00.プロローグ
初めて書きました。よろしくお願いします。
「ここ……ここは……?」
周りを見渡すと、どうやら薄暗い部屋に居るらしい。体の自由は利かないみたいだ。
自分の現状を確認していると、
「「やっと起きた……。」」
二重和音ともとれる二人の少女の声が聞こえた。
目をやると二人の影が見える。
この二人は、俺の5歳下の双子の妹なんだが、状況把握が追い付かない。
「状況説明してもらえるか。」
「「お城、出てきた。」」
言葉足らずで、低テンションの声で説明を受ける。15年一緒にいる為その説明でこっちの世界に来てから今までの状況を把握することが出来た。
***
3月20日
たぶん昨日
俺の名前は藤堂正臣、二十歳、173㎝70kg体脂肪率8% 毎朝、気の鍛錬と武術の稽古を妹達としている成果が出ている。イケメンでは無いが不細工でも無い、職業無職と言っても来月の初めから、バイト先の社長の紹介で仕事が決まっている。就職準備期間中である。
5年前に親を亡くし高校を中退してバイトを掛け持ちしながら生活していた。
父は考古学者、兼道場主、母はアクセサリー製作等しており、道場では門下生もおらず、怪しげな合気道とも空手ともとれる武術?と怪しげな研究をしていた。
父と母は遺跡調査で一緒に海外に行った時の飛行機事故で死亡した。当時、TVのニュースで両親の写真が映された時、TVの前から動けなくなった妹達を見て『この二人は絶対に幸せにしてやる。』と決意して今に至る訳です。
でっ、親の墓参りに行くため、妹たちを迎えに校門前で待ってる。
「おい、お前何している。不審者が学校に近づくな!」
そう、声を掛けてきたのが、この学校で生活指導でもしているであろう、体育教師『近藤丈志 29歳独身』がいるわけで、昔から嫌味な奴だった。ノーキンと言う言葉がよく似合う。
「正臣くん、お久しぶり。妹さんのお迎えかな?」
もう一人の女性が会話を遮るように、声を掛けてきた、さすがよく気がつく人だ。
こちらの女性は、高校の先輩で、現在、教育実習に来ている『橘彩香22歳独身』、ショートボブにメガネ、スレンダーにして巨乳とまで行かないが美乳であろう女性らしい体格、高校時代に生徒会長をしており、高校中退するときによく相談に乗ってもらった、恩人である。
「橘先輩、お久しぶりです。この学校の教師になるって本当ですか?」
「ええ、来年度から、理科の授業を受け持つことになるわ。研究者か教師か迷ってたんだけども、人と接するのが好きだからね。教師になることにしたの。」
「おせっかい好きな、先輩らしいですね。」
「一言よけいよ……。ところで、正臣くんはどうなのよ?」
ほんのり頬が赤みを帯びてる
「俺も来月から、新しい職場です。今度は正社員ですよ。バイトと違って給料も安定してるし、時間もとれる様になりそうです。妹達にも負担掛けずに済みそうです。」
満面の笑みで答える。
『なんかすごい嬉しそうに見えるけど、妹達、優先過ぎて自分のことあまり考えていないみたいね。』
「……そう。そろそろ、妹さん達来る頃かな。」
苦笑いしながら、話を変える。
校舎の方見ると、校門に向かってくる何人かの生徒の後で、いま玄関から出るところを見つけた。双子の姉妹、姉『琴音』、妹『鈴音』一卵性双生児で二人とも、左右の眼に濃淡の違いが有り言われないと分からない位の差異だがいわゆるオッドアイである。一応、幼少期より武術?を嗜み運動神経がよく、勉強も学年上位で、美少女というに事欠かない容姿をしており、小柄な体格と慎ましい胸、薄い表情と言葉足らずな言動がなければ、人気投票上位ランカーだろう。
周りからは、何を考えているか分からない残念姉妹と呼ばれているらしいが、15年の付き合いがある俺から言わせれば、表情も分かるし言いたいことも分かる、二人の言葉には、要点、確信のみ伝える傾向があるので、二人のことを理解しようとしなければ、会話すら出来ないが、周りに気が使える優しい自慢の妹達である。
「にぃ、お待たせ。」
「にぃ、ただいま。」
二人の声が揃わないのが珍しい。
「お帰り。そんなに待ってないよ。これから向かうけど問題ないよな。」
「「無い。」」
「どこか行くの?」
橘先輩が疑問を投げかけてきた。
「親の墓参りに行ってきます。今回みたいな長期休暇なかなか取れないので。」
「そう、気を付けてね。」
「彩ねぇ。」
「大丈夫。」
「「私達がいる。」」
「それなら安心ね、ただ、学校では橘先生だからね。」
「「分かった。」」
「それじゃ、行ってらっしゃい。」
「「「行ってきます!」」」
聞き耳を立てていたのか、不意に近藤からも、
「気を付けて行って来るんだぞ。」
固まる俺。俺の後ろに隠れる二人。
「「「…………………。」」」
「何も無いのかよ!」
『突っ込みいただきました。何も無いです。』
悪い人では、無いんだろうが苦手だ、この面倒臭さ。
その後のやり取りも終わり、校門を背に歩き出そうとした時、
「「にぃ、なんか変」」
「分かっている、変な気が集まって来てる。」
周りを見渡すと、さっきまでいた校門付近に白い霧がかかって来ていた。その白い霧に、橘先輩と近藤他、10数名の生徒が巻き込まれているのが見える。
「琴音、鈴音っ!!」
「「んっ。」」
他はどうでもいいが、恩人である橘先輩を助けなければと、琴音と鈴音に逃げるように指示を出し、白い霧に入って行った。
「橘先輩!」
「正臣くん!」
「早くそこから逃げてっ!」
「ダメよ!生徒たちがパニックを起こしてる、落ち着けなきゃ。」
「近藤は、何している!」
「霧が濃くなって来てから見てない!」
「ちっ!」
視界が効かなくなって来た、時間がないと思った矢先、激しい光に包まれて霧とともに全てが消失していた。
その日を境に、生徒20名、教員2名、不審者1名がこの世界から消えてしまう集団失踪事件が起こった
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はずだが、失踪した23名がもともとこの世界にいなかったかの様に、人々の記憶から抜け落ち事件にすらならなかったのである。