第四章
「すまん。それは知らねぇわ」
「ふぅん。分かった」
翔はよくいくコンビニで、他の人と談笑をしていた。
「へぇ。お前でも知らねぇことがあるんだなぁ」
「まぁな。今回ばかりはお手上げだぜ」
話していたテーマは、あの「ビル」に関する情報。都市伝説でも、ニュースでも何でもよかったが、あまりはっきりした噂話はなかった。言えることは、縁起でもないことばかりだということ。「〜したら呪われる」という、定番のものしかなかった。さすがの翔の情報網でも、あまりつかめなかい、やっかいな問題だった。
「そーいや、何でそんなもん調べてんだ?」
聞かれて当然の、何でもない質問をぶつけられた。しかし、あくまでもまだ仮の話。実のところ、本当にあのビルに、和弘の親がいたのかも曖昧なのだ。それなのに、話しても仕方がない。
「いや。大したことはないんだ。少し友達のことでね」
「ふぅん。そのメモに書いていってるのか」
一応、聞いたことはメモに書いてある。それを指差して言った。
「その今野って子のことか?」
名前が書いてあるのを見て、そう気づいたのだろう。
「ま、まぁ、そうだな」
翔は情報を集めるときに、情報源や情報を欲しがってる人の名前を出したりはしない。しかし、今回は出してしまった。
「あれれ?『今野』って名前、どっかで聞いたことがあるような?」
すると、その人がコンビニに置いてある、新聞紙に向かった。何枚か探すうちに、
「あぁ、あったあった、これだ」
一枚の新聞紙を取り出した。
「それがどうかしたのか?」
「ここをよく読めって」
指差されたのは、小さなスペースに書かれた文字。
今日で五人目。犯人は地元の今野氏か
それはある殺人事件のものだった。昔、連続殺人事件が話題を呼んだ。地元の人間が、次々と消息を絶ってしまった。そして、その人たちの恨みを抱えている人から割り出し、今野家が疑われた。実に十四年前のこと。そして、五人目についに有力手がかりを見つけた。五人目の殺害に使われた、縄が見つかった。その縄には今野家の指紋がついていた。今野が犯人だと警察も疑わず、捜索が始まった。十四年も経った今、その事件はすでに人々の記憶からは消えていた。
「ねぇ。なんでそんな昔の記事持ってんの?」
「あぁ。なぜなら、この『五人目』ってのが、俺の父さんだからな」
「そうだったんだ…悪いな、暗いこと思いださせっちまって」
しばらく静かになった。
「よし。まぁ、ありがとな。また、情報交換よろしく」
彼は手を振って見送った。
翔は和弘にそれを見せた。
「う〜ん。記憶の片隅にもないよ。だって、十四年前だろ?生まれてきた年じゃん。分かんねぇよ」
「まぁ。そりゃそうか」
翔は頭を掻きながら言った。
「でも。和弘が預けられて、父さんと母さんだけでどこか用事に行くことはなかった?」
翔にこんな質問をされた。和弘の体はピクンと動き、固まってしまった。
そういえば…一度…
時は十年前に遡る。