情報収集
少し早めに投稿します。
「でかいなぁ〜…」
白夜の感嘆の声に一同も頷く。それ程までに大きな国だったのだ。
現在、白夜達がいるのはオルシアス王国だ。
白夜達がいる国、オルシアス王国はグロス達の村からかなり離れた場所にあった。
こちらの国は、東の国・オルシアス王国、西の国・クラウディア王国、南の国・ハルベルト王国、北の国・ガンズ王国の4つの国がある。
オルシアス王国はその中でも商業に発展しており、経済力では随一だ。そして
「その分だけ、奴隷も多いってことか……」
白夜が独り言を呟きながら見る視線の先には鎖に繋がれ働かされている人がいた。まだ幼い、10歳くらいの子供だ。
「胸糞悪いな」
「この国自体に問題がありそうね」
「酷いですね…」
「ホント最悪…」
「「……」」
嫌悪感を露わにする白夜達一同。と同時にグロス達がここにいなくてよかったと安堵する。
グロス達には念のため少し離れた場所で待機してもらっていたのが功を奏したようだ。
「とにかく情報がいる。3つのグループに分かれて情報収集。いいか?」
全員が頷くのを見て白夜はグループを分ける。
結果、白夜・ハデス・タナトスのグループに魔夜・時雨のグループ、極夜・夢の3グループに分かれた。
「よし、それじゃ各グループで」
「白夜、ちょっと話をしましょうか?」
魔夜がニコリと笑いながら肩に手を置く。その眼は全く笑っておらず吹雪を連想させるほど冷たい眼差しだった。
「何だよ?これが無難だろ」
白夜は言い訳をする。
「無難という言葉を理解しているかしら?そもそも極夜と夢の2人が一緒の時点でダメなのは目に見えているわよね。問題が起こるの確定じゃない」
しかし魔夜の前では全くの無意味。そもそも白夜も「この2人なら絶対何かやるな」という確信があったのでなおさら否定はできないが、それでもこの組み合わせにするしかなかったのだ。
「魔夜お姉様と、2人きり……ふふ、ふふふふ!!」
時雨が不気味に笑う様子を見て押し付ける気満々の白夜。もし魔夜以外と組ませたら何をするかわかったものではない。それが時雨である。
「時雨、魔夜と一緒で不満はあるか?」
なので時雨に話を振る。魔夜はしまった!と焦るが後の祭りだ。
「身にあまる喜びに決まってるでしょ!魔夜お姉様、全力で頑張りますね‼︎」
時雨の鬼気迫る迫力の前では
「あ、うん、頑張って……」
あの魔夜でさえ何も言えないのだった……。
白夜達は一旦分かれ、情報収集を始めた。
魔夜達には王国の張り紙や冒険者からの情報収集。極夜達には酒場。そして白夜達の情報収集の場所は
「何でこんなところに……」
「ハデス様、絶対にはぐれないで下さいね!」
白夜達は貧民区での情報収集をしている。
何故ここに白夜達が来ることになったかというと、
「俺はああいう人間と似ているから」
という理由でここに来ていたのだ。連れてこられたハデスとタナトスは堪ったものではない。オマケに2人とも美人な為、先程から視線が凄いのだ。
「ここはやめとかない?危険そうだし」
ハデスが白夜に中止を呼びかけるが
「いいじゃん。何か面白いことあるかもよ」
笑いながらはぐらかし止める気配は一切なかった。ハデスとタナトスは白夜の態度に諦めてついていくことにした。
白夜達が貧民区を見回って1時間くらい経つ頃、白夜が「そろそろ休憩しようか」と提案したのでお昼に入っている。場所は貧民区のままなので油断はできないが、白夜の気の抜けている様子を見て警戒を解き、食事に集中するハデスとタナトス。ちなみに食材は獣人達から貰ったものである。
食事も終わり、行動を再開しようとする白夜達に近づいてくる影があった。
「やっとか……」
白夜の言葉にそちらを見ると、下卑た視線をハデス達に向けながら近づいてくる10人の集団がいた。
やがて白夜達の前に立つと、ガタイのいいリーダー格の男が口を開く。
「こんな所でお食事とは、わかってんのか?少〜し、大人の社会ってやつを教えてやった方がいいらしいな?」
その言葉にゲラゲラと下品な笑い声をあげる集団。ハデスとタナトスは涙目になっており、白夜は笑顔で集団を迎えている。
「ど〜もお兄さん方。その大人の社会ってやつをご教授して頂けるとは、感謝の言葉も出ません」
なんと、白夜は笑顔で集団を迎え、下手に出ているのだ。その態度に集団の男達は益々笑みを深め、白夜を嘲笑う。
「身分がわかってんじゃねーか。見逃してやるからとっとと行きな。お嬢さん方はたっぷりと可愛がってやるからよ」
再び起こる笑い声。ハデスとタナトスは白夜に助けを求める視線を送るが、その視線の先には
「………ハハ、クズしかいねぇのかよ」
瞳に壮絶な殺意を宿した白夜の顔があった。元々の目つきの悪さと暗さにより一層恐怖が際立っている。
「あん?なんか言ったか?」
そんな白夜の顔に気づかず笑っていた男達は、白夜の呟きが聞こえ振り向くと、途轍もなく凶悪な顔をしている白夜に即座に警戒態勢を取る。
「その反抗的な眼はなんだオイ!死にてぇーのかクソガキ!!」
高圧的な態度で白夜をビビらせようとするリーダー格の男に白夜は先程の笑顔とは別物の、相手を侮蔑する笑みを浮かべながら返す。
「こっちのセリフだクズ。その皮剥いで石で削りながら痛みでショック死させてやるよ」
過激な殺害方法を口にしながら白夜は行動に出る。まずリーダー格の男の近くにいた仲間に向かって作成した魔銃・雷光を放つ。文字通り光の速さで放たれた弾は男の額を貫通し絶命させる。
「野郎っ!」
男達は今更ながらに構えるが既に遅い。白夜は魔銃を消して一瞬で間を詰め、スキル:宿雷を使い手刀で2人の男の胸を貫く。リーダー格の男が指示を出そうとするが白夜が死体を投擲しリーダー格の男の口を封じる。その間に仲間の男達は剣で斬りかかり、避けては腹部に打撃を浴びて蹲り、顎に蹴りを放ち昏倒させられ、電流を流され気絶する。他の男達も奮闘するが擦り傷1つつけられずに同じような末路を辿る。リーダー格の男が参戦しようとした時には全員地に伏していた。
この間わずか5秒である。
「こ、このクソガキがぁぁっ‼︎」
リーダー格の男は大剣を白夜に向かって振り抜く。リーダーだけあってその剣撃は中々のものだった。
「まぁクソ弱ぇことに変わりはないが」
白夜は大剣を片手で掴み取る。
「なっ、そんなバカな⁉︎」
「バカはお前だ、よっ!」
言葉と共に大剣をリーダー格の男から奪い取り、白夜は奪った大剣でリーダー格の男の両足を一気に斬る。
「がっ、あ゛あ゛あ゛あ゛っ⁉︎⁉︎」
「うるっせぇなぁ…」
白夜はうるさいと耳を手でふさぐ。
白夜がリーダー格の男の大剣を片手で掴み取ったのには種がある。白夜はスキル:宿雷を使い、自身の生体電気の活性を促したのだ。これにより腕の反射を早め大剣を簡単に掴み取ることができた。剣速は並より上だったが、所詮はその程度であり余裕で眼で追えた。ゆえに白夜は腕にのみスキル:宿雷を使って掴むことにしたのだ。本来ならこれに加えて更に脳に電流を流して活性化させ思考判断を上げるのだ。そんなことをすれば脳がオーバーヒートして一週間は頭痛がするので滅多にしないが。
「さて、俺が最初に言ったことは、忘れたりしてないよな?」
白夜が笑顔でリーダー格の男に話しかける。ハデスとタナトスがドン引きし、男達も震えるような笑顔だ。しかも白夜はスキル:『殺意の衣』を纏い、相手の恐怖どころかハデス達も恐怖するようなことになっている。
「オイオイ、何震えてんだ?」
白夜は笑顔のまま大剣を足を失ったリーダー格の男の右腕に刺し、切断する。
「っっ、あ゛あ゛ぁぁぁぁっ‼︎」
再び絶叫するリーダー格の男。白夜は男に近づき、提案する。
「ククク、ここでビッグチャンス到来だ」
「ひっ、な、何を」
「黙って聞けよ」
白夜の突然の提案に恐怖するリーダー格の男。仲間の男達は倒れた状態でそんな白夜とリーダー格の男を見る。白夜は全ての視線が自分に向くことを確認すると、ある提案をした。
「お仲間は残り6人。何で6人も残したと思う?」
「6、な…んで」
白夜の質問に意識が朦朧としだしたリーダー格の男は理解できない。
「あ〜、お前じゃ無理か。なら仲間でいいや」
白夜は1人で納得し、仲間の男にサイコロを渡し、選択肢を2つ与える。
「奇数か偶数を選べ。外せば全員殺す。当たればその人数分殺して残りは逃がしてやるよ」
白夜の理不尽な選択肢に戦慄する。そのルールならば、誰かが必ず死ぬからだ。
「そ、それは」
仲間の男は説得しようとするが、待っていましたとばかりに白夜は次の提案をする。
「だよなぁ、嫌だよな!だからこそのビッグチャンス到来だ」
白夜は救済の選択肢、3つ目の道を作る。その選択肢は希望に溢れ、現実を見る選択肢。
「数字を1つ選び、外せば全員から情報を得た上で殺す。当てれば全員生き残る。さぁ、どうする?」
仲間の男は考える。魅力的な提案だが確率は低い。なら仲間を切り捨てて生き残る確率が高い方にかける?いや、そんなことをしてと俺には行き場所がない。ならどうする?1発逆転に賭けるか?いやしかし……などと考える男を見ながら笑みを浮かべる白夜。
そして、仲間の男は決断した。
「い、1で頼む…」
「あいよ。じゃ、転がせ」
白夜が承諾し、男は深刻な顔でサイコロを見て
「頼む…当たれ!」
転がした!サイコロは地面をコロコロと転がり白夜と男の中央で何度か跳ね、そして止まる。
「や、やったぞ!1を出したぞ‼︎」
その言葉に喜ぶ男達。生き残れると、帰れると喜ぶ男達に絶望が訪れる。
「よかったなぁ〜、まぁ殺すけど」
白夜の言葉に戸惑う男達。
「約束が違うぞ!ちゃんと1を出しただろ‼︎」
「それで何で生かされると思ったんだよ?こんなもん遊びに決まってんだろ」
白夜は何の戸惑いもなく言った。文字通りに必死な男達を見て楽しむ、それだけのために提案した遊びだった。
「だったら、何で」
「希望が見えたその顔を絶望させるため」
白夜の言葉に声を失う男達。彼等は理解した。もはや生き残ることはできないと。
諦観に入る男達に白夜は容赦なく追い打ちをかける。
「勿論お前達は安らかに殺すから、安心してくれていい。家族がいる奴は売り払うか殺すかするけど、まぁ関係ないか」
この言葉に2人の男が顔を青褪める。白夜はそれを目の端で確認し、また選択肢を与える。
「あ、こんなのはどうだ?俺は情報収集をしていてな。情報をくれるってんなら見逃してやるよ」
「そんなこと言って」
「嘘だと思うなら別にいいぜ。ただな、それをしたら2人の家族はどうなるんだろうな!」
満面の笑みで顔を青褪めた男2人を見る白夜。その笑みは狂気と言っても差し支えないだろう。
「わかった!俺達が知っていることは何でも話す!だから」
「頼む!家族には、家族だけは‼︎」
家族持ちである男2人は必死に懇願する。周りの男達も頭を下げ訴える。
「うーん、それだとコイツは死ぬがいいか?」
白夜は足元に転がる瀕死のリーダー格の男を足で小突きながら質問する。それに男達は目に憎悪を込めながら吐き棄てる。
「むしろ殺ってくれ。そいつに脅されたから従ってただけだ」
聞けば最初に殺した3人以外は全員脅されていただけらしい。すごい幸運だなコイツ等と白夜は思いながら、男達の意思を確認し行動に移す。
「まぁそういうわけだ。宣言通りの殺し方をしてやるよ」
白夜はそれだけ言うとリーダー格の男の残っていた左手の皮を摘み、一気に剥いだ。
「ギィッ、あ゛あ゛っ」
更に剝ぐ。
「やめ」
駄目押しに剝ぐ。
「っ……、」
壮絶な痛みに悶絶するリーダー格の男。白夜は笑いながらそれを観察する。
「さて、そこの石とってくれ」
白夜は男の近くの地面に落ちていた表面がざらついた石も要求する。
白夜はそれを受け取ると
「何秒持つかなぁ?」
ガリガリ
「っ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ」
ガリガリ
「ッッッ⁉︎ イダイ、イダイ〜‼︎」
ガリガリガリガリ
「ヤベデグレッ、ヤメ」
ガリガリガリガリガリガリガリガリ
「ウゴッ、ガッ…」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ
「…………………」
ガリガリガリガリガリ……
「………ん?ああ、死んだか。記録は29秒。意外に持ったな」
白夜は表情を変えることなく、リーダー格の男の死体を魔銃・喰炎で燃やし証拠隠滅。
「それじゃ、色々聞こうかな」
白夜は嘔吐している男達を見ながら話しかける。
………ちなみにハデスとタナトスは襲われた時に避難しており、戻ってきたタイミングが白夜の極悪非道な殺人ショー最中で、直視し嘔吐したタナトスをハデスが快方している。
「……マジかよ神様…」と呟く白夜の声に『アンタが可笑しいのよ‼︎」と突っ込むハデスに男達が心で賛同するのは仕方のないことだったと言えるだろう。
白夜の久々の活躍がスプラッタです……。




