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ぼくらのハードル~Another Boy~

「データよりも確率よりも」の直孝目線です。

おまけあり(笑)。


こちらも長いです。



「何すんのよおっ!!もう、最低!!」

 そう言って希乃が慌しく出て行った後に残ったのは黒に金の紐がついた紙袋。 

 中に入っていたのは「初恋ショコラVeryBerry」。チョコレートケーキ“初恋ショコラ”のうえにラズベリーやブルーベリー、それに大きめの苺が乗っている。

 賞味期限を見ると、なんと今日中。明日、新しいのを買って希乃に返すか・・・・俺はショコラのフタをあけて一緒に入っていたスプーンで一口大をすくった。

「お。これはうまい」

 濃厚なチョコクリームとしっとりしたスポンジ。苺とチョコレートって合うんだな・・・・明日、希乃に謝って改めて告白をしなおそう・・・食べちゃった分の初恋ショコラを買わないと俺、確実に恨まれそうだ。

 ところが次の日、希乃は学校を休んだ。俺は学校が終わるとその足でコンビニに立ち寄った。もちろん、目当てはあれだ。



「・・・・これか」

 学校近くのコンビニで目当ての商品を見つけたものの、そのディスプレイに俺は若干引いている。

 希乃の好きなアイドルと、そのアイドルが入ってるユニットのメンバー(もちろん俺でもテレビで見た顔ばかり)、従来品の初恋ショコラから引き続き宣伝しているアイドルグループ(こちらもまたしかり)を全面に出した売り場スペースは、女子には楽しいかもしれないけど男は非常に買いづらい。

 ディスプレイ内においてある広告モニターではCMがずっと流れてるし、もう力の入れようがハンパない。

「・・・なんか、すげーな」

 さっさと1個買って帰ろうと思うんだけど、買いに来る女子がCMにうっとり見入って動かないので割り込むのも気がひける。すみませんなんて言おうものならにらまれそうだ。

 とはいえ目の前で売切ってのも困る。ちょうど人波が切れたところで、俺はようやく初恋ショコラVeryBerryをカゴに入れることが出来たのだった。


 レジに並ぼうとその方向に歩いて行くと、最後尾に同じバスケ部の内藤先輩が紙片を持ってレジに並んでいるのが目に入った。

「内藤先輩」

 後ろに並ぶときに声をかけると、先輩はちょっと驚いていた。

「池野。おまえ何して・・・へ~、甘いものすきなのか」

 先輩の視線が俺の持ってるカゴの中に。

「甘いものは嫌いじゃないですけど、これは・・・見舞い用です」

「見舞い?」

「俺の、幼なじみが今日風邪引いて学校休んだんで」

「あ~・・・図書委員のあの子か。早川さんも見たことあるんじゃないですか。図書委員の1年生で、メガネの子」

 そういうと、先輩は前に並んでいた人に話しかけた。そこで俺は初めて前に並んでいるのがテニス部の早川先輩だということに気がついた。この人が出てた部活説明会を見た女子たちが一時すごい騒いでいたんだけど、公認の彼女がいて、しかもかなりのラブラブだと聞いてがっかりしてたような。

「ああ。涼乃が“毎年図書委員に来る子はいい子ばっかりで嬉しい”って言ってたね。確かにいつもにこにこして感じがいいよね。君の幼なじみなんだ?」

「は、はい」

 俺、男なんだけど早川先輩が一部で王子って呼ばれてるの分かる気がする。


「早川先輩と内藤先輩は、何で列に並んでるんですか」

「お、俺は、これだ」

 そう言って見せてくれたのは初恋ショコラVeryBerryの予約申込みの控。

「俺も内藤くんと同じ。今回は予約できるっていうから内藤くんを誘ったんだ。涼乃と内藤くんの彼女は友達だから」

 そういえば、内藤先輩は3年生に彼女がいるって話は入部してすぐに他の先輩から教えられたんだった。

 へ~2人の彼女は友達なのか。

「前も一緒に初恋ショコラ買ったしね。あのときは本当に内藤くんが先にコンビニにいてくれて助かったよ」

「俺も一人では無理でした。池野はすごいな、俺はあのディスプレイに近づくのは・・・ちょっと無理」

 内藤先輩はディスプレイのほうをちらっと見て苦笑いした。

「お、俺の場合は、どうしても買わないといけない事情があったんで・・・」

「お見舞い品だもんな。しょうがないか」

 内藤先輩があっさり頷いてくれて、俺はちょっとほっとした。



 コンビニを出て先輩方と別れ、俺は希乃の家に向かった。朝ときどき一緒に登校していることもあってか、すっかり顔なじみになっているので、おばさんはあっさり俺を部屋に通してくれた。

 パジャマ姿の希乃をなるべく見ないようにして、初恋ショコラの入った袋を渡すとなかみを確認したこいつは目を見開いたあとに、なんかうっとりした表情で初恋ショコラを見つめている。本人は隠してるつもりだろうけど、小さい頃から知ってる俺には丸分かりだ。

 なんか、腹が立つんだが。やっぱり現時点の希乃のなかでは俺よりアイドルなわけだ。

 その瞬間、謝罪の気持ちが消えてしまった。逆に絶対俺はアイドルに勝つ!!と沸いてでる思い。

 希乃にショコラのお礼を言われたときに口に出たのは「・・・まあ、恥ずかしかったけど、希乃が喜ぶ顔が見たかったし・・昨日のことだけど、俺は謝らないよ」という言葉。

 あっけにとられた彼女の頬に、俺は彼女の全てにたいしての優先的な予約のつもりでキスをした。

 希乃、覚悟しておいてね?もちろんあとで「Berryよりも甘いキスをしてみない?」って耳元で囁いてあげるから。




<コンビニ店員のつぶやき・その2>

 初恋ショコラを買いに来たあのときの男の子たちのおかげで、私はその後無事に小説を公開することが出来た。

 内容も好評で、続編が見たいです~ってコメントもらったんだけど、ネタが浮かばないのよ~。クリスマスはしょうがないから別のネタで頑張ったけど、次は絶対書いて見せるっ!!

 それにしても初恋ショコラVeryBerryはすごい人気だわ。450円って結構なお値段だけど予約も絶好調だし、店頭に並べてもすぐに売れてくし。ポスターについての問い合わせもすごいし。

 あら?ネタになった男の子たちがいる。あの紙片は・・・そう、今回の分は予約したわけね。なんだー、つまんないのっ。

 ん?身長180超えの男の子が話しかけてる子、身長は彼と同じくらいで爽やかだけど強引な感じの男の子ね。あら、もう一人のネタ元の子も親しげに話しかけてる。

 あ・・・次は三角関係なんてどうかしらっ!!カップルの間に現れる強引な年下男子・・・くぅーっ!!いいわ・・・実にいいじゃないっ!!!

 バイトを終えたら、速攻家に帰るわよーっ!!今日はいけそうな気がするっっ。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!



一部のお姉さま方から好評(?)だった

コンビニ店員のつぶやき、第二弾でました。

彼女の脳内妄想はヒートアップwwww

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