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異世界に迷い込んだ愚か者は、元の世界へ戻ることなど考えもしない。  作者: ikenaki
新たな始まり

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8/8

特別編!!! イラストとプレゼンテーション:とおる

徹の生涯と肖像私が作りました

挿絵(By みてみん)


トオル (Tooru)これがトオルだ。見た目はただの平凡な少年。だが、彼が人生というものを理解するよりもずっと前から、その生は子供が背負うべきではない喪失によって汚されていた。2002年7月7日、火曜日の午前9時。ブエノスアイレスの病院にて彼は生まれた。見えない何かに急かされたかのように、予定よりも数日早い到着だった。その瞬間から、「安定」などというものはただの幻想に過ぎなかった。家族には金がなかった。それなのに、彼の名字は不快な影のように重くのしかかっていた。父方の祖父は巨万の富を持つ企業のオーナーだったが、実の息子を人生から抹消していたのだ。祖父にとってトオルの父は「恥」であり、遺産も許しも与えるに値しない「過ち」だった。その拒絶は経済的なものだけではない。それは家族全員に降りかかった、無言の断罪だった。トオルの父は立派な男ではなかったが、怪物でもなかった。「良き父」であろうという考えに、まるで壊れた浮き輪のようにしがみついていた。自転車の乗り方を教え、凧を作り、安っぽい広場や映画館へ連れて行き、粗末な記憶の裏に惨めさを隠そうとした。夕食がない夜もあった。一日一食の日もあった。トオルは早くに知った。空腹もまた、日常の一部になり得るのだと。ソフィアが生まれた時、トオルは7歳だった。その新しい命がもたらしたのは希望ではなく、恐怖だった。父方の親族は残酷に反応した。侮辱、軽蔑、両親どころか赤ん坊に向けるべきではない言葉の数々。彼らにとってソフィアは子供ではなく、ただの「新たな荷物」、もう一つの「過ち」でしかなかった。憎悪はいつも、同じ方向からやってきた。母方の親族は小さく、脆いほどだったが、彼らに背を向けなかった唯一の人々だった。その中には、トオルが誰よりも愛した祖父、アントニオがいた。アントニオは105歳近く、歩くのもやっとだったが、その声は力強かった。命には価値があること、すべての行動は痕跡を残すこと、そして「尊敬」だけは誰にも奪えないものだと教えてくれたのは彼だった。皮肉にも、最初に逝ったのは彼だった。ソフィアが生まれて間もなく、アントニオは他界した。何かを愛することは、遅かれ早かれそれを失うことを意味するのだと、トオルが初めて理解した瞬間だった。彼は人前では泣かなかった。痛みを沈黙の中に押し込め、そこでそれはゆっくりと腐っていった。トオルの父はその時、都会が自分たちを食い殺そうとしていると悟った。金も支援もなく、わずかな荷物をまとめてチャコ州のレシステンシアへと逃げた。それは引っ越しではなく、撤退だった。最初は湿った静かな、安い家に住んだ。父はある見知らぬ人の助けを得て、一時的に救われた。仕事は良くなり、家も変わり、食事がテーブルに戻った。だが、トオルはすでに重要なことを学んでいた。「良いことは長くは続かない」。学校で、トオルはすぐに頭角を現した。賢く、強く、目立たずにいたいと願う人間にしてはあまりに目を引いた。体の成長も周りより早く、10歳ですでに身長は162センチあった。薄い緑色の瞳、焦げ茶色の髪、そして個性を消し去るような丸刈り頭。大人たちは彼を称賛した。子供たちは、そうではなかった。嫉妬が、絶え間ないささやきのように彼を取り囲み始めた。時が経ち、父方の親族は再び彼らの情報を掴んだ。トオルが優秀であること、惨めさが彼を破壊しなかったこと、強く育ったことを知った。その事実は誇りを目覚めさせはしなかった。目覚めたのは、恨みだった。何もないところから立ち上がる者を見るのが許せない人間というものが、世の中にはいるからだ。そしてその時、静かに彼らを見つめていた運命が、動き出すことを決めた。13歳でトオルはEETN第2高校に入学した。そこで彼はブリサと出会った。彼女は彼にとって初めての真実の愛だった。子供じみた幻想ではなく、深く、激しく、ほとんど必死と言えるほどのものだった。すぐに付き合い始め、一時の間、トオルは自分の人生がついに均衡を見つけたと信じた。家族は豊かになり、ソフィアは健やかに育ち、初めて「未来」が脅威には見えなくなった。それが、間違いだった。ある夜、ソフィアが消えた。叫び声も、目撃者も、痕跡もなかった。誘拐の兆候もない。家出の形跡もない。何もない。ただ……世界が彼女を飲み込んだかのように、煙のように消え失せた。トオルの両親はゆっくりと正気を失っていった。眠れぬ日々、通報、終わりのない捜索、希望を返してはこない電話。トオルもまた探した。疲労困憊するまで、憎悪が湧くまで。家は写真と沈黙で満たされた霊廟れいびょうと化した。ブリサとの関係に亀裂が入り始めた。トオルにはもう時間も、思考も、力も残っていなかった。学校と、執拗な妹の捜索の狭間で、ブリサは自分が透明人間になったように感じ始めた。やがて、彼女は去ることを決めた。ただ別れただけではない。彼女はすぐに他の誰かと付き合い始めた。トオルにとって、それは単なる別離ではなかった。裏切りだった。自分の世界が崩壊している時に、どうして人は前に進めるのか、彼には理解できなかった。絶望した両親は、父方の親族を疑い始めた。告発が飛び交い、侮辱が再燃し、長年蓄積された憎悪がついに爆発した。父方の親族はいつものように気分を害し、すべてを否定した。真実は決して分からなかった。数ヶ月が過ぎた。ソフィアは戻らなかった。トオルの両親にはもう生きる理由がなかった。彼らは慣性だけで歩く抜け殻だった。ある夜、車で帰宅中、事故が起きた。緊急搬送された。手遅れだった。二人は別々の部屋で、別れの言葉も、最期の言葉もなく息を引き取った。トオルは独りになった。唯一彼のそばに残ったのは、父の旧友だった。彼は病院から動かなかった。すべてが終わった時、彼を家まで送り、トオルが決して忘れることのない言葉をかけた。「もう誰もおらんかもしれんが……お前にはまだ、お前自身がおる。生きろ。戦え。もうそれができん人たちのために。」14歳にして、トオルは完全な危機に陥った。金もなく、世界も理解できず、頼る人もいない。その友人は、かつて父が就いていた仕事を彼に斡旋した。夜勤。監督、管理業務。同年代の子供がすべきことではなかった。だが、トオルは普通の子供ではなかった。その冷徹な知性、天性のリーダーシップ、そして非情な決断を下せる能力によって、彼はすぐに頭角を現した。あまりにも早すぎた。子供時代は、終わったのだ。両親の死以来、トオルは髪を切るのをやめた。反抗心からではない。放棄だ。すべてを失った人間がどう見えようと、もうどうでもよかったからだ。17歳になったトオルは、否定しようもなく美しい。焦げ茶色の髪は長く、無造作に伸び、形も定まらないまま落ちている。まるで二度と鏡を見ないと決めたかのように。その房は額を部分的に覆い、顔に影を落とし、彼にメランコリックで人を寄せ付けない雰囲気を与えている。それは反抗的な無頓着さではなく、自分自身を気にかけることをやめた人間の静かな放棄だ。薄く、深い緑色の瞳は、すぐさま人の目を引く。それは生命を宿しているべき瞳だが、その眼差しに若々しい輝きはない。映っているのは疲労、喪失、そして不自然なほどの静けさだ。彼は世界を好奇心ではなく、諦念を持って見ている。顔立ちは整っており、調和が取れていて、どこか繊細だ。はっきりとした目鼻立ち、白い肌、柔らかな唇。それは努力を必要としない美しさであり、表情が無くとも、笑わなくとも、視線を引き寄せてしまう種類の美しさだ。だからこそ、それは不穏に映る。これほど魅力的な人間が、これほど空っぽに見えるべきではないからだ。彼の姿勢はリラックスしている。あまりにも、リラックスしすぎている。長い首と落ちた肩は、もう自分を守ろうとしない人間の感覚を漂わせている。弱いからではない。抵抗しても結果は変わらないと学んでしまったからだ。トオルは怒っているようには見えない。悲しんでいるようにも見えない。ただ、摩耗しているように見える。まるで人生が彼の上を通り過ぎ……そして、そこに留まることを決めたかのように。

透の生涯の物語は、私が彼について描いたイラストをお見せするための口実です。では、本編を続けましょう。透のこの肖像を残して、透がどんな風に見えるかを想像してもらいたかったのです。近いうちに、両方のバージョンのドラゴンのイラストと、第1章「不気味な美しさ」に登場する謎の女性のイラストをデザインしたいと思っています。


エピソードの感想や好きな食べ物など、何かコメントしていただけると助かります :)

good night!!!

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