到着
うーん、安定の投稿です!
「………あれがガイコクか…」
白夜達は海を3日間彷徨い続け、どこかもわからない国に到着した。国と断言できるのは建物があり、人が住めるようになっているが、建物は傷み、人の気配はないので昔の建造物なので今は誰も住んでいないだろうという条件付きだが。
「………、今思ったんだけどさぁ」
「ん?……っ⁉︎」
空音が唐突に口を開く。 口調は軽くなったが、誰とも打ち解けず喋りかけもしなかったのでずっと沈黙していた。そんな空音が急に白夜に呼びかけるものだから、白夜は驚きながら空音の方を振り向く。
「そんな驚くことじゃないでしょ……」
空音はむす〜っとした顔で白夜を睨む。
「いや、俺が話しかけられるとか思わなかったから」
「別に誰でもよかったし」
「そ、そう…」
とりあえず手短にいた白夜に話しかけたらしい。そんなことはどうでもいいと空音は話題を振る。
「食料とか尽きてるけど、どうすんの?」
「ああ〜、そんなことか」
「そんなことじゃないと思うけど」
空音は船旅で失くなった食料の心配をしているらしい。確かにこのガイコクでは食料があるかわからないかもしれないがーー
「大丈夫だよ。『化け物』には食えるのもいるし」
「そっか、なら安心できるわけねーだろバカじゃん⁉︎」
空音は白夜の言葉を信じられないといった顔で見つめる。それを白夜はこいつ何言ってんの?みたいな顔で見つめる。そんなカオスな状況に魔夜達も加わる。
「どうしたのかしら?」
「こ、こいつ『化け物』食べるとか言ってんだけど、どうなってんの⁉︎」
空音は魔夜に必死の形相で訴える。魔夜、違うよね?と
「え、食べないの?」
そんな空音の希望も儚く散り、両膝をついて項垂れる。このギルドで発言力が一番なのは魔夜だ。その魔夜が『化け物』を食べるということは空音達も食べなければいけないということだ。
しかし、空音は諦めきれずハデス達を見る。
仮にも神様。神様なら人類の敵の肉を食べたりしないだろう。
「ハデス様達も反対ですよね?」
「「……………………(スッ)」」
「ハデス様、タナトス様。何故眼を逸らすのですか……?」
「そ、それは、止むに止まれぬ事情と言いますか……、お金がなかったと言いますか……」
「嘘………」
空音は地面に突っ伏し嘆く。そんな空音にハデスは言い訳をする。要約するとこうだ。ハデス達は白夜達が入ってくるまで全く収入がなく、アルバイトで生活を成り立たせていた。しかし、最初の頃はアルバイトすらできず、飲まず食わずで死ぬかもしれないというときに目の前に「『化け物』のお肉・30分で完食すれば無料」のチラシが目に入り、見事クリアしたという。これが初の『化け物』食いで、以降もお世話になったらしい。
「………ちなみに味はどうだった?」
「「………美味しく頂きました」」
空音にトドメを刺したハデスとタナトス。空音は突っ伏しの状態を続ける。すると、
ポンッ
と右肩に誰かが手を置く。空音が振り返ると
「………喧嘩売ってるよな買ってやんよこのやろー‼︎」
そこには爆笑しそうなのを堪えて、尚且つバカにした顔の極夜がいた。
「絶対ブッ飛ばす‼︎」
「やってみろ!」
互いに臨戦態勢になるが、魔夜と白夜が止める。
「今やったら料理係ね」
「は?そんなもんいくらでも」
「空音がやるので、余はやらない!」
魔夜の言葉に空音は一蹴し、極夜は空音の言葉に即座に乗る。その顔は押し付けることしか考えていない顔で、汗もダラダラとかいている。
「なら、空音さんお願いね」
「別にいいけど……」
空音は極夜が急に逃げたことを訝しみながらも魔夜の提案を受け入れる。
「空音……死ぬなよ……!」
白夜は空音のこれからが心配になり、合掌をする。
「なんか釈然としない……、この怒りはどこにぶつければ……」
「もう諦めて受け入れた方がいいよ。えーと、夢ちゃんでいいかな?」
時雨がぶつぶつと呟いている空音 夢に話しかける。実は時雨と空音 夢は会話をまだしたことがない。
「ん?別にいいけど、名前なんだっけ?」
「水川 時雨。気軽に時雨でいいよ。今更だけど、これからよろしくね」
「ホント今更だけど、よろしく時雨」
笑い合いながら自己紹介をする時雨と夢。
「で、話変わるけど魔夜お姉様に何かしたら呪うからよろしくね!」
「怖っ⁉︎ さっきまでの笑顔が嘘みたいにドス黒い‼︎」
笑い終わりと同時、時雨は眼に狂気(魔夜への愛)を宿しながらさらっと恐ろしいことを言い出す。
「て、手は出さないから安心してっ、私は何もしないから!」
「そう、良かった」
時雨は夢の了承を得る(脅す)とそのまま魔夜達のところに戻っていった。
「………ここには普通の人がいないのか…。わい、やってけるかなぁ〜…」
夢は不安げな声を出しながら白夜達の後をついていった。
白夜達は念のため街を調べ、周りに『化け物』がいないか、生きている人がいないか調べた。
幸か不幸か、『化け物』も人もいなかった。
「なぁ、暗くなってきたし今日はここまでの方がいいと思うんだが」
白夜の言葉に魔夜も頷く。
「そうね…、でも食料を見つけていないわ」
「本当に食べるのか…」
魔夜の言葉に夢が引く。そんな夢に魔夜は絶対零度の笑みを浮かべ、夢は全身に悪寒を走らせながら愛想笑いを浮かべる。
「『化け物』はいないし、今日は作った方がいいだろ。空音がやるしな」
ニヤニヤと楽しそうに話す白夜に、同じく嗜虐的な笑みを浮かべる魔夜。
そんな2人に猛烈に嫌な予感がしつつ、しかし引けない夢は笑顔で返す。
「それじゃ他の奴ら呼んでくる。魔夜は料理のルールを教えといてくれ」
「フフフフ、任せなさい」
「りょ、料理にルール……?」
白夜は魔夜に後を任せると極夜達を呼びに行った。
白夜達には料理をする際、あるルールが設けられている。
1、料理中には如何なる攻撃を受けても文句を言わない。
2、マズイ料理を作れば翌日も
3、なお、反撃は一切なし
4、攻撃は瀕死に追い込まず、行動不能くらいの威力
以上が白夜達が料理をする上でのルールだ。
「バカじゃん⁉︎ 料理するだけでこれって、しかもお前らの魔法強力じゃん⁉︎」
「「「死ぬなよ。加減はしないが」」」
「こんにゃろ〜……!」
ドンドンッと地団駄を踏みながら怒りをあらわにする夢。それを見て気遣い?の言葉をかけるが表情はニヤニヤと笑っている3兄弟。
「ホント、何でそんな発想が出るんですかねぇー…」
「タナトス、絶対に料理係にならないよう頑張るわよ」
「はい、ハデス様」
時雨は呆れ、ハデスとタナトスはひっそりと決意をするのだった。
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