王の暗殺
すみません、遅くなりました!
ーー魔夜が復讐を終える1時間前、白夜達は手薄になった王宮に忍び込んでいた。なぜ手薄かというと、テトは確実に白夜を殺すために逃げ場を塞ごうとしたためだ。実際には魔夜が行っているのでなんの問題もない。テトも魔夜が相手なら受けて立つだろうと白夜は考えており、見事的中した。
そんなことは知らない白夜達は王宮に忍び込み、王を手分けして探す。
白夜と極夜は1人で、ハデスとタナトス、夢とグロスのメンバーに別れて探す。
白夜は走りながら探す。王宮にはまだ少なくない衛兵が巡回しているが、白夜の『殺意の衣』には幻惑効果がある。このおかげで全くバレずに探せているのだ。
しばらく走り回る白夜だったが、急に立ち止まる。そこはなんの変哲も無い扉だったが、白夜はなんとなく気になりその部屋に入る。
「………すげぇ本の数…」
その部屋は書庫となっており、夥しい数の書物が置いてあった。色んなジャンルの本があり、歴史書から聖書、ライトノベルに文庫、戦争、神話、童話などの数多の種類の本が置いてあった。
「まぁ隠し部屋が定番だけど、どこから探すか……」
白夜は適当に壁をコンコンと叩きながら歩く。これで壁の向こう側が空洞ならば音の違いでわかる。それを暫く続ける白夜。
コンコン、コンコン、コンコン、コォンコン、コンコン……
「………見つけた」
白夜はその壁の前に立つと魔銃を作り出し粉々に壊す。
すると、そこには隠し通路があり白夜の考えどおりだった。
白夜は意気揚々とその部屋に入っていく。
もちろん目的は忘れていない。忘れていないが楽しそうなことにはつい目がいってしまう白夜は「ま、あとはやってくれんだろ」と人任せにしてそのまま隠し通路の奥に入っていくのだった。
一方、極夜は王を発見していた。そこには夢の『天魔』により操られているボブロと他に3人の男達と1人の女性がいた。
扉が少し開いていたのでその隙間から覗いたのだ。
極夜は携帯で白夜達に「見つけた」と連絡する。極夜がそのまま待機をしているとハデスとタナトスが『影移動』で音もなくやってきた。
「極夜さん、残りの人達は?」
「まだ来ていない。白夜のバカは来ないようだがな……!」
極夜は携帯を握り締め苛立ちながら答える。ハデスとタナトスはなんで⁉︎と思い極夜から携帯をとるとそこには白夜からメールが入っていた。内容は「隠し通路見つけたからあとよろしく。終わったら行くけどぶっちゃけ面白く無いし終わったら教えろ」
「「ハァ〜⁉︎」」
白夜のメールにハデスとタナトスは驚愕する。そして1つの決意をする。
「戻ったら1発殴るわ」
「私もご一緒します」
「余は吹き飛ばす。と、そろそろか」
極夜達が白夜への制裁を決意すると同時に王達に動きが生じる。
座している王の傍にボブロが移動し何かを話している。男達と女性は話し合いそちらを見ていない。するとボブロは懐から探検を取り出し王に突き立てる!
鮮血を撒き散らす王。ボブロは先程までの様子から一変、なんの感情も灯さない顔へと変化している。ボブロは何度も王に突き立てる。女性と話していた男達はボブロを引き剥がし殴り飛ばす。
ボブロはそのまま気絶する。
何度も刺された王は息も絶え絶えで女性の方に手を伸ばす。それを見て極夜は最初、奥さんに最期の言葉を言おうとしているのかと思ったが、その表情から全く違うと理解した。その表情は裏切られ、悲しみを宿した顔だった。その表情を向けられた奥さんは悲しむかと思えば無表情で眺めていた。
死の間際の旦那に向ける顔ではなかった。
ボブロを殴り飛ばした男達が王の傍に来る。
その時にはすでに事切れており、奥さんも涙を流して悲しんでいる風を装っていた。
極夜がそれらを確認しているところに夢とグロスがやって来た。
「なんかあった?」
「いや、予定通りだ。戻るぞ」
極夜は何も答えず引き返そうとする。
極夜と一緒に見ていたハデスとタナトスは夢に教えようとしたが、極夜の「今は逃げることが先決だ」の一言により逃走を開始する。
「我は何もしていないな……」
グロスの呟きは誰にも聞かれることはなかった。
「これが隠したかったことか……」
極夜達が逃走を始める頃、白夜は隠し通路を降りて奥の部屋まで来ていた。そこはちょっとした空間があるだけの簡素な部屋だった。
しかし、そこに漂う臭いと物は異質だった。
何年も使われていたのだろう拷問器具や拘束具。壁や床は数年前からついているだろう血の跡。オマケに国から搾り取った税金の独占の証拠書類。これは念の為に残しておいたものなのだろう。
白夜は他にもないか探す。探している途中、床のタイルが微かに上下に動く。白夜は跪いてそのタイルを剥がす。そこにはちょっとした大きさの箱が入っており、白夜は取り出して箱を開ける。
「………………」
白夜は暫くの間箱の中身を見続け、その箱に独占の書類を入れる。
「……ハァ…」
白夜は先程の箱の中身を思い出しながら溜息をつく。
白夜はその箱を持ってこの部屋から出て行こうとするが
『ビィーーーッ!』
「…………………ハァ、やらかしたな」
騒々しい警報が鳴り白夜は顔を顰める。
白夜は頭を掻きながらこれからどう逃げるか思考を始め、実行する。
白夜が警報を鳴らした頃、極夜達は王宮から脱出していた。あと少し遅れていたら白夜のせいで脱出が困難になっていたがその前に脱出することができた面々は安堵の溜息を零していた。
「余は宿に戻る。魔夜もいるだろうしな」
「ちょ、ちょっと待って!白夜はどうするの?」
早々に帰ろうとする極夜にハデスが待ったをかける。
「このまま1人じゃ白夜出て来れないでしょ!だから助けに」
「神とは思えんくらい人間味があるな。甘過ぎる」
ハデスの言葉に意外そうな顔をしながら極夜は返す。
「なっ!別に甘くなんて」
それに対して狼狽するハデス。そこに畳み掛けるように極夜は言い放つ。
「いや、甘い。ここは切り捨てるべき所だ。これは白夜が勝手に招いた事態だ。余には関係がない。死のうと生きようとどうでも良い」
極夜の厳しい言葉にハデスは言葉を失う。
時雨達も何も言わない。極夜の言葉が正しいからだ。確かに白夜1人では厳しいかもしれない。だが全員が助けに向かえば確率は上がる。それと同時に危険の確率も上がるが。
今回、白夜を助けに行くメリットとデメリットを考えればデメリットの方が大きいのだ。
全員が黙っている時に極夜の携帯にメールが届く。極夜は携帯を開き、メールを見る。
「……………稀に思うが、此奴は狂人ではないかと疑ってしまうな…。いや、狂人だな此奴は」
極夜の突然の呟きにハデス達は首を傾げる。極夜は携帯をハデス達に見えるように前に出す。ハデス達はそのメールを見ると心配するのもバカらしくなってしまった。なぜなら
『初の捕虜ヽ(*^ω^*)ノ
死刑の時に色々とぶっ壊すから来いよ!
PS.逃げる準備を獣人と一緒にしとけ』
と、狂った笑み(本人は笑顔)を浮かべた写真付きで送られたのだ。呆れを通り越して怒りが湧いてくる。
極夜は返信に『死ね』と送り宿に戻って行く。ハデス達も今度は何も言わずついて行くのだった……。
王様、一言もなく死んでしまった……:(;゛゜'ω゜'):
次の話であの人が出ます!(意味深)




