雷鳴
「じゃーん‼ 完成!」
「ありがとうございます。羽月さん。」
私はファルの髪を切っていた。
ちなみに、ファルは転生する前はショートヘアだったそうなのでボーイッシュな感じに切ってみた。
「うん、やっぱりかわいい。」
「あ、ありがとうございます。」
楓のつけていた趣味の悪いメイクやネイルを落とすとファルはすごくかわいくなった。
撫でたくなるぐらいだ。
「せっかくだから、どこかに遊びに行ってみない?」
「はい! 僕この学校をまわってみたいです。」
「オッケー。じゃあ行こー。」
私はファルと一緒に外へ出た。
美和子が向こうから歩いてきたが、逃げるように走っていった。
気にしない、気にしない。
その後、私は学校をまわっていった。
屋上庭園や校庭、音楽室や視聴覚室をまわっているうちに、体育館にたどり着いた。
「ここ、羽月さんの魔術の特訓にちょうどいいんじゃないですか?」
ファルメールは指さしながら言った。
「そうだね。今日は日曜だから部活もないし。」
この学校では日曜には部活がない。各自自由に行動できる。日曜にわざわざ体育館に来る人はなかなかいないだろう。
「人もいないですし、せっかくですから魔術の特訓をしましょう。」
「魔術? 魔法じゃなくて?」
「僕の住んでいた国では魔法のさらに高度なものが魔術と呼ばれています。こっちは専門的な知識がないとできませんから特訓しないと使えません。」
なるほど。そんな違いがあったのか。
「では早速始めましょう。まず初めに、雷を出してみてください。」
「雷⁉ いきなりハードル高くない⁉」
「そうでもないですよ。雷属性は魔力が多くないと使いづらいけれど、一番初心者でも覚えやすい魔術ですから。」
「なるほど。」
ファルは右手を前に出して私の手を握った。
「人は微弱ではありますが電気が流れていて、帯電することだってあるんですよ。体中の電気を全部手に動かす感じで電気を出してみてください。」
「うん。やってみる。」
私は手を空に向けて体中の魔力と電気を手に集めた。
すると、辺りが急に暗くなった。
指先から小さく青い雷が出る。
そこから少しずつ光が広がり、それに比例するように空が黒くなるのが分かった。
黒い影が校舎全体に広がる。
どこかから強い風が吹いてくる。
(んっ? なんかまずくない?)
雲で覆われてしまった青空を見て、私はやばいと思った。どう考えても魔術が効きすぎている。本当に大丈夫なのだろうか。
私は横目にファルを見た。
ファルは目をキラキラさせて空を見つめていた。
(えっ? これ本当に大丈夫?)
だが掌に魔力が集まりまくっている以上、もうやるしかない。
私はすべての魔力を空に押し出した。
辺りが光に包まれる。
数秒遅れて雷鳴が鳴り響く。
そして……体育館が黒焦げになった。
私は慌ててファルを見る。
ファルはまだキラキラした目で私を見ていた。
(良かった…。無事だった。)雷が当たっても無事であることに驚いた。
恐らく、魔力を持っていれば魔力攻撃を受けづらいのだろう。本当に無事でよかった。
そんなことを考えていると、後ろから音がした。
私は慌ててそっちを見る。
同じクラスメイトである〈和野 眞〉がファルのようにキラキラした目でこっちを見ているのが分かった。
そろそろタイトルを漢字二文字にするのが難しくなってきました。
四月から五月ぐらいには完結させるつもりなので、皆さん暖かい目で見てくれると嬉しいです。