第三章
「おい!大ニュースだぞ!」
部活を終えた、翔が家に飛び込んできた。
「おい。どうしたんだ?」
和弘も由希も首を傾げて聞いた。
「聞いて驚くな?実は、和弘の父さんと、母さんを見た人がいたんだってさ!」
和弘は目を大きく見開いた。まさか、見た人がいたなんて。
「それでな。他にもいろんなことを聞けたぜ」
翔は机に座り、話をし始めた。
父、母がいたのは、ここより若干遠い、あるビルらしかった。そのビルは、あまり人が入らないビルで、噂では殺人鬼がいるだの、異次元の扉だの、幽霊の溜まり場だの。様々な都市伝説がある場所だった。
「ちょっと待てよ。なんで父さんらはそんな物騒なところに行ったんだ?」
「まぁ、待てって」
しかし、数分後、同じビルから会社の社長らしき人が、そこから出てきたらしい。
「どういうことだ?」
「ビルに和弘の父さんと母さん。そして、社長がいたの?だからなんなの?」
「えぇっと、それは…」
翔もそこまでは考えてなかったようだ。
「もしかして、あのビルで話し合いをしていたんじゃないか?」
「そんな古びたビルで?」
「ただ偶然に出会っただけで、本当はなんの繋がりもないんじゃないの?」
様々な意見が飛び交ったが、しっくりくるものは、なに一つとして、出てこなかった。
「じゃあとりあえず、そのビルの管理人と、今までの使い道を調べてくれ」
「わ、分かった」
翔には、新しい仕事が与えられた。
「俺たちは、一回そのビルの場所に、行って見ようぜ」
和弘と由希、そして香織は、ビルに行って見ることにした。
そのビルは、古かった。全体が灰色のコンクリート制で、所々ヒビが入っていた。周りには少しの庭があったが、雑草が大量に生えていた。その長さは一メートルを簡単に越える長さだった。
「はぁ。これなら都市伝説の一つや二つはあってもおかしくはなさそうだけど」
その建物は、異常に不気味で、非常に恐怖を感じた。だが、中に入らないことには、全て始まらない。勇気を振り絞り、和弘たちは中に入った。
中はとても薄暗く、足音が響き渡った。香織も由希もがたがたと震えていた。
「こっここ、怖くなんか、ななな、ないもの。ねっね、香織ちゃん」
「う、うん」
和弘だって怖い。この変な薄暗さは、気味が悪かった。やはり、ただ何もなく、暗く怖いという理由で意味の分からない、都市伝説が起こったのか。真相は分からないが、二人にこれ以上、怖い思いをさせることは出来ないため、引き返して、家に帰ることにした。