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13/22

過去

「すみません。眞さん。僕、眞さんに魔術を教えられません。」


ファルにそういわれて、俺は口をあんぐり開けるほど驚いた。




「魔術を教えられないってどういうことだ?」




俺は慌てて聞き返す。


今日はやっと魔術を教えてもらえるとワクワクしていたのに、教えてもらえないとはあんまりだ。




(やはり教える人に制限などが付いているのだろうか。)


俺に教えられないルールなどがあるのかもしれない。




だが、ファルに聞いてみると違う答えが返ってきた。


魔術の使える人は魔術師に狙われやすく、連れ去られてしまう危険性があるそうだ。


 大したことのない理由に拍子抜けしてしまう。




「なんだ。そんなことか。俺が魔術を使えるようになったらそいつらを倒すから心配するな。」


魔導士が攻めてくるのなら全員やっつければいいだろう。




 別に俺に教えられない理由があるわけではないのか。




それを聞いて、俺は少しほっとする。




だがファルは違ったようだ。




ファルは驚いたような顔をしていたのだ。




「えっ? 怒らないんですか? 僕のせいでこの国が危険にさらされるかもしれないんですよ。」




「ばか。怒るわけないだろ。異能力バトルとか面白そうだ。」




「えっ?」


俺は思ったことをそのまま言っただけのつもりだったが、ファルは口をポカーンと開けた。




「ほら、早く魔術の練習を始めようぜ。」


俺は魔導士のことなんてどうでもいいから早く魔術を覚えたい。


ちなみに俺は、覚えたらクラスの人たちに自慢する気満々だ。




(絶対にクラスの奴らをビビらせてやる‼)


だが、俺の企みは羽月に早々に気づかれたようだ。


「眞、ファルが教えたくないって言ってるのにダメに決まってるでしょ。」


羽月は呆れた顔をして俺を見た。


「え~。別にいいだろ。教えられないとはいわれたけれど教えたくないとは言われてない。」


俺はふてくされながら言う。


「そういう問題じゃないって。ダメに決まって——」


いつも通りの口論が始まると思ったが、それは早々に終わった。




羽月の後ろにいるファルの目から……静かに涙がこぼれているのが見えたからだ。


「えっ⁉ どうしたのファル。」羽月が慌ててファルに駆け寄った。




「僕、迷惑じゃないんですか?」


ファルは急に言った。




「どうしたんだ急に。」


俺は慌てて聞く。泣かせてしまうようなことを言っただろうか。まったく記憶にない。




「……僕のせいで危険な目に合うかもしれないんですよ。僕、本当にここにいてもいいんですか?」




「ばか。いいに決まってるだろ。それにお前は俺に魔術があるって教えてくれた。


……夢を見させてくれた。それなのに迷惑に思うわけないだろ。」


俺は慌てて言う。




 本当にその通りだ。迷惑なわけない。


俺は小学校の頃からアニメや漫画が好きだった。


そして、異能力や超能力と言ったものに憧れていた。


小学校の頃は話題が合う人も何人かいたから、アニメの話をして楽しむことができた。


ちなみに羽月も小学校のことにできた友達のうちの一人だ。




だが、中学に入ると俺は「変」と言われるようになった。


「痛い」とか「中二病」とか言われ、だんだん友達も減っていった。




それから俺は、誰にも目立たないように生きるようになった。


自分の好きなことや、興味あることを隠し、「普通」に生きるようになった。


そして段々、小さい頃に感じていた夢や憧れをなくすようになった。




ある時俺は、羽月がクラスメイトの園崎楓と歩いているのが見えた。




俺は二人が一緒に歩いていることに少し驚いた。


前に見たときは仲が良さそうには見えなかったからだ。




俺は羽月が心配になってこっそり後を追った。




だが、そこで俺が見たものは巨大な雷だった。


それは青くて強く、きれいで、小さい頃に俺が想像していた「異能力」よりも何十倍もすごいものだった。


 その時、久しぶりに小さい頃の憧れを思い出せた。


ファルは俺が小さい頃の「夢」を実現させてくれた。


「夢」を見させてくれた。


それなのに、ファルのことを迷惑に思うわけがない。




「じゃあ僕、本当にここにいてもいいんですか?」ファルが泣きそうな声で言った。




「いい。いいに決まってるだろ。」




ファルの目から涙がこぼれ落ちていた。


ファルは涙を拭いて、微笑んだ。




「ありがとうございます。」




その言葉を聞いて、俺は羽月の言っていたことを思い出した。




「ファルはいつも優しくて、いい友達なんだよ~。」


あいつはそう言っていた。


「友達」か。


俺にもまた、できる日が来るのだろうか。俺はいつの間にか、そう思っていた。

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