密会
久々投稿です!
ーー王宮・妃の部屋ーー
白夜達が鍛錬をしていた頃、王の妃であるフローリア・オルシアスは部屋でブツブツと恨み言を吐いていた。
「クソッ、クソッ………」
白夜達を殺すよう依頼したが失敗に終わり、頭に血が上ったフローリアは近くにいた護衛に殺せと命じるが返り討ちにされ、そのまま雇われていた燕達は姿を眩ました。
「やっと王が死んだというのに、このままでは私は………。認めぬ、認めることなど断じてできぬ!」
ここまで焦っているのにも理由がある。それは国に納めている税金を横領していたのは王女ではなく、フローリアだったからだ。
この国には特別なシステムがあり、本来ならば王女=妃となるのだがオルシアス王国は違う。王女=妃ではなく、王女と妃になるのだ。それは本来なら王女であるフローレスが正妻となるのだが本人が断り、政治にだけ関わりたいと願ったからだ。
幸いにもフローレスには政治の才覚があり王もそれを認めていたからだ。女であったが男装していれば良いと他の者達も説得して政治に参加することとなった。
しかし王には子孫を残す義務があるためどうするべきかと悩んでいたところにある提案がもたらされる。
それは姉であるフローリアを正妻とすればいいのでは?というものだった。
フローレスとフローリアは姉妹で2人ともに教育が行き届いており、また美人であった。
そしてフローリア自身も王と結婚したいと思っていたためすぐに式を挙げて3年前に結婚したのだ。
フローリアは結婚して正式な妃となり、また王も他の者を娶るなどといったこともなく2年が過ぎた。そこまでは順風満帆な生活であった。しかし、それも脆く崩れ去った。
王は子供を作ることができない身体になってしまったからだ。
珍しい奇病で完治することはできない不治の病で王とフローリアは嘆き悲しんだ。
それでもフローリアは幸せだった。王と過ごすこの生活が楽しくて仕方がなかった。
だが心の中では子供が欲しいと、自分達の子を育てたいと思うのは仕方がないだろう。
ーーーーそして妃であるフローリアは過ちを犯した。
国に保管されているが王でさえ使うことを禁じられている秘薬、『万能薬』に手を出してしまったのだ。
警備は厳重だったが妃のフローリアが一言言えば通れた。そして『万能薬』を手に入れたフローリアは薬を王の食べ物に混ぜ奇病を治すが、そんなことをすれば気づくのは当然である。
王は妃に処罰を与えようとしたが妻への愛情の方が勝り、『万能薬』の存在を隠した。
だが流石にお咎めなしでは国の重鎮達の怒りは収まらない。王は自分が子供を産むため仕方なく使用したとフローリアを弁護するが誰1人として許すことはなく次第に王への反感を募らせていった。
ーーそして事態は最悪な方向へと向かっていく。それはーー
「失礼。少しお時間を頂いても?」
「……どうやって」
フローリアは驚愕のあまり言葉を失う。そんな姿に魔夜は微笑みを浮かべて近くの椅子に腰掛ける。
「聞きたいこともあるようだから、とりあえず座りましょう」
まるでこの部屋の主人だと言わんばかりの態度に物申したいフローリアであったが、相手は指名手配犯。しかも殺し屋を雇って消そうとしたのだ。当然そのことも知っている筈なのでフローリアは背中に大量の冷や汗をかきながらおとなしく席に着く。
魔夜は満足そうに頷くと話を切り出す。
「まず聞きたいことがあるのだけれど」
「……何かしら?」
「今の王はどこにいるの?」
「知らないわ」
これに関しては本当だ。フローレスは王が死んだ直後にいなくなってしまったのだ。
オマケに国民の前で公開処刑を行うなどおかしな行動もしていたのでフローリアは妹であるフローレスの考えがわからなかった。
だからこそ消そうとしていたのだが。
「次の質問。貴女、テトという男に会わなかった?」
「……………会ったわ」
「そういうことね。現状は理解できたわ。『重力』」
魔夜は質問を肯定したフローリアにハァと溜息を吐きながら手をフローリアの額に当てる。手を避けようとするが身体が動かなかった。
魔夜は掌に魔力を集中させていく。
「『状態回復』」
バキィィィン!と甲高いなにかが壊れる音が響く。ドサッと椅子から落ち、地面に倒れるフローリアに魔夜は再度溜息を吐く。
「テトは殺せていなかった……。正確には本物、いや本体ではなかったということかしら」
「そのようですね」
物陰から肯定の言葉を発したのはタナトスだった。その手には『王印』が握られているが、魔夜達の表情は沈んでいた。
「殺せていなかったのは残念ね……。それにしても【12神族】も神も外の世界を知っていてかなり有名。ハデスのことも最早周知の事実。状況があまりにも酷すぎるわね」
「………申し訳ございません」
タナトスはここにはハデスに代わって申し訳なさそうに頭を下げる。頭を下げていて見えないがその姿からは憐れみしか感じない。
「やはり後悔していますか?ハデス様がここまで世界に敵対されていると知っていれば、貴女は」
「変わることはないわ。私がハデスを選んだのは私達が一度、ハデスに救われているからよ」
タナトスの言葉を遮って言った言葉に首を傾げる。ハデスとタナトスは降りてからもずっと一緒だった。そして魔夜達の事件は知らなかった。それなのに何故魔夜はハデスに救われたと言っているのか?
「それはどういう?」
「その話は今度にしましょう。今は戻って極夜に王の力を持たせるのが先決。それに王も見つけて『化け物の祭り』を鎮圧しなければいけないのだから」
魔夜は話を強引に終わらせるとフローリアに魔法をかけてベッドに移動させる。
移動が終わると魔夜はタナトスの腕を掴む。
「『空間転移』」
一瞬で姿を消す。部屋にはフローリアの安らかな寝息のみとなり、静かに時間は過ぎていくのだった。
伏線張り過ぎて回収できるか不安なこの頃です……_:(´ཀ`」 ∠):




