二度目の敗北
投稿しました〜!
「「殺す!」」
「やってみなぁ!」
最初に仕掛けたのはフェルミナだった。
「『剛破斬・翠』!」
飛ぶ斬撃を放つフェルミナ。
「小賢しい!」
極夜は炎を剣に纏わせてクロスに斬る。すると炎が斬撃となりフェルミナの斬撃とぶつかる。2つの剣撃は相殺される。
「『金龍化』」
白夜は『金龍化』を使いフェルミナに接近する。極夜とフェルミナの剣が交わり、地面がひび割れる。拮抗しているかのように見えるが極夜はギリギリもいいところでフェルミナの方に分がある。しかし
「【憤怒】!」
「っ⁉︎急に……!」
極夜が【憤怒】を使ったことでその関係は逆転し極夜が押し込んでいた。
「魔夜!」
「【不倶戴天】」
魔夜は【不倶戴天】でテトと相対した力を引き出す。
「『終わり無き苦痛』』」
極夜とフェルミナの周りを黒い球が隙間なく覆う。
「痛みに悶え狂え」
魔夜が指を鳴らすと黒い球は極夜とフェルミナに迫る。
極夜はフェルミナから離れ黒い球に突っ込む。
「余らの勝ちだ」
極夜は勝利を確信する。魔夜の『終わり無き苦痛』』は触れれば通常の100倍の痛みが身体を襲う。耐えようとして耐えれるものではない。
「極夜、白夜を夢のところまで連れて行くわよ。ハァ、前も死にかけてなかったかしら?」
「安心しな。今殺してやるさね」
魔夜の呟きに答えたのはフェルミナだった。
振り下ろされる大剣を魔夜は間一髪、魔杖で防ぐが力の差は一目瞭然。魔夜は地面に押し込まれて行く。
「魔夜!」
気づいた極夜がフェルミナに斬りかかる。フェルミナは飛びのいて避けそのまま後ろに下がる。
「どういうことだ……!」
「『終わり無き苦痛』』を耐えた…?そんな馬鹿な……」
魔夜と極夜が驚愕の顔でフェルミナを見るが、フェルミナはニヤッと笑うだけで何も答えない。
「『さ〜て、パパッと終わらせますかねぇ〜』」
声の主は【荒御魂】のカイだった。
「……なるほど。そういうカラクリね」
「カラクリ?」
「『終わり無き苦痛』を防げた理由がわかったわ」
「何だと⁉︎」
「それは、躱しなさい!」
魔夜の言葉に反射的に上に飛ぶ極夜。魔夜も上に飛んでおりその下を斬撃が通過する。
「アタイの目の前でお話とは舐められたもんだね」
「「なっ!」」
その更に上にはフェルミナがいた。
「『剛破斬・銀』!」
フェルミナが振り下ろした大剣から無数の小さな銀の刃が魔夜達を空中で斬り刻もうと襲いかかる。
「【瞬間移動】!」
魔夜は【瞬間移動】で極夜の元に飛び、もう一度【瞬間移動】する。
地面に移動した魔夜は即座に攻撃する。
「『氷山』!」
魔夜はフェルミナの頭上に巨大な氷を出現させる。
「全く、こんなものでどうにかできるとでも思ったのかい!」
フェルミナは大剣で氷山を一刀両断する。
「『金龍・光焔』!」
その斬り裂かれた氷山を包み込むほどの焔がフェルミナに迫る。
フェルミナは【荒御魂】を纏い、極夜の攻撃を耐える。荒々しい金色の焔にフェルミナはグッと歯を食いしばり耐えた。
しかし、焔の中で爆発が起きる。
「これは……」
「『嵌められたね〜』」
笑うカイだがフェルミナは歯噛みする。
周りは水蒸気で何も見えない状況。魔夜達は逃げたのだ。
「久しぶりの依頼失敗さね……」
「『油断じゃないのかなぁ〜〜?』」
「そうさねぇ〜……とにかく、今は依頼主のところに戻ろうか」
「『そだね』」
フェルミナは大剣を肩の鞘に収めると王がいる城に歩いて行くのだった……。
「………行ったみたいね」
「そのようだな……」
魔夜達は実は逃げてはおらず、近くの瓦礫に隠れていたのだ。ここは処刑場なので本来はそんなものないのだが、フェルミナが色々と破壊してくれたおかげで隠れる場所ができたのだ。
「ハァァ〜、殺せなかった」
「……………」
魔夜と極夜の顔は渋面になり、先程の戦いを振り返る。魔夜と極夜の2人がかりで殺せなかった相手。そんな人間は『師匠』を除いて2人しかいない。1人は孤児院の院長、柏木 真斗。もう1人は魔導学園校長。
魔夜達は再度溜息を吐く。
「もっと強くならないと」
「ああ」
魔夜と極夜は白夜を抱えて時雨達のところに転移する。
魔夜達が転移した場所は白夜がこの前情報収集に来ていたスラムだった。
「魔夜、極夜!」
ハデスが走ってやってくる。その後ろには
「白夜は無事か⁉︎」
「死んではいないだろうな!」
神無とモルグが魔夜達に詰め寄る。
「急所は避けたようだが重症だ。夢はどこにいる?」
「ここにいるよ〜っと、こりゃヒドイね」
夢はメンドくさ〜と愚痴を吐きながら治療を開始する。
「魔夜達はどうする〜?」
「私も治癒魔法が使えるから大丈夫よ」
そう言うと魔夜は極夜の額に手を当てる。
「『治療』」
極夜の身体の傷が少しづつ消えていく。
やがて消え終わると魔夜は手を離し今度は自分にかける。
「とりあえず大丈夫ね。時雨」
「はい、魔夜お姉様!」
魔夜の呼びかけに即座に答える時雨。ちなみに魔夜が転移した時から後ろにいた。
「貴方が狙われた理由を教えてもらうわよ。水川 時雨。いえ、三神 時雨」
魔夜と極夜は剣呑な雰囲気を漂わせながら魔夜を問い詰める。
「え、えと……それは、白夜が目を覚ましてからでもいいですか?」
時雨は全身から冷や汗を流しながらも提案する。
「その理由は?」
「白夜は知ってたからというか、てっきり話しているものと勘違いしてて……」
時雨の言葉を聞いた魔夜と極夜は矛先を白夜に移す。
「へぇ〜、白夜は知ってたの」
「余らに話すこともしなかったとは、嘆かわしいな」
魔夜と極夜は治療を受けている白夜を睨みつける。
「う、う〜ん……」
「白夜が唸ってるんだけど」
そのせいか白夜は何かに恐怖しているように唸り、夢が魔夜と極夜を注意する。側にいた神無とモルグも視線で訴える。
「ハァ、とりあえず白夜が意識を取り戻し次第話を聞きましょうか」
「此奴らのことも聞かねばならんしな」
極夜が神無とモルグを見ながら言う。
その言葉に魔夜達一同も頷く。
神無は立ち上がり、覚悟を決めて言いたかったことを叫ぶ。
「私は白夜の妻になるものだ!以後よろしく頼む!」
「お前は馬鹿か?この状況で何を言っている……」
突然の爆弾発言に静寂が訪れる。
「……妻、ねぇ……」
言葉を発したのはハデスだ。しかし、誰も反応しない。何故なら眼に光がなく、無表情で神無の背後から魔銃を押し付けているその様はホラーで誰も矛先を向けられたくはなかった。
「……詳しく教えてもらうわよ。自称妻さん」
ハデスの言葉に神無は
「ひ、ひゃい!」
ビビりながら返答するのだった。
フェルミナが強過ぎる……。
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