復讐の一夜・2
更新遅くなりました〜!
サブタイトルを「復讐の一夜」に変更しました。
「見つけたぞ!!このクソ野郎がぁぁぁぁっっ!!!!」
咆哮を上げテトに突撃する白夜。すでに『殺意』と『加速』を発動し、テトにもギリギリ視認できる速度で接近する。
「誰だよお前!」
テトは白夜のことを覚えていないらしく、文句を言いながら白夜を迎え撃つ。
白夜は抜いた双剣でテトに斬りかかる。
「………なんだその身体は」
「痛いなぁ〜。斬れなくても痛いんだよ!」
テトは白夜の双剣を腕で受け止めた。刃は薄く皮を切るだけで通っていない。
テトは受け止めたまま白夜に蹴りを放つが白夜は躱して再度斬りかかる。
「だから無駄だって〜」
またしてもテトの腕を薄く切るだけで終わってしまう。
「無駄かどうかは俺が決める」
「面倒くさいね、君は」
テトは再度斬りかかろうとする白夜より先に反撃を行う。
テトの上段蹴りを白夜は屈んで躱す。が、そのまま足は振り下ろされ白夜の頭部を的確に狙う。屈んだ姿勢でその速度からは逃げ切れず白夜は双剣で受け止める。
響く轟音。クレーターと見紛うほどの穴を作りながら白夜は歯を食いしばってその踵落としを受け止める。
「やるねぇ〜。なら次だ!」
テトは受け止めた白夜から離れ、崩れた民家の瓦礫を掴み白夜に投擲する。
その速度は白夜でさえまともに視認できなかった。
「っ!……このゴミがぁぁ……‼︎」
白夜は擦りながらも躱す。テトはそんな白夜を笑いながら挑発する。
「そんな怒るなって。仕方ないだろ。君が弱いのがいけないんだよ」
喋りながらも投擲は続けられ白夜は全力で避け続ける。
テトの饒舌な口はさらにまわる。
「ところで君誰?白髪なんて滅多にいないし覚えていそうなものだけど」
この言葉に白夜の殺意は膨れ上がる。殺したい欲求が際限なく湧いてくる。それに呼応して魔剣である双剣からも呪いが流れてくるが
白夜は理性を総動員して止める。
白夜の膨れ上がり続ける殺気に気づかないテトのお喋りは止まらない。
「うーん…………!あ、思い出した!『龍虎』の子供達か!」
『龍虎』。白夜達の親は名の知れた傭兵でそう呼ばれていた。
「ああ、なるほどね〜。復讐かぁ〜。健気な家族愛だねぇ〜」
健気な家族愛?白夜は一瞬思考が空白になる。そして
「あ、あの女の子まだ生きてる?もう一回したいなぁ〜」
この言葉が決め手だった。
白夜は双剣を逆手持ちにして、自身の腹部を突き刺す。
「ガハッ」
「え、何やってんの……?」
突然の白夜の奇行に驚くテト。白夜は双剣を抜き、腹部から血が噴出する。
白夜は血に濡れた双剣を構え、テトに接近する。
「っ⁉︎」
剣を腕で受け止めたテトは苦痛に顔を歪める。先程より威力が増していることで腕に鈍い痛みが発生したのだ。それを確認した白夜はニヤリと笑う。
「ゲホッ、クッソ……」
しかし白夜の方も腹部の傷と多量出血で瀕死だった。白夜は口元の血を拭い、双剣を構える。テトはダメージを与えられたことに屈辱を感じているのか白夜を物凄い形相で睨む。
「お前、覚悟しろよ……、今からは全力でやってやるよ」
テトの言葉に白夜は挑発で返す。
「全力?土下座でもすんのかよ」
テトは魔法で白夜に攻撃する。そこまで威力もない魔法を白夜は双剣で切り裂く。その隙に迫っていたテトは白夜に飛び蹴りを放つが『終流・流水』で避ける。テトは躱されながらもそのまま回転蹴りに切り替える。白夜は屈んで躱しながら生み出した『魔銃』で撃つ。即席で作った『魔銃』はテトには通用せず弾かれる。テトは地面に着地し白夜に反撃の隙ができないよう連打を放つ。白夜は僅かな動作で避け、無理なものは終流・『流水』で避ける。しばらくそれが続いたあと白夜が動く。テトの逃がさないための弱い拳撃が来るのを待っていた白夜は反撃に出る。
テトの拳撃を白夜は避けずに受ける。
たとえ弱い拳撃でもテトの身体能力は異常だ。常人なら気絶するような一撃を白夜は気力で我慢する。
「っっ!」
テトは受け止めた白夜の考えを一瞬で見抜く。避けずに受ければダメージは入るが、耐えきればすぐに反撃に移ることができる。
白夜はテトのガラ空きの懐に入り、全力の連撃を放つ。
「終流・『紫電』!!」
白夜の作り出した型の1つ。元々は10連続斬りを高速で放つ技なのだが、白夜は『宿雷』で雷を纏い『加速』で速度を上げて威力を増した技に変化させた。
白夜はその変化させた技『紫電』をテトに浴びせる。右、左と横薙ぎに斬る。左を振り切った遠心力のまま右を戻して斬る。足を踏ん張り左の剣を突き刺す。剣はテトに僅かに突き刺さる。その状態からさらに一歩踏み込み右の剣を袈裟斬りに振るい、そのまま回転斬りを放つ。回転したあと反転し左で下から斬りあげ、上がった左の剣に合わせるようにクロスして斬る。
この間2秒だった。
「ガハッ」
白夜は膝をつき吐血する。瀕死の状態で負荷のかかる技を使ったのだ。当然身体も悲鳴をあげる。
「ざ〜んねん!これが効いてないんだよね〜」
しかし、白夜の渾身の技はテトに致命傷を与えるにはいかなかった。少し傷ついている程度でテトはピンピンして笑っている。
「あははっ、結局君はこの程度ってことだね。俺が強すぎるのも問題かな」
白夜はテトの言葉を無視しながら観察する。
白夜が無理してまであの技を使ったのには理由があり、あれで倒せるとは微塵も思っていなかった。そもそも白夜はこの男を殺そうと思ったら一瞬で殺せる。なぜなら
「強すぎる?弱すぎ……いや違うな。雑魚すぎる」
「………あ?」
テトは白夜の言葉に笑うのをやめる。白夜は逆に不敵に笑い、相手を苛つかせると(魔夜と極夜から)好評の笑みを浮かべる。
「頭も使えない現状も理解できてない。オマケに強いと勘違いしている雑魚野郎。これがお前だろ。……え〜と、名前知らねぇ…」
「お、前……!」
白夜の挑発にテトは顔を怒りに染める。
さらに白夜が名前を思い出そうと頭を捻り、「う〜ん、殺した後調べればいいか」という言葉に顔を怒りで真っ赤に染める。
「ここまで力の差があるのをわかってないのかなぁ〜!君の方こそ馬鹿じゃないのかい!」
テトは仕返しとばかりに挑発するがあっさり返される。
「君って、さっきお前って言ってただろ。化けの皮剥がれてんぞ雑魚」
白夜は呆れたとばかりに肩をすくめる。
テトは咆哮を上げながら白夜に接近する。
白夜は接近してくるテトを見ながら打破できる案を考えていた。
テトを殺すことならできる。だがそれは白夜がしてはいけない。今は殺してはいけないのだ。白夜が行うべきことは再戦を取り付けること。そこでテトは殺されるべきだ。ならばと白夜は話しかける。
「オイ、提案があるんだが」
テトは拳を振り抜く。白夜はギリギリでそれを躱しテトが舌打ちをする。
「話聞けよ」
「今さら何言ってるんだい。それに、その提案は君が死にそうだからだろ」
テトの指摘に白夜は違うと首を振る。
「別に俺がお前を殺してもいいけどな。それをすると俺も殺されるんだよ」
白夜の言葉にテトは苛立ちの顔で返す。
「俺がお前に殺されるわけ」
「あー、はいはい。それでだ。どうせこの国の王と繋がってるお前だ。再戦はこの国で、全国民の前でしないか?一対一、どちらかが死ぬまでだ」
白夜に流されたテトは苛つきながらも白夜の提案を考える。テト自身『消去』の使い過ぎで疲れているし、この白髪の餓鬼はいつでも殺せる。なら万全の状態にして完膚なきまでに殺す方が楽しい。そう考えたテトは白夜の提案に乗る。
「いいよ。その提案に乗ってあげるよ」
テトは自信満々に言うと白夜は心の中で喝采をあげる。これで復讐を完璧にできると。
「日時は一週間後の昼12時。場所はお前が見つけろ。俺はこの国に来て日が浅いからな」
「それなら闘技場でいいだろう。あそこは昔使われていたこともある立派な場所さ」
日時と場所が決まり、最後にルールを決める。
「負けた方は勝者の言うことを3つ聞くことにする。いいな?」
白夜のルールにテトは付け加える。
「なら『死の誓約』を試合前にしようか」
「構わない」
『死の誓約』とは契約者が交わした誓いを死んでも守らせる呪いである。これを破ろうとすれば催眠にでもかかったように命令を実行する。誰かを殺せと命じれば殺し、情報を吐けと命じれば吐き、死ねと命じれば死ぬ。それが『死の誓約』なのだ。
「あと、勝敗条件だがお前はこちら側を殺せば勝利。こちら側はお前を気絶、または戦闘不能にすれば勝利。これでいいよな?」
「いいさ。勝つのは俺だからね」
テトと白夜は互いに睨み合いながら取り決めを終える。白夜はしばらく睨むと踵を返し、倒れていたタナトスを拾い、魔夜達のところに向かう。
テトは白夜が見えなくなるまでその場を動かなかった。
白夜は魔夜達の元に歩きながら笑っていた。念願の復讐。その1つが成就するかもしれない。そう思うだけで気分が良くなっていた。
「馬鹿な奴だ。お前は絶対に勝てない」
テトが勝てないことを白夜は理解していた。白夜、魔夜、極夜、この3人にはテトは絶対に勝てない。勝つことは決してない。
「無様に死ね、過去の汚物が……アハ、アハハハ、アハハハハハハハハッッ!!!!」
白夜の笑い声が民家に響いていた……。
最近書く量が増えてきて楽しいです!
次回は明日の午後に更新します!