突然の発覚
夏休みがおわってしまう…!
イヤだぁぁぁぁ‼︎‼︎と思うこの頃ですねw
「あ〜、死んだかな?」
「廃人にはなっているでしょうね」
「当然の報いですよ、魔夜お姉様」
喋る3人は夢、魔夜、時雨だった。場所は先程まで絶叫を上げていたガルボの部屋だ。ここにはもう1人、神無さんもいる。
「夢の内容を操作できるとはいえ、白夜はえげつないこと考えますね…」
夢の言葉に時雨と神無は頷く。ガルボは夢のスキル『天魔』により悪夢を見せられていたのだ。ただし、普通の夢と違って感覚がある。どんなことをされても逆らえず、また感覚があるので痛みなどもリアルに伝わるのでタチが悪い。
それを知った白夜は喜々として悪夢の内容を考えてそれを夢に伝えて実行したのだ。
「目的は達したのだから戻りましょうか」
「そうですね」
「オワタ〜」
魔夜は離れる前にガルボを一瞥する。『悪夢』によって心が壊れ廃人と化しているガルボは眼が虚ろになり、生気が感じられない。
「……ゴミが」
一切の慈悲もなく切り捨て、踵を返して部屋を出て行く。残されたガルボは微動だにせず、ただひたすらに座っていた。その後も、延々と………。
ーーガルボが廃人になる少し前。
白夜は1人、宿泊している部屋(金は絡まれた奴等から奪った)で考え事をしていた。
「(ハデス達の身体が人間と同じ……)」
白夜は昼過ぎにハデスが言っていたことを考えていた。白夜はこっそりと魔夜に神様の身体について聞いたが、人間の身体と同じになっているなど聞いたことはないらしい。座学のほとんどがトップの成績の魔夜が言うのだから間違いはないだろう。
そもそも、神様は力をこの地球では使えないだけで身体が人間と同じになることはない。
なら何故ハデスは自身の身体が人間と同じなどと言うのだろう?
この世界を危険に晒した罰として?いくらなんでも仲間の神様を殺せるような措置をとるわけがない。
しかし、ハデス本人が言っているし、ステータスがわかれば……!
「鑑定石だ!」
白夜は部屋を出てハデスの部屋に向かう。一目散に向かって走る白夜はスキルも使い全力疾走する。結果10秒足らずでハデスの部屋にたどり着き、ノックもせずにドアを開ける。
「ハデス、ちょっと鑑定させろ!」
時間は深夜、それぞれの部屋には簡易風呂がありこの時間帯に入っていてもおかしくはない。ゆえに
パサッ
バスタオルで身を包んでいたハデスのタオルが下に落ちる。お風呂上がりなのだろう身体は赤く火照っており上気した頬と瑞々しい髪からも上がったばかりとわかる。
身体つきもさすが神様と言わんばかりの抜群のバランスで、見た目は幼いのにしっかりと女性としての色香がある身体だ。
白夜はそこまで観察して
「そんじゃ鑑定するぞ〜」
だからどうしたと言わんばかりの顔で鑑定をしようとする。
「出てけぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎」
ハデスの叫びが宿全体に響き渡る。
「いい加減に機嫌直せよ。悪かったって」
「これでも乙女なのよ。裸を見られただけでも殺したいのに無視して鑑定をしようとするとか……、男としてどうなのよ!」
現在白夜は正座しており、ハデスはベッドに腰掛けながら説教をしている。
ハデスは裸を見られた羞恥心と裸を見てなお鑑定しか興味がなかった白夜に怒っているのだが、白夜としては部屋に鍵をかけていないハデスが悪いと思っているので全く反省していない。
「ちょっと聞いてるの白夜!」
「聞いてるよ。男としてって、そりゃ多少の興味はあるけど……」
白夜の意外と素直な言葉に一瞬唖然とするハデス。そしてここぞとばかりに攻める。
「へぇ〜、やっぱり興味あるんだ〜。男だもんねぇ〜」
ハデスは愉快な顔で白夜を囃し立てるが、白夜の顔からは表情が失われていた。代わりといわんばかりのハデスではなく、何かに向けられた刺すような殺意が部屋を満たす。
「びゃ、白夜!」
「……っ!」
ハデスに名前を呼ばれて正気になる白夜。さっきまで部屋に充満していた殺気は霧散していた。
「悪い、ちょっと思い出してな…」
「思い出して?……!」
ハデスは白夜の言葉で思い出した。白夜達の過去はーー
「ごめん……」
ハデスは即座に謝る。このことに関してだけは全面的にハデスが悪い。安易に囃し立てていいような話題ではないだけに先程の行動は軽率だったとハデスは後悔していた。
白夜も態度から本気だと感じ、ハデスを許す。
「気にするな。元々は俺が悪いしな。だから、まぁ、裸を見られた件を不問にするなら許すことにする」
白夜は場の空気を変えるため明るく冗談を言いながらハデスに提案する。ハデスも白夜の考えに気づきそれに乗っかる。
「わかったわ、手打ちにする。それで一体何しに来たの?」
ハデスは話題を変えるため白夜が何のために部屋に来たのか質問した。
「ああ、ちょっと気になってな。1回鑑定させてくれ」
白夜は真面目な顔をしてハデスに頼み込む。
「別にいいけど……」
「よし、ならやるか」
白夜は持ってきていた鑑定石をハデスにかざす。石は淡く光り、やがて消えた。
「よし、鑑定完了。内容は…」
「見せて」
白夜とハデスは並んで座り、鑑定の結果を見た。内容は
ハデス LV9
筋力:67
魔力:690
耐久力:101
敏捷力:92
スキル:『冥王の恩恵』『死の加護』
称号:『神失』
「やっぱなぁ〜」
白夜は予想通りの結果に納得する。
「何コレ……」
ハデスは訳がわからないと頭を抱えている。どうやら知らなかったようだ。
「神の身体じゃないってのは聞いて知ってたけど、神自体やめてるよな…これ」
称号の『神失』。これは神としての力を失ったということだ。つまり、ハデスは文字通り人間と同じような身体になってしまったということだ。
「なんで……」
ハデスは突然のことで呆然としている。
それもそうだ。いつの間にか神の力を失っているのだから。
しかし……
「スキルは出鱈目だろ。『死の加護』は凶悪すぎるし、『冥王の恩恵』は元々は ハデスが与えるスキルだろ。お前、強すぎるだろ……」
白夜は戦慄していた。白夜は学園の授業は全て適当に聞き流していたが『死の加護』についてだけは調べていた。それは『死の加護』を手に入れたかったからだ。『死の加護』の能力は即死付与の呪い。素手又は武器で相手に傷をつけることが条件で発動し、傷の深さで相手が死ぬ確率が上がる。正にチートスキル。『冥王の恩恵』は他の『12神族』と同じような神から貰う上位スキルだ。白夜達は授かる際に捧げる供物のお金を持っていなかったのでしていなかったが、どちらにせよハデスが神ではなくなっているのだから無理だっただろう。
「アタシ、は……」
「え、ハデス⁉︎」
ハデスは泣いていた。これまでどんなに辛いことがあっても踏ん張り頑張ってきたハデス。それはいつか許されて、再び神として認めてもらうため、この世界の人達と笑いあい、他の神達との関係も修復するため、そのことだけを考えてこの2000年の間タナトスと頑張り続けた。
それにハデスは約束していた。神としてやり直せたらタナトスを副神にしてあげる、と。
「ごめん、ごめんね、タナトス……、ごめんね……!」
白夜は嗚咽を漏らし泣いているハデスに言葉をかけれなかった。白夜は途方にくれ、とりあえずベッドで身体を縮めながら泣いているハデスを慰めるため行動した。
「あ〜、泣き終わったら言え。一気に吐き出せば収まるだろ」
白夜はそう言葉をかけながら頭を撫でる。優しく、規則的にゆっくりと…。
ハデスは白夜に飛びつき、思い切り泣いた。
白夜の服は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり、少し顔は引き攣ったが、すぐに優しい顔になりその後10分程ハデスは泣き続けた。
ハデス、まさかの神じゃない⁉︎Σ(゜д゜lll)
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