条件
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「一応聞こう。我等を助ける際の要求は何だ?」
グロスは白夜を睨みながら問う。白夜はそれをメンドくさいと眼で表現しながら返事を返す。
「俺達は人間の住む国に行きたい。だがお前達は人間に迫害されているし案内したくないだろう。それでお前達に恩を売りつつ、いざって時は力を借りることができるようにするために迫害者全員を殺す。どちらも得する一石二鳥だ。これでどうだ?」
要するに仕返ししてやるから案内といざという時力を貸せ。
これが白夜達の要求である。
しかし
「お前達では無理だ。殺されるのがオチだろう」
グロスは白夜達では無理だと断言する。
「なぜそう思う?」
「先の戦いで実力があるのはわかった。それでも無理だ。個々の力が高いだけでは勝てない」
グロスは嘘を言っていない。態度からも真摯に答えているのがわかる。
「人数が多い、ってことか?」
「そうだ。ざっと1000人以上はいるだろうな」
「人数ならお前達の方が多いだろ」
「実力差がありすぎる上に、こちらには戦えない者もいる」
その言葉に白夜達一同は納得する。
「なるほど、厳しいのはわかった。なら奪還はどうだ?攫われた獣人を助けるのなら可能だろ?」
白夜の問いにまたしてもグロスは首を振る。
「恐らくだが、無理だ。いや、1人を除けば可能、だろうな……」
グロスの変な物言いが引っかかる白夜達一同。
「あの、どういう意味ですか?」
それまで黙っていた時雨が質問する。
グロスは少し考えて、口を開く。
「我の、我の娘が…、貴族の豚に攫われたのだ……!」
グロスは怒りと後悔を滲ませた悲痛な叫びを上げる。
「攫われたのは一週間前だ。その時、我もいた……いたが、力が及ばなかった……。しかも奴は、あの外道はあろうことか結婚式を挙げるなど!あのっ、あの外道はぁぁぁぁっ‼︎」
グロスの叫びはあまりにも痛々しく、怒りに震えていた。攫われる娘を救えなかった後悔。娘を奪われた挙句に貶められる怒り。この2つがグロスの心を削っていたのだろう。
目に涙を滲ませながら話すグロスは余りにも悲痛だった。
「それで、貴様は何をしている?」
しかし、極夜はそんなことなどどうでもいいと質問する。
「何を、だと…?」
「娘が攫われた貴様の心中は穏やかではないだろう。それは理解している。ならば、今ら貴様は何故こんなところにいる?」
極夜はグロスを追い詰めるかのごとく質問を重ねる。
「それは言ったはずだ!力が及ばなかったと」
「及ばないからどうした!そんなことで諦めたのか!!」
グロスを一蹴する極夜。グロスは何故だと周りを見るが、白夜達も同じ眼でグロスを見る。何故助けに行かないのだと。
「数が足りない。力がない。実力差がある。
それがどうした⁉︎そんな理由で諦める貴様は親なのか!我が子のために命をかけることもできない半端者に甘んじるのか⁉︎」
極夜の言葉にグロスの眼が吊りあがり、極夜に掴みかかろうとするが
「カハッ⁉︎」
白夜の腹部への打撃で床に蹲る。白夜は蹲るグロスの前に膝をつき、手を差し出しながら話す。
「グロス、お前は『長』だから助けに行けなかった、違うか?」
白夜の言葉にグロスは視線を床に落とす。その態度からもわかるように、自分の娘が攫われた時だけ助けに行くのは『長』としてできない。助けに行きたくとも、行くことはできなかった。
「それを俺達に譲れ。お前達の怒りを引き受け、外道を殺し、攫われた獣人を、お前の娘を助け出す」
「だ、だが、奴らは力だけはある。そんな危険なことを」
「力があるからどうした。なら人質を取ればいい。脅せばいい。嵌めればいい。どんな手を使っても殺せばいい」
白夜の言葉に魔夜達も頷く。
「グロス。俺達が獣人を救えばお前達一族は狙われ続けるだろう。それでも救いたいか?」
グロスは白夜の差し出された手を凝視する。この手を取ればどちらにせよ人間にあらゆる意味で狙われる。成功すれば人類に仇なした敵として。失敗すれば奴隷として。なら取る手は1つ。
「頼む。仲間を、娘を救う力を貸してくれ!」
グロスは白夜の手を取る。その眼は力強く、覚悟を宿していた。
「よかった〜。これで『助けてくれ』なんて言ってたら極夜に殺されてたぞ」
「「「え?」」」
白夜の言葉にグロス、ハデス、タナトス、時雨が驚き極夜を見ると
「……フン」
密かに発動していた『焔槍』を解除した。
それを確認したグロスは冷や汗をかきながら安堵する。本当によかったと。
「それじゃ、その人間の国まで連れてってもらおうか?」
白夜の言葉にグロスは気持ちを切り替え、力強く頷いた。
そして、2日かけて人間の国に向かう白夜達だった。
白夜があまり活躍していない……!
次の投稿では白夜の戦闘シーンを書きたいな……。




