【眷族戦武】4
準決勝の前に小休憩が入り、白夜と魔夜、極夜……そして水川の4人が控え室にいた。
「魔夜様とてもカッコよかったです‼︎さすがは魔夜様ですね‼︎」
「そ、そう。ありがとう」
「ありがとうだなんて、勿体無いお言葉です‼︎」
やっぱり魔夜のファンだったのだろう。
白夜にあれほどの啖呵を切っていたので予想はできていたと白夜は心の中で思いながらも現実に見た水川の魔夜への浸水っぷりに若干、いやかなり引いていた。
白夜はそれ以上見ていたくないなぁと思考を変え、先程気になっていたことを極夜にぶつける。
「極夜、何でスキル使わなかったんだ?『炎帝の逆鱗』使ってれば勝てたかもだろ」
「【憎悪】に消された」
「なるほどね〜、スキルまでもか…。俺ら魔夜に勝てないんじゃね?」
「……多分」
「「…………、ハァァァァ」」
白夜と極夜は互いに長い溜息をついた。
魔夜の【憎悪】のスキルは、憎んだものなら全てをなかったことにする能力だ。といっても、魔夜が憎悪を解けば2〜3分後には元に戻る。前に手合わせをした時にはステータスのどれか1つだけだったのだが……知らぬ間に強くなっていたらしい。
「そう悲観することないわよ白夜、極夜」
「そうですよ。魔夜様に勝てると思うこと自体間違ってます」
魔夜は慰め、水川は傷口に塩を擦り付ける。
「何で水川がいんの?」
白夜はずっと疑問に思っていたことを口にした。
それに対して水川は
「別にどこにいようが私の勝手でしょ」
「いや、負けたのに何で控え室にいんのかってことを聞いてるんだけど」
「ハァァァ⁉︎負けてないしっ、あの時は体調が悪かっただけだしっ、マ、マグレで勝ったぐらいで調子に乗んじゃないわよ!」
白夜の言葉に威勢良く否定はするが、今の様子からは言い訳にしか聞こえず、実際言い訳だと表情は語っていた。
「…………、そういうことにしておいてやろう」
白夜は面倒臭くなりとりあえず水川の思う通りの反応をすることにした。水川はその言葉に安堵したのかホッとため息をこぼす。
「こいつ面白いなぁ。白夜の彼女?」
その安堵も極夜の巫山戯た言葉で吹き飛んだが。
「な、なな、そんなことある訳ないじゃないですかぁぁぁぁっ‼︎」
「俺の学園生活とこいつの態度からわかるだろ」
水川は憧れの魔夜に必死の形相で否定し、白夜は呆れ顔で否定する。元々そんな関係ではないと理解している魔夜と極夜は頷きながら白夜を可哀想な眼で見る。
「白夜には彼女どころか友達さえいないものね…」
魔夜もまた悪ノリしていた。
「オイコラッ⁉︎別に友達がいないわけじゃないッつーの!作ってないだけだから‼︎」
今度は白夜が全力で否定する。その必死な形相は先の水川以上だった。しかし
「「…………」」
魔夜達は真顔で顔を逸らす。その顔は微塵も白夜の言葉を信じていない眼だった。
「目をそらすナァァァッッ‼︎」
「確かにいなさそうね」
「喧嘩なら買ってやんぞコラァァァ‼︎」
「「よしやるか」」
極夜の手には火柱、魔夜の周囲には色とりどりの魔法が発動している。
「………すみません冗談です」
「「わかればいい」」
「もう嫌だコイツら…」
「アンタって見た目怖いけど、家ではこんな風になっているのね…」
白夜のヘタレぶりが発揮された瞬間だった。
……2対1は卑怯だと思います‼︎そう心で叫ぶ白夜の声は誰にも届かなかった。
そんなこんなで休憩が終わり、準決勝が始まる。
「俺の次の相手は……七神か。俺【12神族】2人も相手にすんのか」
「白夜ごとき【12神族】に潰されればいいのよ」
白夜の呟きに水川が反応する。
「私に勝ったのもマグレなんだし、そろそろ降参した方が身の為よ」
「前向きに善処した上で断る」
「断るの⁉︎善処した上で断るの⁉︎」
俺が言うことを素直に聞くと思ったか?
残念!俺は素直に言うことを聞かないのだ‼︎
なぜなら
「負けたら殺すわよ」
「全力でやらせていただきます‼︎」
これが社会、力無き者は力ある者に支配されるのだ…。ほら、白夜を見る水川の目がだんだん冷たくなっていってるから。まぁ普段と変わらないけどね……。そんな言葉を頭に浮かべながら白夜は涙目になる。
「それでは、七神 拓哉さんと白崎 白夜さんは闘技場に来て下さい」
集合を呼びかけるアナウンスが流れる。
「それじゃ行きますか」
白夜が立ち上がって行こうとすると魔夜と極夜が真剣な表情で白夜を叱咤する。
「白夜、分かってるわね?」
「ここでお前が負けたら舐められる。俺と魔夜は学生の頃からトップ、逆にお前は最下位の成績を演じてきた。だから」
「わかってるっつの。決勝までは負けねーよ。……てかさ、お前ら水川がいんの忘れてただろ?」
「「あ……」」
コイツら今まで隠してきたの暴露しやがった⁉︎
……………メンドくさ、と白夜は魔夜達を止めなかったのだ。
その水川はというと
「ご、ごめんなさい。もしかして何だけど、今最下位の成績を演じてきたって言いました?」
キョトンとした顔で魔夜達に聞き直す。
「「「言ってない」」」
「言いましたよね⁉︎何でそんなに息ぴったりなんですか!」
「「「兄弟だから」」」
見事なシンクロで言い訳をする白夜達。
「そうでしたね‼︎そんなことより、白夜!
どういうことよ、最下位を演じてたって⁉︎」
しかしそんなことで騙せるほど水川は馬鹿ではない。白夜は説明しようと考えたが今は試合の方が大事なので後回しにする。
「その話は後でな。そろそろ行くわ」
「早く潰しなさいよ」
魔夜の言葉に白夜は振り返る。やはり家族の応援もいいものだなと
「帰って寝たいから」
…………いいものだと思うが俺達に限ってはないなと白夜は思い知る。
「励ましはないのかよ…。じゃあ行ってくる」
呆れながら返す言葉に魔夜と極夜は手を振る。
「アンタ絶対に後で教えなさいよ!いい、絶ッッ対にだからね‼︎」
一方で水川は先程の説明を要求する。
「…………」
「無視すんなぁぁぁぁ‼︎」
白夜は水川を無視して闘技場に向かうのだった。
闘技場に着くと既に七神 拓哉がいた。七神のステータスは
七神 拓哉 LV25
筋力:1000
魔力:240
耐久力:1900
敏捷力:360
スキル:【鍛冶神の加護】(武器作成)
確かにステータスは凄いが、余裕で勝てる…のだが、ゴリラみたいな筋肉で身長も171センチの白夜を軽く見下せる213センチの男とやるとか、何かイヤじゃね?こんな奴が同い年とか詐欺だ⁉︎
そんな理不尽に心の中で罵詈雑言を浴びせていると七神が大声で笑いだす。
「がっはっはっは!こんなヒョロそうな奴に負けるとは十一神家もしか大したことはないな!」
白夜を蔑み、戦う前から勝利を確信している七神を冷めた眼で見る白夜。
どうでもいいや。瞬殺しよう。そう思う白夜に開始の合図が告げられる。
「それでは、試合開始‼︎」
「瞬殺してくれるわぁっ‼︎」
七神が叫びながら白夜に突進してくる。
白夜は魔銃を二丁出して、
脳天にピンポイントで同じところに2回ヒットさせ倒した。2度も撃ったのは念のためだったが心配なかったようだ。
もちろん殺してはいないが明日までは眼を覚まさないだろう。そのためにピンポイントで同じ場所に当てて脳震盪を起こさせたのだから。それに白夜を弱者と舐めていた七神の油断も瞬殺された要因だ。神経を張り詰めていれば避けることはできただろうと白夜は心中で考える。
あっけない試合に静まり返る闘技場。
審判の男は目の前の現状に驚きながらも試合終了を知らせる。
「えー……勝者、白崎 白夜!」
少し早めに投稿しました‼︎
明日も投稿しますのでよろしくです!