炎の二人
試合会場の月光学園では京乃が中腰になり真剣な眼差しで前だけを見据えていた。
「今日の力を今にぶつけ、この身を燃やして、明日をつかむ! 京乃主税出るぜ!」
「ロボットの出撃シーンじゃねーんだぞ主税。ブラックボマー出る」
「って、先輩も同じじゃないっすか!」
目の周りを一直線にマジックで塗る、Jユース代表・大型FW目黒が京乃とロボット談義を始める。すでにもう試合が始まる瞬間で、あとは審判がグラウンドに入れば前半開始のホイッスルが鳴る。その瞬間、数台の単車が唸りを上げて月光のグラウンドに現れた。突如現れた暴走族に観客は焦るが、その中からテンプレ学園の赤いユニホームを着た二人と月光学園の黄色のジャージを着た中年の男が現れたのを見る。その三人は超満員の会場に驚き、興奮する。そして互いのチームメイトに急げとせかされてポジションにつく。
「なんなんだあの看板は! 垂れ幕は! そして名前の書かれたタオルを持つギャル達はっ!」
プンスカ! と陽介は激怒していた。準決勝から増えだしていた観客は更に倍増していた。その最後の理由はキッドの居酒屋でテンプレ学園サッカー部の写真が張り出されていた事にある。そこで家族連れの近隣からのファンが出来始め、都大会を勝ちあがっているという事で盛り上がっていた。
「テンプレ学園はどの大会も決勝から突如として支援しだす。あのエースの二人が間に合った以上、決勝は盛り上がるわよ。利益、利益……」
スマホでネットをいじる水城はこの会場で売り切れた各種グッズをネット予約で受け付けていた。指をすべらせよだれを垂らす顔は金の亡者でしかない。
「クソー! タイヨウのファンクラブがあってなんで俺のがねぇ!? 一体誰があんなの許してんだ。オヤツ抜きにしてやりてぇ。あー! タイヨウを応援すんな! しかも俺のタオルが一枚しか売れてないでタイヨウが百枚? ダボがあああああああっ!」
主に桐生とタイヨウと鬼瓦。そして以外にも明石や結城も歓声が上がる事に陽介は怒りを隠し得ない。水城に指示されたサブの部員が試合前にブロマイドやうちわ、タオルを売っている事にいまだに憤慨し愚痴る。それを桐生が説明する。
「俺たちに肖像権は無い。あの水城の地道な活動がテンプレ学園サッカー部の様々な資金になる。試合後のレディボーデンは旨いだろう?」
「……まぁ、水城さんの活動なら仕方ないですね。がんばりますよ」
水城の名前を出された陽介は簡単に引き下がり、当の水城は笑う。
「陰松。貴方はまだまだチェリーよ。これでサッカー部への資金も増え、学園への貢献度も増す……計画通り」
そして審判が現れ陽介は目の前の京乃が遅れてやんの! と茶化す挑発に簡単に乗る。
「調子に乗りやがって。主税の奴。んだあのデカイ男は。バッドマンかよ」
「……パフェが食べたい。雅屋のしろくまパフェ」
京乃の横の目黒は独り言を呟き無視する。フッと笑う京乃に陽介はまた怒る。
その相変わらずな陽介の姿を見た樹音はYOSUKEの名前が書かれたタオルを首に巻く。
(頑張ってね、二人のお兄ちゃん)
チラッと陽介は隣のタイヨウを見る。
「行くぜ、相棒」
「あぁ。勝って終わらせるぜ」
「たりめーだ。天下は俺の為にある」
そして、全国大会へのシード権を得る運命の決勝戦が開始された。
FW・タイヨウ(11)陰松(18)
MF・桐生(10)明石(7)木戸(19)永倉(5)安岡(4)
DF・鬼瓦(2)藤堂(3)芹沢(15)
GK・結城(1)
控え・小泉(8)沙原(9)時口(12)岡村(13)朝倉(21)
11 9
19 10 5
7 4
3 2 15
1
チョン、と京乃がFWの小橋に渡し、そのボールは背後のセンターFWの目黒に渡る。
『――これは!』
開始早々シュート体制に入る目の周りを黒く塗った大型FWの目黒に、前の試合のキング宝井のスーパーロングシュートを思い出す。全員の体勢が後ろめになるが、そのシュートは明石の腹に直撃してこぼれ球をマイボールにし、重戦車のように進む。明石はそのまま倒れているが、審判はそれを流し試合を進める。
「野郎、明石が倒れてんのに!」
「回避は出来たはずだし審判はわざとと取らなかったんだろう。顔面だったら試合を止めていたかもな」
その圧倒的パワーのドリブルにテンプレ学園一フィジカルの強い桐生さえ弾かれた。流石に一瞬バランスを崩す目黒は足下にボールが無い事に気付く。キッドが横からスライディングをかまし、ボールを奪っていた。
「仲間やられといて黙ってられ――れ?」
キッドがボールを奪い、安心した隙を突いて京乃はかっさらうようにボールを奪いドリブルで特攻をかける。瞬時に鬼瓦達ディフェンスが潰しにかかる。三人に囲まれる京乃はペロッと舌を出し、右の鬼瓦と藤堂二人の間に突っ込み急停止し、ボールを後ろにやり右のかかとで左のスペースに蹴る。同時にそれにつられた鬼瓦と藤堂はお見合いし激突する。だが左から迫る芹沢が流れるボールに足を伸ばす。
「うおおおっ!」
とシュート体制に入る京乃に驚き半身になってしまう。キックフェイントで抜けた京乃は最後の敵であるはずのGK結城を見た――が、
「!?」
そこには今しがた突破した鬼瓦が目の前にいた。
(あれま! わざとキックフェイントに引っかかったのね。やるなテンプレディフェンス)
今度は無闇に当りに行かず、クレバーに京乃の動きとボールを見据える。
(ボールが消えた? まさかヒールリフト!?)
ヒールリフトで真上を通過されたボールにジャンプし、頭にかすらせた。その間、左右の藤堂と芹沢がボールの先に現れる。
『――なっ!』
だが――それを脅威のボディバランスを披露しオーバーヘッドで打った。その真っ向勝負に感銘を受けた結城は正々堂々とその勝負を受ける。
「来い、小僧!」
ゴール前で四股を踏みつおおおおっ! と強烈なシュートを正拳突きで弾き返す。
「おこぼれもらい」
しかし3トップの一角、小柄で神出鬼没のラッキーボーイ小橋が詰める。すかさずゴール前まで戻る鬼瓦がチェックに入り大きく前線にクリアする。そのボールの渡る先に敵将である男が、自慢のゆるふわオシャレパーマの髪を風に揺らし待ち構えていた。
『緑川――』
同時に閃光のようなグラウンダーのシュートが放たれた。足が止まるテンプレイレブンはボールを見送る。すると、そのボールは左サイドのポストをかすりコーナーキックになった。
緑川の蹴るコーナーから近いニアサイドに目黒などの長身選手が集まり、テンプレイレブンは徹底して前に出るマンマーク体制を取る。立ち上がりの固さが多少見えるチームメイトに桐生は檄を飛ばす。
「マンマークだ! マークする奴を前に出すな! 俺達は破軍に勝ったチームだ! 冷静に対処すればどうという事は無い! こんなFWだけのチームに負けるわけがないだろう!?」
『はい!』
活力が注入されたテンプレイレブンはかなり激しいポジション争いを繰り広げる。マークする相手の京乃が見当たらない陽介はまるで試合に参加してないように遠いファーサイドてブツブツ呟く男を見つけた。足がつってるのかヒィー! と呻く京乃はファーサイドでブラブラしてる。
「何だ。あいつ足がつったのか? かっこつけてオーバーヘッドなんてかますからだ。なら主税のマークはいらないな」
コーナーにいる緑川が手を上げた為、すぐに合わせてくるであろう巨人・目黒のマークに鬼瓦と共についた。バシッ! とコーナーキックが蹴られる寸前、中央付近にいる目黒など敵の全員がニアサイドに流れた。
「やっぱ、ニアに上げて確実に目黒で点を取る。月光のテンプレね。一人少ない分マークは完璧。クリアしてカウンター……」
その水城の視線はニアサイドを離れファーサイドに飛んで行くボールを見た。テンプレと月光の全ての選手がニアにいる中、孤独な詩人のようにただ一人ファーサイドにいる京乃はダイレクトボレーをかまし一点を決める。
『――』
その完全に虚を突かれた一撃に陽介は歯軋りし、桐生でさえも言葉を失う。月光の監督である松坂の罠にはまっていた事に気がつき、前田監督はやれやれと溜息を漏らす。
「やはり手強いですねぇ松坂君は。日本サッカーを世界で通用させる選手を育成し、W杯を取る。やはり大きな目標がある人間の下に集まる子供達は成長が早い。私にはそんな大きな目標はないですが、このチームを優勝させるという地に足がついた目標がある。そしてこのテンプレ学園の伝統をこころに宿すチームの絆なら破れない壁なんてないと信じています」
その言葉にベンチは盛り上がり、それは静まるスタンドにも伝わりテンプレ学園の生徒一同は盛り上がる。まぶしい太陽がグランドを照らし、初夏の暑さが厳しさを増すと同時にその試合は混沌を極める。激しい攻守の切り替えに、めまぐるしく動くボール。両者はその若き命を燃やし尽くすかのように疾走し続ける。
「あーっ! くそっ!」
スパッ! と放たれた緑川の強いボールは京乃にはつながらずタッチラインを出る。
パンパンパン! と手を叩き緑川に親指を立てもう一回! と同じボールを要求する。
そして自分のマークについた小さなツンツン頭の男に言う。
「よう、久しぶりだなキッド。明石もいるようだし多摩川選抜のエース集合試合になったな」
「久しぶりの挨拶は俺の家の居酒屋でしろ。スピードにはスピードって事で当分は俺がマークするから覚悟しろよ京乃」
「無駄口叩く余裕が無いかキッド? 俺はあの夏よりだいぶ早くなったぜ。50M走は6秒を切るからな」
「サッカーは50M走じゃないやい!」
「ハハッ、そうだそうだ。FWのダッシュはせいぜい10メートルから長くても20メートルぐらい。これは他のポジションの選手にも言える事だが、別に50メートル走が早いからといってサッカーに有利になるわけでも無いし、ボールに早く追いつけるかと思ったら大違い。過去のマイケル・オーウェンなどがいい例だが、短い距離を走るには一歩目からトップスピードに入る脚力が重要なのさ。俺とお前のようにな」
「先に行くぜ――」
スローインに反応したキッドはいち早く動く。それを見た陽介は叫ぶ。
「キッド! 腕を出して行かせるな!」
キッドは先に走ったはずなのに簡単に追い抜かれた。それは5メートルを超えてやっと加速するキッドと京乃の決定的な差だった。その単独のドリブルから放たれたシュートは鬼瓦の26の秘密の一つ、カミカゼトルネードの旋風により視界を塞がれ外れる。舌を鳴らすキャプテンの緑川はそばにいる桐生に聞こえるように呟く。
「残念、外れたか」
「お前、もしかしてデータマン?」
「そうだ。今までのデータによると、そちらで二番目に足が速い陰松でも京乃のスピードには勝てない」
「うちはバカの集まりだからデータに収まるような扱い易い奴はいなくてね。ま、俺がその筆頭なんだが。あの一年坊主達のおかげでな」
「いい話だったよ桐生。お前のデータも全て採取してやる」
「ああそうか――チッ!」
桐生が数人の選手に囲まれた後、忍びのように影から接近してきた小橋に吹き飛ばされボールを奪われる。ワオ! という顔をする京乃はあ~あとアクビをしながら言う。
「おっ、流石はシャドウ小橋。後よろしく~。朝までモバゲーやってて眠ぃ~! 箱が深すぎてレジェンドレアが出ないぞーーーっ!」
(……陰松の友人の一年か。ふざけた奴だ)
そして小橋は一気に前線にボールを送る。その光景にテンプレ学園のディフェンスラインに先程の光景がフラッシュバックする。そして鬼瓦は瞬時に指示を送る。
「また、パワープレイだろう。キッド、明石は左右のFWをチェック。俺達はあのデカブツを叩く! 未完だが、秘奥義のトリプルタイフーンをかますぞ!」
『はい!』
キュイイイインッ! と鬼瓦の腰の変身ベルトが旋回し乱気流が起こる。藤堂と芹沢は乱気流を身に纏い、京乃と小橋の道筋を強引に塞ぐ。結城は中央を攻めてくる男のみに集中した。
「よし、これであのパフェ魔神を潰せば――」
しかし、思ったほど前がかりに目黒は飛ばない。前にヘディングするはずのボールは背後に流れた。それをキーパーの結城は前に出ようとしていた身体を止める。
(バックヘッド? 流石に三人は無理だと諦めたのか? いや、あの先にいる奴は!?)
不味い! と思い前に出た身体を後ろに戻そうとする。目黒に対抗する為に飛んだディフェンスは全員驚き、その先の京乃を見た。
「パフェを驕れよ京乃。最近、女子高生の間で流行っている雅屋のしろくまパフェを」
「オッケー! ついでにロボダムのレアカードあげます!」
シュパッ! と栗色の長髪を揺らし鮮やかなループシュートを放つ。
「させるかぁーー!」
チッと結城のグローブの指にかすり、かすかにボールが浮き上がる。ボールはバーに当り、ライン上に落ちる。驚いた顔をし、すぐに結城はボールを持ち全員に上がれ! と指示する。
「よし、ボールはゴールに入ってない。カウンターだ! 行くぜタイヨウ!」
ピピッ! と審判からの笛で試合が止まる。審判はテンプレゴール前で結城に何かを言い、先程のシュートが地面に落ちた時にゴールを割っていた事になり月光学園に1点が加わる。陽介やタイヨウは審判に詰め寄るが桐生がここで無駄にカードをもらうわけにはいかない為に止める。そして頭をかく結城に憮然とする鬼瓦は、
「おい、今のは本当に決まってたのか?」
「あぁ、残念ながらな。素早くボールを持ってカウンターに入れば上手く隠せると思ったんだが。あのヘアバンド男、とんだ策士だ」
「造作も無い事がサッカーでは多すぎるな。互いに気張るしかあるまい。カンフーマスターよ」
「ワシは空手マスターだ」
そして、次の決め手が見つからないテンプレ学園はディフェンスに集中する我慢の時間帯が続く。中盤でキッドが明石に渡すパスが弱く、敵にカットされスローインになる。そのわずかな時間で前田監督は結城に対して指示を出す。
「走れ木戸っ!」
「合点承知!」
桐生のスイローインが明石に渡り、明石は小橋と競り合いながらもバシッ! とサイドラインをギリギリで駆けるキッドにスルーパスを出す。ラインを割るかどうかのギリギリで追いつくが相手DFにチェックされる。すかさず中に切り返し、右足でシュートを狙うがすでに相手がそのシュートコースを消そうと動いていた。
(けっ、もう時間は稼いだんだよ。つられろ)
シュート体勢に入るキッドの背後に陽介が現れキッドと交差するように抜けて行く。それにつられるDFは思考と動きが一瞬止まる。同時に打った。
「なんとぉ!」
そのシュートはバーに嫌われキーパーは安堵する。セカンドボールを手にしようと群らがる人間を笑うように、すでにシュート体勢に入る赤毛の少年がいた。
「俺っちに任せろっ!」
「このっ!」
そのタイヨウの渾身のシュートはキーパーの手に阻まれ、コーナーキックになった。
天を見上げるタイヨウは下がったストッキングを上げるキッドに言う。
「すまんキッド。せっかくのチャンスを」
「俺が決めてないのが悪い。すまん」
落ち込むキッドとタイヨウの肩を抱き、二人の間から顔を出す陽介は、
「どっちも悪くねぇさ。ここで決めればいいんだからな」
その陽介の自信満々な笑みに二人はケツに蹴りを入れ感謝する。
明石がコーナーにボールを起き、助走をつける為に下がる。タイヨウはゴールから一番近いポスト前で待機し、相手のディフェンスに圧され前に前に追いやられる。ファーサイドでは桐生が緑川につかれ、陽介は中央付近でマークを外す為に動き回る。だが、中々ポジションを確保出来ずにコーナーキックになる。すると、ものすごいスピードで一人の男が上がって来るのが京乃の目に入る。それに前田監督と鬼瓦は笑う。
「ゴールキーパーが上がる? 小橋、奴につけ!」
急速に迫るテンプレのゴールキーパー結城が何かすると思い緑川は小橋にマークを任せる。そして、それにつられて全体が後ろに少し下がる。そして、コーナーキックは放たれグラウンダーの早いボールがコーナーに駆け寄るタイヨウに渡る。罠にかかった月光イレブンは硬直した。
『ショートコーナー? あのキーパーは囮?』
タイヨウはヒールで後ろに流し、それをあたふたする陽介がギリギリでスライディングでねじ込んだ。
「ショートコーナーを練習してたの忘れてたぜ。アブね~アブね~」
「この大事な場面で決めてなければ調教してる所だよ陽介」
その冷徹な鬼のような瞳の後の笑顔に陽介は戦慄する。そして練習通りに上手くいった事をチームメイトに褒められる。
「陽介、満足するなよ。勝負はこれからだ」
「お前こそ満足するなよ。途中で身体が消えたら太陽に蹴り入れにいくからな」
「わーってるよ。俺っちを誰だと思ってやがる」
白熱する試合は京乃のトリッキーなプレイや目黒のパワープレイ。そしてその陰から迫る小橋に翻弄されるがなんとか持ちこたえる。素早い緑川のシュートをキッドはクリアする。そのボールはコーナーの方に流れて行きミスキックのようになったが、ギリギリ相手のスローインになる。
(よし、コーナーキックは避けた。目黒がスローインするならすぐにはゴール前には来ない。カウンターで決める――!?)
そう桐生が考え、影のように動き回る近くの小橋をマークしながらスローインを見ようとすると、そのスローインはセンタリングのように大きく流れ、ゴール前に落ちた。その奇襲のような攻撃に結城のみは反応する。
(なんてパワーだ! ……? あの小橋というチビが動いた。このチームはあのチビがチョロチョロしだすと回り始める。今回はさせんぞ!)
後ろから影のように上がってきた小橋はボールを受け、ダイレクトボレーを放とうとする。すかさず鬼瓦が足を伸ばす。が、強烈なダイレクトボレーは軽いループシュートになる。そのシュートの浮き始めを更に背後から現れる緑川がダイレクトボレーする。それは結城の顔面の真横を突き抜けゴールに刺さる。そして、小橋をマークしていた桐生に緑川は告げる。
「上手い奴がこの時間になったら小橋をマークするのはデータ通りなんだ。小橋はチョロチョロとクラウドを駆け回るから恐ろしいだろう? 故に他の誰かがフリーになる」
「御高説どうも。さっきも言ったがウチのチームはデータなんか気にする賢い奴は存在しなくてね。あいつらは最後のバカだ。だから俺はこのチームにいる。バカは一番成長するからな」
そして、目黒のスローインのパワーにより自陣でボールを失う場合はほとんどゴール前にボールを投げられる事を肝に命じピッチに散る。
「W杯で優勝するにはチーム全員が破天荒さと謙虚さを兼ね備える必要がある。謙虚さは日本人には大体あるが破天荒にゃ決定的に欠ける。それを育てるのが月光中学。その荒波に心が折れず耐えられるかなテンプレ学園」
鋭い鷹のような目をした松坂は笑い、そして試合はそのまま前半終了になった。




