話だが……。昨日、皆に担当の部署を経験して貰った、穴がいっぱいある事に気付いたと思う。安奈の方にも多数、報告が上がっている。」
安奈から、昨日まとめられた報告書を受け取る。
「中でも多かったのは、仕事場所に関する物、建設に関する報告だ……。そこで、この町の都市設計を考えたいと思う……。それでは、私が議長を務め進める。何か意見のある人はいないか?」
「はいっ!上下水道が欲しいです。昨日、町を歩いたのですが、一概にも綺麗とは言い難い物でした……。」
「吉田くんの言いたい事は、皆も思った事でしょう……。日本と比べてしまえば、どこに行っても汚い……。まずは上下水道の整備でいいか?良いと思う人は挙手してくれ。」
全員の手が、挙がる……。
「それでは賛成多数で可決する。それでは、他に意見がある人?」
「はい!軍部からですが。戦闘奴隷の中に幼い子供や女性がいます。戦闘はもちろん、土木工事に送り出すのはどうかと思いました。」
「そうだな。道徳的に酷使するのは心苦しいな。子供は若草寮に、女性に魔術適性があれば、魔術教育後、土木工事のサポート、もしくは適性の無い者と一緒に若草寮、治療院での手伝い。現存の広めの建物で、若草寮、治療院は直ぐにでも開く事にしよう。これでどうだ?」
「そうですね、私達も早めに治療院の経営を始められれば、看護師の教育とかも出来て助かります。」
「若草寮も同じです。仕事の仕方も何も分からないですから、試行錯誤の繰り返しになると思います。その経験が新しい建物に反映されればいいと思います。そして、少ない人数からだと住民登録の予行練習にも、なりますからね。」
「東条くんも、それでいいかな?」
「ちょっと待って!教養のある人は、こっちにも回してほしいわ。特に読み書きできる人、男女問わないわ。」
「そうすると、教育部門と……、財務、総務も必要だな。農業経験者は、農業部門へと……。人事に関しては、会議が終わったら、戦奴の所へ連れていくから、皆で選んでくれ……。ただし、犯罪奴隷は最初から、省かせてもらうぞ!」
皆に納得して貰い、話を元に戻す事にする。
「それで、都市設計なんだが、俺の案を聞いて貰っていいか?その上で意見貰った方が、良いかも知れない。」
無言で、皆が頷く……。ああ、何か日本っぽい反応だ……。
「まずは、区画分けをしたい。主に、住宅区、商業区、産業区、公共区、外部区、軍事区って具合だ。まずは、町の写真を見てくれ……。」
皆に写真を回し見てもらう。投影機とかあれば便利だな……。
「今の町は、大通りである程度、区画整備しているが。裏通りに入ると乱雑とした建物になっている。そして、この町の周りは手が加わっていない。そこで、外壁を取り除き、会議堂より右手前側を住宅地にし、現在の入り口から右側を商業区、産業区の順に置きたい。そして左手なのだが、順に公共区、外部区とし、教会は教国運営の為、外部と認定する。そして、会議堂を挟んで左右後方は軍部管轄でどうだろう?」
「言葉だけだと分かりづらいですね。でも、町を拡張するのは、分かりました。それと、外壁外側の更地から工事が行えるので、上下水道の設置も容易ですね。」
「まあ、今のままだと、限界があるからな。移転も考えてはいたが、時間が掛かり過ぎる。」
「外部の人間から不満でないでしょうか?」
「出るかもしれないが……、自国の住民を優遇するのは、当たり前の事だろ。その為の住民登録だからな。」
「公共区には具体的に、どんな物が建ちますか?」
「俺の案としては、病院、学校、若草寮、後は、各種ギルドだな。」
「産業区って、言うのは何ですか?」
「倉庫と工場なんか、作れればいいかと思うが、まだこれと言った産業が無いから、何とも言い難い。他に質問は?」
「下水の処理は、どうしましょう?」
「浄化魔術を、付与した魔石を使う。」
「待って下さい、硝石の生成はしないんですか?」
「火薬か……。魔術があるから、特に必要としないんだよな……、ダイナマイト作るにしても、穴掘るなら土魔術の方速いし安全だ……、銃器にしたって、銃身作って、魔術で爆発起こせば同じことが出来る。しいて言うなら、花火が見たいくらいか?それに、地球の危険な知識は持ち込みたくないしな。」
「そうですか……。」
「まあ、気を落とすな。町中の土を起こせば出て来るさ。こんなに汚いんだからな。」
「はい!」
銃に憧れを持つのはいいが、マネされたら困るんだよな……。
「すいません、宜しいですか?」
「はい、どうぞ。」
「町の地面は、コンクリートか何かで作るのですか?」
「そうだな、コンクリートが良いな……?排水口も付けないと駄目だな……。彩香さん、セメントの材料分かる?」
「確か、珪砂、石灰石、粘土、金属粉だったかな?後は……、石膏を少しだったと思う。」
「何とかなりそうだな……。と言う事で、コンクリートにしよう。後は、魔術でなんとでもなる。他には?」
「上水道はどうしますか?」
「魔導具を取り付けてはどうだろう。水が生成できれば良いだろ?定期的に魔力込める仕事とかも、斡旋出来そうだしな。」
「区画を分ける意味は有るんですか?」
「そうだな……、産業、商業の発展効率化、貧民街の廃止、犯罪の抑制、土地の効率利用かな?」
「了解です。」
「他に何かないか…………。無い様なら、この案で行きたいと思う。作って行く上で、疑問や、提案などがあったら、随時、募集するんで言ってくれ。」
「おおむね、藤堂さんの案で良いと思います。」
「それじゃ、人員確保に行こうか……。」
そして、皆で戦奴の所へ向かう事にした。
戦奴の中には、元支配層で教育を受けて知識を有する者もおり、即戦力として期待が持てる者など、多様性に富んでいた。
まずは、2000人からなる戦奴の選別から行う事にして、犯罪奴隷を除けた。
約3割の600人近くが犯罪奴隷となっており、貧困に苦しんで、止む無く盗みを働いた等の者もいたが、犯罪は犯罪である。
しばらく、奴隷のままでいてもらう事にした。
敗戦奴隷、攫われてきた奴隷、借金奴隷、他種族だからって理由だけで奴隷になった者が多数で、それと同列に扱いたくないって言うのもある。
借金奴隷も、大多数が教会の回復魔術で、借金を背負わされていた……。
人々を助けるのが、教会の教義じゃないのかよ……等と、思いながら選別は続いて行く。
まずは、12歳以下を若草寮に入れ、女性達の中から内務など諸作業をする、有志を募る。
そして知識層を管理として置き、魔術適性を見て各業種ごとに配備して行く。
そんな流れでの選別を、彩香さんと安奈に任せ、俺、琴音、鈴音は母さんに地図作成の助力を貰うべく、屋敷地下に戻って行った。
「母さん、世界地図作りたいんだが、製図機との連動とかできないか?」
「出来るわよ。って言うか、私も昔作ったけど、多分、軍事機密とかで、王国が隠し持ってると思うわ。当時は飛空艇、無かったから、多少、製図機の方弄らないと駄目ね……。」
「作った事あるのか……。150年経って、出回っていないところ見ると、本当に発展に消極的なんだな、王国は……。」
「だから駄目なのよ、人口も少ないだろうし……。教国の言いなりで、経済も発展していない……。で、食事が拙いと来ている……。早くカレーが食べたいわ。米も作るんでしょ。大豆も、もう直ぐ手に入りそうね……。」
「大豆も、頼んでいる……。味噌、醤油が手に入れば、安定した食事が出来るだろう……。母さん、もしかして植物系ダンジョンで、種子とか入手できるんじゃないか?」
「……出来るわね。大森林の手前側のダンジョンがそうね。」
「そうだな……。ダラスダンジョン攻略したら、次にそこに行こうかな……。」
「良いんじゃないかしら……、食材が増えるなら行くべきだわ。」
「まあ、それは良いとして、製図機の改良お願いするよ。」
「了解、とりあえず製図機、出しなさい。」
俺は、製図機を出し、母さんに預けた。
「改良するのは、記録媒体の魔石の方よ……。新しく作った方が早いわね。」
そう言うと、新たに魔石とミスリルを取り出し、作り始めて行った。
「テッテレ~テテテ、テッテレ~テテテ、テレテレテレテレテレテテテ・・・チャララン・たくさん上手に出来ました。デッデ・・・・・」
またもや、一瞬で魔道具が出来上がった。
「これは、撮影機の様な物で、上空より撮影した物を、魔石が記録するわ。そして、これが投影機!小型のテレビ見たいだけど、ここに映し出さされている物を、製図機で地図に書き出すって訳。一応は、魔素の変化の記録だから、縮尺何かはこの投影機で変えれるわ。書き出したい所だけ、書き出す事も可能ね。」
「映画とかも取れそうだが……。」
「無音映画ならいけるかな……?録音機能は付けていないわ……。欲しいならそれ用に作るけど。」
「そのうち、頼むよ。元映研部員もいるようだし、預けておけば何か作るかも知れない。」
「分かったわ、時間見て作って置くわね。今日は、ダンジョン潜らないんでしょ?」
「そのつもり。今日は飛空艇で、地図の作製だ……。」
「そう、ダンジョン用のゴーレムボディ、さっき作り終えたから使ってみたかったんだけど……。」
さすがは、大錬金術師、仕事が早い、身長150cm、小柄なフルオリハルコンボディーに、魔道集積路と魔素吸収装置を積み、魔力伝達を効率化していた。魔力切れが起こる事はまずないだろう……。
これで、外套を羽織れば、仮面を付けているが、フルプレートの冒険者と言っても分からないだろう。
「早く終わったら、誘いに来るよ……。」
多分、このゴーレムは最悪の破壊神に、取って代わる物だと分かってはいるが……。
マニア心をくすぐる、そのフォルムに、動いている姿が見たくてたまらない……。
「にぃ、これヤバイ!」
「絶対、武器換装する。」
「お前達も、そう思うか?」
「歩く火薬庫もあり得る。」
「フルアーマーもある。」
「飛行形態ってのはどうだ……。光の翼とか」
「ナントカ粒子的な奴かも……。」
「赤くなる……。」
「それにしても…………。擬人化ってのは、どうなんだ?」
「「ギルティ―!」」
「それと、親父用ゴーレムが、変形ロボそのままなんだが、ちっちゃい玩具にしか見えないぞ。トレーラ―ヘッドだよな、あれ!」
「だってしょうが無いじゃない。変形して人サイズにしたら、子供用の乗り物、見たくなっちゃたんだから……。」
「「あれに、トレーラー付けてダンジョン走破。」」
「恥ずかしいだろ!……で、親父は何してるんだ?」
「地球での研究の成果を試すと言って、引きこもってるわよ……。何か色々作ってる様だけど……。」
「静かでいいな……。」
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俺達は、地下を後にし、飛空艇で地図作成に向かった。