リベンジ・決着
…………m(__)m
「調子に乗ってんじゃないよ!」
フェルミナの怒声とともに放たれた斬撃が白夜に向かう。
白夜は走りながら躱すとフェルミナと斬り結ぶ。しかし極夜のようにフェルミナを押し込むことはできない。
「オラァッ!」
「馬鹿が」
白夜は押し込まれた大剣を黒の短剣で右に流しながら踏み込み左手に持つ白の短剣で反撃する。フェルミナは無理やり身体を仰向けにして避けるが白夜の肘落としで地面に叩きつけられる。
「ウッーー」
腹部に肘落としをもらい地面に叩きつけられたフェルミナは一瞬呼吸が止まる。
「『竜王爆炎弾』」
「クソがっ!」
息つく暇もなく極夜の追い討ちがくる。フェルミナは身体を気合いで動かし極夜の魔法を斬り裂く。
「『フェル大丈夫か⁉︎』」
「大丈夫さね。それよりもカイの防御を破られた方が問題さね」
フェルミナは厳しい表情でダメージを与えた白夜を睨む。白夜は睨むフェルミナに笑いながら話しかける。
「そんな睨むなよ。ダメージを与えたからどうした?俺達の目的はお前を殺すことだ。んなことで一々驚いてんじゃねーよ。ダメージすら与えられないとでも思ってたのか?傲慢すぎるだろ」
「別にそんなことは考えちゃいないさね。ただこんなにも早く【荒御魂】の防御を破るとは思っていなかっただけでね」
「そうか。ならお前が死ぬのも早いかもな」
「それは別の話さね」
白夜の挑発に挑発で返すフェルミナ。
互いに笑うが、その眼は一切笑っていない。相手の出方を伺いどう殺すかのみを考えていた。先に動いたのは極夜だった。
「『竜王の顎』!」
巨体な炎の竜がフェルミナを噛み砕かんと迫る。
「『剛破斬・紅』!」
斬り裂かれる炎竜。しかし斬り裂かれた炎竜は爆散し無数の球となりフェルミナに降り注ぐ。
「邪魔だ!『剛破斬・蒼』」
地面に大剣を突き立てたフェルミナ。すると地面が隆起し盛り上がっていく。
盛り上がった地面は壁となりフェルミナの盾となる。そのまま反撃に出ようとするフェルミナの視界の隅に影が見え、上を振り向く。
「『重力』!」
「終流・『合技』星墜としぃぃっ!」
「『アカンッ、フェル避けろ‼︎』」
魔夜と白夜の『合技』がヤバイと感じたカイはフェルミナに避けるよう促すが、魔夜の『重力』により逃げようにも逃げれない。
何より速度が足りない。今の白夜は自身の『加速』と『空力脚』によりスピードが増しており、そこに魔夜の『重力』による下への圧力でもはや光速に匹敵している。それを避けろという方が無理な話だ。
必然、避けきれず防御で耐えるしかない。
白夜とフェルミナが激突する。
「「白夜!」」
魔夜と極夜が白夜の名を呼ぶ。辺り一面には粉塵が濛々と舞い上がり、地面は星でも堕ちたかのような穴ができている。
白夜からの返答は聞こえない。
「『風』」
魔夜の魔法により粉塵が晴れ、穴の中心で倒れているフェルミナと斬り合っている白夜がいた。
「「白夜‼︎」」
魔夜と極夜は参戦しようと走るが、すぐにその足を止める。
なぜなら、近づいただけで息ができなくなったからだ。
先程の魔夜と白夜の終流・『合技』星墜としは星が墜落する速度で宙から堕ち、そのまま相手を斬るまたは潰す技だ。
これだけならまだいい。しかし白夜には『宿雷』のスキルがある。このスキルを使ってフェルミナに斬りかかり、膨大なスパーク現象を引き起こしたせいで周囲の空気が分解され一酸化炭素しかない空間が一時的にできる。
このせいで魔夜達は呼吸ができないので近づけないのだ。
これに耐えている白夜には『再生』がフェルミナにはカイの鎧の中なのである程度の空気が含まれており少しの間なら耐えられるのだ。
「終流・『一閃』」
「オラァッ!」
白夜とフェルミナの戦いは互角だった。互いにチャンスを伺いながらも攻撃の手を緩めず執拗に攻め続ける。しかし白夜は短剣。どうあがいても白夜の方が攻撃の手数が多い。
フェルミナが大剣を振り下ろし白夜がそれを受け止めると見せかけて右に流す。このせいで少しのタイムラグがフェルミナにできる。そして見逃す白夜でもなかった。
「終流・『紫電』‼︎」
白夜の連続技がフェルミナの身体を斬り刻むがカイの鎧に阻まれて致命傷を与えることができない。だからこそ
「これで終わりだ!」
白夜は上段に構える。しかし、フェルミナは歴戦の強者。上段に構えようとすれば隙ができるのは必然。そんな隙を逃すフェルミナでもない。
「お前がね!『剛破斬・朱雀』!」
フェルミナの大剣が炎を纏い白夜の身体を斬り刻む瞬間、巨大な火柱が白夜を包み込み焼き尽くすーーはずだった。
「終流・『影刹那』」
「ゴフッ……なん、で……」
「『フェル⁉︎』」
フェルミナの腹部を白夜の短剣が貫いていた。白夜が短剣を引き抜くとフェルミナはその場に倒れる。白夜の短剣が貫いたのは心臓の中心部。回復魔法かスキルを使わなければすぐに死ぬだろうその傷にフェルミナは苦笑する。
「参った。これはどうしようもないさね」
負けを認め、死を覚悟するフェルミナ。しかし魔夜はフェルミナの近くで膝を折ると回復魔法をかけ心臓の傷を塞いでいく。
「何のつもりだい?アンタらは人を殺す覚悟もなく戦ってたのかい?」
フェルミナの厳しい視線に魔夜は微笑で返す。白夜と極夜も剣を鞘に収め魔夜のすることを傍観している。
「『フェル、今は生きることだけ考えろ。死んだら何にもならん』」
「情けをかけて生かされるなんてのは戦士として恥以外の何物でもないさね」
「『フェル!』」
フェルミナとカイが言い争う中、魔夜は回復魔法でフェルミナの傷を完治させる。
「フェルミナ、私は元々殺す気はないわ」
「………どういうことだい?」
「別に殺したところで意味はない。殺し合いで勝てればそれで良かったのよ」
「アタイは死んでない」
「でも治さなければ死ぬ傷を負い、回復できる状況も奪い、何もできない状態だった。ここで貴女は一度死んだと判断できる。だから治したのよ」
フェルミナはキッと魔夜を睨むが嘲笑で返す魔夜。
「魔夜の性格の悪さが滲み出てるよな。完全敗北させて生かすって悪魔かよ」
「悪魔ではなく魔人だろうよ。悪魔でさえ逃げ出すことを平然とやるのが余達の姉だ」
「最悪だよなぁ〜。フェルミナもこれから奴隷として使うつもりだろうし」
「外道極まりないな」
「それな、マジ外道」
好き勝手言い合う白夜と極夜の話に魔夜の額に青筋が浮かび上がる。それに気づかず魔夜を貶し続ける2人の頭上に影が落ちる。
「ん?影?」
「何が……っ!」
「うわ〜、ブチ切れてる…」
頭上の影の正体は魔夜の魔法だった。
「『星の雨』」
加減もない無慈悲な『星の雨』は白夜と極夜に降り注ぐ。オマケに逃げられないよう白夜と極夜の周りには簡易結界が張られており躱すか迎撃するかしかないのだが、『星の雨』は時速数百キロで迫るのだ。それも無数に。迎撃は力のない白夜では不可能。速さが劣る極夜では躱すのは不可能。ならば取る選択肢は一つとばかりに白夜は躱すため『加速』を使い、極夜は迎撃の準備をする。
しかし白夜と極夜の姉は冷酷無慈悲。そんな2人の考えは敢え無く散ることとなる。
「『無慈悲な星の雨』」
簡易結界を破壊しながら落ちてくる『星の雨』は爆散し、掌サイズの大きさとなり降り注ぐ。密度は先程までの倍。一発一発の威力は弱いが躱すスペースはなく、極夜が広範囲に火柱を上げて迎撃しようにも簡易結界の中では酸素を削り窒息する。
結果として
「それで、誰が魔人のように冷酷無慈悲な姉なのかしら?」
「「すみませんでした!」」
白夜と極夜は土下座の体制で魔夜に謝罪する。2人の身体は痛々しく白夜の【再生】も使えないよう【憎悪】で消している。
魔夜は2人が反省しているのを確認するとため息を吐きながら白夜への【憎悪】を解除し、極夜に回復魔法を施す。
それまで放置されていたフェルミナとカイは
呆然としていた……。
リベンジなのに、最後はこうなるのか……。




