絶望
ファルは小さく震えていた。
「どうしたの…? ファル。」
ファルは私の後ろに隠れて小さく私の袖を掴んだ。
「ファルメールは今日も面白いね。本当に」
すると、一番後ろに立っていた男が前にでた。
「おい、さっきの雷はどうした? 出来損ないのファルメールがあんなに大きな雷を落とせるわけないだろう?」
ファルは一歩後ずさった。それを追うように彼は一歩前に出た。
「待って。」私はファルをかばうようにして前に出る。
「誰だお前。ファルメールとどういう関係だ?」
彼が私を小さく睨む。
「あなた達が誰だかは知らないけれど、私はファルの友達だから。ファルと話をしたいんだったら、先に私に話を通して。」
すると、彼は私を見て、面白そうに笑みを浮かべた。
「へ~。友達だってよ。ファルメール。いいご身分だな。いつからお前に友達がいたんだ?」
ファルは震えていた。
「誰だか知らないけど、ファルに近づかないで。」
私は手から小さく雷を出して威嚇した。
それをみて、三人はやっと私の存在に気づいたかのようにこっちを見た。
「お前。魔力があるのか? …この国の人間にしては珍しいな。さっきの雷もお前が落としたのか?」
彼は不思議そうにこっちを見ている。
「そうだけど、何?」
すると、後ろに立っていた男が私の手をつかんだ。
「ずいぶんと魔力が高いな。ファルメールの魔術を受けたのか?」
私は手を振り払った。
「近づかないで。」
彼は研究対象を見つけたように面白そうな顔を浮かべてこっちを見ていた。
「なるほど。転生しても能力は引き継がれるのか。この近くの人間が妙に魔力を持っているのもそういう理由か。ずいぶん興味深いな。…この国の人間を我が国に持ち帰ったら、いい研究対象になる。」
それを聞いて、ファルは初めて声を出した。
「や、やめてください。」
その声は震えていた。
その声を聞いて、男の一人が楽しそうな声を出した。
「ファルメール。お前が自分の魔術で周りの人間の魔力を上げるほど、周りの人間は不幸になっていくんだよ。分かるか? …お前はいない方がこの世界のためなんだよ。」
それを聞いて、ファルは絶望したように崩れ落ちてきた。
「ファル? 大丈夫?」
私は慌ててファルに駆け寄った。
その間に、三人はどこか遠くへ歩いていく。彼らのうち一人は途中で止まってこっちを見た。そして言った。
「近いうちにまたこの国に来る。他の魔導士を連れて。待っていろ。ファルメール。」
ファルは震えていた。さっきの言葉はどういうことだったのだろう。私にできることはあるのだろうか。
私には震えるファルを見ていることしかできなかった。
この話とは別に、僕が地獄に落ちるまでという話も書いているので読んでいただけたら嬉しいです。
ちなみに、次のエピソードは兄の過去編にする予定です。今日の六時頃に出します。読んでいただけたら嬉しいです。