4:うちあけ飲茶
和風男子が彼女に「私と・・・・その、Berryよりも甘い・・・いや、なんでもない」と言うと、女性の後姿が近づいて暗転したあとに真っ赤な顔の和風男子。そこで「Berryよりも甘いキスをしてみない?」彼女の声で商品名が流れた。
「は~、このパターンは初めて見たわ。またやったら録画しなくちゃ」
「由梨・・・またコンプリートする気?」
「当たり前よ」
今日は、由梨の家に遊びに来ている。飲茶を取り寄せたから一緒に食べようと電話があったのが昨日で、藤倉さんが留守だというので由梨の勧めにしたがって泊まることにした。
そこで私は由梨の目的に気づかなかった・・・うかつだ。
冷凍便で送られてきた飲茶を二人で調理していると美味しそうな匂いが漂う。
小籠包に、蒸しエビワンタンに豆腐シュウマイ、大根もちに肉入りちまき、もち米蒸し団子にエビとチーズの揚げ物、マンゴープリン。
「ずいぶん取り寄せたね」
「まあね~、どれもこれも美味しそうでさあ。だいじょうぶ、私らならいけるよ」
確かに、互いに小食なんていう言葉に縁はない。
料理を並べ、ビールを出すと由梨が待ってましたとばかりに口を開いた。
「で。どうなのよ」
「なにが?」
「先週、藤倉が佐々山さんと会ったんだけどなんか元気なかったんだってさー」
「・・・ネタに詰まってるんじゃないの?」
「そういえば、あんたも最近元気ないよねー」
「仕事が忙しいのよ」
「ふーん。週末に散歩と食事をしてないからじゃないの?」
由梨は淡々としかもやけににこやかに質問を投げかけてくる。口調こそ酔っ払い風だけど、由梨はザル。
「確かに佐々山さんと会ったのは先月が最後だけど」
「最後に会ったときに何があったの?香奈子、あんたとは小学1年生の頃にクレヨンの貸し借りをしてからの付き合いなのよ」
小学1年生の頃~のセリフは、めったに付き合いの長さを強調しない由梨が心配してる証拠だ。
「私、そんなに元気ない?」
「週末に佐々山さんと何を食べたって話してるときの香奈子の顔、いつも楽しそうだったよ」
「・・・先月、アジフライ定食を食べてるときに気づいちゃったの。自分の気持ちに」
「気づいちゃったら、いろいろ欲張りになるよね」
「うん。だけど・・・・」
私が言いよどむと、由梨はじろっと私を見てビールの缶をごんっと乱暴にテーブルに置くと、にやりと笑った。
「あのさあ、待ってるだけのお姫様なんてつまらないわよ。さっさと押し倒してきなさいよ」
「ななななにを言ってるのよ」
思わず、秀志さんを押し倒してる図を想像してしまう。細身だから意外といけるかも・・・って、由梨に毒されてるなあ・・・。
「あらあら顔が赤いし。まあ、言っただけだから気にしないで」
「あのねえっ」
由梨は間違いなく、人の反応を楽しんでる。
「初恋ショコラVeryBerryってもう買ったの?」
「は?今度の金曜の夜に会社近くのコンビニに受け取りに行くけど」
「あんたの会社近くのコンビニって・・・あの美声とイケメンの宝庫の。あそこ、いいわよね~。うちの会社も、もっと近くにあったらよかったのに。ちっ」
「あははは・・・うちの会社の女性たち皆あそこで初恋ショコラ予約したよ」
「まあそれはともかく。ねえ、初恋ショコラを持って佐々山さんに会いに行ったら」
「・・・だって、仕事とかあるかもしれないし」
「香奈子は恋愛に関しては“永遠の恋する乙女”よねえ・・・かわいーったら」
その後、お酒の勢いもあったのか、なぜか金曜日に秀志さんに会いに行き、告白することを由梨に約束させられたのだった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
私の中では和風男子はきっと「Berryよりも甘いキスをしてみない?」って言えないだろうということで受身にしてみました。
たまには迫られる側になるパターンがあってもいいと思う。
飲茶で検索してたら
おなかがすきました。