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復讐の夜  作者: 榊原灰人@vtuber
54/83

牢屋で春が来た⁉︎

「あー、暇」


白夜はゴローンと寝転がりながら携帯をいじる。神無がこの部屋に来てから1週間、こうして暇な日々を過ごしている。

配食の人が来るのと白夜達を怒りに来る看守以外誰1人としてここには来ない。

白夜達は部屋から出ることも許されず、このように本、漫画、ゲームと暇潰しを延々とし続けているのだ。


「まだ来ねーのかよ……」


白夜は1人愚痴る。


「白夜〜、今何時だ……白夜、その携帯はいつから持っていた?」


神無はジト目で白夜を睨みつける。白夜は笑顔で冷や汗をかきながら視線を逸らしていく。


「…………さて、音楽でも」


「わ、私にも貸せ!本と漫画はいい加減飽きたぞ!」


プリーズ!と鉄格子の隙間から手を出して携帯を渡せと神無は訴える。白夜は隠し持っていたイヤホンを耳につけて音を遮断する。


「ーーーーろ、ーーーーしゅ!」


音楽で聞こえないが所々に神無の声が聞こえる。白夜はそれらも聞こえなくなるよう音を上げ


「ーーー貴様、何をしている!」


「うわっ⁉︎」


急に音楽が聞こえなくなり、変わりに怒声が聞こえる。振り向くとそこにはあの日、白夜を捕らえた警備隊の隊長が額に青筋を立てながら白夜を睨みつけている。

白夜はこの事態を引き起こした張本人、神無を見る。


「(ドヤァァァ)」


「……(ピキッ)」


白夜はドヤ顔を向ける神無にイラっとしながらも打開策を考える。


「……これはなんだ?」


その時間を与えてくれない警備隊の隊長。

白夜は観念する。


「携帯」


「そんなことはわかっている。なぜ、貴様が持っている?この牢屋に入れる時、身体検査はしたはずだが?」


ギロッと睨む警備隊の隊長。元々顔がおっかないこともあってその凄みは増している。


「神無が配食の人からパクってたのを借りた」


「ほほう」


「なっ、白夜、貴様と言う奴は!」


警備隊の隊長に睨まれて神無は即座に白夜を非難する。白夜は知りませんと態度で表し、標的が神無に変わる。実際には白夜が『殺意の衣』(キリングコート)を使い幻覚を見せたのだが。あの暗闇では白夜がスキルを使ったことには気づかなかっただろう。


「さて、事の真偽を確かめるためにも2人にはついて来てもらおうか?」


「「ハァァ⁉︎」」


白夜がそんなことを考えている間にモルグは標的に神無を追加し逃さなかった。白夜達はアイコンタクトをする。


「(この堅物について行ったら長時間縛られるぞ!)」


「(今はいがみ合う時では無いな!手を組もう!)」


「(頼りにしてるぜ!)」


「(貴様もな!)


白夜達は頷きあうと警備隊の隊長に向き直る。そして指を互いに向け合い


「「コイツだけ連れていってください」」


見事にシンクロして互いを売り合う2人。


「「裏切ったなぁぁ!」」


「漫才は今度にしろ。二人共ついてこい」


「お前手を組もうとか言ってたのに裏切るってどう言う事だ!」


「貴様のせいでこのようなことになったのだぞ!男なら責任を取れ!」


「お前が呼んだんだろーが!」


「貴様が貸さないからだろ!」


「いつまでやっている。早くこい」


歪み合う2人にやれやれと溜息をつきながら牢屋の鍵を開ける警備隊の隊長。


「俺はモルグ・ブラウニーだ。モルグさんと呼べ」


自己紹介をする警備隊の隊長、モルグ・ブラウニー。一緒に来ていた警備隊も名乗ろうとしたがアレクの「後にしろ」という言葉で中断する。


「いや知らねーし、名前教えんなよ。犯罪者だぞ俺達」


「その通りだな。犯罪者に名を教えるなど馬鹿の極みだ」


「無能な上司で大変だな」と警備隊を気遣う2人。捕まえられた腹いせに悪口を言う2人の小物さにハァと溜息をつくモルグ。


「馬鹿はお前達だ。俺はこの国の警備を任されている騎士団の隊長だぞ。名前など調べずとも住民に聞けばすぐわかる」


「「マジ?」」


思ったよりも権力があるモルグに驚く2人。

モルグは少しドヤ顔を見せると


「理解したな。ならば早く来い」


再度2人を促す。


「「だが断る」」


そう言ってそれぞれの牢屋に戻り布団に潜る2人。モルグの額に青筋が浮かび上がる。

そして、あることを思いつく。


「白夜、と言ったな。貴様はなぜ王が死んだことをあの時知っていた?」


「ああ?ボブロが勝手に殺したんだろ。俺は知らない」


「ボブロか……、貴様の言う通り奴が王を殺したが、なぜそれを知っている?まだ公表していないのに」


「ハァ?だから……ちょっと待て、公表してないだと?」


白夜はボブロに向き直る。白夜の考えでは王が死ねば少なからず公表はされ、人気がある王子が新たな王につくと考えていた。そこでボブロの罪を世間に公表し死刑になるのを止めて奴隷にさせる。白夜の考えではこうなる予定だったのだが、


「なぜ公表してない?王が死んだんだぞ」


白夜がモルグに食いかかる。


「俺も疑問に思うが、大臣共が王は隠居したので新たに王子を後釜に座らせる。このようにしろと命令して来たのだ」


モルグは不服そうにその時のことを白夜達に教える。


「とにかくだ。白夜、お前からなぜ王が死んだのか、そのことについて聞きたい」


「別にいいけど、なんで神無まで?」


「お前達仲間ではないのか?」


モルグが首を傾げる。


「昨日から観察していてお前達が仲間とおも」


「ハイハイ!仲間です!仲間!」


神無がビシィッと手を挙げて仲間と主張する。白夜ははぁ?と首を傾げるが、神無の考えがすぐにわかった。モルグは取引次第でここから出して貰える。それにはあの日のことを話すのが必須条件。しかし、何の関係もない神無には無理だったがモルグの勘違いで白夜の仲間と思い込んでいるこの状況ならば白夜の協力次第ではここから出して貰える。

そう、白夜の協力次第では……。

白夜は神無に視線を合わせる。


「(お願いだ!ここは合わせてくれ!)」


「(どうしようかなぁ〜)」


再びのアイコンタクト。神無の訴えを白夜はニヤリと笑みを浮かべながら焦らす。

白夜は最初から神無を出すことを条件にしようと思っていたのだ。しかし、必死な人間を見ると楽しくなる外道の白夜は神無で遊ぶ。


「(なんかご褒美がないとなぁ〜)」


「(ほ、褒美⁉︎何が欲しいのだ?)」


「(え〜、それを俺に聞くかな?自分で考えろよ)」


「(う〜む……は!いや待て!だが褒美となると……しかし!)」


「お前達、何をしているのか知らんが早くしろ。どちらか1人だけでも良いのだから」


神無の顔が青褪める。神無はこの2人の王が死んだ話など全く知らないのだ。


「(ど、どうする私!白夜とて男。そういう褒美を求めないとも限らないむしろこの場面なら求めるのは男として自然の摂理。しかし、それは好きな者同士がすることであって私達は偶然ここであっただけで何も知らないし、そういうのは、こう、もう少しお互いのことを知ってから……いやいや、待て!少ししたらいいのか私⁉︎

あー、もうどうすればいい⁉︎)」


頭を抱えてうんうん唸る神無。白夜とモルグは何やってるんだコイツ?と肩をすくめながら溜息をつく。


「(もういい。こうなればヤケだ。責任は取ってもらう!)」


自暴自棄に陥った神無は覚悟を決める。白夜は呑気に「飯でもご馳走してもらおうかなぁ〜。魔夜達に合わせたら楽しそうだな」とはしゃいでいた。

白夜は魔導学園で友達がいなかった。魔夜達と決めたとはいえ寂しい日々だったのは間違いない。白夜とて学生なのだ。放課後友達と遊びに行ったりお話ししたりすることは夢でもあった。しかし、復讐の道を歩むならば周囲の眼を誤魔化し、魔夜達の株を上げる必要があった。そのおかげで白夜の復讐心の現れである『殺意』が迫害の日々で磨かれ、そのことに対する魔夜の『憎悪』が膨れ上がり、何もできない怒りが極夜の『憤怒』を増幅させる。こうして白夜達は今の力を手に入れたのだ。元々それらの感情は1日経つごとに増していたのだが、コントロールと増幅の訓練として追い詰めることにしたのだ。

今ではある程度の制御ができる。

白夜は少し昔のことを思い出し苦笑しながら神無を見る。そこには顔を真っ赤に染めながら何故か覚悟を決めた眼をした神無がいた。

白夜はなぜかわからないが背中に冷や汗が流れる。


「(オイ、なんか暴走してない?一旦落ち着い)」


「白夜、責任を取らなければ恨むからな」


「眼が座ってんだけど⁉︎ちょっと待て何が、んっ⁉︎」


神無は白夜の襟を掴み自身に近づけ、そのまま接吻、つまりキスをした。


「?!!?!!?!」


白夜の思考はパニックに陥った。なぜこうなった?ちょっと待て、ホントになんで⁉︎意味がわからないぃぃ!!てか柔らかいな。………堪能するところじゃねーよ!!!!と意味がわからないことを考え始める。


「………プハッ」


神無が離れる。そこには顔を真っ赤にした神無とそれ以上に顔を真っ赤にする白夜がいた。神無は白夜の顔を見てニコッと笑うとトドメを刺す。


「……責任、取ってもらうからな////」


「な、ななな、何を!」


白夜はしどろもどろになりながら責任の意味を聞く。神無は少し照れながら白夜の逃げ場をなくす。


「き、貴様が褒美を望んだのだろう!ならば私と、け、結婚することを許す!!」


「アホかぁぁぁ⁉︎⁉︎もう、ホント、なんでそうなるーー!!」


「う、うるさい!私だって恥ずかしかったのだぞ!ありがたく結婚しろぉぉ!!」


「なんで知り合って1週間少しの奴と結婚になるんだよ!俺は飯でも奢ってくれたらなぁ〜って期待してただけだっつーの!家族になんて言えばいいんだよ!『牢獄で告白されて結婚する』とでも言えと⁉︎バカじゃねーの!」


「な、ご飯でよかっただと⁉︎なら最初からそう言えばよかったではないか!なぜ回りくどく褒美などと言った!そんな言い回しをされれば勘繰るのが当たり前だろうが!」


「少しからかっただけだろうが!」


白夜と神無はギャーギャー言い合いを始める。


「オイ、そこまでにしろ。全く、連れて行くだけでなぜこうも時間を無駄にするんだお前達は」


モルグはまた溜息をつきながら仲裁に入る。


「「だってコイツが!」」


「後でやれ」


見事にシンクロして互いを指差す2人に怒り心頭のモルグは面倒臭いと放り投げる。

2人は睨み合いながらもこの話は後ですることにしたようだ。


「隊長、今の録画してたんですけど消した方がいいですかね?」


「「なっ⁉︎」」


この言葉に白夜と神無は反応する。まさか撮られているとは思わなかったのだ。


「「消せぇぇ!」」


白夜と神無は団員の男が手に持つ小型カメラを消すために奪おうとする。

しかし、モルグが立ちふさがる。

モルグは伸びる2人の手を手刀ではたき落とし団員の持っていた小型カメラを受け取る。

そして悪どい顔で白夜達に取引を持ちかける。


「なぁ、取引をしないか?」


2人は嫌な顔をしながらも頷くしかなかった。

登場して少しでこんなことになるとは……!

ハデスはどうする⁉︎

そんなこんなで次回の投稿は今週中にします!

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