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復讐の夜  作者: 榊原灰人@vtuber
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後始末

今回は殲滅後の話になります。

「………あ〜、眠い」


「あれだけ寝ててよく言うわね」


「時間どれくらい経った?」


「丸一日寝てたわね」


「そりゃ悪かったな」


起きて状況確認をする白夜。五神邸に攻め込み、空音 夢の救出と五神家の主犯格と思われるトップ5人の殺害。一応全部上手くいったからいいのだが、どうせなら俺も無傷が良かった……!

と、1人問答している白夜に魔夜が寝ている間に起きたことを話してくれた。

あの五神家の攻め込み及び殺害の話で世間は騒いでいるらしい。あれだけ殺りあえば気づかれるのは当然だと思うが、予定外なのは俺達の出頭だ。今回の殺害、いや殺戮で呼び出しを受けたのは白夜、魔夜、極夜、ハデスの4人だ。時雨は誰も殺していないので呼び出しは受けていない。これは予想通りだから別にいい。問題なのは空音 夢の身柄の引き渡しだ。五神 慎士が空音 夢にしたのはスキルを会得させた。それも『悪魔』のスキルをだ。この『悪魔』のスキルは有名で、100年くらい前にどっかの宗教団体が持っていたらしい。ただスキルの獲得条件が人道から外れるとか何とかで禁止、スキル所持者は全員殺したというのだからその危険性は言わずもがなだ。


「予定では俺達3人だけ出頭、それが外れてるだけじゃなく身柄の引き渡しも要求されるとはな〜」


「出頭は許容するけれど、引き渡しは御免被るわね」


「殺すか利用するかの2択しかないからな」


白夜と魔夜は苛つきながらもこれからどうするか考える。


「いっそ全員でここから逃げるか?」


「逃げる?」


白夜の提案に首を傾げる魔夜。白夜は真面目な顔で話を続ける。


「海を渡る。そんで強くなってから戻ってくる。ここじゃくだらないことに巻き込まれるしな」


「『化け物』相手に修行だなんて、笑えない冗談ね」


「冗談じゃねーよ。それに、まだ生きてる人達がいてそこで鍛えることもできるかもしれねーぞ?」


「そうね……」


思案する魔夜を見ながら白夜も考える。このままここにいてもクエストはこない。日々の鍛錬だけでは足りず、かといって『ゴッドナーズ』に攻め込むのも得策ではない。あの五神家は強さでいえば下の下だ。その下の下にこのていたらくではとてもじゃないが勝ちの目は薄いだろう。この『化け物』と戦う奇策でもなければ俺達は強くなれない。強くなるには命のやり取りができる戦場が手っ取り早いのだから。


「その話は朝ご飯を食べながらでもしましょう。どうせ全員に話さなければならないのだし」


「了解。んじゃ、飯を……、そういえばここどこだ?」


「今更ね、五神家よ」


「マジで奪ったのかよ」


ちゃっかり五神邸を奪った魔夜に呆れつつも寝ている間に手に入れた情報を聞きながら下の階に降りていった。



「で、何コレ?」


「パン。見ればわかるでしょ」


「いや誰もそんなこと聞いてねーよ⁉︎俺は何で空音 夢が鎖で簀巻きにされてんのか聞いてんだよ!」


下に降りて極夜達がいる食堂(五神邸には食事をするための食堂があり、広さは小規模な公園くらいの広さだ)につくと極夜と時雨は普通に食事をしているが、ハデスとタナトスは簀巻きにされている空音 夢に食事をとらせていた。簀巻きの空音 夢は無言で食事を食べさせてもらっている。


あ、タナトス戻ってきてたのか。


「意識戻ったんなら簀巻きにしなくてもいいだろ。外してやれよ」


白夜の言葉に「これだからバカは話になんね〜なぁ、ペッ」という態度をとりながら話す。


「空音 夢が殺しにくるからに決まっているでしょう。敵意丸出しのこの猛獣を解放するなんて、面倒くさくなるに決まっているじゃない」


「何で殺そうとするんだ?なんかしたのか?」


「原因は極夜と白夜、あんた達よ」


「待て待て、極夜はわかるけど、何で俺も?むしろこっちの方が重症だぞ」


助け出したのに腹を刺されボコられたのだ。怒りたいのはこっちの方だ。


「お前が…っ」


「あ?」


声がした方に向くと、話が聞こえていたのか空音 夢が敵意の視線で白夜を睨みつける。


「お前があの時、私を置き去りにしていれば私も死ねた!なんで助けた⁉︎私は死にたかったのに!!!!」


涙を流しながら感情を爆発させる空音 夢。確かに家族を殺させられて、その気持ちがわかるなんて言ったら激怒するのも当然だ。だってさ、それと同等の苦しみを味わってもいない奴に慰めの言葉とか殺意湧くわ。なので、その気持ちがわかる俺は空音 夢に言葉をかける。


「知るかよ、家族を死なせた奴の気持ちなんか。負け犬が喚いてんじゃねーよ」


「負け、犬………?…ふざけるな…、何も知らないお前が…」


「知らないし、知りたくもない。お前を助けたのは俺達のルールに従っただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」


冷たく言い放つ白夜だが、気持ちがわかるからこその対応だ。今、気持ちがわかるなどと言っても信じられるわけがない。それは魔夜、白夜、極夜の全員が当時その類の言葉を毛嫌いしていたからだ。同情や哀れみなど以ての外。そんな生温い優しさなど欲しくもない。


「お前に力がなかった。守れなかった。弱かった。それがお前の責任で、家族や村人を失った原因だ」


畳み掛ける白夜。その言葉は鋭い棘となって空音 夢の心に突き刺さり、顔が俯向く。


「お前の家族の直接的な仇は死んだ。俺達が殺した。だがな、その原因の人間はまだ死んでいない」


その言葉にバッと顔が上がる。白夜は満足そうにその顔を見ると続ける。


「五神がお前の村や家族を奪ったが、それは命令されていたからだ」


下の階に降りてくる前に魔夜から聞いた。白夜が寝ていた昨日、魔夜は捉えていた数人の五神のギルドメンバーを拷問していたらしい。その中で手に入れた情報は五神 慎士の所にある来客者が頻繁に来ていた。


そいつがきてから五神 慎士は急に盗賊達と結託して村を襲うと言った時は驚いたのだとか。当然そんな危険な橋に乗りたい奴は少ない。案の定、反対の声が出るがそれはギルドメンバーの殺害により消えた。抜けようとしても殺される、又は家族を人質に取られると徹底していたらしい。それも2年前から始まり、誰も逆らえなくなった。それが1週間前、急に集めさせられて前の話に繋がる。五神 慎士が命令されていたという証拠はない。ないが、拷問した奴らの中に1人だけ見たという奴がいた。ある日、夜遅く五神邸の周りを警護していると声が聞こえてきた。その声が聞き取れず、興味本位で近づくとそこには五神 慎士と黒いローブを纏った女がいた。内容は分からなかったが、はっきりと聞き取れたのは2つの言葉。


八神、そして魔神。この魔神にどんな意味があるかはわからないがどうでもいい。重要なのは八神だ。八神のギルドはアレスを崇拝するギルドで、完璧な実力主義だ。力こそ全て、弱者に生きる価値はない。これが八神の方針であり、言葉に見合う実力者の集団だ。


ちなみに拷問した奴らは仲良く昇天した。


「五神に命令していたのは、八神の誰かの可能性が高い」


「八神……」


白夜達の様子を見て食事を途中で切り上げた極夜も話に加わる。


「貴様、こんな所で折れてもよいのか?」


「何を…」


極夜の質問の意味がわからず聞き返す空音 夢。


「復讐の対象が生きている、それを貴様は許容できるのか?」


「でも、どうしろってのよ!相手は五神なんかと比べ物にならない八神!殺し合いを生活にしている人間とどう戦えばいいのよ⁉︎」


空音 夢の言う通り、今の白夜達でも太刀打ちできないだろう。それほどレベル差があり、実力が違う。そもそも五神は純粋な戦闘力では逆立ちしたって敵わない。それを可能にしたのは白夜達のスキルと相性だ。特に極夜は十八番の幻術が効かないし、魔夜は……、才能が違いすぎるからだな。


「プッ」


「何笑ってんのよアンタ!何か可笑しい所でもあった⁉︎」


突然笑った魔夜に突っかかる空音 夢。魔夜はそれに侮蔑の視線と嘲笑で答える。


「発想が負け犬ね。弱いなら強くなればいいだけのことでしょう?貴方には幸いにも力があるのだから」


「この……っ、私に力があったらやってるわよ!でも、私のスキルは『天使』で治療や付与しか使えないのよ…!」


空音 夢が悔しそうに呻く。その態度に白夜達全員はーー


「「「は?」」」


何言ってんだコイツ?というニュアンスを含んだ返事をした。


「だ、だから!私のスキルは戦うよりも守る方の力が」


「え、マジで言ってんの?」


「どうやらそのようね、ハァァァ…」


白夜は真性の馬鹿を見る目つきで、魔夜は目頭を抑えて深い溜息をつく。その中で、極夜だけは思案顔で空音 夢を見つめる。


「極夜、どうした?」


白夜の質問に極夜重々しくその口を開く。


「あの部屋を見たよな」


「ああ、見たけど、それがどうかしたか?」


恐らく空音 夢を助けるときに見た部屋のことだろう。夥しい血が床一面に広がり、その血溜まりの中に人骨が2人分くらいあった。その時は死体をじっくり見ることができなかったが、まあ、大体予想はつく。


「でもなぁー、もしそんなことが可能なら上の奴等や屑共が絶対にやるよな〜……」


「あの下種は誰かに吹き込まれていたらしいがな」


「早く教えなさいよ。気になるじゃない!」


ハデスが教えろと急かすがスルーし、白夜は魔夜に向き直る。


「空音 夢の話は一旦置こう。トラウマだろうしな。今は俺の計画に乗るか乗らないか、それを聞くべきだ」


「「「計画?」」」


「ああ、実はなーー」



「ーーということだ。好きに決めろ」


俺の話にポカーンとしたのはハデスとタナトスに空音 夢。極夜と時雨は「この国から出る」と最初に言った言葉だけで即荷造りを始めた。手間が省けていい。


「それで、どうする?時間もないし早くしろ」


白夜が催促する。


「ハァ……タナトス、ごめんなさいね。この兄弟は止められないわ」


「ハデス様、それは言わない約束ですよ」


「…………(^_^)」


「「ごめんなさい行きます!!」」


魔夜が掌にナイフと炎を出現させ、笑顔でハデス達を見て、即座に土下座。魔夜はその様子にご満悦のようだ。残るは


「空音 夢はどうする?俺達と来るか?」


白夜は空音 夢に聞くが、まだ迷っているのか返事をしない。


「そういえば言うの忘れてた。あなたに伝言があるわ」


「伝言?……! もしかして、村に生き残りの人がいたの⁉︎」


「女の人限定でしたけどね」


時雨が纏めた荷物を持ってきながら空音 夢に伝言を伝える。


「ええとですね、「お前のせいで私達はこんな目にあった!二度と私達の前に顔を見せるな!!」だそうですよ」


「なん…、なんで……⁉︎」


「あなたの存在で村を襲われたんですよ。当然の反応だと思いますけど?」


「時雨……、意外と厳しいのね…」


「 ? 」


魔夜の言葉に首を傾げる時雨。空音 夢は涙目で俯く。しかし、


「よかった……生きててくれて、ホントによかった……!」


自身への罵倒よりも村人が生きていたのがよほど嬉しかったのか、喜びの表情を浮かべ何度もよかったと呟く。しばらくして、空音 夢は白夜達に顔を向ける。


「………あんたらについていけば、強くなれるの?」


「自分次第に決まっているでしょ」


空音 夢の質問を冷たく返す魔夜。空音 夢はその態度に満足したのか一呼吸おいて言った。


「オケ、わいもついていくからよろ〜」


「「「軽っ⁉︎⁉︎」」」


さっきまでの態度や言葉遣いはどこへやら、砕けた態度で参加する空音 夢だった…。

お読みいただいた読者様方、ありがとうございます!ようやく『化け物』が登場してきますので楽しみにしていただけると幸いです。

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