白夜敗北
せっかくの休日なので投稿しました。
スキルに【】をつけました。前の話も変えていきますのでよろしくです!
ーー「【野獣の本能】!」
禍々しい赤のオーラを放出するフェルミナ。その顔は獰猛に笑い、白夜とモルグの背筋に冷や汗が流れる。
「気ぃ抜くんじゃないよ!」
「っ!」
声は白夜の背後から聞こえる。白夜は振り返ることもせず全力で前に転がる。轟音を出しながら白夜の立っていた場所を大剣が通り過ぎる。あと少し遅れていれば切断されていたと白夜は警戒を高める。
「勘弁しろよ」
「全くだ」
白夜とモルグはフェルミナとの圧倒的な差に歯噛みする。
「あのバカ王子は早く逃げるしアンタは強いし、俺って働きたくないのになんで全部忙しくなんだよ」
白夜は愚痴を言いながら周りを見渡す。
既に民衆は避難しており、まもなく王国の警備隊全員が来るだろう。
「ハァ……モルグ、お前は王子を捕らえてこい」
「…………いいだろう。死ぬなよ」
「善処する。いいから行け」
モルグは白夜とフェルミナを一度見て王子が逃げたであろう王国に走って行く。その間白夜とフェルミナは動かず睨み合っていた。
「いいのか?あんな簡単に行かしても」
「いいさね。依頼は王に私に逆らう愚か者。王に剣を向けていたのはさっきの男もだけど、もしかしたら逃げただけかもしれないしそこまで確かめるのはアタイの仕事には入っていないのさ」
フェルミナはニヤッと笑うと大剣を構え直す。
「それに、アンタは年の割に殺しに慣れすぎている。そんな奴を野放しにするのは馬鹿さね。今まで何人殺したんだい?」
「……よくわかるな」
「同類は見分けやすいのさ。アンタは殺しをなんとも思っていない」
「………………」
白夜は何も答えず黙ってフェルミナを見つめる。
「そしてその眼、アンタの眼は死んでいる。死んでいるのに生きている。こんな気味悪い眼はアタイも初めてだけどね」
「………ほっとけ」
アッハッハッハと笑うフェルミナを白夜は睨みつける。
「お話もこれくらいにして、そろそろ始めようかね」
「それには賛成だ」
同時に2人は地面を蹴り相手に向かう。
「ハッ!」
気合の声と共に大剣を一線するフェルミナ。白夜はそれを受け止めず躱して蹴りを放つ。
フェルミナの身体は僅かに宙に浮いただけで蹴り飛ばすことはできず、フェルミナはその不恰好な体制にも関わらず腕力だけで大剣を振るう。
「っ!」
白夜は反応が遅れ双剣で受け止めるが吹き飛ばされ地面を転がる。
白夜は勢いが収まるとすぐに立ち上がりフェルミナに向かう。
「『剛破斬・翠』!」
フェルミナは上段に構えた大剣を白夜に振り下ろす。白夜とはまだ距離があり、決して届くことはないにも関わらずなぜ?その疑問はすぐに理解した。
「クソがっ!」
白夜は双剣を目の前でクロスさせて斬撃を防ぐ。
「オラオラッ!防いでみな!」
フェルミナはさらに斬撃を飛ばす。白夜を襲っているのは飛ばされた斬撃で風のスキルの影響か少し翠の色が見える。白夜はこれに気づいてギリギリで防ぐことができたのだ。
「『剛破斬・蒼』!」
フェルミナは地面に大剣を突き刺す。
「なんでもありかよっ⁉︎」
すると地面はひび割れ、白夜がいる場所の地面が崩壊していく。白夜は飛んで回避するがフェルミナの思惑通りだった。
「『剛破斬・翠の舞』!」
先程より数を増した斬撃が白夜を襲う。
しかし、白夜は空中を蹴り回避する。
「残念、俺は空を走れる」
白夜は【空力脚】で空を踏みしめて立つ。
「やるねぇ。でも甘いさね!」
フェルミナはそう言うと大剣を横薙ぎに振るう。
「【荒御魂】!」
突如フェルミナの身体を薄い何かが覆う。
そしてフェルミナは足に力を込めて
ドンッッッーー
「カハッ⁉︎」
白夜は飛んできたフェルミナの大剣を受け止めれないと判断し躱すが、斬られていた。
「そらっ!」
「っ⁉︎」
白夜は今度こそ大剣を受け止め、さっきのは躱しきれなかったと判断するが
「……ゲホッ……なるほど、な…」
白夜の腹部を刀が貫いていた。そして白夜を刀で貫いている原因、【荒御魂】が陽気に喋る。
『ども、フェルに憑いとるカイっつーもんや。以後よしなに〜』
ムカつく挨拶をしてくる幽霊に白夜は苛つきながらも打開策を考える。
「流石に気づくのが遅れたね。まぁ、今までに気づいたのは3人しかいないけどね」
フェルミナの悔しそうな口調は白夜がギリギリで心臓に刺さるはずだった刀を避けたからだ。
「へぇ、それは嬉しい。記念すべき4人目なんだし、見逃すとか」
「『それはないね(やろ)』」
白夜の懇願をバッサリ切り捨てる2人に白夜は溜息をつく。。カイは刀を引き抜き、白夜はドサッと地面に倒れる。
「期待は、してなかったけどな……」
白夜は腹部から流れ続ける血のせいで頭が少し朦朧としてきていた。そのせいか双剣からの呪いの声が増加する。
ーー殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺セ殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺………
「さて、何か遺言はあるかい?」
「…………………」
白夜からの反応はなかった。
「いいさね。フッ」
フェルミナは大剣を振り下ろす。
しかし、そこに白夜はいなかった。
「見つけたぞ……!」
声は後ろから聞こえた。フェルミナが振り向くとそこには少し前に戦ったばかりの2人がいた。
「全く、時雨を取り戻すのに時間がかかりすぎたわ」
魔夜は溜息をつきながら魔杖を構える。
「これが最後だ。早く片付けるぞ」
極夜は抱えていた白夜を地面に落とし、腰に掛けている魔剣2本を抜き、魔夜と極夜そしてフェルミナは同時に地面を蹴る。
「「殺す!」」
「やってみなぁ!」
魔夜と極夜の殺意に笑って答えるフェルミナ。そして3人は激突する。
次回の投稿は土曜日です!