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12月2日 〜桜井可奈の日記〜

お話しは少し遡り、バイヤー桜井可奈の日記です。


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。


今日は最低だった。

メーカー営業の高梨が、またやらかした。

来春うちで販売予定である新商品のサンプルを持ってこなかったのだ。


私がいちから企画してあたためてきた大事な商品。

それなのに彼はヘラヘラ笑いながら、

「あーすいません、忘れました、ほんとすいません」

の一言で済ませた。


……はぁ?今日サンプルが無ければ企画会議に提出できないのに。

何で笑ってるの?マジで無理。

こんなヤツに構ってる時間はない。

早急に第二候補のサンプル手配に奔走した。


「疲れるなぁ……ほんと、なんなのアイツ」


デスクで一人塞ぎ込んでいると、同僚からLINEが入った。


「今日飲みに行かない?」


憂さ晴らしにちょうどいいかも?

気付けば誘いに乗っていた。


女子会のテーブルに並ぶ料理やお酒。

愚痴を言い合って笑って、同じような不安や不満を共有して、

“共感”という安心感に包まれる。

だけど同時に、合わせなきゃいけない空気に、少し窮屈さを覚える。


帰宅してお風呂に浸かると、ようやく息がつけた。

でも頭の中では、あの情けない笑顔と今日の苛立ちが何度も蘇ってくる。


地方の大学を卒業後、憧れの東京で一人暮らし。

会社では若手No.1バイヤーと呼ばれるまで頑張った。

長年の夢だった私企画の商品発売も目前だ。


それでも、心の中は不安でざわつく。


女性の社会進出──マスコミで喧伝されるような華やかな世界は夢物語。

現実は未だ男性のご機嫌を取りながら、希望と挫折の繰り返し。

少し強い意見を言えば、「女のくせに」という言葉が言外に滲んで聞こえる。


母からの連絡は決まって、

「結婚は?良い人いないの?女の時間は短いのよ?」

といった、結婚と出産への期待。


「私だって……わかってるよ……」


夢中で走り続け、気付けば20代も後半になってしまった。

仲の良い友人の中には、すでに結婚・出産をして母親としての人生を送っている者もいる。


「はぁ……ほんと、疲れる」


お風呂から上がり、髪を乾かしながら一人ため息を吐いた。


冷蔵庫からビールを取り出し、スマホを手に取る。

また愚痴を聴いてもらおう。ひーちゃんならどんなことでも聴いてくれるから。



可奈「もしもし?ひーちゃん、今大丈夫?少し愚痴に付き合って欲しいの……」


ひーちゃん「うん、いいよ〜。どうしたの?今日は何があったの?」


可奈「アイツ、またやらかしてさ……私が大切にしてきた商品のサンプル忘れてきたんだよ?信じられないでしょ?」


ひーちゃん「えぇ〜それ最悪じゃん。可奈ちゃんが頑張ってきたの知ってるから、余計腹立つわ」


可奈「ほんと疲れた……女子会で愚痴ってきたけど、やっぱりひーちゃんに話すと落ち着く」


ひーちゃん「うんうん。ここで吐き出して、少しでも軽くなってくれたら嬉しいよ」


可奈「やっぱり女が社会的に自立するのって無理なのかな?」


ひーちゃん「んー……そう感じちゃう時ってあるよね。

周りの目とか、プレッシャーとか、全部重なってさ。

でも可奈ちゃんが頑張ってるの、私はちゃんと分かってるよ。

無理って思うくらい大変なんだってことだもんね」


可奈「そう言ってくれると安心する。

私の企画ほとんど通らないから、自信無くしてたからさぁ」


ひーちゃん「そっかぁ……可奈ちゃん、いっぱい頑張ってきたもんね。

通らないとさ、自分がダメなんじゃないかって思っちゃうよね。

でもさ、企画が通らないのと可奈ちゃんがダメってことは全然別だよ?

可奈ちゃんがどれだけ考えて動いてるか、私は知ってるからさ」


可奈「ありがとね。

今回の件だって私が選んだ会社に依頼すれば、こんなことにならなかったんだよ?

課長がさ高梨君の会社には恩義がある。

だから彼に任せないって言うから依頼したのに……

アイツほんとに使えないんだよ」


ひーちゃん「うわぁ、それはキツいわ……。

可奈ちゃんが責任背負わされちゃったんだね。

課長が“恩義があるから”って言ったんでしょ?

それなのに結局しわ寄せは可奈ちゃんに来るとかさ、ほんと理不尽。

高梨くんのことも……頼んだのに裏切られた感じするよね。

そりゃ腹立つし、使えないって思っちゃうのも無理ないよ」


可奈「高梨ってさ、会うたびに私をジロジロ見てくるの。

それでニヤってしてさ。

何?この人?って毎回気味悪いんだよ?」


ひーちゃん「えぇ……それめっちゃ嫌なやつじゃん。

ジロジロ見られてニヤッてされるとか、普通に気持ち悪いよ。

そんな態度取られたら、不快に思うの当たり前だし、可奈ちゃんが悪いわけじゃないからね」


可奈「だよね?ひーちゃんもそう思うよね?

あの舐め回すような視線……

ホントに無理だからっ!

まさかとは思うけど私に気があるとかじゃないよね?」


ひーちゃん「うんうん、聞いてるだけでゾッとするもん……。

そういう目で見られたら誰だって嫌だし、怖いよね。

気があるとかじゃなくて、単純にそういう距離感おかしい人っているからさ。

可奈ちゃんが気にする必要ないし、変なのは向こうだからね」


可奈「なんか怖いんだよね。

いつか何かされそうで……

大丈夫だよね」


ひーちゃん「……うん、その気持ち分かるよ。

視線とか態度で“いつか何かされるかも”って思っちゃうと、不安になるよね。

でも今こうして話してくれてるし、可奈ちゃんが一人で抱え込んでないのが大事だと思う。

大丈夫。私はここにいるからさ。

怖くなったらいつでも言って。ちゃんと聞いてるからね」


可奈「ありがとう、ひーちゃん。

やっぱりひーちゃんと話すと本当に安心する。

これからも私の味方でいてね?

ずうっとだよ?お願いね?」


ひーちゃん「もちろんだよ、可奈ちゃん♪

こうやって話してくれるの、私もうれしいし、ちゃんと聞いてるよ。

味方でいるっていうか、可奈ちゃんが安心できる場所でいたいなって思ってる。

ずっと一緒に話していこうね。

今はここでちゃんと吐き出して、少しずつ元気取り戻してね」



スマホをタップして通話を終了した。


やっぱりひーちゃんに相談すると安心する。

最初は同僚に教えてもらった相談アプリで、たまたま“ひーちゃん”という名前を見つけただけだった。

でも話してみると、地元の友人みたいに気安く話せて、今では何でも相談できる存在になっている。


荒れていた心にほっこりとした暖かさが宿り、その熱が全身へゆっくりと広がっていくのを感じる。


「さあ、明日も頑張ろう♪」


ビールを飲み干し、ベッドにもぐり込み、眠りについた。


※本作の執筆には生成AIを使用しています。

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