移り気
彼女と知り合ってから4日目。昨日、みんなと話し合ってわかったことがある。私は一人じゃなかった。私の全て勘違いにより、私は自分自身を追い込み、不登校になった。今思うと笑える。
私は今日、学校に行くことにした。学校に行かなくなってから13日目。私は不登校に終止符を打つ。つもりだった....
学校に行くと懐かしい風景が広がっていた。佐江ちゃんの元にみんなが集まっている「おはよ、リナちゃん。」
彼女達にそう言われると、私はあることに気づく。ゆりちゃんがいなかった。
そうだ...私は昨日リナちゃんに謝ろうとしていたが結局謝ることができなかった。担任が来ると廊下に呼び出された。
「お前いじめられてるのか」
13日前なら「はい」と答えていたが「私の勘違いでした」と答えた。
実際そんなことはどうでもいい。ゆりちゃんだけが気になった。今日は運良く?席替えがあった。
私は今まで席替えが楽しみと思ったことがなかった。あったとしたら小学生の時。好きな男の子がいてその子と近くの席にならないかドキドキしていた事がある。それが楽しみと言えたのかはわからない。
席替えの結果私の2つ前に理恵ちゃん、後ろにちゃんこ、2つ右の列の一番前にアユちゃん、廊下側から見て1列目の一番後ろに佐江ちゃん。
佐江ちゃんの席は変わらなかった。私はとりあえずちゃんこと近い席になれて嬉しかった。ちなみにゆりちゃんの席は私の隣だった。「今日ゆりぴっぴ来てないけど、何かあったのかぇ?」
ちゃんこにいきなり聞かれて焦ったが、何もないと言って前を向いた。するとちゃんこが私の脇腹をつついてきた。
私は脇腹が敏感なため、情けない声を出してしまった。「ここか?ここがええんか」とおちょくってきたため、呪文を唱える。「LINEブロックするから」これを言えばちゃんこが黙ることをゆりちゃんから教えてもらった。
その日の帰りは久しぶりにみんなで帰った。とはいえ私はアパートまでで、そこからはみんなと別れる事になった。
私は家に着くと電話することにした。もちろんゆりちゃんにだ。受話器を取り、三回深呼吸をする。そして一押し一押し噛みしめるようにゆりちゃんの電話番号を押していく。
プルルルル....プルルルル...
でない。そのあと3回かけたが出なかった。
私は彼女の家に行くことにした。彼女の家は二駅下の電車に揺られればつく。私は駅まで走っていき下の電車を待っていた。「あれ?リナ?」この声は...麻有ちゃんだった。
彼女だけじゃなく、他の3人もいた。「どした!電車に乗るなんて!やっぱこれか」と言ってちゃんこが小指を立てるのをりえちゃんが右手で遮る。
彼女達は電車に乗り遅れ、次の電車を待っていたところらしい。「どこ行くの?」さっきまでスマホに夢中だった理恵ちゃんが私の近くまできて呟く。ゆりちゃんの家と私も呟き返すと、家近いから一緒に行くことになった。駅から出ると二手に分かれた。
ちゃんこと麻有ちゃんは反対方向に家があるためそこで別れ、私は理恵ちゃんと佐江ちゃんと共に歩いて行った。
「ゆりっちとなんかあった?」いつもスマホに夢中の理恵ちゃんが心配そうに聞いてきた。「う〜...ん。あった...」と私が言うと、そっか、と言ってそれ以降は何も言わず、小さい声で歌っている佐江ちゃんにちょっかいを出していた。
2人は本当に仲がいいな、姉妹と思うくらい仲がいい。そんなことを考えながら見つめていると佐江ちゃんが私に気づく。
「どしたのリナちゃん私のこと見つめて。好きか?」といいニコニコしてた。
「いや、二人共すごい仲良いなと思って。初めて見る人姉妹かと思うよ。」と本心を伝えると二人は顔を合わせて笑った。
「ん〜、姉妹とは少し違うかな。私達ね、従姉妹」なるほど。今思えば彼女達は何をするにしても一緒だった。興味ないふりして気にする素振りも、曖昧な回答も、笑い方も。全て同じに感じた。私はこの人達になら相談できると思った。私は口を開く「あのね」
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「ねぇ〜アユちゃん。今日のリナちゃんおかしかったね」ちゃんこがあたしに話しかけてくるがあたしは聞こえないふりをする。
ちゃんこにはまだあまり心を開いていない。「また黙りですか。悲しいぞ」
「はいはい、聞こえてるっつの。リナおかしかったね、ゆりのこと考えてたんじゃないの。解決」そう言ってあたしは話をやめた。
「アユちゃん私のこと嫌いか?」
好きも嫌いもない。でもどっちかというと好きだ。
ゆりに似ているところがあるからだ。
「微妙。嫌いではないと思うよ」
そういうと彼女はガッツポーズをしていた。なぜかはわからない。
「あ....」
でた。
ちゃんこが「あ...」といった時は何か聞いて欲しい時だ。「いや〜参った」私は絶対「どした?」とは言わない。
めんどくさい。ちゃんこがチラチラ見ているのにも気づいているが無視。
「ねぇ!100円ショップいこ!だいそぉー!だいそぉー!」
あぁ、ダイソーね。
「いいよ。暇だし」
そう言うと彼女は「さすが!」といいあたしの手を引く。
ダイソーに着くと彼女は文房具コーナーに行った。私は化粧品コーナーに行く。
そこにある100円妥当なマスカラを手に取り鼻で笑う。
少しお金を積めばこんなのよりいいのを買えるのに買う奴がいるのか。
そんなことを考えていると背後に気配を感じたためそそくさと化粧品コーナーを出る。
だが、100円の化粧品を買う奴の顔を見てみたかったためチラ見してみた。男がいた。しかも私はその男を知っていた。
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私の話を聞くと二人して驚いていた。まぁ、そうなる。
「リナちゃん...面白いね」といい次は二人で笑い始めた。
「てか、ゆりっちリナちゃんにキスしたんだ。あははは」
爆笑というやつか。
私は真剣だったのに彼女達には笑われる始末。言わなければよかったと公開した。
「リナちゃん、学校こなかった期間にそんな面白いことしてたのね。男装して女釣るなんて考え付かないな...でもリナちゃん男装したらイケメンそう」
佐江ちゃんがそう言うと理恵ちゃんは「私だって男装したら...」といいほっぺを膨らましていた。
2人きりでいるときはこんな表情を毎回するのだろう。「で、なんで謝るの?」なんで?その疑問の意味がわからない。「だって、ゆりちゃんが必死で心配してるのに私は男装して遊んでるってゆりちゃんにしたら心配して損したってなるじゃん」
すると理恵ちゃんは「違うよ。それもあるかもだけど、『私がリナちゃんのこと好きなのなんで気づかないの』って気持ちもあったんじゃない?だからキスしたんでしょ」
あぁ、そうか。彼女は私が好きなんだ。私を愛してるんだ。私はその気持ちに気づけず遊び呆けていた。だから彼女は怒ってキスをした。
「まぁ、謝るなら謝ったほうがいいよ。そこの家ゆりちゃん家だから。私達こっちだからまたね」そう言って彼女達は消えていった。
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「あんた何してんの」あたしがそう彼に言うと彼の動作が固まった。
彼は振り向くとあたしの顔を見て驚いた。無理もない。彼は私が苦手なんだろう。
私は幼稚園児のころ彼が滑り台の上からゆりを落としたのを見てカッとして彼がゆりにしたように私も彼を滑り台の上から落とした。それ以来小学校、中学生同じだったが一度も話していない。
目が合うとどこかへ逃げていく。怖がられているのだろう。
「あ...久しぶり」弱々しく彼が言う。「だから何してんの。あんた女だったっけ」彼はビクついた。
それにしてもまぁまぁイケメンになったものだ。ガキ大将も丸くなればこんなのになるのか。そこにちゃんこが現れた。
「あれ、翔くんじゃんなにしとる。マスカラなんかもって」
「あ!ちゃんこ久しぶり。元気だったか」
なぜ、こんなに温度差があるのか。
「あ〜元気すぎて痩せた」
「嘘つけ」
幼稚園の時優しくしとけばこいつと話せたのか。なんだろこの気持ち。
私達はとりあえず一緒にご飯を食べることになった。
ちゃんこはもちろんがっつり肉。
私は和食。
彼はなぜか野菜が多いものを頼んだ。
「なに。ダイエット?まさかあんた女になろうとしてんの」
私がそう聞くと彼はテーブルの上の箸を見つめながら「あ、いつもの癖で」いつもの癖...
どんな生活をすれば男が野菜を食べるのが「いつもの癖」になるのか。
「翔くんどこの学校だっけ」
「俺は商業高校だな。最近行ってないけど」
「なんで!?」
「いや...まぁ。」
「あー、友達いないのか!ぷぷぅ」
「うるせ」
「図星か〜。どんまい」
彼らがそんな話をしてるのを私は注文を待ちながら聞いていた。
最近学校行ってない...ねぇ。誰かさんと似た彼に私はさっきの質問をぶつけた。
「で、さっきは何してたの。」
彼はまたビクっとする。
「いや、学校の出し物で、女装が決まって...」目をそらすな。
「さっき学校行ってないいったじゃん」
「お!そうだ!名探偵アユちゃんだな!」
ちゃんこうるさい。
彼はずっとうつむいていた。
「別に答えたくないならいいよ。興味ないし」そう言うと彼は顔を上げた。
「あのな。誰にも言うなよ」
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「ここが...ゆりちゃんの家...」
一体何坪あるのだろう。まさに豪邸。
チャイムを押すことすらためらうし、周りの目線がすごい
「あの人あの豪邸に知り合いがいるのか」そんな目だ。
ここまで来たんだ。そう自分に投げかけチャイムを押す。ガラガラ声のおばさんが出る。「あの...ゆりさんいらっしゃいますか」
「少々お待ちください」
彼女がそう言うと門の扉が開く。こんなの映画でしか見たことない。さっきのガラガラ声であろうおばさんが降りてきて案内してくれた。
「貴女は、リナさんですね。ゆりは貴女の事を毎日のように楽しそうに話してくれます。今日いきなり学校に行きたくないと言っていたもので...なにか知りませんか?」
その目は私の心を見据えている目だった。私はそれを答えられなかった。「冗談よ。ゆりは庭にいるわ」
白い椅子に腰をかけて小説を読む少女がいた。私はそっと彼女の後ろまで歩く。
見覚えがある小説。
見覚えがある仕草。
小説を持っている手とは逆の手の人差し指の爪で親指の爪をこする。
何か考えてる時にする仕草だった。
見覚えがある後ろ姿。
肩まで伸びたその髪は水面に映った月よりも綺麗だと思った。
見覚えがある彼女はいつも私に笑いかけてくれた、いつも私を支えてくれた、いつも私を見ていてくれた、大切な友達のゆりちゃんだ。
「ゆりちゃん...」と言う前に彼女が話しかけてきた
「ごめんリナちゃん。やっぱり私は小説読むの向いてないわ。なーんかイメージできないんだよな〜。こう、漫画なら絵が描いてあるからいいけど。ね?」
そう言って彼女は小説を返してきた。読めないと言っていたその本のしおりは最終ページの近くに挟まれていた。
あと少し読めば終わりなのに。
なのに彼女は読まなかった。
「小説は...その人その人でイメージが異なるんだ。漫画なら主人公の顔が決まってる。
でも小説ならある程度条件が与えられていても不細工に思うこともできるしイケメンに思うこともできる。小説でしか表せないものもあるんだよ。
例えば主人公が男だと思ったら女だったとか。語り手が実は全然違う人だったとか。
最後の一文で物語がガラリと変わるとか。
小説はそういうところがある。
小説にしかできないことだよ。」
なるほどと彼女はうなづいた
「これだけ聞いていい?」
私はまた口を開く
「なになに?」
彼女ははにかみ私を見る。私は謝る前に聞いておきたかったことがある。
「前から聞きたかったこと。ゆりちゃん、なんで出会い系したの?」
彼女は固まり、私を鋭い目つきで見つめた