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復讐の夜  作者: 榊原灰人@vtuber
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執事

クリスマス……ぼっちはどうすれば?

家でアニメ三昧じゃぁぁぁぁ!!(錯乱)

ーーオルシアス王宮・会議部屋ーー


「王様!クラウディア王国から先代の王の死を悼む手紙と就任祝いの手紙が届いております!」


「クラウディア王国に感謝の手紙と1億ほど送ってください」


「王様!ガンズ王国から奴隷を千人程買いたいと申し出がありました!」


「………複数の奴隷商人から買い占めてください。お得意様ですから千二百ほど手配を。それと奴隷には危害を加えないこと、道具としてではなく人間としての配慮もお願いするよう伝えておいてください」


「王様!近頃『化け物』が活発化しておりギルド長から資金の援助の申し出が届いております!」


「援助してください」


「王様!ーー」


それからも会議部屋には他国からの要望や新技術の開発、資金の割り当て、『化け物』への対応など様々な案件を捌いていった。

ようやくひと段落つき、王様は椅子に腰掛ける。


「………いつまでこんなことをすれば…」


つい愚痴をこぼす王様。前王が殺され、新しく王子が王の座に就いた。そこは問題ではない。問題はその後、何故僕が王の仕事を(・・・・・)こなしているんだ(・・・・・・・・)⁉︎

王ーーではなく、幻術の魔法をかけられ王様の姿をしている現王様の執事をしている青年、リーフが王の真似事をするに至った経緯を自問自答する。


王の真似事をする3時間前、執事であるリーフは王子が王として罪人であるボブロ・グス・リーズと白崎 白夜、神無 唯の死刑の間にリーフは王宮の掃除をしていた。

リーフは平民の家に生まれたごく普通の一般人だ。緑の髪に緑の目をもって生まれたため自然に愛されていると親はリーフと名付けた。リーフは昔から人のために動くのが好きな為、将来は執事になろうと決めていた。

中学を卒業して執事養成所に通い、執事としてのスキルを身につけていった。

この時17歳だったリーフにある転機が訪れる。

リーフは平民の出身で本来ならこのような場所で働くことなど出来はしないのだが、王子が「歳が近くて優秀な執事を雇う」と色々な執事斡旋所に要望を提案し、大規模な試験が行われたのだ。応募者は千人近くまで登り、斡旋所はこの人数を削ることにした。試験は面接、実技と二回行い、最後に王子自ら選ぶといった内容だ。リーフも駄目元で応募して最終試験まで残った。最終試験の人数は10人。

リーフ以外の人は本格的に習ってきた人ばかりで、執事ならばその名を知らない人はいないといった有名人ばかりだった。

リーフは執事といっても本格的に学んだわけではなく安い賃金で学べる学校に行っただけで、他の人と比べて劣るのは仕方がなかった。リーフはここまでこれただけでもいいよね……。と自分を慰めていると王子がやってきた。


「「「「ようこそおいでくださいました、王子様」」」」


同時に会釈する執事達。一切の動作の乱れがないその会釈は完璧としか言いようがない。

王子は満足そうに頷きながら用意されていた椅子に腰掛ける。


「さて、皆よく頑張ったな。聞いた話では応募者が千人を超えていたとか。とすまない、脱線したな」


「「「「滅相もございません」」」」


王子がすまないと謝ると執事達はすぐに頭を下げる。一人を除いて。


「………(やらかしたぁぁ‼︎‼︎)」


その一人はーーリーフだった。他の執事からの視線も痛いが1番なのは目の前にいる王子だった。面白いものでも見つけたようなその眼は楽しんでいた。

その後もリーフは王子の冗談に笑ったり、王子が入れたお茶を「わぁ、ありがとうございます!」と言って一息に飲み「このお茶は苦手だなぁ……」と聞こえるくらいの声で呟いてしまったりとやらかしていた。王子はその度に笑いをこらえていたが。


「はぁぁぁ……」


リーフは調理室で溜息を零す。何故厨房かというとお昼休憩で昼食を作る為だ。

リーフは貧乏な為工面しなければならない。幸いにも厨房は貸し出されていて節約できる。しかし


「当然ですよね……皆お金持ちなんですから……」


厨房にはリーフ一人だった。他の者達は王子達と一緒に昼食を食堂でとっている。リーフも一緒に行こうとしたのだが、あまりにも高額だった為断念したのだ。


「よし、完成」


そこには1つの親子丼ができていた。一般的なごく普通の親子丼。

リーフは厨房からちょっとした椅子や机が置いてあるスペースに移動する。


「いただきます」


手を合わせて食事を始めるリーフ。


「美味しそうですねー」


「ブハァァッ⁉︎」


突如背後から現れた王子に驚き吹いてしまうリーフ。王子はクスクスと笑うとリーフの向かいの席に座る。


「一口貰えませんか?とても美味しそうだったので」


「は、はい!勿論です!」


王子の頼みに即座に頷き、親子丼を王子の前に移動させる。リーフは席から立つと王子から少し離れた横に起立する。


「別に立たなくてもいいのに……」


「あの……」


「おっと、これは失礼。それではいただきます」


王子は明るくそう言うと親子丼を口に運ぶ。


「美味しい!これはなんという食べ物ですか?」


「親子丼ですが……」


「親子丼……」


王子はその後も美味しいと言いながら食事をする。一方のリーフは


「(お、お腹空いたぁ…)」


食べようとしていた親子丼を王子に譲り、それを目の前で見ているだけなので空腹感は増すばかり。


「とても美味しかったです。ありがとうございました」


「とんでもないです!ご満足頂けたなら幸いです」


王子のお礼にリーフは慌てて返す。王子は席から立ち上がると部屋の出口に向かう。


「ではついてきてください」


王子はそう言うと部屋から出て行く。


「え?ついて行くって……」


リーフは突然のことに頭が回らずしばらく呆然とする。


「ほら、早くこないと置いていきますよ!」


すると王子が戻ってきて少し拗ねた顔でドアから半分だけ覗き込んでいた。


「は、はい!」


リーフは駆け足で王子の元に向かう。

その後リーフは食堂に連れていかれて高級料理を堪能した。


「はぁぁぁ……駄目だなぁ、僕…」


リーフは控え室で一人愚痴を零していた。何故控え室かというとこれから合格者の発表が行われるからだ。

リーフを除いた面々の表情は自信満々で「合格者は自分だ!」とその眼は語っていた。

食事の後も様々な試験があったのだが、リーフは高く評価しても平均的でどの作業も一流にはいかず並止まりだった。


コンコン


全員が一斉に扉の前に整列する。

ドアが開き、現れたのは王子と護衛達。

護衛の一人が前に進み出ると懐から封筒を取り出す。


「これより、合格者を発表する。これは王子の決定だ。異論も抗議も認めない」


護衛の男は封筒を破って紙を取り出し、リーフ達に緊張が走る。


「合格者は」


「(お願いしますお願いしますお願いします………!)」


「………リーフ!」


「………え?」


リーフは信じられずつい聞き返してしまう。


「リーフ!聞こえたのなら返事をしろ!」


「は、はい!」


呆けているリーフに怒号が飛び慌てて返事をするリーフ。他の参加者達はそんなリーフを睨みつけている。お前が何故選ばれたんだと。


「リーフは後日仕事の内容を話す。それまで自宅で待機しておけ。他の者もご苦労だった」


それだけいうと王子達は部屋から退出していく。後に残されたリーフ達はしばし呆然とする。


「(………早く帰ろう!)」


リーフはいそいそと荷物をまとめると一目散に出口へ


「……オイ!」


「…………何でしょうか?(捕まったぁぁぁぁ!!!!)」


「ちょっと付き合えや」


そう言ってリーフの肩を掴むと歩き出す参加者達。


「(………どうしよう…)」


リーフはこれから起こるであろう出来事に涙目になりながら連行されるのだった。

できれば明日に投稿します。

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