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ツキミソウ  作者: 高槻泉
5/7

番外編 エリンジウム〜光を求める〜

午前7時30分起床。


いつもより一時間半遅く起きる。

母親が作った朝ごはんを早々と食べ、制服に着替えてバレない程度に化粧をし、髪は寝癖を直す程度、歯を磨いている最中もカバンの中に教科書をつめたり、母が作ってくれた弁当を入れる。

歯を磨き終わり軽く香水をふって、8時12分の電車めがけて駅まで自転車をこぐ。


無事電車に乗り学校の近くの駅まで着くと、‘‘2番の子”のアパートの近くに行く、運良く彼女も家から出てきた為、学校まで一緒に歩くことができた。


「おはようゆりちゃん」

彼女から話しかけられてびっくりした事が二つ。

まず一つ目は自分から話せるという事。私の中の彼女の印象は恥ずかしがり屋で引っ込み思案な人だと思った為、相手からこちらに話してくるとは思わなかった。

もう一つは、私の名前を覚えていたこと。まだ新しいクラスになってから2日しか終えてないし、そもそも最初はクラスメイトの名前を覚えようという気にはならず、前のクラスの人とだけ仲良くするという人が多い。


「私の名前...覚えてくれたんだ」と聞くと「噛んでたから」と彼女は言う。もういいよ、と私が言うとまた可愛いく微笑んだ。目の保養。


しかし私は急に罪悪感に襲われる。私は彼女の名前を知らなかった。でも彼女は私を知っている。聞くべきか聞かぬべきか。そう考えているうちに下駄箱に着く。


もちろんずっと無言でここまで歩いてきた。話す話題がなかったからだ。彼女は何か話さないとと思ったらしく私のことをチラチラ見てきたが私はそれどころじゃなかった。私の心に降りしきる「罪悪感」という言葉。


二階まで行く階段に差し掛かったとき「どうしたんですか?」と彼女に聞かれたため、え?と返答すると「どこか痛そうな顔をしてるから...保健室とか行きますか?」私は彼女にそう聞かれ思わず失笑してしまった。


彼女は不思議そうな顔をしてこちらの顔を見ていたがやがていつものあのかわいい笑顔を見せ「何ですか」と言った。「別にどこか痛いわけじゃないよ。あと敬語使わなくといいよ、同級生だし。敬語使われてちゃいつまでたっても仲良くなれないよ」


私は皮肉を言ったつもりはなかったが彼女にはそう聞こえたらしく少し寂しそうな顔をしていた為早々と言葉を言い換えてまだ告げる


「いや、君と仲良くなれないっとことじゃなくて、敬語使われると距離感みたいなのがあるじゃん。だから仲良くなってもその距離感があるからってこと」彼女は納得し、あぁ、と呟いていた。


「名前...聞いてもいいかな」私は彼女に尋ねるとなんの躊躇もなく「リナです...あ、リナだよ。」と言った。「躊躇」とは私が彼女の名前を覚えていなかったから、覚えてないのかよと彼女が思って私を軽蔑し、名前を答える前に少し間が開くと思ったからだ。


「よろしくね」といい彼女に握手を求めると彼女は少し戸惑ったがいつものように微笑み手を握り返してきた。


教室に着くと理恵ちゃんたちが佐江ちゃんの元に集まってこちらを見ていた。


佐江ちゃんのもとにいくと「2番の子と仲良いのね。羨ましいわ!」と言われた為「リナちゃんだよ」と教えてあげた。

アユちゃんには「好きなの?」と言われそれを聞きちゃんこが「ぷぷっ」とバカにしたような笑いを見せた。「提案があるんだけど」私は彼女達に言った。「なになに」とさっきまでスマホをいじり興味なさげだった理恵ちゃんが反応した。


「リナちゃんを私達のグループ入れてあげない?グループっていうか...彼女いい子なのに一人だし...」と話していると佐江ちゃんが話を遮る


「ゆりちゃん。あの子人が一人なのはあの人が望んで一人だとしたら。どうする?」言われた意味がわからず聞き返した


「だから、あの人は一人でいることが好きだとして、もしも私たちがあの人に絡んでいったらどう思うかな。別にあの人が私達と仲良くしたいならいいけど、相手の気持ちを知らずに仲良くなろうとか簡単に言っちゃいけないと思うんだ。」


理恵ちゃんも同意したかのように頷く。「じゃあ、彼女が私達と仲良くなりたいって言えば仲良くなってくれるわけ?」


「いや、仲良くなりたいって言えばって...無理矢理言わせちゃだめよ。仲良くなりたいって思うならいいよ。私もあの人に興味あるし、みんなもね」


佐江ちゃんはリーダー的存在の為彼女が言ったことにみんな頷く。私は正直佐江ちゃんに苦手な所がある。


私は昼休みに彼女達とご飯を食べるのをやめ、リナちゃんと食べることにした。


初めは戸惑っていた彼女も時間が経つにつれ私に少しだけ心を開いてくれた。彼女は小説が好きだった。私は小説を読まないからどんな物語かを聞くと読まないと面白さが伝わらないと言われたので、彼女から小説を借りることにした。


その日の放課後、私は彼女の家に連れてこられ、小説を借りた。玄関で小説を彼女が持ってくるのを待ちながら部屋を眺める。部屋はリビングとその隣に一つだけ。お風呂とトイレが同じ場所にありカーテンで区切られていた。


「もしかして、一人暮らし?」そう聞くと彼女は頷いた。

「この歳で一人暮らしはすごいよ。偉いね。私もしてみたいなぁ、親めんどくさいし」


そう呟くと「私は親に会いたいけどなぁ...」と呟き返してきた。彼女は実家がとても遠い場所にあるためここに一人暮らしすることになった。


わざわざ遠くの学校に通った意味はその時はわからなかった。



私は彼女に小説を借り、帰ろうとした時、佐江ちゃん達との話を思い出した。「リナちゃん。もし良かったらなんだけど、私達と一緒に絡まない?絡むっていうかなんかみんなリナちゃんと話したいって言ってて」


彼女は私が話している間、目をそらしていたように見えた。「私は...いいや」彼女はそう呟き玄関の靴を見つめていた「なんで!みんなといた方が楽しいし、何かあった時助けてもらえるんだよ。リナちゃん1人じゃん。私たちといれば周りからもあの子一人だ、とか思われたりしないんだよ?」すると彼女の目つきが変わり「帰ってくれる?」と言ってドアを開けられた。



私はなぜだかわからず、彼女から貸してもらった小説を持って駅まで歩いて行った。私は私が言った言葉を思い出す。「リナちゃん1人じゃん。私たちといれば周りからもあの子一人だ、とか思われたりしないんだよ?」


あの言葉がダメだったのか。けれど私には1人がいいと思う人の気持ちがわからなかった。いつも誰かがそばにいてくれたから、いつもそばにいてくれればその人は友達だと思ってた。


彼女にとって「友達」とは何なのだろうか。


次の日はいつも通り学校に行くことにした。けれどみんな来てなかった。早く来すぎたと思っていたが、そろそろくるであろう時間になっても佐江ちゃん達はこなかった。そこで私は暇なため、教室にいる人達に話しかけていく。


今のうち仲良くなっていれば、もし佐江ちゃん達に見捨てられても大丈夫だろう。友達とは私にとって「保険」のようなものだった。8時25分遅刻ギリギリの時間帯に教室の前のドアが開いた。そこには佐江ちゃん、理恵ちゃん、ちゃんこ、アユちゃん、そしてリナちゃんがいた。



朝の会が終わるなり、私は佐江ちゃん達のもとに行った。「なんで今日遅かったの」そう聞くと「何でって、ゆりちゃん最近遅い時間帯に来てたから今日もかなと思って時間合わせたのよ。で、歩いてたら梨奈リナちゃんとあってね。いろいろ話してたら話弾んで。で、今日からお昼一緒に食べることになったから。いいよね。」


意味がわからなかった。なんで私が言った時は拒否して佐江ちゃん達が言った時はOKするのか。私のどこがこの女に劣っているのかわからない。私はやっぱり佐江ちゃんが苦手だ。

「どした〜ゆり。」アユちゃんが心配そうに授業中話しかけてきた。私は昨日会ったことを言った。


「小説を借りるついでに、明日から絡もうっていったけど拒否されたのね。なのになんで佐江ちゃんが言った時はOKしたのかなと思って。」

「それがあんたの悪いとこだよ。佐江も言ってたけどね、あんたは友達を軽く見てる。そういうところが彼女にはわかったんじゃないの?小説を借りるついでって言ったじゃん。あんたにとって「友達」ってのは所詮「ついで」なんだよ」


私は返す言葉が見つからなかった。幼稚園の頃のことを思い出す。幼稚園の時、私は友達が少なかった為いろんな人に声をかけて友達を集めようとした。アユちゃんも私に話しかけられた1人だった。


いろんな人に声をかけたが故におままごとの約束と鬼ごっこの約束とお絵かきの約束が重なり、「私と遊ぶって言ったのに他の人と約束してた!もう遊んであげない!」そう言う声が降りかかった。わからなかった。なぜ孤立してしまったか...


一人滑り台の上にいた時「どけ!」と言われ背中を蹴られた。当時一番暴れん坊の翔君だった。私は滑り台から落ちてしまい足を怪我して泣いていた。誰も駆け寄ってはこなかった。


「泣いてんじゃねぇ」と翔くんの友達達に土を投げつけられたりした。先生はそれに気づかず鉄棒の練習をしてる子に付きっきりだった。その時、アユちゃんが滑り台の上に登り、翔くんを突き落とした。翔くんは頭を打ったらしくものすごい声で泣き叫んでいた。「ありがとう」と彼女にいうとグーで殴られた。


「なんでやり返さない。意味わかんな」そう言って彼女は消えようとしたが駆けつけた先生に止められ、みんなから非難の声を浴びていた。


私は彼女を守るべく代弁したが私のことを支持する子なんて誰もいなかったため、私達が悪いということになった。アユちゃんに「ごめんね」というと頭をグーで殴られた。「守ってくれてありがとな。」と言われそこからずっと仲良くなった。


私はアユちゃんが大好きだ。

けれど小学生、中学生になってもその「癖」は抜けなかった。癖とは誰触れ構わず声をかけて仲良くなろうとすること。今思えば友達は4人しかいない。


大好きなアユちゃん。中学生の時虐められていて、幼稚園児の頃の私と重ね合わさった為話しかけたちゃんこ。

あの2人は付き合ってるなどと噂されていた佐江ちゃんと理恵ちゃん。


彼女たちがいなかったら、私はどうなっていただろう。私は再び友達の大切さを知り授業中に泣いてしまった。


昼休み、またちゃんこに泣いていたことをバカにされたが私は無視しておいた。いつもと変わった風景。

周りの人たちがチラチラ見てくるのがわかる。リナちゃんという可憐なはなを添える事でより一層私達は輝いて見えるのだろうか。


「佐江ちゃん、ありがとね。私実は一年の時も一人で寂しかったんだ。だから誘ってもらえて本当に良かった。ゆりちゃんも、昨日はごめんなさい。図星なことを言われて少し怒ってしまいました」


リナちゃんが自分から話ているのを見て、私たち5人は少し驚いた。それにしてもなぜ佐江ちゃんにはタメ口で私には敬語なのだろう。その隙間を埋めるのにこれから頑張ろうと思った。


「え!ゆりちゃんリナちゃんに怒られたの?興奮しますなぁ...ぶふぉ!」とちゃんこが入っていたが理恵ちゃんがそれを遮り


「私達リナっちに興味あったから、私達も嬉しいよ」といい、リナちゃんと似たかわいい微笑みを見せていた。


理恵ちゃんはちゃんこに少し睨まれていた。アユちゃんはどうだろう。

アユちゃんはあまり新しく入ってきた子と仲良くしようとする人ではない。ちゃんこが入ってきたときも少し不機嫌そうだったがそんな様子は見当たらなかった。


「そういえばさリナ、ゆりに小説貸した言ったじゃん。何貸したの?」と普通にリナちゃんにはなしかけるアユちゃんを見て少しだけリナちゃんに嫉妬した。

「~~~っていう本です。結構前のやつですけど読みやすいかなと思って」とリナちゃんが説明するとアユちゃんの顔が明るくなり「あ!読んだそれ。いいよね。泣けた」

と二人でワイワイ話していた。「珍しいね」と佐江ちゃんがつぶやいていたのを覚えている。

私達は5人から6人に増えた。亀裂が入るなんて思ってもいなかった。


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