殲滅2
雨がうっとおしいと思うこの頃…。
「オーイ、魔夜〜、極夜〜」
ボルナを殺した俺は魔夜達に合流しようと探すのだが、全く見つからない。
「あ〜、探すのダルいな…。1人で行くか?」
「へぇ〜、1人で行く?どこに?私達を置いて?」
「…………、ちょっと走りたくなってきたな!」
「走ったら食器洗いと風呂掃除に洗濯を一週間ね」
「冗談だから!ちゃんと話すから!」
「ならよろしい」
いつの間にか後ろにいた魔夜に独り言を聞かれ、しかもとんでもないペナルティを課せられるところだった…!
一週間とかめんどくさすぎるっつーの!
「とにかく極夜達のところに行くわよ」
「了解」
俺は魔夜の腕を掴み、瞬間移動で飛んだ。
「あ、魔夜お姉様!」
「……、どうかしら水川さん、順調?」
「いえ、何も起きません…」
「そう……」
今水川が行っているのは新しいスキル:『呪怨』の使い方を探すことだ。まあ、鑑定石とかいうアイテムを使えば使い方がわかるらしいのだが、あいにく買うほどの金がない。オマケに鑑定石は1千万と高額なアイテムなのだ。貧乏ギルドに買えるわけがない。
ちなみに俺達のスキルも自力で使い方を見つけた。
……………、ん?そういえば、さっき殺す前に何か鑑定石を持ってこいとか何とか言ってたよーな…!
「魔夜!さっきのところに戻れ!」
「はぁ?何でそんな無駄なことをしなきゃいけないのよ」
「さっき殺した中に鑑定石を持ってる奴がいたんだよ!」
「⁉︎ それを先に言いなさいよ!」
俺と魔夜は即座に飛んだ。
「取ってきたわよ」
「これが鑑定石かよ。水晶みてーだな」
「そういうもんよ。それじゃあ、水川さん。これに手を当ててスキル名を言ってみて」
「は、はい。それでは、『呪怨』」
鑑定石が赤く光り、『呪怨』の使い方の説明が映し出される。
『呪怨』
呪い付与・相手の名前と顔の認識が必要。呪いは相手のステータスダウン、発狂、疑心暗鬼、感覚麻痺のいずれかが機能する。
呪力・呪われた力を付与する能力。一定時間ステータスを1.2倍まで引き上げ、状態異常の魔法やスキルを受け付けない。なお、使われたものは『狂化』状態になる。最大1人まで。
「「「………」」」
「あ、あの、何か言ってもらえると助かるんですが……」
「「「微妙」」」
「慈悲はないんですか⁉︎」
いや、ホントに微妙な能力で反応に困る。
多分、使い続ければ強くなるんだろうけど、今はまだ弱い。
「魔夜お姉様に、名前で読んでもらえるかもと、期待、してたんですけど、ね…」
水川がいじけだした。ハデスが話しかけるが、反応はない。
そういえばいたな。
「せっかくの、せっかくのチャンスを…、ハ、ハハハハ……」
メンドくさいなぁ〜…。
「「魔夜」」
極夜も同じ考えに至ったようで、顔を合わせて頷き、俺が喋る。
「名前で読んでやれよ。今はこんなことで足止め食ってる場合じゃねーんだよ」
「……、しょうがないわね…」
魔夜は渋々納得し、いじけている水川に近づいて話しかける。
「時雨、いい加減立ち直り」
「魔夜お姉様‼︎‼︎」
魔夜に名前を呼ばれて一瞬で立ち直った水川。だが、俺は気づいていた。魔夜が水川に近寄っているところでニヤリと笑っていたのを。
……、まぁ面白いからバラさないけど。
「白夜、さっきのどういう意味だ?」
「あん?何のことだ?」
「足止め食ってる場合じゃねーって意味に決まってんだろ。バカか?」
「あ゛あ゛っ、お前は人をバカにしねーと会話できねーのか極夜!」
臨戦態勢に入る俺と極夜。
「ケンカはそこまで。ったく、くだらないことでまたケンカとか、飽きないわねアンタ達」
「「コイツが先に吹っかけた」」
「ハイハイ、それで白夜、何かあったの?」
魔夜はメンドくさそうに俺達の反論を聞き流すと、俺に先ほどの発言について聞いてきた。なので、俺は全員が聞こえるように集まらせて、さっきの戦闘について話した。
「……、このまま向かった方が良さそうね」
「あいつらと殺りあって何分くらい経過してる?」
「ざっと、4時間ってところかしらね」
「魔夜の転移魔法なら、すぐにギルドに飛べる。幸い五神は俺達のギルドからそんな離れてないしな」
「あ、あの〜、ちょっといいですか?」
俺達の話に割り込んだのは水川だった。
「何かしら?」
「もしかしてですけど、気づいてませんか?」
「「「??」」」
「えと、その…」
「アンタ達、五神に殴り込むってことに気づいてないの⁉︎五神よ五神!」
水川が言い淀んでいるのにシビレを切らしたハデスが声を荒げる。
「それが何か?」
「「……え?」」
ハデスと水川が呆然となる。
「五神だろうが何だろうが、こんなことしてるような奴に何しようと別にいいだろ」
「白夜の言う通り、五神の主犯や関わった人間は殺す」
「大丈夫よ。何人か殺したら帰るから」
俺達のような目にあう人間はいて欲しくない。
「ホ、ホントに大丈夫でしょうか?」
水川は不安そうな顔をしながら、俺達に尋ねる。確かに学生から卒業したばかりの俺達がベテランの、しかも五神家に殺し合いを挑むのだ。不安がるのも仕方ないだろう。
だが、
「俺達の過去を聞いたのに、まだそんな甘いこと言ってんのか?」
「それは、そうだけど…」
「なら、覚悟を決めろよ。俺達は復讐の道を選んだ。それ相応の対価は払わなきゃだろ」
「………うん…」
水川は反論できずに、とりあえず頷いた。
人殺しをしてきた俺達は慣れているが、水川はまだ慣れていないのだ。仕方ないといえば仕方ないが、慣れてもらわないと困る。
「なあ、これ俺達もやった方がいいんじゃね?」
「あ?」
極夜は鑑定石をジッと見ながら、提案してきた。
「確かにそうね。自分で調べた以外の使い方が載ってるかもしれないし、やっておきましょうか」
長いことこのスキルと付き合ってきたが、全部自分達で使い方を見つけたんだよな。
ちゃんとした使い方は知っておいた方がいいし、これには賛成だな。
「それじゃやるか」
「ああ」
「ええ」
俺達もスキルを鑑定した。
『殺意』
???
殺霧・殺意を霧状に具現化したもの。自分の身を包めば防具に、相手を包めば命を削り続ける呪いに、放射状に周りに使えば自分の思い描いた幻覚を相手に見せることができる。
殺しの覚悟・相手を殺す思いが強いほど全能力を底上げ。代償に正気を削り続ける。
殺人鬼・自身のステータスを4倍に一時的に上げる。
狂気・殺人鬼を使い、正気を失った時のみ使用可能。ステータスを10倍にまで引き上げるが、代償に状態異常 ??? が付与される。
『憤怒』
???
激怒・瞬間的に筋力、耐久力のどちらかを底上げ。ただし、怒りの感情がないと使用不可。
冷怒・敏捷力の底上げ。ただし、怒りの感情があれば、使用不可。
憤怒の鬼・怒りが極限に達した時のみ使用可能。全てのステータスを10倍に引き上げる。
鬼の能力が使える。
『憎悪』
???
不倶戴天・憎しみが極限に達した時のみ使用可能。自信のステータスを10倍に引き上げる。魔人の能力が使える。
魔憎・相手のスキルを1つかステータスを1つ使えなくする。
次週の土曜日午後6時の投稿です!
それにしても、家事で脅すって何…?




