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復讐の夜  作者: 榊原灰人@vtuber
30/83

遭遇

ちょっと早めに投稿しました〜。

「ん? お前らレベル上がってないのか?」


白夜は魔夜と極夜のステータスを見て、レベルが上がってないことに気づいた。魔夜は雑魚相手だったから仕方ないかもしれないが、極夜はレベル70オーバーの相手と戦ったのだ。上らなければおかしい。


「あの愚者はレベルを偽っていた。レベル70は何かのスキルかアイテムといったところだろうよ」


極夜はひどく不愉快な表情を浮かべながら吐き棄てる。


「何でわかんだ、そんなこと?」


この白夜の質問に極夜はさらに不愉快な表情をしながら答える。


「……………師匠に比べて技術が拙かった。師匠と比べるのもおかしいがな……」


極夜のこの言葉に一気に白夜と魔夜の顔が引き攣る。


「魔夜お姉様大丈夫ですか?顔色が急に悪くなりましたが…」


時雨が顔色が悪くなった魔夜を気遣う。


「ええ……大丈夫…。師匠は今いないから……大丈夫…大丈夫………」


「全然大丈夫じゃなかった⁉︎」


「魔夜が一番師匠のお気に入りだったからな〜……仕方ねぇよ…」


白夜はどこか諦めきった表情で呟く。時雨は魔夜を励まそうとするが、魔夜はブツブツとうわ言を言い続けている。


「白夜、そんなに師匠という方は怖かったの?」


ハデスは白夜達の弱気な姿を見て、この兄弟にそこまでさせる師匠なる人物が気になり聞く。白夜は一瞬考えた後、口を開いた。


「とりあえず安全なところについたら教えてやるよ。まずはこのガイコクで生きている人間に会わねーと」


「わかった。後で教えなさいよ」


ハデスは白夜の言葉に納得し、後で話してもらう約束を取り付ける。


「りょーかい」


白夜もその約束を承諾して、一行はまた歩き始めた。



「そろそろついてもいい頃だろ……」


「疲れた……」


白夜と夢が愚痴を吐く。他の面々も口には出さないが同じ心境だろう。表情が険しく、疲労が滲み出ていた。


ガサッ


「っ、警戒‼︎」


魔夜の言葉に瞬時に臨戦態勢に入る白夜達。辺りは相変わらずの廃墟で人の気配もしない。緊張状態が続く……。


『立ち去れ…』


頭の中に声が響く。威圧感に溢れた、力強い声だ。


「え、なにコレ⁉︎」


「わお」


「頭に声が……」


「ハ、ハデス様もですか⁉︎」


「ええ…」


時雨、ハデス、タナトスが軽いパニックに陥る。夢は……眠たそうな顔で…正直どうでもいいわみたいな顔をしている。ホントに図太いな……と白夜は思いながら周囲に眼を配る。


「空耳ね。行きましょう」


魔夜は声を無視して歩き出す。


『……ま、待たれよ!これ以上進めば汝らの命の保証は出来んぞ‼︎』


「上から物を言うな、臆病者よ。貴様如きに殺されるわけがなかろう」


『お、臆病者だと⁉︎』


「コソコソと隠れてしか話せぬ者を、臆病者と罵っても間違いではなかろう。ゆえに、余は貴様を臆病者と罵る」


いっそ清々しいまである極夜の暴論に声の主は怒りに震える。


『………よかろう…。そこまで言うのなら来るがいい…。これから先、我らが領地に足を踏み入れた時が貴様等の最期と』


「白夜ー、極夜ー、潰しに行くわよー」


「「おー」」


魔夜は言葉を最期まで聞かずに遮り、しかも潰しに行くなどと宣言する。当然声の主は


『ちょ、なぜそうなる⁉︎』


「行くぞ!」


白夜のかけ声で一斉に走り始める一行。

今の彼らの心はただ一つ。


「「「嫌がらせ最高‼︎」」」


『外道かぁぁぁぁっ⁉︎』


叫び声は虚しく響くのだった……。


白夜達が走り始めて5分近く経つ。その間、頭に響く声は『後悔しても知らんぞ!』

『いいんだな、いいんだなぁぁぁぁぁっ‼︎』

『…………頼むから止まってくれ…』

と弱々しくなっていった。


「………なんか気配がするな」


白夜の言葉通りそこには人、ではなく、獣人がいた。そう、獣と人が混じった、獣人がいたのだ!


「散々制止を呼びかけたが、尽く無視しおってぇぇぇっ……!」


その声は頭に響いていた声と同一だった。

顔を真っ赤にして怒っている。

怒らせた張本人である白夜達は獣人の姿を物珍しそうに眺めている。すると、極夜がおもむろに前に出る。


「臆病者の言葉に耳を貸す道理はないな。傲慢と知れ、半端者」


いきなりの極夜の言葉に獣人達は一気に殺気立つ。その眼には侮辱されたと、嘲笑われたと怒り心頭だ。


「まあ落ち着けって。俺達も殺し合いをしに来たんじゃねーだろ」


白夜が場を収めようと動く。その言葉に獣人達は耳を傾ける。


「ならば、何の目的でここに来た。また攻めに来たのではないのか?先ほども潰すなどと言っておったではないか」


「いや本気にすんなよ……。ちょっと待て、またってなんのことだ?」


獣人達の言葉に意味がわからないといった顔で返す白夜。時雨達も同じような顔で、ただ一人だけ、魔夜のみが険しい顔をしていた。


「魔夜、何か知ってんのか?」


魔夜に聞くが、答えようとしない。その様子に獣人達は再度臨戦態勢に入る。

魔夜はそれを見て、ため息をつきながら答える。


「……獣人狩り。色々なところであるって聞いたわ」


「色々……? どういう意味だ」


魔夜が言った「獣人狩り」。この言葉通り、獣人達は狩られているのだろう。しかし、色々なところでとはどういう意味か?白夜達がいた国、元日本には獣人などいなかった。


「獣人達が狩られているのを知ったのは本に書いてあったから。禁書指定されてたけど、偶然ね。だから外の世界、ガイコクも知ったのよ」


「なるほどね…」


そこにはこう書かれていた。獣人達は悪魔が作りし人型の『化け物』で、それを殺すことこそがこの世界を救うと、本気で、そんなバカげたことを書いていたらしい。最悪なのは、獣人達のルーツだ。獣人が生まれた原因は人間の外道極まりない実験の代償。『化け物』の血を幼い子供の身体に流し込み、その力を得ようとしたのだ。なぜ子供かというと弱いからだ。おまけに孤児を減らせるならと国が援助した。子供を差し出せば金を出し、生活の保障をすると。この実験に援助させられた子供達は多数いたらしい。

子供達を使った実験は他にもあり、皮膚を移植したり喰わせたり、脳の入れ替え、手足を切断して『化け物』の手足を縫合するなど正気の沙汰とは思えない実験の末辿り着いたのが、獣人だった。


「………なぁ、その実験の関係者はまだ生きてるか?」


白夜の感情の抜けた顔を見て、魔夜はその言葉の意味を読み取り返す。


「残念ながら、いえ、幸運なことにも死んでるわ」


「幸運……? ああ、そういうオチか…」


「何が? オチって?」


夢の言葉に白夜は答えず魔夜が引き継ぐ。


「獣人に殺されたのよ」


「なーる」


そう、獣人達に殺された。獣人の身体能力は異常だった。人間の凡そ倍以上の力を持ち、その獣の特性も比較的上昇していた。人間達は心から喜んだが、獣人達の心には怨嗟と悲しみしかなかった。

獣人達は復讐を始めた。実験関係者の人間をその身体能力をぞんぶんに生かして殺し、それを援助した人間も、関係していた人間もその家族も、悉く皆殺しにした。


「復讐が終わり、彼等には破滅が来た」


獣人達が復讐を終える頃にはその数は減少し、当時3万人近くいた獣人は1万人まで減っていた。安寧は訪れず、人間達の逆襲に合い、益々数が減っていく。一人、また一人と……殺されていった。


「そして全滅しましたって、書いてあったのだけれどね」


「実際は生き残りがいて、今に至るってことか……」


獣人達は魔夜の話を黙って聞いていた。その眼には悲しみが宿っていた。


「ふん、半端者には相応しい末路だ」


そこに極夜が追い打ちをかける。

コイツ、鬼畜にもほどがあるな…


「貴様等にはわかるまい……、我等が先祖がどんな苦しみを味わったのか…。どんな目にあっていたのか‼︎貴様等などにわかるはずがないっ‼︎」


白夜達を来させないようにしていた獣人が極夜を睨みつける。極夜もその態度を見て鼻で笑い、さらに獣人達の怒りに火をつける。


「ここを知られたからには貴様等を殺す。己の傲慢を後悔しながら死ね」


「傲慢? ハッ、弱者の戯言に聞く耳は持たんのでな。何かを語るならまず強さを見せてみろ、半端者‼︎」


両者が睨み合う。


「獣人族が長、グロス」


「ギルド・ハデス所属、白崎 極夜」


互いに名を名乗り、臨戦態勢に入る。ハデスはその2人の中心に立つ。腕を真上にあげ、一気に振り下ろす。


「開始‼︎」


極夜とグロスの一騎討ちが始まる。

やっぱり獣人はファンタジーに欠かせない!

これからも登場人物は増えていくのでよろしくです。ヒロインもそろそろ出さなければ……。

時雨と夢がヒロインだといつ言った!……あ、言ってました……(´・_・`)

メ、メインヒロインとは言ってないのでセーフです‼︎汗

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