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青空

私たちは屋上で魔術の練習を始める。

まず初めに、眞と一緒に炎を出してみた。


ファルにコツを教えてもらいながらやると、私の指先から炎が大きく燃え上がる。

「やっぱり炎は結構簡単に出せるね。」


私はなんだか視線を感じて眞の方を見る。

すると、眞はじとーっとした目で私を見ていた。


「なんでお前はそんなに炎が出るんだ?」

眞の指先から蝋燭のような炎が出ていた。

私の炎とは雲泥の差だ。


「眞、結構下手じゃない?」

「ひでぇ!」


私は眞の出した炎に息をふ~っと吹きかけて消した。

眞は頬を膨らませて私を睨んだ。

「なんで羽月はそんなうまいんだ?」

眞はぷりぷり怒る。

「でも眞さんはすごいほうですよ。普通練習を始めて一日目で炎を出せたりしないですから。羽月さんがすごすぎるんです。」


「でも羽月も魔術始めたばっかなんだろ。なんでこんなに差があるんだ?」


「それは……多分僕の魔法の効果に関係があると思うんです。」


「?…どういうこと?」


「僕の魔法、促成魔法は距離が近い人ほど強く効果があるんです。ですから、羽月さんとはずっと一緒にいますから羽月さんには魔法の効き目がすごいのだと思います。」


すると眞は後ろから忍び足でゆっくりとファルに近づき、後ろから思いっきり抱きついた。

「うわぁ⁉ 何するんですか?」ファルはジタバタと逃げようとする。


「ファルの近くにいるほど魔法の効き目がすごいんだろ? だったら俺は四六時中ファルにくっついてる‼」

「ちょっと! 眞⁉ ファルから離れて。」

私は慌てて眞をファルから引き離そうとする。

しかし、眞はコバンザメのようにしっかりとファルにひっついている。いくら引っ張っても離れない。絶対に離れないという意志を感じられる。


「別にいいだろ。お前だってよくファルに抱きついてるだろ。」


 眞はさっきファルが泣き出したときのこと言い出した。だが、あの時はファルを慰めるのに必要な行動だったし、そもそも眞は性別的にNGだ。


そう考えていると、ファルが驚くべき新事実を話した。


「まあ僕、一応前世は男の子でしたし……羽月さんに急にぎゅーっとされるよりは眞さんに急に抱きつかれる方がまだ受け入れられます。」


「えっ? ファル……前世は男の子だったの?」


「えっ? あ。はい。」


「えっ?」

 確かに……おかしいとは思っていた。


ファルは私が制服に着替えているときにいつも布団の中に隠れているのだ。


まさか……前世は性別が違っただなんて。


私は今までの行動を振り返ってみる。ぎゅーっとしたり、頭を撫でたり……そもそも同じ部屋で生活していること自体まずいのではないか。


「ふぎゃあ‼」いつの間にか変な声が漏れていた。


「どうしたんだお前。急に寄声を上げて。」

私は慌ててしまい、ファルと眞に水を浴びせてしまった。

眞は何をするんだと怒っていたが、ファルは「羽月さんは水属性もあるんですね⁉」とキラキラした目で見てくる。


「ファルの前世の性別なんてどうでもいいから早く魔術の練習をしようぜ。」

眞が呆れた声で言う。

「全然どうでもよくない! と、いうか眞、いつまでファルにひっついているつもり?」


私はまた眞を引っ張る。だが、眞はこれも魔術の特訓の一環だとか適当なことを言ってファルから離れようとしない。


「と、いうか別に僕にくっついていても魔術が上手くなるわけではありませんよ? 距離が近いほど僕の魔術が効きやすいというのは物理的な距離ではなく、心情的な距離ですから。」

ファルが慌てたように言った。


「どういうことだ?」眞は首をひねらせる。


「羽月さんは僕の友達で、大事な人ですから魔術が効きやすかったわけです。ですから別に僕に引っ付くことで魔術の効き目を上げようとしてもあまり効果はないんです。」


 なるほど。私が魔術を得意とするのはファルの友達だからか。納得がいった。


すると、眞が視界の端で羨ましそうに私を見ているのが目に留まった。


「羽月はファルの友達だから魔術が上手いってことか?」


「まあ……簡単に言えばそういうことです。」

 眞は頬を膨らませて私を睨む。


「なら、俺もファルの友達になる!」


「えっ?」ファルが驚いたような顔をする。


「ファルの友達になれば魔術が上手くなるんだろ? だったら俺はファルの友達になる!」


ファルは呆然とした顔で眞を見つめていた。


その顔を見て、眞は少し心配になったように目線をそらした。


「あっ。でも嫌なら別に。」

嫌なら別にいい。そう言おうとしていたのだろう。

だが、その声はファルの嬉しそうな声にかき消された。


「うれしいです! こっちこそ、友達になってください!」


その言葉を聞いて、今度は眞が呆然としてファルを見ていた。

そして、今度は恥ずかしそうに顔をそらした。

「べ、別にそんなに友達になりたかったわけじゃないからな。魔術を上達するために友達になるんだからな。」

眞はぷいっとそっぽを向いた。

(素直に友達ができてうれしいって言えばいいのに。)

面倒な眞に呆れが半分、微笑ましい気持ちが半分になった。


青空がすごく遠くに見えた。もう春が終わろうとしているのに、私の胸は温かい気持ちで溢れていた。

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