12.オーク襲撃?
俺達に有罪判決を受けたランドル達、若い衆だったが、まだ人殺しや人攫いとか、してないから許してもらえないかと、女子供に懇願されやむなく、今後の態度次第と言って執行猶予をつけてやった。
「それはともかく、お前達の村まで行くぞ。」
「どうしてですか?まだ、オーク共が居るかもしれませんよ。」
「ランドル達は、いつまでもここに住むつもりだ?」
「そんな事言われても、どうしていいか分からないんですよ。この人数を受け入れてくれる村なんかこの辺にありませんから……。」
「だから、お前達の村を取り返してやるって言ってんだろっ!」
盗賊までしておいて他人任せな考え方に、苛立ちを覚える。
琴音と鈴音も苛立ったのだろう喋り出す。
「強くなくては、生存不可能。」
「優しくなければ、存在価値無。」
「琴音さん、鈴音さん、ハードボイルドっぽいんですが。意味きつく、なってませんか?」
「「正臣さん、こいつらは。」」
「クズで~す!」
「虫けらで~す!」
「「ウジ虫で~す!」」
「「ハートマン軍曹しちゃいましょう!」」
「いやぁ~、時間無いし、面倒くさいだろ。時間取れたら、バーサーカー製造してもいいから。」
「「ど~しても、ダメ?」」
頬を膨らませ上目遣いで、睨んでくる。そんな可愛くおねだりする案件じゃないだろうに……。いやっ、ダメだからねっ!
「時間がない、ウジ虫の前に害虫駆除が先だ!」
「害虫駆除後!」
「ウジ虫孵化!」
「とりあえず、オーク討伐からな。早速向かうから、ランドル!案内しろ!他の奴らは後から着いてこい。」
時間が無いので、ランドルを後ろから小突き、山の中を無理やり走らせる事にする。開拓村が遠くに目視出来る辺りから、索敵にオークらしき者が引っかかった。
「ランドル、少し下がって後続が来るまで待機してろ。オークがいる、これより殲滅戦に入る。琴音、鈴音、準備はいいか?」
「食糧確保。」
「焼肉パーティー。」
「と言う事だ。ランドル、今夜は腹いっぱい食えるぞ……。」
ランドルは、戸惑いの表情でつぶやく。
「……俺はあいつ等が、食糧に見えないんだが。」
「飛べない豚は、ただの豚。」
「胃に収めるだけ。」
「今、目の前に食糧が転がっているだけだ。もういくぞ!」
ランドルを残し、琴音、鈴音を連れ光学迷彩発動して、オークの元へ向かう。手には町で購入した棒を持っている。
オークは大体180cm位で丸々とした体格と豚の顔、何かの革で出来た鎧を着用、槍を手にし武装していた。村へ近づくと、約200体位のオークが索敵に引っかかった。
気付かれる事無くオークの元へ着くと、棒に魔力を這わせて頭部を殴ってみた……が。威力が強すぎたのか、首の上から兜ごと爆散してしまった。
「ちょっと、強すぎたか?」
「問題ない。」
「頭は食べなくていい。」
「「血抜きも、はかどる。」」
「それもそうだな。それじゃ、村の周りを歩哨に出てる奴らから、各個撃破して行こうか。」
「正臣さん、撃破数勝負。」
「負けたら、罰ゲーム。」
「よしっ!勝負してやろう。ただし、撃破数じゃなく食糧確保量でどうだ?」
「「負けないっ!」」
「それじゃ、今からスタートだっ!」
スタートの合図とともに、3人でダッシュして行った。
俺はと言うと、オークを見つけ次第、眉間に棒で突きを入れ一撃で仕留めて行った。
琴音は後ろから回り込み、脊髄を破壊して周ってるようだ。
鈴音は心臓を一突きで、停止させて周ってる。
そして、倒した所からアイテムポーチに、各個確保していく。
どんな無双ゲームなんだ。
村の周りには、100体まで居なかったようで、俺が23体、琴音が25体、鈴音が25体と、俺が一歩で遅れている。一旦、集合して、途中報告と村中への攻略会議となった。
「正臣さん、罰ゲーム覚悟。」
「正臣さん、今夜は寝させない。」
「やっぱり、それが狙いか……。だが、最後まで勝負は分からないからな。まだ2体差だし、村の中に大物もいる様だ。ついでに、見つかったらペナルティー的な、ステルスゲーム要素付けようぜ。」
「望むところ。」
「ペナルティーは、1体破棄。」
「よし、それじゃ、第2ラウンド開始だ。」
ここから、村の入り口まで、約100m、光学迷彩を発動している俺達を、見つけられるとは思えないが気配を消して近づいて行く。
門の前には、2体のオークが見張りをしている。この2体は琴音と鈴音に任せよう。そう思い、門の真ん中を通った時、鼻をひくつかせているオークの姿が視界の隅に映った。その瞬間、オークが倒れ姿が消えた。琴音と鈴音がアイテムポーチに仕舞ったのだろうが……。
「おい、琴音、鈴音、オーク達は女に鼻が効くみたいだ、気を付けろ。」
「問題ない。」
「気付いた時には、昇天済。」
「お前らが、強いのを分かって言ってる。それでも、気を付けろ。」
「「正臣さんの、愛を感じる……。」」
ああ、こいつ等なら大丈夫だわ~~。
そんな感じで、ゲーム再会。
気配察知で1体、もしくは2体でいるオークを率先して狩っていく。琴音と鈴音も同じように刈っている様だ。村の中を一回りすると一軒、異様な臭いのする家屋を見つけた。
「あぁ~。これダメな奴だ。中、見なくても分かるわ~。はぁ~~。」
家屋の中から10体ほどのオークの気配と、3人ほどの人の気配を感じる。琴音と鈴音に任せる訳にはいかないし……。
「しょうがない、狩るか。」
家屋の扉を開け、慎重に入って行く。オーク達には気付かれていない様だ。屋内には、まだ30代に見える女性3人が、オークによって襲われていた。
まだ生きていればいいが?……目が死んでる……。
俺はオーク達の視界の影に入りながら、目立たないように、狩って行ったが、さすがのオークも半数が動かなくなった事で、異常に気が付いたようだ。
5体のオークは、女性を後ろにして入り口の方ヘ、凶器を向ける……が、すでに俺は女性たちの側へ来ていた。後ろを向いたオークの脊髄に向かい、5連続で突きを放って、屋内オークの殲滅完了だが……。どうしたらいいだろう?さすがにゲームどころじゃ無いよな……。
光学迷彩を切り、家に中から布を探し、女性たちに掛けて行く。
「おいっ!お前達、生きているかっ?」
手を取り脈をとってみる。微弱な脈拍ではあるが、辛うじて生きているようだ。
「とりあえず、回復魔術だけかけておくか……。たしか……。」
魔力を女性に這わせ体内外の傷を正常にするイメージでやって見る事にする。
「キュアっ!」
「キュアっ!」
「キュアっ!」
若干、顔色が赤みを帯びて来ている。外傷が在るかも知れないので「ヒール」も、3人に掛けておいた。もう一度、脈を診たが先程よりは力強く脈を感じることが出来た。
「おいっ!大丈夫かっ!」
「うっ~ん!」
一人の女性が、意識を覚醒しかけている。軽く頬を叩きながら、もう一度声を掛ける。
「おいっ!大丈夫かっ!返事をしろっ!」
「あ……あなたは……。」
か細い声が聞こえてくる
「ああ、俺は藤堂正臣、オーク達を殲滅に来たものだ。」
「ああっ……、私達は助かったんですね……。」
「いやっ、まだだ……。殲滅中、あなた達を見つけただけだ。まだ、オークが残っている。」
「そう……ですか。」
「俺は殲滅に戻る。ここに結界を張って行くから、俺達が戻ってくるまでこの建物から出るなよ。他にあなた達の様に捕まっている者はいるか?」
「いいえ、この村に最後まで居たのは、私達だけですから。」
「そうか、そっちのたらいにお湯を入れておいた、体を流すと良い。他の二人にも言ってくれ。回復魔術掛けたから、もうすぐ起きるだろう。」
そう言い残し、家屋を出る。随分、時間を費やした。もう終わってるかも知れないな……。
「さて、罰ゲーム決定だろうし、のんびり狩るか。」
そして気配察知を発動すると、村の中央部に、異常なほどオークが集まってる。
「まっ、まさかっ!」
先程の光景を思い出した。
琴音と鈴音が危険かもしれない……。
そして、村の中央へ向け一気に加速していった。
村の中央は広場になっていて、所狭しとオーク達がひしめき合っていた。その中心に光学迷彩を解除した、琴音と鈴音の姿が見える。
俺は中央へ向けて肉の壁の後ろから、遠慮なしに撲殺していった。一振りで5,6体のオークが爆散していく。二人までの距離は約30m単純に15,6回振れば到着するのだが……。
なぜ、こんな事になっている。そんな事を思い棒を振り回していく。
琴音と鈴音も俺が来たことに気が付いたのだろう。遠慮なしに爆散し始める。
俺達の前に居るオーク達はビビっているのだが、後ろから押されて前に出るしかなく。出て来たところを一撃のもと肉塊へと変わっている。
物の数分で琴音、鈴音と合流することが出来た。
合流したのはいいが琴音と鈴音の後ろには、小さな女の子が屈んでいた。俺も琴音と鈴音の輪に加わり、喋りかける。
「どう言う経緯で、こうなってる。」
「一週間前、村が襲われた。」
「一週間、この娘、隠れてた。」
「分かった。罰ゲーム無しで。無双クエストゲームでも、始めるか。チート武器も解禁だっ!でもっ、建物への被害無しなっ。」
「了解、クエスト内容。」
「この娘を守り切ってオーク殲滅。」
「「「LADY~ GO!!」」」
残り100体ちょっと、しかいないが、時短って事で武器解禁した。俺達は3人とも収納から六尺棒に持ち替え、アブレシブジェットを発動させオークに向け振り回す。半径10mのオークの上半身と下半身が分断された。その一振りで約半数を屠ってしまった様だ。急に視界が開け、奥には一回り大きな個体が5体、その奥にもう一回り大きな個体も見受けられた。
「おっ!ジェネラルとキングか?」
「正臣さん、譲る。」
「行ってきて!」
「よしっ!任された。」
そう言って、俺は大きな個体がいる方に向けて、走って行った。2m程のオークジェネラル達は他のオークとは違い、フルプレートに戦斧を装備していた。
オークジェネラル達が、俺を囲むように陣取る。俺は囲まれないように、1体に向けて殴りかかる。
ノーマルオークと違い俺の攻撃に反応はしてきたが、戦斧で受けようとしたのが悪かったのだろう。
戦斧と一緒に真っ二つにされてる。
やったのは俺なんだがな……。
それを見て警戒したのだろう、他のジェネラル達が若干距離を開けて囲みに入る。
距離が開いたことで、アブレシブジェットを発動して、横薙ぎに振り二体のジェネラルを葬った。
本当にサクサクだよ……。
残りのジェネラルは2体同時に切りかかってきたが、そんな見え見えの攻撃が当たる筈も無く、軽く往なし横に回る。
線が重なったことで、アブレシブジェットで2体同時に切り裂いた。
琴音、鈴音を見るとあっちの方も、片が付きそうで、残り十数体しかいなかった。
俺はオークキングに向けて歩んでいく。オークキングは、2m50cm位あり金色の鎧と180cm位の両刃の剣を持っていた。
「オマエッ、ナニモノッ!」
「おっ!喋れるのか?俺はしがないE級冒険者だ。」
言語互換が効いているのか、意思の疎通が出来る様だ。
「ココ、モラッタ。ヤクソクチガウ。オンナモイナイ。」
「誰と約束したか知らないが、お前らは討伐対象だよ。」
「キリフトス、イッテタ、イッショ、マゾクタオス、ココモラウ。ワレラ『キンカ』ノ、イチゾク、トモニタタカウ。」
またもや、キリフトス家の尻拭いかよ。
それにしても、金華豚ってブランド肉だよな?やばい美味そうだ……。
「無くなる家との約束なんて、無駄な事をしたな。そして、お前も直ぐに刈られるだけだ。」
「オマエノ、マジュツキカナイ。オマエシヌダケ。」
「そうかい、まあ、やるだけやって見るさ。」
そう言い、オークキングにアブレシブジェットで切りかかってみる。
オークキングが言ったように金色の鎧に傷つけるに留まり、身体にはダメージが届いて無いようだ。
今度はオークキングが剣を横薙ぎに払ってくる。
まともに受ければただでは済みそうにない、すごい風切り音の斬撃が迫ってくるが、バックステップでその斬撃を躱す。
「さて、どうしたものか?」
正面からまともに戦えば、オークキングの圧力に、力負けするのは明らかであり、今まで戦ったオークとは力も速さも段違いである。その上、魔術の効かない鎧を着込んでいる。
「足を止めるか、それとも……。」
そう考えると、六尺棒を収納に仕舞い、正面から歩いてオークキングの前に向かう。オークキングは、上段から、一気に剣を振り下ろしてくる。
上段からの振り下しを、誘導してやった。
その攻撃の一瞬の隙を付き、半身から接敵、振り下してくる手を取り、力に逆らわないように誘導していく。
そして、一気に方向転換して、小手返しを決める。
オークキングはその大きな体を、空中に投げ出した。
さらに、空中で逆さになっているオークキングを誘導、頭頂部から脊髄に負担が掛かる様に、垂直に落としてやる。
オークキングはその大きな体の中に、頭部を埋没する事となり、息絶えた。自身の重量が仇となった。
「ふぅ~。意外と呆気なかったな……。」
「そんな事無い。」
「正臣さんが強すぎ。」
残りのオークを片付けた、琴音と鈴音が近くに来ていた。
「お前らだって、あれ位出来るだろ?」
「出来ない事無い……けど。」
「体格、違い過ぎ、ちょっときつい。」
「あれから見たら、俺だってそんなに変わらないよ……。それで、あの娘は?」
「それなら無事。」
「クエスト完了。」
「それじゃ、「「ALL、COMPLETE!」」」
「「「パシッ!!」」」
そう言い、3人で手を弾きあった。
後処理はと言うと、3人で手分けしてオークの死体を、片っ端からアイテムポーチに突っ込んでいくが、全て収まり切れず、ジェネラルとキングは、俺の収納に入ってる。
ジェネラルの武装はミスリル製、キングはオリハルコン製だった。思わぬ所での臨時収入と思っておこう。
オークの処理が終わり、3人で少女を連れ、囚われていた3人の女性がいる家屋へ向かう。
トンッ、トンッ
ノックをして声を掛ける。
「トウド―です。殲滅が終わったので、開けますけど大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。」
扉を開け中に入ると、3人の女性が衣服を着替えていた。さすがに襲われたままの状態って訳にはいかないだろう。
「具合はどうですか?」
「まだ本調子ではないけど、大丈夫そうよ。こっちの二人も問題ないわ。」
「そうですか……。改めて自己紹介させてもらいます。俺が、藤堂正臣。そしてこっちが……。」
「琴音です。」
「鈴音です。」
「オークの殲滅が終わりましたので、迎えに来ました。この家屋は、臭いがきついので場所を替えましょう。」
「分かったわ。私の家に行きましょう。まだあると良いのですが……。」
そう言い、女性の後について行く。女性は村で一番大きな家に住んでいた。建物事態には被害が無く、襲撃前の状態が維持されていた。撤退戦が余程うまく行ったのだろう。
「ここよ、ちょっと、応接間で待っててくれる。さすがに、人の服じゃ落ち着かないわ。」
「分かりました。待ってる間少し休ませてもらいます。」
そして、10分程すると女性たちが戻って来た。
「お待たせしました。」
「いえ、大丈夫です。」
「私はクレア、この村の村長をしていました。そしてこっちが、部下のレイラとエストです。それで、討伐隊はどちらに居られるのですか?」
この人がランドルの母親みたいだが、まだ30代半ばの女性で、子供を産んだように見えない。
「えぇ~っと、俺達3人だけです。」
「なにを言ってるんですか?オークの中には、ジェネラルとキングも居たのを確認してます。あなた達だけで殲滅って事は無いでしょ……。」
「そんちょ―さん、リィーシャ、このおねーちゃんたちに、タスけてもらったけど、3ニンしかいなかったよ。」
「えぇ~っと、貴方はリィーシャちゃんだったわね。そうなの?って、何であなたがいるの?」
「1週間前から、オークに見付らずに、過ごしていたらしい。」
「リィーシャ、かくれんぼは、トクイなの。」
「そう運が良かったわね……。本当に3人で倒したの?」
「おねーちゃんたちが、いっぱいオークたおして、おにーちゃんがおっきいのをドッカーン!ってしてた。」
「あなた達って何者なの?」
「「「冒険者です。」」」
「それは、見れば分かります。ただの冒険者じゃないでしょ?」
「「「E級冒険者ですけど、何か問題でも?」」」
「問題は………………無いわね。本当にあなた達3人で倒したのね……。改めて言わせてもらいます。私達を助けてくれて、有難うございます。ほら、リーシャちゃんも、お礼言わなきゃ。」
「おにーちゃん、おねーちゃん、リーシャを助けてくれて、ありがとう。」
「いや、気にするな。ランドル盗賊団の更正の一環だからな。」
ランドル達の事をばらしてしまおう。
「ランドルを知ってるの?って、盗賊団って、どう言う事?」
「ランドル達が盗賊まがいな事をしていまして、襲われた所を返り討ち、訳を聞くとオークに襲われたそうで……。」
「ランドル達はキリフトス伯の所に行ったはずよ。なんでまた、盗賊に……。」
「オークキングも片言で話してたが、この村はオーク達に売られたみたいだ。キリフトス家から討伐隊が来ないのも、納得がいく。」
「そう……。ランドル達は、キリフトス伯から援軍要請断られたのね……。」
「あなた達はどうするんですか?この村はもう安全でしょうが……。あんな事に会った後じゃ……。」
「ええ、住みづらいわね……。それに……こんな事されて黙ってられるほど、お人好しでも無いわ!」
その後、ランドル達が戻ってくる前に、クレアたち3人の事情を聞いた。
クレア、レイラ、エストの3人は元は王都で第2王女の親衛隊の騎士だった。
その時、スラムの子供たちの、リーダーをしていたのがランドルで、スラムの子供を見るに見かね、ランドルを養子にして、スラムの子供たちを影ながら支えていたらしい。
それから、クレア達は5年前、王女の勇者召喚計画に反対をして左遷、キリフトス領で兵士をさせられていたが、1年前、騎士爵の復活を餌に、開拓村の村長の打診があり、ランドル達を呼んで村を作ったそうだ。
体のいい、厄介払いだったのだろう……。
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