番外編・バレンタインデー
皆さんはバレンタインデーにチョコを貰いましたか?貰った方は私の敵ですねリア充爆発しろ_:(´ཀ`」 ∠):
魔導学園は日本最高峰の学校であり、優秀な人材も多く『12神族』の血縁者は全てこの学園に在籍している。
しかしいかに優秀といえどまだ子供。バレンタインデーという日に浮かれるのも無理はない。ある者は想いを馳せ、ある者は想いを伝えるためにチョコを作り、そしてある者はリア充を呪い、そしてある者は
「いらっしゃいませー。只今チョコ半額ですよー」
「五個頂戴!」
「500円になりまーす」
「私は10個!」
「私は4つ!」
その後も怒涛のラッシュで女子学生がチョコを買い上げていく。チョコを売りさばくバイトとしては憂鬱になるしかないがこれも仕事だと気合を入れなおす白夜。
1人で何十人もの女子にチョコを売るのはもはや苦行と言っても過言ではないだろう。
チョコの数にも限りがあり、今売っているチョコは限定物でバレンタインデーにしか売られない特売品。
当然手に入れようと女子は躍起になるが、このチョコは150個しかない。
この学園の女子は600人弱。
必然的にバトルを始める女子達。
ピリピリどころかガツガツぶつかり合う女子には恐怖しか湧かない。それもそのはず。今日がチョコ販売の最終日だからだ。
チョコを買えた者は喜んで帰る。買えなかった者はというと
「ちょっと!私まだ買えてないんだけど!」
「売り切れです」
「知らないわよ!早く出しなさいよ!」
「無理です」
「お客様に逆らってんじゃないわよ!いいから出しなさい!」
「話聞けバカ」
白夜が何を言っても聞く耳を持たない女子の集団は次第に白夜を責めるようになっていった。
「そもそもアンタみたいな無能がなんでチョコを売ってるの?チョコが貰えないからバイトして誤魔化してるの?うわー痛いわ〜」
「キモチワル。無能がチョコ売るとかやめてよ。無能が移るじゃない」
「アハハッ、それ言えてる〜」
「閉店なので閉めます」
白夜は無理やり店仕舞いしようとするがシャッターが降りてこない。よく見るとシャッターの出所に氷の魔法が施されて降りないように妨害されている。
「早くチョコ出せって言ってんでしょ!」
「私達も暇じゃないの。早く出してくれない?」
白夜は溜息を吐きながら打開策を練る。この女子の大群は八つ当たりで白夜を攻撃するだろう。それも物理的に。それはいつものことなので構わないのだが、今だけはダメなのだ。なぜなら、チョコはあと2つ手元にあるからだ。
「チョコは売り切れてますからお帰りください。というかシャッターにかけてる氷の魔法解いてください」
「アンタがチョコを寄越したらね」
どうやら目の前の金髪女子が妨害しているようだった。他の女子達も白夜を睨みつけチョコを出せと要求するが、ないものはない。
「だから、売り切れたのでお帰り」
「後ろにチョコが2つあるじゃない。それを出せって言ってんのよ」
「…………これは俺がバイト先の店長に許可貰って買ったものです。商品ではありません」
「買うとか言ってないんだけど。寄越せって言ったの聞こえなかった?」
空気が一変した。チョコが2つある。この言葉を聞いた女子達の目の色が変わり白夜を一斉に見る。
白夜はこの学園で最弱。オマケに日頃からイジメられているので暴力を行う上での容赦などない。ならば必然的とも言えるだろうーー
「『氷槍』!」
「『炎弾』!」
「『風槍』!」
ーー白夜を潰してチョコを奪い取ろうとするのは。
白夜は即座にチョコを手にその場から離脱する。魔導学園では最弱として振舞っているが『加速』のスキルだけは使っているため逃げるだけならなんとかなるだろう。
魔法の雨が白夜が先程までいた店を破壊する。心の中で「これは俺のせいじゃない。俺関係ない知らない」と言い訳をしながら逃げる。
「ちょこまかと……!『氷鎖』!」
氷の鎖が白夜を捕らえようと伸びてくる。かなりの速度で迫る鎖は並の者なら振り切れず捕まるだろう。だからこそ白夜は考える。これにワザと捕まるかどうかを。
「(でもこのチョコは……クソッ!今ばかりはこの状況に腹が立つ!)」
白夜は悪態を心の中で吐きながら目前に迫る氷の鎖にワザと捕まる。鎖は白夜の身体をぐるぐる巻きにして拘束する。
「やっと捕まえた。ほら、チョコ渡しな」
「……………」
それでも差し出さない白夜に女子達は痺れを切らす。
「とっとと出せぇぇ!」
怒声とともに放たれる魔法の嵐に白夜は全てを受ける覚悟をする。
轟音がおこり様々な魔法の衝突で視界が遮られる。
「|『風』《ウィンド』」
誰かが風で視界をクリアにする。そして全員が目を見開き青褪める。そこにいたのは
「おいおい、いくらなんでもチョコはとっちゃいけないと思うけど?」
白夜の弟ーー極夜がいた。先程の魔法は全て極夜が受け切ったのだ。しかし問題はそこではない。なぜならこの女子達は
「ご、ごめんなさい!そいつがチョコをくすねてたから」
「売り切れてないって嘘ついたのはそいつよ!だから私達は制裁しただけで何も悪くない!」
「そのクズが巫山戯たことしたから罰を与えただけなの!」
咄嗟に目配せをして白夜を悪人にするあたり流石と言える。しかし浅慮が過ぎる。兄弟なら白夜がチョコを売るバイトをすることは知っているし、白夜に頼んでチョコを買ってもらうこともできる。つまり
「俺と魔夜が頼んで買ってもらってたチョコなんだけど、それ以外にパクってたって?俺には2個しか見えないけど」
「なっ⁉︎えと、それは……」
この女子の集団で一番目立っていた金髪女子は眼を泳がせて言い訳を考える。極夜は笑顔で対応しているが近くにいる白夜には歯軋りの音が聞こえているのであと少ししたら手を出すと確信していた。
だがそれでは困るので白夜は場の収拾に努める。
「誤解が解けてなにより。そのチョコ売ってた屋台さえ弁償してくれれば特に問題はない。全員で折半よろしく」
じゃ!と片手を上げて即座に立ち去る白夜と極夜。後に残された女子達は呆然とその姿を見送るのだった……。
時刻は夜。とあるボロボロの部屋、というか小屋に明かりが灯っていた。
「これでいいわ。白夜、極夜。終わったわよ」
「やっとか。オイ白夜。いつまでも本読んでんじゃねーよ」
「ラノベ舐めんな。いつまでも読めるっつーの」
「そんな大昔の本が面白いか?」
「面白いね。俺はこの本がなければ生きていけないほどには」
「静かにしないという燃やして、極夜は潰すわよ?」
「「………」」
「よろしい。ほら座りなさい」
白夜と極夜は促されて席に着く。3人の前には、今は亡き母と父が写った唯一の家族写真が置かれていた。そしてその前にはラッピングされているチョコも置いてあった。
3人は無言で手を合わせる。
これは母と父が死んだ時から行なっていることで、行事があるたびにこうやって母と父に供え物をしているのだ。
今回は白夜がチョコを、極夜が包装を、魔夜がラッピングを担当したのだ。
3人は眼を開け両親に話しかける。
「ママ、パパ。私達のチョコ、受け取ってね」
「俺達大丈夫だから見守っててくれ」
「………必ず、復讐を成し遂げるから」
3人はもう一度眼を閉じて思いを伝えると、しんみりとした空気を吹き飛ばすかのように
「このチョコは貰ったっ!」
「俺のだ!」
「お前ら学園でクソ貰ってんだろが!」
チョコ争奪戦が始まる。
「それとは別に決まっているでしょ!」
「白夜に喰われるなら俺が食う!」
「巫山戯んな‼︎特に極夜は嫌がらせのためだけに俺からチョコを奪うな!お前らと違って俺はねぇんだからよ!」
さらりと白夜に嫌がらせ宣言をする極夜にツッコミ、自虐しながらチョコを取ろうとする白夜。
こうして、白夜達のバレンタインデーは過ぎて行くのだった……。
初の番外編!そして学園生活の一部を書きました!学園編とか書きたいなぁと思うこの頃です。




