エピローグ
秀志視点です。
学生時代からの友人である新郎の藤倉は医者で、今日の結婚披露パーティーは新郎側の招待客は医者が多い。
そのせいか、女性たちは藤倉の同僚らしき人たちと話すのが忙しいようだ。まあ、おかげで食事に専念できるのはありがたい。
藤倉はそんなに食べ物にこだわりがないはずなので、この会場は藤倉の奥さんが決めたんだろう。
いろんなジャンルの料理が並んでるけど、どれもうまい。なかでもチーズとエビをスモークサーモンで巻いているピンチョス・・・組み合わせを考えた料理人はすごいもの。
他の料理やデザートも美味しそうで、執筆中はロクに食事をしてなかったのもあって僕は食べる気満載でテーブルをうろうろすることにした。もちろん、ピンチョスをいくつか皿に載せてだ。
そこで、藤倉の同僚に視線を移すことなく、料理を食べている女性を見つけた。あごから肩までのレイヤーが入ったふんわりした黒髪に、背は僕より10センチくらい低いだろうか。靴は5センチのヒール・・・ということはもうすこし低いか。光沢のあるグレーの膝丈ワンピースに黒のフリルのついたジャケットがよく似合ってる。
きれいにしかも美味しそうなその食べっぷりをもっと近くで見たくて、ピンチョスをネタに話しかけた。すると、奥さんの小学生時代からの友人であることが判明。
思いのほか話が合って会話が弾む。きらきらとした彼女の表情を見てるのは楽しい。もっと会っていろいろ話したい・・・そう思った僕は、彼女に茶飲み友達にならないかとその場で誘ったのである。言っておくが、僕は普段ならこんなナンパみたいなことは絶対にしない。彼女だからどうしてもきっかけがほしかったのだ。
ちょっと驚いていた彼女は、それでも茶飲み友達になることをOKしてくれた。
それから半年と少し・・・いつから彼女のことを好きになったかはわからないけど、僕のほうが彼女を先に恋愛対象としてみていたのは間違いない。
家に誘っても安全だと思われてることがミエミエだったし、彼女専用のカップを用意していたことを知っても「わざわざありがとう」しか言わない。それ以上の意味があるなんて思ってもいない態度・・・僕の理性が崩壊しなかったことを褒めてほしい。
だから、告白代わりに彼女からキスをしてもらうくらいはご褒美だと思ってる。もちろん、そのあと互いに気持ちを打ち明けたけど。
隣の彼女は熟睡している。久しぶりだという彼女に無理をさせたけど、僕も久しぶりだったんだよね。
彼女の気持ちを知った後は、僕の理性の崩壊は早かった。自分がこんなに肉食だとは・・・・そういえば、彼女も眠りにおちる前にぼそりと「ロールキャベツ男子だったなんて・・・」って言ってたっけ。
見た目草食で、中味は肉食・・・・なるほど、うまいこという。
彼女はまだ起きる気配がない。
起きたときに離れているのはいやなので、僕はあらためて彼女を後ろから抱きしめてもう一眠りすることにした。
読了ありがとうございました。
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これで「A delicious thing with you」は完結です。
始めは短編にする予定だったんです。
それが7話も続くとは(汗)。
読んでいただいてありがとうございました。