31.帰還?
ダンジョンの町ダラス、近郊の森
勇者がダラスダンジョン突入してから、約1日半、夜が明けようとしていた……。
よしっ!
「それじゃ、皆、ダンジョンから脱出したか?点呼!各チームリーダー報告お願いします。」
「新生徒会チーム4名異常ありません。」
「元生徒会チーム3名以上ありません。」
「勇者王チーム2名、長谷川いません。」
「1年男子チーム5名異常ありません。」
「1年女子チーム5名異常ありません。」
「藤堂家3名+ノットくんで以上だな。長谷川は、拘束を解きダンジョンに置いて来た、皆と顔を会せたくないそうだ。」
「まあ、あんな事した後じゃ……。」
「勇者王、人の事、言えないだろ?まあ、それはもういい、これからだ!勇者王チームは、元生徒会チームに吸収合併、勇者王のリーダー権限を剥奪、人盾とする。勇者王、皆を守ってやれ。」
「はっ、はい!」
「そして、これから山越えをして、キリフトスダンジョンを目指す。ノットくん道案内できるか?」
「無理です。山越えなんてした事無い……。」
「ノットくん……。それじゃ、魔獣の囮にしか使えないよ?」
「囮は嫌です。」
あれ?敬語になってる……?もしかして……。
「ダンジョン宿営地で、BBQが待ってるんだが……。そうか、出来ないか……?」
「善処させていただきます。」
うん、確定だな……。餌付けされてる……。
「皆!とりあえず、山に登ろう。そこで、簡易の拠点を作る。出来れば、頂上付近に置きたい……が、皆の体調が優先だ!調子の悪い者が居れば、無理せず言ってくれ!我々、日本人は我慢する傾向にある、周りの者も、気付いたら報告する様に!各リーダーは、特に目を光らせてくれ。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」」」」」」」」
俺とノットくんを先頭に、2列縦隊で、山頂を目指す。戦闘は俺が索敵をこなし、最後尾は琴音と鈴音が、しんがりを務め索敵をする。その前には彩香さんが俺との連絡役としている。
1時間ほど、歩いただろうか……。
『正臣くん、右後方70m、魔獣22!囲むような動きをしてるって。』
『了解!指揮官いるな!』
「皆、敵だ!敵は包囲網を敷いてきている。前衛の出来る者で円陣を組む、後衛は中に入りサポート!敵は魔獣、生き物だゴーレムと違い、血と体液が飛び散る。残酷な光景を見る事になるだろう……。だが、躊躇すればそれが自分になる。迷ってる暇はない、心して迎撃せよ!」
俺達は円陣を、組み迎撃の態勢を取った。ノットくんが陣の前でウロウロしている、自分の立場が分からない様だ……。
「真勇者神様は、陣の中央で大人しくして下さい!」
「はい?」
「冗談だ、ノットくんが一番弱い、黙って陣の中に入っていろ!」
「すいません……。足引っ張ってしまって。」
「早くしろっ!……来るぞっ!皆、迎撃!」
魔獣は、狼……シルバーウルフ2体、他ダーク、レッド、ブルーウルフ20体だ。
「ダークC、レッドD、ブルーE、そして、シルバ―ウルフは、Bランク相当だ!俺、琴音、鈴音で遊撃に出る!皆は陣の維持をしてくれ!」
そして、吉田くんに俺が抜けた陣の穴埋めを頼み、遊撃に出た。シルバーウルフが後ろで指揮している筈。
まずは頭を潰す、生徒達でも出来なくはないが、時間が掛かる。
俺は、索敵しシルバーウルフの前に出る、もう一体は、琴音と鈴音が対処してくれている。
武装は六尺棒、目の前で振ると、前足で攻撃してくる。それを躱し、しばらく煽っていると、噛み殺そうと跳びかかって来た。それこそ思うつぼだ……。
アブレシブジェットで頭から真っ二つにした。琴音と鈴音は2人掛で相手していた為、既に決着しており、他の魔獣駆除に走っていた。
その後、俺も魔獣を駆除して周り、すぐさま決着がついた。
「皆さん、怪我はないですか……!」
山城さんが、被害確認を行っていた。報告によると、ノットくんが魔獣にビビッて、転んで手を切ったくらいだった……。ノットくんに回復魔術を掛ける。
「ノットくん、これは貸だからな……。」
「はいっ!ご迷惑おかけします……。」
「それじゃ、出発するが、皆は大丈夫か!無理するなよ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「はいっ!大丈夫です。」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「あと少しで森を出る。そこから、頂上が見えるぞ!もう一息だ!」
そして、隊列を組み歩き始める……。
しばらくして、森を抜ける。
「ノットくん、初めての山越えはどうだい?」
「ここまで上がってくる人なんて皆無ですよ……。向こうに見える、山には飛竜とかもいますし、魔獣も多く、余り山に近づきません……。」
「その情報は有用だな。山から攻めれば、ロストニア王国は直ぐ滅ぶぞ……。」
「そうかもしれません。そんな事態は想定してませんし……。」
「まあ、その前に転移魔法陣で、送り込んだ方が速いからな。」
「転移魔法陣なんて、それこそ想定していませんよ。そんな、古代魔術。」
そんな、事を話しながら気楽に上って行く。
森とは違い視界が広がった為、索敵が容易になっており、皆の緊張も和らいでいる。
そして、頂上に到着した。
頂上からは、海まで見渡すことが出来、水平線が丸みを帯びているのが分かった。
「ノットくん、この世界は球状なんだよ。」
「はっ!またまた御冗談を、そんな筈無いでしょう、地面は平らですよ。」
「それじゃあ、見てみたまえ。あの水平線を……。」
そう言って、ノットくんに海を見るように促す。
「どうだい、水平線が丸くなっているのが分かるだろ……。」
「そう見えます……。でも海の向こうには滝があるって……。」
「誰から聞いたか分からないが、嘘を教えられたんだね。発信元は教国あたりか?」
「何で知っているんです。王国の教本は、教国で作られています。」
「あっははは~、教国も良くやるよ。嘘で塗り固められた国だな、まったく……。」
そんな話をしていると、全員がたどり着いた様だ。
琴音と鈴音が近づいて来た。
「「藤堂領よ!私は帰ってきた!」」
「は~い、二人とも俺達の国が出来る土地だからね。核兵器使って、破壊してはダメだからね!」
「「は~い!」」
「それじゃここに、拠点を作るから、土適性持ってる人は集まって!地面掘って部屋作るよ……。」
俺、琴音、鈴音、彩香さん、他7名が集まった。まずは、俺が手本を見せ、王国で習った魔術を払拭する。
皆、日本人だけあって、理解力が早い。
外野で見ていた人達も、王国で習った魔術とは違うやり方に驚き、自分の適性魔術でいろいろと試していた。
皆で作った為、偉い短時間で拠点があらまし出来。俺が錬金で補強を行ない、扉を取り付ける。8部屋の他に俺のこだわりとして、ヒノキ風呂を2つ作成、水と火の適性持ちに、魔石への付与を教えて、男女別に風呂場に取り付け完成した。
「さて、皆、拠点も完成した。ここでひとまず休んでくれ、風呂の準備もしている。覗きは奴隷確定だからしない様にな……。振りじゃ無いぞ……。琴音、鈴音、女性陣が入浴中は交代で索敵、安心させてくれ。」
「ちっ!あの二人が歩哨とは……。」
「は~い、そこ!勇者王!お前は、契約で居場所が丸分かりだっ!それに、覗き行こうとしただけで、罰則発動するぞ……。」
勇者王は地面に手を付き絶望に浸っている。
「そんな~……。それじゃ、俺は何のために生きるんですかっ!」
「知らね~よ!借金返済の為だよ!」
勇者王は放置し、俺達は風呂と食事の二手に分かれ、休息を取る……。
異世界に来てから、皆、気が張ってたのだろう。
風呂から上がった顔が、高校生らしい幼さが出ている……。
「ここには、気兼ねせずに、話せる仲間しかいないからな……。……ノットくんが居たか……。」
俺は、食堂でカレーを作り、来た人から、カレーを提供していた。料理スキルはもっていないが、この位なら、日本でも作っていた、問題無い。
「藤堂さんは、料理も出来るんですね?」
山城さんが、話しかけて来た……。どうやら、最初の食事班らしい……。
「知ってると思うけど、俺達、日本じゃ3人暮らしだったから、これ位はな……。」
「藤堂さんは、覚えて無いかも知れないけど、私、中学1年の時、ほぼ毎日、藤堂さんと会っていたんですよ。」
「はいっ?そうなの……?ごめんっ……。覚えてない……。」
「まあ、あれで覚えてろって方が、難しいですからね。」
「どこで、あったんだ?それも毎日って……。」
「藤堂さん、3年の時、図書委員だったでしょ。毎日、受付カウンターで本を読んでいたのを、覚えていますよ。」
「あっ!そう言えば、図書カードに良く書かれてあった名前って、山城さんなのか?読む本、読む本に同じ名前があったから気にはなってたんだ。確か眼鏡かけてて、もっと地味な感じだったと思ったが……?でも、随分美人になったもんだな、見違えたよ……。」
「びっ、美人って……。」
顔を赤くして、右手で顔を扇いでいる。
「それに頼り甲斐がある。」
「これは、藤堂さんの影響です……。前に、藤堂さんが同級生に前生徒会長の事、話していたの聞いてた事があるんです。今さらですが、すいません。盗み聞いてました……。今思うと、橘先生の事、話してたんだと思います。その話に出て来た生徒会長がかっこよくて、つい、高校デビューしちゃって、今に至ります……。」
「わっははは~。憧れちゃったんだね!でも本当に、いい意味で変わったね。美人で格好良くて、冷静で……。彩香さんの若い頃にそっくりだな、惚れちゃいそうだよ!」
「誰が年寄ですって!」
後から、彩香さんが近づいていた……。
「何を笑っているかと思えば……。人を年寄り扱いですか!」
「ちっ、違うよ彩香さん。彩香さんの魅力が完成して来たって事だよ。」
「そうよね、まだ、22歳だし、姉さん女房だし、正臣くんは私の魅力にメロメロよね?」
「当たり前ですよ……。それに、山城さんも……。って、あれ?」
山城さんを見ると俯いて、ぶつぶつ言ってる……。
「美人……。格好良……。冷静……。惚れるって…………………っ。うふっ!」
「……正臣くん、……また?」
やっぱり、そう思いますよね……。
「俺、彩香さんとイチャラブ!しか、してないいんだけど……。」
「そうには見えないわよ……。」
さっきまで、山城さんと、話していた内容を教える。
「実はですね、山城さんと中学の時の話してて、俺の影響で、彩香さんに憧れて、生徒会長したらしいんですけど……。褒めたらこんな感じに……。」
「それって、正臣くんの、好みの女性に成りたかったんじゃないの……。って、自分で言ってて恥ずかしくなって来たわ……。」
「つまり、それって、俺の事が好きだったと……。」
「多分ね……。」
「でも、それだと俺が彩香さんの事を、好きだったのも知っていたって事になるんじゃ……。」
「そうね……。本人に、聞いてみようか。」
そう言うと、彩香さんは、惚けてる山城さんに声を掛ける。
「山城さん!あなた!今も正臣くんの事、好き?」
「はいっ?なっ、何の事でしゅ……。」
「う~ん?それじゃ、安奈ちゃんは正臣先輩が好きですか?」
「でも、橘先生がいるし……。正臣先輩とお似合いだし、正臣先輩が橘先生を好きな理由もわかるし、私では橘先生に勝てませんから……、そっとして置いて貰えると、助かります……。」
「安奈ちゃん、重婚の事は教えているよね?安奈ちゃんが作るんじゃなくて、入ればいいのよ。丸く収まると思うよ……。」
「正臣先輩と結婚……。」
山城さんがチラッとこっちを見る。
「既に、正臣くんは私を含めて11人と婚約してるわ。山城さんが、それを受け入れるならって条件は付くけどね。」
「じゅ、11人……。私、12人目……。」
山城さんは、俯き考える。
「独り占めは出来ないけど、好きな人と、一緒になれるって考えると、悪くないわよ。正臣くんなら、全員、大切にしてくれるしね!」
「彩香さん……。琴音と鈴音の影響、受けすぎてないか?」
「否定しないわ……。私も正臣くんの大奥に、付き合うつもりだしね……。」
「男性陣からは、不評を買いそうだよ……。」
顔を上げ、山城さんが話す。
「わっ、私も、正臣先輩と一緒になりたい!日本では諦めてたけど、異世界だと問題ないんでしょ?私、正臣先輩の事、ずっと好きでした。……ので……、出来れば……、その……、貰って……、いただけたら……と……。」
「ふぅ~。了解した。これからも、よろしく頼むよ、安奈ちゃん……。」
「不束者ですが、よろしくお願いします。」
また1人、俺の嫁が出来た……、大体1日1人のペースで増えている……、最終的に何人になるのか……?
俺は、食堂を後にし、風呂へ向かった……。
少し俺も、ゆっくりする事にしよう……。
風呂に入りながら考える……。
ああ、ウィルにも会いに行かないとな……。
勇者全滅って事に、なってるだろうし……。
王国との、決別も計画練らないと……。
領地も発展させないとな……。
米も、早く食べたい……。
アサギとファナも待ってるだろうし……。
アイシャ、ルー、エミルも琴音と鈴音が狙ってたからな……。
マリルは店、移転したんだろうか……?
王女の拉致もあるか……。
他にも、考えないとな……。
俺は、湯船に浸かりながら、次なる計画を考えて行った……。
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読んで頂き、ありがとうございます。
区切りとして、『勇者救出計画編』終了です。
次回から、第二部、入りますので、
引き続きご愛顧の程、宜しくお願いします。