遭遇
すみません、遅れてしまいましたm(._.)m
「……もう、2度とやらない……」
「夢ちゃん大丈夫?」
「料理……怖い…」
顔が真っ青な夢を気遣う時雨。夢の顔が真っ青な原因は昨日の料理にある。
「タナトス…料理は命をかけてやるものだっけ?」
「聞いたことがないです、ハデス様…」
白夜達は宣言通り料理の最中に魔法を使って攻撃していた。ただ、ハデス達はそれが常に危機感を持ってやるとか、反射神経を鍛えるためなどの目的でやっていると考えていた。
しかし、この3兄弟には慈悲がなかった。
即死レベルの魔夜の魔法が夢を襲い、極夜は目くらましに獄炎を使い、白夜は魔銃でガトリングを作り一切休みを与えなかった。
これを防ぎ切れたのは夢のスキル、『天魔』があったからだ。この『天魔』は元々の『天使』のスキル能力があり、結界が使えた。このおかげで生き延びたのだが
「結界が最後は全壊してましたからね……」
そうなのだ。タナトスの言った通り、最後の料理の盛り付けで魔夜、極夜、白夜は全力で攻撃した。魔夜と極夜が白夜の魔銃『喰炎』に炎をつぎ込み、それを放つ。
するとどうでしょう。あっという間に結界は全壊し、夢が料理をしていた家も全壊。その後ろにあった家も跡形もなく消え去っていたのだ。夢の結界は全壊したものの、何とか料理は守りきっていた。
「『喰炎』はなかなかいいな。全力で炎をつぎ込めばかなり使える」
「耐久力をもう少し上げよ。あれでは全力でやれん」
「そうね〜、あれでは壊れるのがオチね」
その原因達は呑気に反省会をしていたが。
「それにしても、そろそろ『化け物』に会わないとまずいなぁ〜」
白夜の何気ない一言にハデス達の顔つきが変わる。昨日の夕食で材料はなくなった。あるのは少量の水と非常食2日分だけだ。
「ゾンビでは食べれないし、できれば生きの良い『化け物』であることを期待するわ」
それでも、3兄弟は呑気に話す。危機感がないわけではない。ただ、これまでの生活が少し苦しくなった程度にしか感じていないのだ。
「みんなも体力には気をつけて。ここからは無駄な消耗は少しでも減らすわよ」
全員が魔夜の言葉に無言で頷く。それから白夜達一行は無言で歩き続けるのだった。
ーー2日後ーー
「これで最後だな」
「「「…………」」」
白夜の言葉に全員が押し黙る。このガイコクに到着してから3日間、『化け物』に遭遇したのはただの一度もない。
「………魔夜、極夜、どう思う?」
「確実ね」
「決まっておろう」
白夜の漠然とした問いに魔夜と極夜が返す。
その様子に焦りとガイコクにいるという恐怖が重なり、時雨の気に触る。
「わかることがあるなら言ってよ。私達にもわかるように」
「ん? ああ、『化け物』に狙われてるって話だ」
あっけらかんとした様子でいう白夜に時雨の中で何かが切れる。
「何でそんなに呑気なのよ!狙われてるなら動かなきゃ‼︎」
「待て落ち着け。闇雲に動いたところでだろ」
「そんなのわかんないでしょ!」
時雨はさらにヒートアップしていく。
「それに、アンタが偉そうにしないでくれる!私は魔夜お姉様についてきただけであってアンタに指示される覚えはないわ‼︎」
「わかってるよ。それでも今は」
そして、時雨は感情に流されるまま暴言を吐き続ける。
「そもそも何でアンタなんかが仕切ってんの?魔夜お姉様か極夜でしょ、普通!たかだか兄弟ってだけでアンタが偉いわけじゃないのよ。自分も偉いとか勘違いしてるんじゃないの⁉︎ アンタは必要ないってわからないの⁉︎」
「………それで、何が言いたい?」
白夜の顔から表情が消える。その眼には光などなく、雰囲気も鋭く、全てを拒絶するかのようなオーラを醸し出す。しかし、感情が昂ぶっている時雨は気づかず、遂に言ってしまう。
「アンタだけが死んでれ」
ーー空気が一瞬にして変わる。
「「死ね」」
魔夜は魔法で高密度の風を生み出し極夜がその後に続くように炎塊をぶつける。時雨の近くでぶつかったそれらは爆発を起こし、クレーターを作る。
「「……………」」
「そこまでするか?『化け物』の影響だってわかってんだろ?」
白夜の言葉に反応せず、白夜が抱えている時雨に途方もないプレッシャーを放ちながら構える魔夜と極夜。時雨の方は歯をガチガチと鳴らしながら震えている。
時雨の先程の暴言は十中八九『化け物』の仕業だ。理由は簡単。
「時雨が魔夜に嫌われるようなことを言うはずがない。なら考えられるのは洗脳か、誘導する類の魔法かスキルを使ったってところか。しかも足跡聞こえたし、間違いないな」
白夜は1人独白しながらも魔銃でガトリングを作り、足跡がした方にぶっ放す。
それに続いて魔夜、極夜も魔法をそれぞれ放つ。
しばらく止め、少し見守る。すると
「シャルルルゥゥゥ……」
10匹ほどの蝙蝠と人間が合わさったような『化け物』が現れる。しかし、白夜達の集中砲火に耐え切れずに夥しい数の死体ができている。
「喰えるかなぁー…?」
白夜はその姿を見てどう喰べるか考える。負けることなど微塵も考えていないし、死体も気にしていない。
「シャァーッ」
蝙蝠人間は飛び上がると超音波をーー
「させるかボケ」
ーー放つ前に白夜のガトリングで撃ち抜かれていく。しかもいつの間に増えたのか二丁にガトリングが増えており、避ける間もなく落とされる。運悪く生きていた蝙蝠人間は再度飛ぼうとするが、羽が穴だらけになっており、逃げようと走るが
「バカだろ、お前」
ろくに走ることもできずに足を魔銃で乱射される。白夜は歩いてその蝙蝠人間の近くに寄ると
ズガガガガッと両手両脚を再度乱射する。
響く蝙蝠人間の悲鳴。それを何の感情も宿さず、淡々と行う白夜。原型がとどめなくなるまで撃ち続けた白夜はその手を止めると、『化け物』に話しかける。
「人間の身体に近いし、顔も少し変わってるだけだから喋れるだろ?どこかに国はなかったか?人間の国だ」
「シャルルル…」
『化け物』は睨むだけで喋る気配がない。
「ハァ〜……」
ズガンッ、ドサッ
脳天を弾が突き抜け、『化け物』は倒れる。
「食料確保」
白夜は蝙蝠人間の死体を一箇所に集め、鑑定石で鑑定する。
バットマン LV21
筋力:430
魔力:1960
耐久力:200
敏捷力:1700
スキル:超音波(意識誘導・催眠術)
他のバットマンも同じようなレベルとスキルだった。
「上半身だけ切り取るか……、『雷光』」
白夜は手に電撃を纏い、手刀の要領でバットマンの上半身と下半身を切り分ける。
2、3体のバットマンを切り分けた白夜はそれを抱えて、愚痴を吐きながら魔夜達のところに向かう。
「ったく、今回俺しか動いてねぇ〜…」
白夜はしばらく歩いて大事なことを思い出す。
「あ、時雨忘れてた!」
「とっくに避難させてる。忘れるとか酷すぎだから」
近くにきていた夢が白夜にジト目を向けながら非難する。さすがにバツが悪い白夜は素直に言葉を聞き入れる。
「悪いな。それで、魔夜と極夜も落ち着いたか?」
「大丈夫じゃない?あの2人は何の影響も受けてないし」
そういう夢も意識誘導にかかっていなかった。おそらく『天魔』のスキルの恩恵だろう。ホントチートスキルだ。
「とりあえず戻ろう。話はそれからな」
白夜と夢は今度こそ、魔夜達のところに向かうのだった。
初の仲間割れ?でした〜!
次の投稿はお盆の14日にしますので読者の皆様、よろしくお願い致しますm(._.)m




