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ツキミソウ  作者: 高槻泉
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虚ろな愛

5月7日。今日は晴天に近いほどの晴れ。12時に駅前に待ち合わせになった。


とりあえず人と会うということで汚いと思われるのは嫌だから朝にシャワーを浴びた。父と母とは別居している。


高校生で一人暮らし。毎月段ボールに食べ物やお金を入れて仕送りしてくれるから困ってはいない。


別居した理由は私にある。私の今通っている女子校は実家から通うとなると二回電車の乗り継ぎの後バスに乗ってそこからまた乗り継いで、そのあと歩かなければいけない。


バスも赤いバスと青いバスがありそれぞれ定期券が違うためそこにもお金がかかるし、何より通学時間にとてつもなく時間がかかる。


それならバイトをしながら一人暮らし、ということになったのだが私のおじさんの知り合いがアパートの大家さんだったので少しばかり家賃を下げてもらっている。


ひとつまみ程度だが。



シャワーを浴びた後ドライヤーで髪を乾かし、いつも通りメイクをしようとしてしまったが今日は男装をするためファンデーションなどをつけていたらおかしい。すっぴんで外に出なければいけない。


そのぶん髪の毛をセットするのだがよく中学生の頃トイレの前の鏡で男子が髪をいじってるのを思い出し、少しばかりやる気が失せた。とりあえずアシメ風に立たせてみた。顔はまだ女の為結局少し黒めのファンデーションでカバーすることで男の顔に近ずけた。


あとは服装。

もともと地味な格好を好む私には難儀なことではなかった。


あとは...待ち合わせ場所までうまく行けるかどうか。私は電車に乗ったことがない。実家から通っていたとしたら電車を難なく使いこなせただろう。


しかし路線図をみてもどこに自分の行きたいところがあるのかごちゃごちゃになりすぎてわからなかった。とりあえずこうなったらゆりちゃんに手助けしてもらうしかない。とっさに電話をかけた。


朝5時のことである。


当然出なかった。無理もない、私は毎日午後8時に寝て午前2時に起きている。寝るのはそんなに好きじゃない。


ゆりちゃんから折り返しの電話がかかってきた

「もしもしぃ〜?なに今寝てんだけど」


不機嫌そうな声が返ってきたためそっと受話器を置いた。

友達と電話するときは家の電話を使うようにしている。なぜかというと大家さんが電話代を負担してくれるからだ。なのに使わないなんてもったいない。


とりあえず自力で調べると、最寄り駅からたったの二駅しか離れて無かった。午後11時0時、不安なため少し早い時間に行くことにした。11時16分めがけて駅まで歩いていく。そして難なく切符を買い、難なく電車に乗った。電車...余裕っす。





午後11時30分。ここはどこだろう。駅前じゃないぞ。どうやら反対側の下り電車に乗ってしまったようだ。

私、17歳の春。究極的混乱状態。一度駅から出た。かと言って誰かに尋ねる勇気がない。


うろうろしていると「あ!」という声が聞こえた。振り返るとゆりちゃんが立っていた。やばい、バレた...人生終了。

ゆりちゃんがいなくなったら友達0。


「なんで連絡してこなかったの!」

恐らく朝のことを怒っているのだろう。


「ごめん...いきなりだったから怒ってると思って...」ゆりちゃんは私の顔をジッと見つめた。

「まぁ、レイラさんなら許す!今から学校だからまた今度遊ぼうね!次はちゃんと連絡してくれなきゃ怒るよ!」といい睨みつけてきた。

助かった...男風メイクをしていたから私ってことがばれてなかった。声も少し暗い声で言ったので女とはばれてない。


私がニコニコしていると「もう!」と言ってゆりちゃんはぐーパンチしてきた。可愛すぎる。私は将来ゆりちゃんと結婚することになるのだろう。


しかしゆりちゃんが出会い系のようにあのアプリを使っている一人ということが脳裏に遮り少し萎えた。


「あの...駅前までどうやっていけばいいの?」とゆりちゃんに聞いてみると爆笑された。


「本気で言ってるの?めっちゃおもしろいね。ますます好きになった。」と腕に胸をなすりつけてきた。


正直この子はビッチなんじゃないかと思い始めてきた。


「とりあえず切符?だよね。じゃあ240円入れて〜そこ押して〜買う。簡単だね?じゃあ私についてきて〜、そこで電車待って、私が下りてから2つ次のところで降りる!OKベイベー?」

よくわからないけどとりあえず可愛かった。


次の電車は11時46分電車が来るまで彼女にずっと話しかけられていた。いつものように話しているゆりちゃんとは違い目が輝いて見えた。それにしてもなぜ今日はこの時間に学校なのだろうか。


「今11時過ぎだけど学校大丈夫?」そう聞くと彼女は病院に行ってたのだと答える。


2つ駅行ったら彼女と別れ。私だけまた2つ駅またなければいけなかった。


駅前につくともう12時5分。5分の遅刻。

私はみずきちゃんがいるか探した。

私の釣った相手のことだ。待ち合わせ場所は大きな時計の前。そこには女の子が一人ポツンと立っていた。

とりあえず話しかけて違ったらアレなんで真正面から向かおうとせず一度彼女に対して横になる向きから彼女に近ずいてみた。彼女との距離およそ3メートル...もないかもしれない。

一度そこで立ち止まり、彼女と同じように壁に寄りかかってみた。彼女と思われる人物はスマホを見ていた。次に彼女がどんな面をしてるのか拝見した。私より可愛かった。ちょっとショック。その怨念を込めて彼女をチラチラ見ていると少し不機嫌そうな顔をし始めたので目をそらした。


「レイラ...さんですか?」彼女が声をかけてきた時は少し...いやかなりびっくりした。



声が...男だ...


なるほどなるほど。彼は私と同じく出会い厨ハンターで女装をして、釣っているのだろう。私のことを出会い厨だと思っているな。少し頭にきた。可愛いからなおさら。だが彼女?は大きな過ちを犯した。女の声を出すことはできない。それを無理して出したため、少し気持ち悪い声になってしまっている。


彼女?自身やってしまった、と思っているだろうと感じ彼女?の顔を見ると自信に満ち溢れた顔でこちらを見つめていた。


よくよく見るとメイクが雑。まぁ、少しおちょくってやろう。彼女?まぁ、彼女としておこう。


「思った通り可愛い顔だ!会ってくれて本当にありがとうございます」


彼女の顔を見るとすこし疑ったような顔をしていた。

多分大袈裟すぎた。とりあえずご飯に行こうという話になり、男らしさをアピールすべく彼女の手を取ろうとしたが軽くあしらわれた。


実は男のくせに。


昼は適当にファミレスでとることにした。

私は少食だが男らしさを出すためがっつり系肉を頼もうとしたが、太ると困るので野菜メインの物。彼女と同じものを選んだ。


「遠慮しなくていいんだよ?奢ってあげるから」

というと彼女は「遠慮してないです」といい目をそらした。

私は彼女に警戒されてるのだろう。彼女は自分が男のということがばれるかもしれないという警戒の中でここに来ていると思う。


しかし彼女は普通にメイクを落としたらイケメンなんじゃないか。こんなイケメンが女のフリして男を釣っているという事はホモ?そんなことを考えながら彼女の目をじっと見つめていた。

彼女はそれに気づくと目をそらした。


「ごめんね。いきなり会いたいなんて言って。誰にでも会いたいって言ってるわけじゃないよ。これだけわかってほしい」


沈黙が続いたため彼女に投げかけてみた。


「イケメンなのに引きこもりっておかしいよね。本当だとしたら人生損してるしこんなコミュ力ないよ。」


彼女はそう私に言ったのだがやはり気持ち悪い声だった。無理して男が裏声使って女声に似せているような声。


私は笑いそうになったためうつむいて必死で笑いをこらえた。

しかし堪え他のはいいが涙が出てきてしまった。心で笑いすぎて。

それを悟られないようにしなければいけなかったがもう限界だったのでとりあえずトイレに逃げた。


私は一人でトイレで爆笑していた。


5分くらい笑いこけたあと彼女の元に戻るとまだご飯に手をつけていなかった。


「ごめんね。ご飯食べててくよかったのに。」

そう言うと彼女は

「う、うん」

と曖昧な回答をし、食べ始めた。なんだか彼女が、いや、彼が可愛らしく感じてきた。


ファミレスを出たあととりあえず街を歩くことにした。その時は午後2時30分。


適当に服屋とか本屋を周り好きな本があったのでついでに買っておいた。

本を買ってる間彼女を待たせてしまったので缶コーヒーを買ってお詫びしたがあまりいい顔をしなかった。

彼女は缶コーヒーを開けると小さな声で「せーの」といい一気に飲み干した。

飲み干した後に顔が硬直しているのを見て私は思わず笑ってしまった。

こんな顔もするんだな。午後5時。とりあえずお別れにすることにした。もう釣らなくていい。なんか満足。むしろまた遊びたい。彼、いや、彼女といてなぜか心が和んだ。もしかしたら好きなのかなとかも思ったりした。なんか悲しい気持ちになってきた。

「また会いましょう」彼女は私にそう言ってきた。

私は正直驚いたけどまた会えることが嬉しく思いその日は気分良く帰れた。

家に帰るとまず彼女にお礼の言葉と次の会う日を決めようとしたのだが、彼女は明日でもいいとのことだったから明日も遊ぶことになった。

次の日、昨日と同じく駅前出会い、水族館に行きそのあと公園に行って雑談して帰った。明日も遊ぶ予定をした。


上機嫌で帰ると家の前にゆりちゃんがいた。


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