魔力
「炎が出たんですか?」ファルが不思議そうな顔をしてこっちを見た。
「うん。何か心当たりはない? ほら、前に魔法について話をしていたでしょ?」
「確かに炎の魔法は五つの属性の中にありますけれど…。この国の人たちは魔力を持っていない種族だと思っていました。」
魔法を使える種族ならもっと日常的に魔法が使われているとファルは言った。確かにその通りだ。生まれてこの方、魔法など見たことがない。なんで私だけ、それも急に魔法が使えるようになったのか全く見当もつかない。いろいろ考えていると、ファルは一つ思い出したかのように手を打った。
「あっ。もしかしたら僕のせいかもしれません。」
「えっ⁉ どういうこと?」
ファルに詳しく事情を尋ねた結果、簡単に略すとファルの魔法、促成魔法は周りの人の魔力や魔法を強くする効果があるのだそうだ。
おそらく、それにより私の魔力が上がってしまったようだ。
それでも、ファルの魔法がこんなにすぐに効果が現れることは少ないそうで、私は並々ならぬ魔力を持っている可能性が高いらしい。
使いこなせるようにならなければ、魔力や魔法が暴走することもあるので、うまく使えるようにならなければならないのだそうだ。
「ごめんなさい。多分僕のせいです。」
「いや、大丈夫だよ。…ちなみに、この魔力ってなくすことはできないの?」
「魔力をなくす方法ですか? すみません。聞いたこともありません。」
そうか…それならば仕方がない。私は魔力が暴走する危険に耐えながら生活しなければならないようだ。
「あ、でも僕の魔法で魔力を上げすぎると代わりに魔力が使えなくなるそうですよ。」
なるほど、それならば魔力を上げまくればいつかは使えなくなるということか。
そうすれば魔力が暴走してしまう危険もなくなる。
「あの、もしよければなんですけれど、僕が羽月さんに魔法の使い方を教えますよ。暴走したりしたら大変ですから。それに、いつも勉強を教えてもらってばっかりで悪いと思っていたんです。」
「ありがとう。じゃあ、明日の午後に教えてほしい。」
「はい‼」ファルは役割を与えられてうれしそうな顔をしていた。見ているこっちまでうれしくなってくるような満面の笑みだった。
いつまでもこんな学園生活が続いてほしい。私はそう思っていた。
薄暗い屋敷の廊下を、音もなく移動する影があった。
その影が動くたびに、何かに怯えるように蝋燭の灯が消えた。
それは少年だった。彼が歩くたびに、闇が重苦しく積み重なっていった。
彼はその廊下の突き当りにある扉で足を止めた。
その扉は魔力で自動的に開き、その少年が入った後には閉ざされていた。
そこには豪華な寝台が並んでいて、隣には数百年物の家具や絵画が並んでいた。
「おはよう、兄貴。やっとお目覚めか?」
「…ああ。」
「ファルミールの行方は分かったか?」
「先ほど魔力感知の魔道具で調べてきた。」
「どうだった?」
「ファルメールは…日本にいる。」
「日本か…。ずいぶんと変わったところに飛ばされたな。」
日本は魔力を持っていない人がほとんどだという不思議な国だ。魔力がないが、不思議な技術が発展していて、様々な国の注目を集めている。魔力を持った人が少ないというのは逆に言えば平和だということだ。
魔力が多い国はその分狙われて、戦争などに発展することが多い。
それがないため、日本は世界的に見てもかなり発展した国の一つと言われる。
「様子…見に行ってみるか?」
「なぜだ?」
「面白そうだろう? あの役立たずがどんなふうに扱われているか、少し興味がある。」
「ふむ、悪くない。」
「抜け駆けはずるいぞ。俺も行くからな。」後ろの扉から三人目の兄が出てきて言った。
彼らは瞬間移動の魔術具の準備を始めた。
だが、そんなことファルには知る由もないのであった。
今日は春休みなのでたくさん投稿しました!!
読んでいただければ幸いです。