執事2
明けましておめでとうございます‼︎
新年なのにバイトが入っている苦痛に耐えながら頑張ります……。マジ働きたくない。
今年も『復讐の夜』をよろしくです!m(__)m
場所は人通りが少ない、控え室から少し離れた裏路地。リーフはそこで男9人に囲まれていた。
「なんでお前みたいなのが合格するんだ?どんな手を使った⁉︎」
「(そんなこと僕に言われてもぉ〜⁉︎)」
リーフは心の中で知らないと叫びながら身体を縮こませる。目の前の男達は全員名のある執事だ。だからこそ執事の階級が下で実力も自分達より下のリーフが合格したことに不満を持っているのだ。
リーフからすれば迷惑なだけだが。
「ぼ、僕も合格するなんて思ってなくて……」
「だろうな。お前みたいなのが合格するなんてありえないからな」
その言葉に他の面々も頷く。リーフとしても自分の方が実力が下なのはわかっているのでなんとも言えないが、それでも合格し自分が選ばれたのだ。そのことについて文句を言われる筋合いはない。リーフは「もう帰っていいですか?」と言おうとしたところで不合格の男達から予想外の言葉を突きつけられる。
「お前、辞退しろ」
「………………………は?」
「だからな、実力のないお前が合格きたのは間違いだから、辞退しろ」
リーフは目の前が真っ白になる。この男達はあろうことか辞退しろと、自分達が合格するのが当然だと、巫山戯た理由でリーフの合格を消そうとしているのだ。
「い、嫌で」
「断ったらお前の家がどうなるかわかるよな?」
この言葉にはリーフも押し黙るしかない。リーフは平民で相手は貴族ではないが名の知れた家。ならば格差があるのは当然であり、リーフの家などあっという間に潰される。
リーフが黙っていると男達はニヤニヤと汚い笑みを浮かべる。
「流石にそこまで馬鹿じゃないようだな。ほら、早く辞退しに行け」
リーフは何も言い返すことができず、ただ黙って従うしかない。一生あるかないかの王子の執事の座。せっかく届いた夢のような場所をこんな下衆どもに明け渡すのが悔しくてたまらないリーフは唇を噛み切る。
それ以上に家族が大事なのだ。ならば仕方ない。他の貴族のところでも執事はできるとリーフは自分を言い聞かせながら王宮に足を運ぼうとするが
「こうなるとわかってはいましたが、予想通りすぎて笑えますね」
裏路地の入り口には王子が立っていた。いつからそこにいたのかわからないが、リーフを囲んでいた男達はそれどころではない。
「あ、あの……これは!」
「ん?何ですか?ああ、言い訳なら結構ですよ。最初からいたので話は全部聞いてます」
王子の言葉に男達は打開策を必死に考える。しかしいくら考えても言い訳は思いつかず、王子からトドメの言葉が送られる。
「それと報告なのですが、先程執事斡旋所にお願いして貴方達は2度と執事として働けないようお願いしましたので新しい働き口を探すのを提案しますよ。ご家族にも了承を得ていますので。ちなみに勘当だそうです」
男達は絶望する。それは今まで積み上げてきたものがなくなり、男達は全てを失ったからだ。膝をつき現実を受け止めきれない者や涙を流す者。先程までリーフを意気揚々と蔑んでいたとは思えない。
王子はリーフの前まで行くと手を掴み裏路地から抜ける。リーフはなるべくその光景を見ないようにして王子について行く。
裏路地を抜けて少し歩き王子は振り向くと晴れやかな笑顔で振り向く。
「気にしなくてもいいですよ。あれは嘘ですから」
「………え、嘘ですか⁉︎」
「もちろん。そこまで私は非道じゃありませんから」
クスクスと笑う王子にリーフは脱力し安堵する。
「では行きましょう」
突然の王子の言葉にリーフは戸惑う。
「どこに行くんですか?」
「貴方の部屋ですよ。ほら早く」
「え、ちょっ⁉︎」
王子は無理やりリーフを引っ張り連れて行くのだった。
その後に聞いた話だが、リーフが採用されたのは王子が気楽に話せる相手で信用できるかどうかが1番の要素だったらしい。短い会話しかしていないがリーフの態度などから王子は信用できると判断して採用に踏み切ったと王子から教えられたリーフは喜びのあまりジャンプして着地に失敗しこけたほどだ。
それからも王子の執事として仕事をこなし、王子最大の秘密を誰にもバレないよう秘匿するなど必死に頑張ってきた。
それなのに
「………あの頃と貴方は変わってしまった。まるで別人のように……」
王子は最初の頃は正義感と優しさを備え、時に悪戯をするような活発なお方だった。それがある日を境に変わってしまった。
3ヶ月前、執事として2年が経ちいつも通り仕事をしていると王子からお呼び出しがかかり部屋まで行くとそこにはもう1人いた。
「どうも〜、テトで〜す」
金髪の軽薄そうな男は笑顔で手を振りながら挨拶をする。リーフは戸惑いながらも会釈し王子を見る。
しかし王子はこちらを見ていない。眼はあっているが、リーフを見ていないのだ。
「さて、君に来てもらったのはある話があるからでね。少し周りから人を遠ざけてくれないかな?」
「使用人は全てこの部屋から外れろ。テト様と私、リーフの3人で大事な話がある」
王子の言葉に部屋の天井や床に隠れていた者達は全て移動を始める。やがて移動し終えるとテトは話を切り出す。
「これから話すことはバレれば斬首ものだ。それでも王子のため、その身を捧げることはできるかい?」
リーフにテトは脅しとも言える言葉で問いかける。リーフ未だこちらを見ていない王子に戸惑いながらもハッキリと決意を伝える。
「王子のためなら喜んで」
「君ならそう言うと思ったよ!では話を続けるよ」
君なら?とテトの言葉に首を傾げながらも話を聞くリーフだったが、すぐに後悔することになった。何故なら
「王はこの国を売るつもりだ」
「…………はい?」
リーフの反応も当然だろう。王が国を売る?そんなことあってはならない。ならないはずだ。リーフは嘘だと思い王子を見るが無表情で何の反応も示さない。
「それで王子と俺で王を殺そうと思ってね。協力してくれるかい?」
「なっ、王を殺す⁉︎本気でそんなことを考えているのですか⁉︎」
信じられないと首を振るがテトと王子は否定しない。
「リーフ、王は民を見捨てたんだ。それも自身の身の安全を確保するために」
「そんな……」
王子の言葉にリーフは項垂れる。王子がこんな場面で嘘を吐くことはないとリーフは知っている。知っているからこそ嘘ではないと理解してしまう。
「もう一度聞こう。君は協力してくれるかい?」
テトの言葉にリーフは思案する。確かに王がこの国を売ったのならばそれに対する処置は必要だ。しかし何故売ったのか?最近の王は税を上げたり王政を他の者にやらせている話は聞いている。今の王は娯楽に興じるばかりで王としての責務は果たしていない。
…………今考えればこの国の王ヤバくないか?
いやいや今はそんなことはどうでもいいとリーフは頭を振る。
「何故王がこの国を売ったのか教えてください」
情報をどうやって得たのかはどうせ教えてもらえない。ならせめて王がこの国を売った理由は知りたい。そう考えたリーフの言葉にテトは笑顔で答える。
「それは近々『化け物の祭り』があるからだよ」
「『化け物の祭り』⁉︎それは確かなのですか⁉︎」
「じゃなきゃ国を捨ててまで逃げたりしないと思うよ〜。まぁ今すぐにってわけじゃない。猶予はあと3ヶ月かな」
「3ヶ月……」
『化け物の祭り』とは『化け物』の大群が大陸を行進することだ。『化け物』は例外もあるが基本群れて行動はしない。互いに殺し合うことも日常茶飯事だ。そんな『化け物』が群れて行動するのは特別な個体、『上位化け物』がいる時だけだ。この『上位化け物』は人間か『化け物』を多く殺した『化け物』が進化した姿だ。『上位化け物』になる条件は個体それぞれだが非常に強力で熟練の傭兵でも手こずるほどだ。
『化け物』にはランクがあり『下位』、『上位』、『完全』、『究極』とあり『下位』は5人の新人の傭兵、『上位』は熟練の傭兵5人、『完全』は熟練の傭兵30人、『究極』は国一つの軍隊で倒せるといったランクづけだ。
『究極』は過去に何度か現れているがそのほとんどが国をいくつも潰すほどの『化け物』でもはや厄災と化している。
「まさか『究極』が来たんですかっ⁉︎」
「いや来てないよ。でも『完全』は少なくとも10体はいたよ〜。それだけでもヤバいのに総数1000は超える大群だからね。そりゃ逃げたくもなるよ」
「せ、1000⁉︎そんな大群がなんでっ」
「ね、ヤバいっしょ?だから協力してよ。王を殺して他の国に要請して救助してもらわないとみんな死んじゃうよ?」
あまりにも現実離れした、しかし現実に起こる話にリーフは頭を抱える。しかし、自分が協力して王を殺し国民を救わなければみんな死ぬ。家族も自分がこれまで出会って来た人達も、そして王子も……。
リーフは悩み抜いた末に、テトと王子を見て答える。
「協力します」
「いい返事だ。王子も喜んでいるよ」
「………ああ、ありがとう」
王の暗殺を企てる3人だったが、まさかそれよりも早く王が殺されることをまだ知らない………。
次回の投稿は明日やります!
おめでたい三が日、全力で書きます_:(´ཀ`」 ∠):




