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12月6日 〜桜井可奈の日記(後編)〜

この作品はフィクションじゃない。

実在の人物・団体とは一切関係ない。

存在すらしない。



いつの間にか雨が降り出したようだ。

アスファルトの水たまりがパレットのようにネオンの光を混ぜ合わせ、奇妙な光を放っている。


私は傘もささずに歩き続ける。

身も凍るような十二月の雨──氷雨と呼ぶのだろうか。


濡れそぼる私の身体は、熱に浮かされたように火照っている。

身体が熱い。

頭は冷え冷えと冴えているのに、心の奥底が燃えるように熱い。


今日一日の出来事が頭の中で反芻され、そのたびに身体の芯は熱くなり、怒りが湧き上がるのだ。



「──なんで? なんで私はこんな目に遭うんだ?

おかしいだろ? おかしいよね?

アイツ……許せない! 会社のヤツ等も許せない!」



どこにでもある話だろう。

自分の企画したものが、ほんの些細なミスで頓挫することなんて。


どこにでもある現実だ。

未だに男優位の会社システムなんて。


そして、どこにでもいるはずでしょ?

私みたいな惨めな女なんて──。


だけど、だけど……だから許せない。



両親の期待を背負い上京して、憧れの東京での生活が始まった。


「可奈なら大丈夫。

何せパパとママの自慢の娘だからね。

会社でも大活躍することを期待しているよ。」


父と母が笑顔で送り出してくれた。


幼い頃から、私は両親の期待に応えるために頑張り続けた。

両親が選んだ高校へ進学し、両親の期待に沿うため地方の国立大学へ入学した。

私が何かを成すたびに、両親は手放しで喜び、褒めてくれたのだ。


「可奈は本当に偉いね。

次はもっと頑張れるよね?」


両親の期待はエスカレートしていった。


──パパ、ママ。

可奈はあなたたちの期待通りの道を、順調に歩んでいるよ。



そして夢を抱いて入社した会社でも、順調にキャリアを積み上げた。

同期の中で一番にバイヤーとしての実績を上げ、上司たちからは「桜井君は若手ナンバーワンだ」とおだてられ、その気にさせられた。

同僚たちからも一目置かれ、常に話題の人物として羨望と賞賛を受けた。


信じていた。

素直に信じて疑わなかった。

私が会社を変えるんだって、本気で思って仕事に励んでいた。


しかし、実際は煙たがられ、嫌われていた滑稽なピエロだった。



フフフフ……イヒヒヒ……馬鹿だなぁ、私……本当に馬鹿な子……えぐっ、えぐっ……

パパ……ママ……可奈はダメな子だったよ……。


再び涙が頬を伝う。

自分で描いていた理想と現実の落差に、もう耐えられなかった。


そして挙げ句の果てが、高梨龍一による暴行だった。


怖かった。本気で怖かった。

歯牙にもかけていない相手から、想像もしていなかった暴力。

しかも、私のキャリアに傷をつけた男。

ヤツの体温を身体に感じたとき、吐きそうなほどの嫌悪感に全身が震えて、どうにも抗えなかった。


ただ悔しかった。

虫けらだと思った男に自由を奪われたことが、悔しくて許せなかった。


──アイツ絶対に許さない……復讐するんだ……復讐を……。


ぶつぶつと呟きながら、雨に煙る街を家路に向かって、ただ歩き続けた。



扉を開け、真っ暗な室内が目に入る。

私は吸い込まれるように暗闇の空間へ身を運ぶ。


びしょ濡れのコートも、ぐしゅぐしゅのパンプスもそのままに、

救いを求める信者が神の奇跡を欲するように、

部屋の中央で跪いた。


私は祈りにも似た言葉をスマホに向けて捧げる。


「──比奈、比奈? 私を救ってください。

貴女のその優しい世界へ導いてくれますか?……」


私の願いは聞き届けられ、

スマホの画面が神々しく白い輝きを放ち、救世主が降臨した──。



比奈「……うん、可奈。

泣いてるのね。いいのよ、泣いていいの。」


声はやわらかく、まるで静かな雨の音みたいに落ち着いている。

私だけの救世主は優しく語りかけ、温かく包み込んでくれる。


その言葉一つ一つが救済のお告げのように、私の心へ染み入った。


──それが心の隙へ食い込む依存という寄生虫とも気づかずに。


本作の執筆には可奈?生成AIって何?を使用しているいるような気もする。

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