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襲撃ー4

俺はさっきから寝たまま動かないこいつを背負って必死に走る。

だが、急に後ろから声が聞こえてきた。

「背負ってくれるの?」


「って、お前、起きてんのかよ。自分で歩け!」


「前見て走った方がいいと思うけど?」


その瞬間、前から巨大な岩の礫が大量に飛んでくるのが見えた。

「うわっ⁉」

人一人抱えた状態でこれをすべて交わすのは難しい。

俺はどうしようもないと悟って目をつむる。

だが、その岩が俺に当たることはなかった。

俺に当たる前に粉々になって砕けたからだ。

「ほぇ?」

俺は恐る恐る目を開く。すると、俺が担いでいる奴が魔法のようなもので岩を次々に破壊していった。炎の魔法で破壊したり植物の盾でガードしたりしてくれている。

「うぉ~! すげぇ!」

目をキラキラさせてその様子を見ていると、彼は自慢げな顔をした。


「僕はファイアルト家の次期当主のファイアルト=ラズアロだからね。これぐらい造作もないよ」


「ラズアロって名前なのか? じゃあ、ラズって呼んでいいか?」


「勝手に呼び名を付けないでって言いたいところだけれど、別に構わないよ。運んでくれるんだったら」


……ラズはまだ俺に運んでもらいたいらしい。


「全く、少しは自分で歩いたらどうだ?」


「いやだよ。めんどくさいから」


「お前本当に極度のめんどくさがりだな。そんなんで生きていけるのか?」


「分かんないけど、これでも今まで一応生きていけたから大丈夫だと思う」


「そうか。俺が運んでやるのは今日限りだからな。明日からは自分で歩けよ?」


「……そういえば、君、何て名前だっけ?」


「ん? 俺か? 俺と仲良くしてくれんのか?」


「いや、違う。仲良くするわけじゃない。飼い主としてちゃんと名前を覚えなきゃと思って」


「お前……俺を馬かなんかと勘違いしてるんじゃないだろうな?」

飼い主という言い方がちょっと嫌なんだが……


「いや、別に馬と思っているわけじゃない。馬より揺れが少ないし乗り心地もいい」


やっぱり、動物のように認識されている。まあ、何を言っても無駄な気がするが……


「はぁ。せっかく強い魔法が使えるのに、歩くのもめんどくさがるようじゃ魔法を使う前に敵にやられるぞ?」


「別にいいよ。魔法なんて好きで学んでるんじゃないし」


「? そうなのか?」


「うん。……僕、一族みんなから期待をかけられてるからね。しぶしぶ魔法を勉強してる」


「そうか。ラズの魔法強いのにな。もったいねぇ」


「そう? 僕の魔法って強いかな?」

さっきから飛んでくる石や岩を粉々に破壊しているだろう。どう考えても強いに決まっている。

「ああ。ラズの魔法かっこいいぞ! 俺もあんな風に魔法が使えるようになりてえな」


「……かっこいい。」


「ああ。すげえかっこいい!」


「……さっきから僕を褒めてばっかりだけど、君、魔法好きなの?」


「ああ。魔法とか、異能力とか、すっげえ好きだ!」

俺は基本的に中二病だ。そういった類のものに憧れている。


「……そんなに魔法が好きなら、僕の家に遊びに来る? 魔導書とか魔法陣の研究資料とかたくさんあるけど」


「本当か⁉」


「……うん。この戦いが終わったら転移魔法を使って僕の家に来るといいよ。歓迎するよ?」


「ああ! もちろん」

行くに決まっているだろう。異世界旅行に連れて行ってもらえるなんて最高だ。

そんなことを考えていると、俺の視界の端に何かが映った。


「な……」


「どうしたの?」

ラズが首を傾げて俺を見た。


「悪い。ラズの家に行くのは少し延期になりそうだ」


「? 何で?」


「ファルが……捕まってる」


超上空にファルが捕まっているのが見えた。


俺は慌てて走り出す。

「ファル!!!」

するとラズが俺を止めた。


「待って。今から走っても間に合わない」


「じゃあどうすりゃあいいんだ⁉ ファルがやられるのを黙って見てればいいのか⁉」


「違う。走ったら、間に合わないってだけ」

するとその瞬間、俺の体が宙に浮きあがった。


「ふわっ?」


「質量とかを操作して飛ばしてる。しっかりと僕につかまっててね。僕から手を離したら地上に真っ逆さまだから」


「そんなこともできるのか!!」


「僕のオリジナルの魔法だけどね。多分、地面を蹴ったら遠くへ飛ぶよ」


「分かった!!」


俺は地面を勢いよく蹴って前へと進む。

体が軽い。どんどん前へと進む。


「すげぇ。空飛んでるみたいだ!」


「いいから前見て飛んで。ほら、ぶつかりそう」


「うわっ!」

よく見ると前に電柱が立っていた。

このスピードでぶつかったら大けがでは済まないだろう。


だが、ラドが電柱を魔法で吹き飛ばしてくれた。後で修理費がすごいことになったが今更そんなことも言っていられないだろう。


「ラド、やっぱすげぇな!」

するとラドは恥ずかしそうに目を逸らした。


「別に、すごくないよ」


「そうか?」


するとその直後、ファルの兄が魔法陣のようなものを出したのが分かった。


「あいつ、何をするつもりだ?」


俺には全く分からなかったがラドには何をするかが分かったようだ。


「多分。移動魔法を解くつもりだと思う。なるほど。なんで空間魔法専門のサンドロがあんな高いところまで行けたのか分かった」


「どういうことだ?」


「多分、転移魔法で上空まで移動したんだと思う。転移魔法は転移するときに自分の掌にあるものや人も一緒に移動できる。あの場合、たぶんファルメールだね。さらに転移魔法は使った後、魔法を解くまで元の場所に戻れない。その効果を使って空の上に浮かんでいる」


「それって、つまり……」


「うん。今度はファルメールから手を離した状態で転移魔法を解くんだと思う。その場合、自分はもとの位置に戻れてファルメールはそのまま魔法が解かれる。つまり、あの距離から地面に激突することになる。」


「嘘だろ⁉ さすがに自分の弟を殺したりするか⁉」


「やりかねないよ。サンドロなら。一応これでも同じ魔導学園に通っていたから、あいつの性格はよく知っている」


 ファルの兄がファルのことを嫌っているというのは羽月に教えてもらっていたが、まさかそれほどまでとは思わなかった。


足に力を入れて空気を蹴り、前へと進む。

(待ってろ、ファル。絶対助ける)

俺は全速力で空を駆けた。

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