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背徳の異世界家族計画  作者: carel
勇者救出計画編
18/95

17.食材?


 ダンジョンの帰り道は、魔獣の出現率が極端に低く、すんなり帰る事が出来た。ダンジョンから出たときには、夕方になっており、駐屯騎士達が宿舎に帰る頃だった。丁度いいと思い、俺達も宿舎へ向かう。


 「それにしても、帰り魔獣少なかったな。」

 

 「沸かなかった?」


 「朝のは、下層から来た?」


 「それで間違いないと、思うんだが。」


 宿舎に到着し、団長を呼ぶ。


 「団長は居るか?」


 「これは、藤堂様ダンジョン攻略、御無事で何よりです。」

 

 「ああ、それよりお前達、そろそろ夕食か?」


 「はい、皆、そろい次第、夕食になります。藤堂様もご一緒されますか?」


 「そう言うつもりで、言った訳じゃ無いんだが、今日のメニューはなんだ?」


 「いつもと同じです。干し肉と、野菜のスープと、パンになります。」


 「質素倹約。」


 「栄養不足。」


 「慎ましいのは好感が持てるが、お前らは、体を動かすのが資本だろ、何故そんな食事なんだ?」


 「大変お恥ずかしい話なんですが。私らは、魔族との戦争に疑問を訴え、上官に疎まれています。そして、こちらのダンジョン管理を任され、中央軍より遠ざけれました。物資も最低限の物しか、送られて来ませんので、こんな食事になっています。」


 「それは、命拾いしたな。この先ロストニア王国は滅亡するぞ!その前に、藤堂家の指揮下に入ったのだからな……。」


 「そっ、それは、どういうことですか?」


 「騎士なんだから、勇者召喚については、知ってるだろ?」


 「ええ、近々行うと、お達しがありました。それと関係が?」


 「ああ、勇者召喚は、すでに行われた……。この国は、勇者の力頼みに魔族と戦うんだろ?」


 「ええ、私達だけだと、勝てませんから……。」


 「だが勇者達にも意思がある……。制約魔術で縛って、ロストニア王国が戦いを強要してると、勇者達が知ったらどうなる?制約魔術を解除する術をもう手に入れてるとしたら……。」


 「勇者達の反乱……。」


 「残念だが、反乱じゃない。報復だ。勇者達は、元の世界で平和に暮らしていたんだ。それを自分の我が儘で、巻き込み、奴隷にしている国があるんだ。魔族を倒せば、元の世界に戻れるなどの嘘までついてな……。勇者達は帰っても、元の生活に戻れる訳じゃ無い、受け入れの出来ていない世界に戻ったらどうなると思う?自分達が居ない事になってる世界にだぞ……。」


 「………………。」


 「まあ、そう言う事だ。ロストニアの非道は許せないって事と、勇者達が敵に回るって事だ。」


 「藤堂家は、勇者達の味方だ。お前達はどっちに着く?すでに支配下に置いてはいるが、こっちの邪魔をしなければ解除してやっても良い。」


 「私は……。」


 「迷ってる様なら、追加情報だ。藤堂家につけば、強くなれる。さ~ら~に!今なら夕食が豪勢になる。何と、ミノタウロスのステーキ肉が付いてくる。」


 「スッ、ステーキ肉ッ!」


 「実物を見るか?琴音、鈴音、外で調理始めるぞっ!」


 そう言い、いつもの竈、鉄板を準備する。琴音、鈴音も100人前の肉を準備する。


 「さあ、どうする?」


 鉄板もいい具合に温まった所で、肉を投入、「ジュ~~。」肉の焦げる匂いが辺りに充満する。そこに、アーティファクト調味料、醤油を投入!


 奥の方からも、騎士がぞろぞろと出て来た。


 「わっ、分かった。藤堂家に忠誠を誓おう……。」


 「そうか、なら肉を受け取れ。まずは、腹を満たす事だ。その後、奴隷を解除、改めて雇用契約を行う。他に藤堂家と雇用契約を行ないたい者は、皿を持って並べっ!」


 100人の騎士達が、鉄板の前に皿を持って、並んでいる。順に、ステーキを取り分け、食堂に行って貰う。最後に、俺達の分を焼き、俺達も食堂に向かう。すでに皆が美味しそうに肉を頬張って居る。俺達は団長の陣取っている、上座に席を取った。団長はすでに食べ終えていて、満足そうに眼をつむって微笑んでいる。


 「藤堂様、この命、あなた様に捧げます……。ですから、……またこれを頂けないでしょうか?」


 「こんなもので良いのか?……まだまだ、美味しい物が沢山あるのに?」


 「えっ、こんなものってのは……。」


 「まだまだ序の口って事だ。それにこの肉は、そこのダンジョンで獲れた物だぞ。入り口を閉めてるから気付かなかったんだろ。」


 「そうなんですか?そんな魔獣が、このダンジョンに……。」


 「ああ、ミノタウロスだ……。」


 「そんな馬鹿な……。これが……。ミノタウロス……。」


 「目の前に、美味しい食材があるのに、何で狩らなかった?」

  

 「理由としては、第一にミノタウロスを食材だと、思いつきません、この国では、まず出回らない食材と言う事です。第二に、ミノタウロス戦では、死傷者が出るリスクがあります。そんな簡単に倒せる魔獣でないのです……。」


 「そうなのか?、俺達、半日くらいで、150体位、狩って来たぞ。」


 「えっ~!なっ、何階層まで潜られたんですか?」


 「10階層だけども、何か?」


 「はっ、氾濫はして無かったですか?」


 「あれが氾濫かは分からんが、6階層で200体位の、コボルトとミノタウロスに囲まれたなっ。」


 「あれは、面倒だった。」


 「死体処理が追いつかないと思った。」


 「そうだな、コボルトなんて要らないのが多くて、全部ミノタウロスだったら楽だったのにな……。」

 

 「そっ、それが氾濫ですよっ!藤堂様の価値観って……。それに、ミノタウロスの方が楽って……。」


 「ゴブリン、コボルト、ミノタウロスなんて、そんなに変わらないぞ。二足歩行だし、その時点で俺達の勝ちだ。立ち上がったばかりの赤ちゃんを、相手してる様なものだ。それを、仰々しく鎧なんか着て、正面からぶつかるから、死傷者が出る。鎧を脱いで戦って来い、戦い方が変わる。」


 「そんな事言われましても……。私共では藤堂様のようには。」


 「そんなのは、分かってる。だが、いつまでも騎士に縋り付いてると、強くなれないぞ。この中に、魔術を使える者はいないか。よわくてもいい。」


 「初歩の魔術を使える者なら、1人いますが。」


 「夕食を食べ終わってからでいい。そいつを、紹介してくれ。お前らを強くしてやる。」


 「つっ、強くですか?」


 「今のままだと、弱すぎる。いくらマスタークラスでも、ミノタウロスには苦戦するんだろ。また、これを食べたいなら強くなるしか無いんじゃないか?」


 「食べたいです……。」


 「毎日の干し肉が、ステーキに変わる……。魅力的だと思わないか?」


 「魅力的です……。」


 「毎日、狩るしかないだろ、ミノタウロスを……。どうすれば、狩れる?」


 「強くなる……。」


 「それじゃ、強くなれる助言をしてやろう。『ミノタウロスは高級食材!』。」


 「ミノタウロスは、高級食材!」


 そんな感じで、夕食が終了する。夕食後、駐屯騎士団を集め、藤堂家との雇用契約を済ませる。


 宿舎前の広場に、魔石灯を作り明かりをともした。


 「それでは、皆は晴れて藤堂家の私設部隊になった。しばらくは、王国に対しての偽装の為、今までと同じ日課を過ごしてもらう事になるが、訓練は違う。それは、食料を充実させる為、ミノタウロスを一人でも狩れる訓練をしてもらう。」


  ざわっ……、ざわっ……。


 「ミノタウロスを一人で、なんて無謀と思うかもしれない。それは皆が弱いからだ。お前らの戦闘では、正面からミノタウロスの怪力を受けようとして怪我をするだけだ。まずは、全員、鎧を脱げ。」


 全員に鎧を脱がせ、服だけになってもらう。


 「では、各自得物を持って、試合してもらう。準備が出来たものから前に出ろ。」


 誰も出てこない。心の準備が出来ない様だ……。


 「琴音、鈴音、見せてやれ。」


 「「了解した。」」


 そして、みんなの前に出る、美少女二人。団長は、華奢な美少女が出来るとは思えず、俺に進言してくる。


 「藤堂様、いくら何でも、少女達では危のうございます。」


 この2人が、ミノタウロスを倒したとは思っていない様だ。


 「それじゃ、お前が前に出ろっ!鈴音下がれ、琴音、団長が相手だ。殺すなよ……。」


 「本気ですか?」


 「お前程度の実力だと。琴音に触れる事さえ、出来んよ。」


 「一撃で昇天する。」


 「わっ、分かりました。勉強させていただきます。」


 団長は、剣を正眼に構えている。琴音は武器を終い、右足を前に半身の構えを取った。


 「琴音様、武器を構えて下さい。」


 「必要ない。こいっ!」


 左手は頬の脇で軽く握り、右腕を前に出し、掌を上に向け四指を曲げ合図をする。カッコいい……ドラゴンがいる……。


 団長は剣を振り上げ、そのまま上段から切りかかってくる。なんで、この世界の人間は、単純に上段からの撃ち下ろししか、しないんだろう?


 琴音は、右手で剣の側面をいなし、左足にスイッチしながら、前に出る。左手は抜き手で団長の首元に添えられていた。


 「はいっ、そこまでっ!」


 試合を止め、団長に感想を聞く。


 「どうだ?」 


 「いつの間にか、こうなってました。」


 「他の者はどうだ?外から見て、何か分かった者はいるか?」


 「はいっ!団長の剣に右手が添えられたら、左手が首元に伸びてきました。」


 「その通り、今のは躱してから、攻撃に移っただけだ。攻撃は躱す事で、自由に体が動く。攻撃を受けてしまうと、圧力に流されてしまい身体が言う事を聞かなくなるし、手も塞がる。今までの剣術は怪我をする事が、前提の剣術と言う事になる。怪我をしたくないなら、そんな剣術は捨ててしまえ。教会に儲けさせることも無いだろ……。」


 「教会?」


 「そう教会だ。怪我をすれば教会に行くだろ?剣術の始祖が誰かは知らんが、王国、もしくは教国が関わっているのだろ?」


 「ええ、ロストニア王国の剣術は3種あります。連撃を得意とするリュージュン、教国が発祥ですね、一撃のもとに相手を倒すヒリク、創始者は王国出身です。そして、過去の勇者が広めたソウシンです。リュージュンとヒリクは王国、教国とも推奨してますが、ソウシンはもう失伝しています。何でも気付いたら切られてる、みたいな漠然とした記録しか、残っていません。」


 「居合かな?」


 「「居合。」」


 「知ってるんですか?」


 「いや、知らん。予想は出来るが、確証はない。それで話を戻すが、お前らはなんで、上段からの振り下ししか、しないんだ?」


 「ヒリク剣術は、初撃の一撃に力を入れ、相手を押し切ります。」


 「剣術でも何でもないな。」


 「避ければすむ。」


 「そこで終わり。」


 「力が同等以上だったら、どうする?」


 「力をもっと入れます。」


 「馬鹿だ。」


 「ノーキン。」


 「弱い筈だ……。ミノタウロスには勝てないよ、それじゃ……。さっき、琴音が刃物を持ってたらどうなったか分かるか?」


 「死んでいたと思います。」


 「そうだ、お前が勝手に刃物に突っ込んできた。琴音は刃物を添えてやっただけだ。琴音の料理スキルでお前は調理される事になる。騎士の職業があってもメイドに勝てない。ミノタウロスも単に調理されただけだしな。騎士職がそんなに優秀でない証明になっただろう。」


 「はっ、はい……。」


 「っと言う事で、お前らには魔術の訓練を行ってもらう。魔術の使える者は前へ。」


 すると、一人の女性騎士が出て来た。年齢はまだ若い、16、7歳位だろうか。


 「今日から、君たちの教官は、彼女にしてもらう。」


 「えっ、聞いていません。なんで私なんですか?」


 「魔術使えるよね?」


 「えっ、私が使えるのは、初級のトーチだけです。」


 「ああ、十分だ。証明しよう、武器を手に持ってトーチを発動してくれ。俺がサポートする。」


 半ば強引に、魔術の可能性を見せる事にした。トーチとは、指先にライターほどの炎を宿らせるだけなのだが……。


 彼女が、トーチを発動させる。俺は、その魔力を剣全体に誘導させる。すると、剣に炎が宿る、パッと見、魔術剣に見えるだろう。後は、彼女に自立を促し手を放す。


 「どうだ?」


 「えっ、なんでこんな事になってるの。」


 「まあ、待って。皆、聞いてほしい。彼女は、魔術剣の使い手だ。皆に疎まれるのが嫌で、王国では隠していたが、藤堂家に入る事でそれを解禁する事にした。皆も魔術剣を使ってみたくはないか?」


 そう言うと、琴音と鈴音が丸太を準備してくれた。


 「さあ、その剣で、これを切りつけてくれ。」


 女性騎士に丸太を切ってもらう。すると、バターの様に丸太が剣を飲み込んでいった。


 「見て貰っても分かる様に、魔術剣であれば、丸太がすんなり切れてしまう。これがミノタウロスで、あればどうだろう?今まで苦労していたあの堅い皮膚や骨にすんなり刃が通る。毎日の食卓にステーキが並ぶぞ?彼女の門下として強くなりたいものは、今すぐ手を上げろ。」


 って、お前かい。団長が真っ先に手を上げた。その後に続く様に、騎士全員が手を上げる事になった。


 「っと言う事で、頼む。」


 女性騎士に後は丸投げするつもりでいる。


 「私、初めてなんですけど……。」


 「怖いのは初めの内だけだから、心配ない。」


 「えっ、でもっ!」


 「大丈夫だって、徐々に慣れれば良いから。」


 「そんなのって、今日が初めてだったんですよ。」


 「そんなに難しくなかったろ?」


 「そうなんですけど……。」


 「あと2、3回すれば体に馴染むよ。」


 「そうなんですか?」


 「後は、自分から出来るようになるさ。」


 「分かりました。頑張ります。」


 「そう、その意気だ。もう一回やるか?」


 「今の感覚を覚えておきたいので、お願いします。」


 「それじゃ、今度は自分からやってみろ。」


 「はっ、はいっ!」


 「「正臣さん、会話がいやらしく聞こえます。」」


 「お前らの耳がピンク色だからな。ところで、団長と教官の名前分からんな?」


 「私は元王国軍キリフトスダンジョン駐屯騎士団団長のゼフォード。」


 「同じく駐屯騎士団衛生管理兵アイシャです、」


 「なんだ、アイシャは前衛じゃなっかったのか?」


 「はい、後衛部隊になります。」


 「料理も出来るだろ?」

 

 「この駐屯部隊の全食、任されております。」


 「そうなのか?琴音と鈴音に料理も教わると良い。」


 「ゼフォード、これからの訓練は、魔術を中心とした物になるが、それほど特別な物でもない。とりあえず、武器と魔術の融合が出来れば、力が無くてもいい事が分かるはずだ。今までの剣術を捨てるつもりで、回避と、魔術の仕方を覚えろ。それだけで、ミノタウロスは狩れる。」


 「はい、我らの食卓の為に!」


 そして、この日、大陸を揺るがすほどの武闘派集団が誕生した。


 その中心には、赤い髪をなびかせ藤堂家の先陣を駆け抜け、敵の返り血に身を染める姿があった。


 通称、深紅のアイシャ、またの名を、レッドスライサー のちに藤堂家、第6婦人になる予定?

 

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