蛇女
其の瞳を覗けばと冷たい石とナル
暗く湿った 岩肌に独り
静寂が私の心を諌める様に抱き包む
重く冷たい腹を引きずりながら あてどもなく朽ち果てた此の迷宮を彷徨う
身体を裂いた あの穢れが 突き抜けて無数の蛇となって 厭らしい息を吹きかける
あの あの 猛々しい神が
あの 男が
だが 海辺を蹴って逃げ走る伸びやかな足は 一つとなって地を這うものに変わってしまった
浜を駆け 丘を越えて
救いを求め ひたすらに駆けた
嘲るように 何処までもついてくる
髪に 肩に 背に触れるほどに近づかんと伸ばされる指が
あの憐れな子牛を追い立てた 虻の様に 私を弄んだ
恐ろしかった 恐ろしかったのだ
捕らえられ 抱かれて この身に起こる何もかもが 恐ろしかったのだ
水辺で 野で 詠い 踊り戯れる 少女の日々が 愛しかったのだ
襲い来る 未知なる物に 追われ 辿り着いた 其処だけが 安息の神殿
何時までも 穢れることなく あの方の御許で 夢を見 愛を紡いでいたかった
縋りつく 私の白い腕は あのお方の目に穢れとして映る。
貴女にとって もう私は 追ってくるあの 恐ろしい男と同じもの 同じ 未知なる 恐れとなってしまったのですね
嗚呼 それでも 私は知っています
これが 此の姿こそが 貴女の愛
この地を這う身体を私は呪わない 私の矢は 女を射ることは無く
私の瞳は
もう
誰のモノにも
なりはしないから
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