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襲撃ー5

無我夢中で走った。


後ろから、ゆっくりと兄が近づいてくる。

霧の中を必死に走ると、建物が見えてきた。

(あれは……学園の本館でしょうか?)

さっき寮館は潰れてしまっていたが、まだ教室のある本館は無事だったようだ。

僕は慌てて建物の中に入る。僕は基本的に戦闘能力が皆無だ。促成魔法という一つの魔法しか使えず、しかもそれは周りの人の魔力を底上げするという戦闘では全く使えないものだ。兄と戦おうとしてもすぐにやられてしまう。


僕は階段を駆け上がり、二階の部屋へと向かった。そして、廊下の一番角の突き当りにあった部屋に入る。

部屋の隅で、呼吸を整える。そして、耳を澄ます。


心臓が嫌な音を立てた。


誰かが、階段を駆け上がってくる音。

そして、その音はだんだんと近づいてくる。


すると、嫌な音が聞こえてきた。部屋を一つ一つ、壊していく音。部屋にあるものを手当たり次第に破壊するような音も聞こえてくる。


手が震えているのが分かる。その手を必死に握りしめる。


(誰か、助けて)


 そう思った時、窓の外で羽月さんが戦っているのが見えた。

(羽月さん……)

羽月さんは強い敵と対峙していた。かなり激しい戦いになっているようで、爆炎が窓の近くまで飛んできた。さらに、敵の側に一人、誰かが宙に浮かんでいた。きっと、敵に捕まってしまっているのだろう。


目を凝らすと、美和子という人だった。

(あの人を助けるために戦っているんですか? あんなに必死になって)

羽月さんと彼女は仲がいいようには見えなかった。それなのに、羽月さんは彼女を助けるために戦っているのだろう。羽月さんは本当に優しい人だ。この前も、見ず知らずの僕に優しくしてくれた。それにどれだけ救われたことか。


 その近くには、眞さんもいるのが見えた。眞さんは、肩に男の人を背負っているのが見えた。こんな緊急時にも人のことに構っていられるほど、眞さんはいい人だ。肩に乗っている人に少し文句を言っているようにも見えるけれど、本当はすごく心配しているのだろう。


羽月さんは戦っている。

眞さんも、必死に走っている。


じゃあ、僕は? 逃げる以外のことを何もしていないじゃないか。


いつも、眞さんと羽月さんに助けられてばかりで、何もしていない。


誰かにずっと助けられてばかりで、誰かを助けられたことは一度もない。


僕に、誰かを助けることなんてできないのではないか。


そう思った時、誰かの泣き声が聞こえた。


僕は慌ててそっちを見る。


そこには僕より三つ年下ぐらいの男の子が泣いていた。

逃げ遅れて、一番端にあったこの部屋に逃げてきたのだろう。


僕は、泣いているその子の頭に手を乗せて、ゆっくりと撫でた。


「大丈夫ですよ。」


羽月さんがしてくれるように、優しく撫でた。

息を吸い込んで、震える手をに力を籠める。


(僕は頼れる先輩になるために、兄を倒します!)

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